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デタラメな冒険譚が僕にくれたもの〜憧れを追いかける少年〜  作者: まあ(ºωº э)З
第七章 いきなり始まるスローライフ?
163/214

クックック⋯⋯哀れな○○○○よ!





 ガジモンさんに報告をすると、


「ヌワンニィィイイ!!! 三十階層でレアボスだとぉぉおお!!!!」


 うん⋯⋯想像以上に驚いていたんだ。その声は間違いなく町中に轟いたと思う。

 その後生還の御祝いをされたんだけど、やっぱり肉てんこ盛りな料理が出てきたよ。


「じゃあティーナ。また明後日の朝ね」


「だべ! んではまた、アーク隊長殿!」


 また一日休みにして、ティーナと別れていつもの場所へ帰る。


 鳥さんが百羽くらいいました⋯⋯本当にどこから増えて来るの? 鳥さんの情報網がとっても気になる。


「アーク。流石に一羽くらい食っても──」


「だ、駄目〜! 絶対駄目〜!」


 ビビがそんな事を言うから、鳥さん達が数歩下がっちゃったよ。いや、本当にね⋯⋯ビビがその気になったら一瞬で狩られちゃうからね。


 一羽一羽を丹念に撫でて、いつもの場所へ家を出した。ビビとお風呂に入っていると、ホロホロが窓から首を突っ込んで来る。


「クルクルクルクルクルルウェ?」


「家の中は駄目だよホロホロ」


「クルルウェェェエエ工⋯⋯」


「⋯⋯」



 なんだろう⋯⋯なんだか最近楽しくなってきちゃって、ここが現実なんじゃないかと錯覚する事がある。

 ティーナとも別れる時が来るんだよ。そう思うと、凄く寂しいな。


 ビビの顔を見ていたら、不思議そうに首を傾げた。


「どうかしたか? アーク」


「ん〜⋯⋯別に〜⋯⋯」


「⋯⋯ちょっとこっちへ来い」


「ん〜」


 移動すると湯船が波立つ。ビビは僕を引き寄せると、後ろ向きに回して元の姿に戻った。

 僕の脇の下に手を入れると、抱きしめながら頭を撫でてくる。


 こうやって包まれるの好き。母様やミラさん達を思い出す。


 ビビは何も言わなかったんだ⋯⋯僕の頭の匂いを嗅いだりして、ゆっくりとした時間が流れていく。


 あ、肩を甘噛みされてる。ちょっと(くすぐ)ったい⋯⋯


「あの迷宮って何階層まであるんだろうね」


「⋯⋯迷宮のフィールドが小さいと思わないか?」


「ドラグスの迷宮に比べると、全体的に広さが五分の一くらい?」


「そうだな。層が深ければ深い程、一階層は広くなると言われている。だからあっても五十階層程度だとは思う」


「そうなの? じゃあ半分以上はクリアしてるんだね」


「予想だけど」


 ビビが二の腕の後ろを噛み始めた。ビビもちょっと寂しいのかな? 僕も対抗してビビの腕を噛んでみる。


「血を吸ってみるか? アーク」


「え? 美味しいの?」


「アークに私の血は美味しくないな。ただ、私はアークに飲まれてみたいと思った⋯⋯駄目か?」


 振り返ってビビの顔を見ると、耳や頬が真っ赤になっている。


 血を吸って欲しいなら吸ってみても良いんだけど、背中から伝わってくる心臓の鼓動が速い。

 ビビの瞳の色が赤く染まっていて、余裕の無い表情だった。


「良いよ。ちょっとだけ⋯⋯ね?」






 あれ? ここは?


 いつの間にか僕はベッドの中にいるらしい⋯⋯でもなぜ?


「アーク! 起きたか!」


「ビビ?」


「良かった⋯⋯」


 ビビが泣きそうな顔をしている。真っ暗闇の中、何故かその顔がくっきり見えた。

 何だろう⋯⋯この感覚は⋯⋯今のビビは、闇に照らされて見えるんだ。


「アークが私の血を飲んで、急に気を失ったんだ⋯⋯私は慌ててベッドに運んだんだが、何をしたら良いのかわからなくて⋯⋯」


「んー⋯⋯でももう大丈夫かな?」


 体調は悪そうじゃないね。寧ろ調子が良いと思う⋯⋯変な感覚だな。


 ベッドから起き上がると僕はまだ裸のままだった。とりあえずパジャマへ着替え、冷えたオレンジジュースを取り出した。


 なんだか無性にオレンジジュースが飲みたかったんだ。


「はぁ〜⋯⋯美味しい。甘酸っぱさが染み渡る」


 快っ感!! ふぁ〜⋯⋯さてと、どうしようかな。夕食まだ食べてないんだけど、ビビがちょっと凹んでるね。


「アークに私の血は毒だったようだ。ごめん」


「凄く調子が良いよ? 真っ暗なのに、何でかビビがくっきり見えるんだ」


 ビビはベッドの上で体育座りをして、肩にバスタオルをかけている。

 これは一人で反省中の座り方だね。服着てからにすれば良いのにな。


 ビビは僕の顔を見ると、その目を大きく見開いた。信じられないものを見るように、少し口が開いている。


「まさか⋯⋯そんな⋯⋯」


「え? どうかしたの?」


 ベッドから降りたビビが、寝室から出て脱衣場に向かった。直ぐに壁掛け鏡を持ってきて、それで僕の姿を写す。


 目が⋯⋯オレンジ色に光っている⋯⋯?


「私はもしかしたら、アークを吸血鬼へと変えてしまったのかもしれない⋯⋯」


「だからかな⋯⋯暗くてもくっきり周りが見えるんだ」


 鏡を脇に退けて、悲しそうに僕を見ていたビビをベッドに引っ張る。仰向けに押し倒して、僕はビビの上に乗った。


「アーク?」


 ビビの無抵抗な両手を拘束して、試しに首に噛み付いてみる。


 んー⋯⋯やっぱり牙は出ないみたいだね。血も飲みたいと思わないし。


「血は吸いたくないみたい⋯⋯って、ビビ? 顔が真っ赤だよ? 大丈夫?」


「アークがこんな事するからだ⋯⋯」


 こんな事ってどんな事? ビビがよく僕にするようにしてみただけなんだけど?






 翌日、僕達は冒険者ギルドへ向かう。その途中で、食材とお酒の購入は済ませたんだ。

 ドラグスへのお土産に、沢山の装飾品も買っている。皆喜んでくれるかな? 三百年も昔の物だから、珍しいとは思うんだけどね。


 ギルドでハルキバルさんに腕輪を見せた。正体不明の万年筆を、僕はいつまで預からなくちゃいけないんだろう。


「流石アーク様です。もう六つ星なんですね。それも金の星」


「ハルキバルさんは今ランキング一位ですよね」


「それも後数日ですが⋯⋯」


「否定はしません。僕が抜かしちゃいますよ」


 お互いに軽く笑い合った。でも、僕はこの人の考えが良くわからないんだ。

 なんて言えば良いのかわからないけど、心に一枚の壁を作って話をされている感じがするんだよ。


 万年筆の預かりは更に延長⋯⋯魔族の動きはまだ無いらしく、安全に姫様は護られているらしい。



 ギルドから出て、ビビと町の中を適当にブラブラする。


 ん?


「ビビ、多分あそこの角を右に曲がって三百メートル行った先に、僕を待つ哀れなオレンジがいると思う⋯⋯」


「アーク⋯⋯本当にごめん⋯⋯まさかオレンジ鬼になるとは思わなかったよ⋯⋯」


 本当に⋯⋯オレンジに牙を突き立てたくて仕方がありません⋯⋯牙無いけど⋯⋯逃げ惑うがいい! オレンジ達よ!


 ああ、飢えたアークが通りますぅ。すいません! 全部下さい!





 休暇を終えた僕達は、ホロホロに乗って迷宮へと向かった。迷宮の入口で、いつもの兵士さんに酒瓶をプレゼントする。

 すっごい笑顔で僕の頭をガシガシと撫でるんだ。


「いつもありがとな!」


「うん、またね」


 僕達は迷宮の中へと入った。迷宮の中は夜の町。外は朝なのに不思議に思うよ。


 ピラミッドの階段を歩いて下りると、沢山の人から注目されているのがわかった。


 嫌な感じはしないね⋯⋯純粋に興味の目?


「なんかあったかな?」


「六つ星になったんだ。注目されて当然だ」


「あ、そっか」


 迷宮には子供達もいるんだけど、憧れるような視線がむず痒いね。僕よりも凄い人が、三百年後に現われるんだよ?

 父様と母様の名前が、過去の世界にも響き渡りますように。


 ん?


「っ!!! ビビ! 約六百メートル先に不貞腐れたオレンジが!」


「昨日散々買っただろう?」


 飢えたアークが通りますぅ。すいません全部下さい。


 その後ティーナと合流して、僕達は再び攻略を開始した。






Σ(゜∀´(ω・` )ガブ

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