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デタラメな冒険譚が僕にくれたもの〜憧れを追いかける少年〜  作者: まあ(ºωº э)З
第七章 いきなり始まるスローライフ?
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想定外の強敵





 そこは薄暗い部屋だった。壁から生えた水晶が、ぼんやりと青い光を発していてる。


 右にはビビが、左にはティーナが立っていた。


 部屋の中央には、こちらを睨む大きなリザードマンがいた。


「え? 赤黒い巨大なリザードマン!?」


 待って、聞いていた話と全然違う!


 ティーナはリザードマンを見て顔を青ざめさせていた。


「れ、レアだべよ! 通常パターン以外のボスは、そのどれもが十階層上の強さだと言われてるだで!!」


「まずいぞアーク!」


 リザードマンの目の前に、黒い球体が複数出現した。

 それが爆発でもしたかのような勢いで、黒い触手が襲いかかってきた。


「散開!!」


 僕は真上に飛んで避け、ビビとティーナはそれぞれが横に飛んで回避する。

 ばらけた僕達に向かって、触手はくの字に折れるように追尾してきた。


 これに触ると何があるかわからない。広い部屋だと思ったけど、このままじゃ触手に埋め尽くされる!


「朧の夜桜!」


 刀を抜いてSスタンダード状態になる。僕の解放された存在感に、リザードマンが背筋を強ばらせた。


 ビビが触手を掻い潜りながら、隙の出来たリザードマンへ銃口を向ける。


「魔法は効くかな?」


 ビビがレフティスワルキューレの引き金を引くと、無数の赤い槍が飛び出した。それはドリルのように回転しながら、リザードマンの背中に直撃する。


「グガァァアア!!」


「ちっ!」


 ビビの攻撃は硬い鱗に阻まれた。爆発が発生したけれど、多分無傷だと思う。

 リザードマンは怒りの咆哮を発し、ビビに向かって走り出す。


「ほいさほいさほいさぁああ!!」


 いつの間にか天井を移動してたティーナが、ビビとリザードマンの間に爆弾を投下する。ビビはそれを見た瞬間に、後退ではなくボスへと前進した。


 ──ボン! ボボボボン!


 爆弾が地面にぶつかった衝撃で爆発する。しかしそれは煙幕弾だ。驚くリザードマンが急停止して、その隙をビビのレイピアがとらえた。

 地面を踏み割る程の力を込めて、伸縮自在なレイピアがリザードマンの脇腹へ突き刺さった。

 その衝撃で、巨大なリザードマンが後方へ吹き飛ばされる。


 ビビは凄い⋯⋯あれが進化したヴァンパイアの身体能力なんだ。


「駄目だ、アーク。硬すぎる」


 レイピアの先端が潰れていて、実際に刺さってはいなかったらしい。

 ビビは即座にバク転をして、迫り来る黒い触手を回避した。


 もしかしたら魔法が効かないのかもしれないね。レフティスワルキューレも、ビビのレイピアも血晶魔法による魔法攻撃だ。だから物理攻撃をしたほうが良いのかもしれない。



「“フレイムランス”!」


 触手を空中で避けながら、一応魔法攻撃を試してみた。


 僕の炎魔法は特別だから、もしかしたらダメージがあるかも? そんな期待をしながら、リザードマンに突き刺さるフレイムランスを見守った。



「グガガ!」


 うん⋯⋯やっぱりダメージが無い⋯⋯


「“フレイムランス”!」


 もう一度フレイムランスを使い爆炎を煙幕代わりに使う。そしてティーナが口径の大きな銃をリザードマンに向けた。


「錬金魔術弾“氷結花(ひょうけつか)”」


 僕とティーナの合作の氷結花弾。それがリザードマンの胸にぶち当たると、魔法陣が被弾した胸に浮かび上がって発光した。

 すると、魔法陣の中心から氷の蔦が生え、リザードマンの手足を締め付けるように拘束する。


「や、やっただべか? ひぎゃ!」


「ティーナ!」


 天井を走っていたティーナが、黒い触手を避けきれずに被弾する。絡め取られた訳じゃないけれど、激しく弾かれて吹き飛ばされた。


 空中でビビがティーナを回収した瞬間、リザードマンが拘束を引きちぎる。


 まだまだ脆い⋯⋯でもあのリザードマン、強さにしたら推定Sランクかもしれない。


 僕もただ見ていた訳じゃない。急落下しながら、朧の夜桜に魔力を流す。


「はぁぁあ!! “オーラスティンガー”!!」


 駆け抜ける雷のように、その一撃が黒い球体に直撃した。


 いい加減この触手が面倒だったんだ。何時までも追われている訳にはいかない!


 球体の一つが破壊され、僕の中に力が流れ込んで来た。


「え? ビビ! これ魔物だ! 多分レベルが上がったよ!」


「そうか」


 ビビがニヤリと笑う。ティーナは腰の服が焼けたようにボロボロになっていた。


「ありがとうビビさ。わだすは大丈夫だで!」


「“水神牙仙(すいじんがせん)”を発動しておけ。念の為な」


「わかったべさ!」


 ビビはティーナを床に降ろすと、黒い球体へ真っ直ぐに突っ込んで行く。荒れ狂う触手をギリギリで躱し、被弾しそうなものはレイピアで弾いた。


「喰らうがいい⋯⋯“破城槌”」


 激しい衝撃が大気を揺らした。ビビが血晶魔法で、先が杭のようになったハンマーを作り出した。それで黒い球体を殴りつけると、杭の後部が爆発を起こす。その衝撃は先端の一点に集中されて、球体がバラバラに破壊された。


「“パワースラッシュ”!」


 二個目の球体を破壊すると、また力が流れ込んで来る。


 ベスちゃんが言ってたように、魂魄レベルを上げるなら迷宮なんだね。それが良くわかったよ。


 触手はビビに任せよう。僕は大物を頂くからね。


 リザードマンが僕に向かって走って来る。多分力や防御力は相手の方が格段に上だ。


「Sスタンダードレベル3!」


 僕は銀の奔流に包まれた。それは指向性のある爆風となって、リザードマンの進行を遅らせる。



「弾けるだべ!」


 ティーナが天井から大きな爆弾を投下した。それを煩わしそうにリザードマンが手で払おうとしたけど、手前で爆発してミスリルの太い無数の針が飛び出した。


 僕には朧の夜桜がある。ビビには全身霧化があり、ティーナには水神牙仙があった。そのため威力を加減無しに詰め込み、とんでも兵器になっていたんだ。


「ゲギャアァアア!!」


 針はリザードマンの硬い鱗を貫き、全身を蜂の巣のように穴だらけにする。

 これはティーナの切り札で、普段は仲間がいる状態では使えない物だ。


 当然僕も穴だらけになったけど、再生しながら突っ込んで行く。


「グガ⋯⋯ゲギャガ⋯⋯」


「苦しまないようにしてあげるよ⋯⋯」


 僕とリザードマンの距離は僅か三メートル。その手前で跳躍し、僕は精霊の力を呼び覚ます。


「“フルアクセル”」


 ギュッと時間が濃縮され、僕以外の世界がセピア色に染まる。


 限りなく遅い世界で一人、僕だけが動ける僅かな時間。でもそれだけで十分だった。


 空間の割れるような音が鳴り響くと、時間がゆっくりと流れ出す。


 リザードマンは何が起こったのか理解出来ないまま、その首と胴体が泣き別れになった。



「ビビ」


「こっちも終わったぞ」


「あ、アーク隊長殿⋯⋯今何さしただ!?」


 崩れ落ちるリザードマン。加速された一撃は、容易にその首を斬り裂いた。



 想定外の事はあったけど、これで僕らも六つ星だね。



「勝てて良かったね」


 精霊の力はやっぱり負担が大きい。ふらつきそうになった体を、ビビがそっと支えてくれた。


「三十階層のレアボスを倒したのは偉業だべ。じいちゃがきっと驚くど?」


「そうかもね」


「きっとそうだべ!」


 ティーナが嬉しそうに微笑んだ。僕達はボスの素材を回収すると、直ぐに町へ戻るのでした。






 触手⋯⋯(; ・`д・´)ゴクリンコ



「クルルウェ!」


 ボス扉前で待機中です。

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