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デタラメな冒険譚が僕にくれたもの〜憧れを追いかける少年〜  作者: まあ(ºωº э)З
第七章 いきなり始まるスローライフ?
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土砂降りのフェイクタウン





 Cランクの魔物は基本的に大きい。そしてそれに見合うだけの魔力を保有しているんだ。

 だから発見する事は簡単で、こちらから奇襲する事が出来る。


 三十一階層には石造りの民家が並んでいて、絶えず雨が降り続けているみたい。それと凄く寒い⋯⋯オレンジも無い。


 ホロホロはガジモンさんに遊んでもらってるよ。流石にずっと雨の中なのは可哀想だからさ。


 お店のような建物もあるけど、品物は固定されているのか動かせなかった。


 不思議な階層だね。当たり前だけど、人が一人もいないんだ。それがちょっと寂しく感じてしまう。

 服屋、本屋、肉屋⋯⋯全てが作り物でちょっと悲しい。きっと雨のせいでもあるのかな。



 ビビが先頭を進み、ティーナが真ん中を歩く。僕は後ろで地図を書きながら、二人の背中に着いて行った。


 きっと飛べば早いんだろうけど、そんな事をしたら直ぐにCランクの魔物に囲まれてしまうよね。


 事前にティーナが用意してくれた雨具が、雨の音を響かせていた。


「どっちへ行くだ? ビビさ」


「こっちだ」


「迷いなく歩くだな⋯⋯」


「ふっ、適当に歩いているように見えるか?」


「いや、そんな事は言ってねーけんど」


「私は適当に歩いている」


「⋯⋯」



 僕達はずっと情報も無しに攻略してきたから、いつも適当に進んでいるんだよね。ティーナがビビにからかわれているのを見ると、どっちがお姉さんなのかわからない。


 ん? そう言えばどっちがお姉さんなんだろう? ビビは吸血鬼だし、ティーナはドワーフだし⋯⋯

 でも年齢は聞いちゃ駄目だろうね。女性に年齢を聞いちゃいけないのです。


「視界も悪い、匂いもこの雨じゃな⋯⋯小さな音も消されてしまう」


「ちょっと休憩にしねーべか? わだす寒いだよ⋯⋯」


 ティーナとビビの会話を聞いて、僕は警戒しやすい場所を探す。


「あそこが良いんじゃないかな?」


「三階建ての家か?」


「うん。それと一回戦闘になるよ。進路上に魔物がいるんだけど、避けてはいかないからね」


「「了解」」


 僕は書いた地図を一度収納した。皆灰色のレインコートを着てるんだけど、僕だけは傘も差してたんだ。

 じゃないと紙が濡れちゃうから、手が塞がるけど仕方ない。


 態々魔物と戦うのは、魂魄レベルを上げる必要があるからだ。迷宮の攻略をするために、僕は沢山強くなる必要がある。


 建物の隙間を移動して、僕達は魔物に向かって走って行った。


 この雨なら足音も隠せるね。でも⋯⋯



「⋯⋯バレたかも」


「そのようだな」


 魔力感知か気配察知かはわからないけど、僕達が近づいて来る事が敵に知られたらしい。


 見なくてもわかる⋯⋯だって魔物の魔力が高まっているもの。背筋がゾクゾクしてくるように感じるのは、僕の本能が危ない敵だと言っているのかもしれない。

 Cランク以上の魔物は一撃が強いから、僕だって油断をすれば死ぬ可能性だってある。



「ティーナとビビは左右から。僕は正面に出て注意を引くよ」


「「了解」」


 

 体に魔力を漲らせると、青い光が放出された。わざとわかりやすくしてみたんだけど、上手く注意を引けているみたい。


 魔物は狭い路地には入って来ず、そのまま悠然と大通りに立っていた。


「牛!」


 闘牛のようにも見えるけど、家と見紛う程の大きさがあった。


 地面を前足の(ひずめ)でガリガリと掻き、威嚇しているように見える。


「さあ! こっちだよ〜!」


 牛は直ぐに飛び出して来た。ちょっとフォレストガバリティウスを思い出すね⋯⋯でもあの頃と今じゃ違う。


「“オーロラカーテン”」


 オーロラカーテンを網のように張り、突っ込んで来た牛を正面から受け止める。


 結構重い⋯⋯でも大丈夫!


「くらえ」

「んだべ!」


 ビビとティーナが物陰から飛び出してきた。ティーナの“水神牙仙”が、水を纏って巨大な斧になっていた。

 ビビは右腕に真っ赤なガントレットを装備している。


「ゴモアァァアア!!」


 ビビが牛の後ろ足を完全に粉砕して、ティーナの斧が前足の一本を斬り飛ばした。


 最後に僕が“オーラスティンガー”を繰り出して、牛の頭部を貫く。



「うん。討伐完了」


「や、やったべか?」


「Cランクって言ってもこいつは弱い方だったみたいだな」



 確かに弱かったかも⋯⋯でも、僕達が強くなってるって事なのかもしれない。

 迷宮は段階を踏んで強くなれるようになってるのかな? 誰が何のために作ったのか、もし知ってる人がいたら教えて欲しいです。


 牛の血抜きは今度にして、今は収納しておく事にした。


 目的の休憩地点へ移動すると、家の中を三階まで駆け上がった。


「なんもねーべな」


「コップ一つ無いね」


「他の家も同じだ。気にしても仕方ない」



 レインコートを脱いで壁に掛ける。床に絨毯を敷いて、窓を黒い布で覆う。

 一応魔物からバレにくくしたつもりだけど、真っ暗になるとティーナが地図を見れない。僕とビビは夜目がきくから、床にランプを置いたのはティーナのためだ。


「生ぎ返るなぁ」


 ティーナが身体中にある沢山の装備を外した。ヘッドギアだけは残して、壁に寄りかかる。ヘッドギアが無いと見えなくなっちゃうからね。

 僕達は身を寄せ合って、ティーナを挟んで毛布に包まった。


 マグカップで温かい紅茶を飲みながら、僕はここまで書いた地図を絨毯に広げる。



「アーク隊長殿は温けえだなぁ。ビビはちょっと冷たくねーべか?」


「うるさい乳」


「な、なして怒るだべ?」


 ティーナにはビビが吸血鬼だとバレてないっぽい。ビビは自分の体が冷たい事を気にしてるからね⋯⋯本気で怒る事はないけど、その代わりに傷ついているんだ。


 ビビはティーナに自分が吸血鬼である事を話すつもりはあるのかな? ティーナならきっと気にしないと思うけど、ビビは知られたくないと思っているかもしれない。


 ビビが僕の隣に引っ越して来る。ティーナも今の話がまずかったと思ったのか、少し視線を落とした。


 でもこの二人なら大丈夫だと思う。ティーナもビビもとっても優しいからね。



「えーとね、地図だと今ここにいるんだ。歩いて来た道的に、探してないのはこっちの方」


 話題を迷宮の攻略へと向ける。早く次の階層への扉を見つけたいな。





 三十一階層は、三十階層よりも楽に感じた。奇襲する事が出来るし、魔物の数が少なかったからね。三十階層は沢山魔物が出てきて、良い経験は出来たんだけどさ。


 三十二階層へ到着する頃には、ビビとティーナは普通に戻っていた。


 ここも雨が凄い。三十一階層と同じで、偽物の街になっているね。


 歩き出そうとしたら、人間の反応がある事に気がついた。


「⋯⋯近づかない方が良いよね?」


「そうだな。人の多かった低層とは違うし、無用なリスクは避けるべきだ」


 三十二階層って事は、ランキング上位の人に決まってる。向こうだって僕達に近づこうとは思っていない筈⋯⋯?


「あれ?」


「⋯⋯」


「⋯⋯近づいてきてる?」


「⋯⋯どういう事だ? ティーナも一応警戒は(おこた)らないようにな」


「わかっただべ!」


 何があってこちらに向かって来てるのかわからないけど、その足取りにはかなりの焦りが感じられた。


 全員で四人、ちょっと面倒な事になりそうだね⋯⋯




 いつも読んで下さりありがとうございます(っ ॑꒳ ॑c)

 久しぶりに朝ジャンル別ランキング五位に入らせて頂けました(*^^*)

 これからも応援よろしくお願い致しますm(*_ _)m

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