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デタラメな冒険譚が僕にくれたもの〜憧れを追いかける少年〜  作者: まあ(ºωº э)З
第七章 いきなり始まるスローライフ?
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アークパーティーの成長





 甲高い音が鳴り響き、真っ赤な火花が生まれた。ガリガリと鍔迫り合いをしながらでも、僕は戦い全体を見れるようになってきました。

 そもそもが今まで個人頼りの戦い方だったんだよね⋯⋯でもそれじゃ駄目だと気づかされたんだ。


 現在二十九階層。ここに来るまで、沢山の経験が出来たと思う。


「はっ!」


「ギョゲ!」


 少し刀から力を抜いて、一気に体ごと押し返す。バランスを崩した黒いリザードマンに、追い討ちで膝にローキックを入れた。


「ティーナ! 新しい群れに煙幕弾! ビビはガーゴイルに対応して!」


「「了解!」」


 緊張感のある戦闘の連続に、ティーナはすっかり逞しくなった。見た目もかなり変わっているよ。


 メガネ一体型のメタリックなヘッドギアを被り、転倒防止と複雑な動きを可能にするバックレッグを二本装備していた。


 四本の足でどんな地形にも対応出来るようになったんだ。


 体中にブースターをつけて、短時間なら空中戦もこなす事が出来る。

 更に武器もハンドアックスからグレートアックスになり、力強い攻撃が出来るようになった。


 グレートアックスはガジモンさんの自信作で、名を“水神牙仙(すいじんがせん)”と言う。

 水神牙仙を装備した使い手は、体を全て水に変える事が出来る。物理ダメージを無効化し、水の刃で敵を切り刻む事が出来るんだ。


 もうね、間違いなくSランク装備だよ。それに加えて、僕とティーナで作った強化外骨格まで装備してるんだ。

 強化外骨格は、ティーナの力の無さと、バランス感覚の悪さを補ってくれる。バックレッグと合わせて、ちょっと見た目がゴテゴテしちゃったね。もっとスマートに改良したいな。


 でもそのお陰で、素早い移動に強烈な一撃。更に無敵な水の体に様々な種類の爆弾。これなら三十階層に連れて行っても大丈夫そうだね。


 僕もティーナと出会った初めての日に、ガジモンさんから長い刀をもらっているんだ。まだ雲海ズベーラしか斬ってないけど、これも凄い魔刀なんだよ?

 その名も“(おぼろ)の夜桜”。反則級のスペックを持っている。

 朧の夜桜は防御不能な幻覚の刃を放つんだ。それを受けた敵は激痛に(さいな)まれ、それを本物だと知覚すれば現実になる恐ろしい刀だ。


 使用者と朧の夜桜は姿が(かすみ)、敵から見えずらくなる。斬られてもダメージを受けなくて、その箇所が綺麗な花弁へと変わるんだ。


 敵は何がどうなっているのかわからないと思うよ。パニックになったって仕方ない。花弁になった体は直ぐに元に戻るけど、魔法攻撃には弱そうだね。

 それでも間違いなくSランク魔刀⋯⋯やっぱりエルダードワーフは凄いんだ。


 二十九階層は、空を飛ぶ浮き島の世界。大小様々な島があり、落ちれば永遠に落ちそうなくらいに下が見えない。

 高い所が駄目な人は、ここに来たら絶対に気絶しちゃうと思う。小さな浮き島に飛び乗ると、不安定にグラグラするんだよ。



 黒曜石のような鱗を逆立てて、怒りの形相で僕を睨むリザードマン。

 それも一瞬の事で、その顔は直ぐに恐怖へと変わった。


 僕はSスタンダード状態になり、力の一部を解放する。髪の毛が銀髪へと変わり、迸る紫電が大気を焦がす。


「はっ!」


「グゲギャ!」


 朧の夜桜がリザードの大刀を斬り裂いた。返す刀が右脇腹から左肩へと走り抜ける。

 思考を止めている暇は無い。背中から迫って来た別のリザードマンを、ノームの力で足止めする。

 地面から八角棍のような物が飛び出して、貫かれる勢いで上空へと弾き上げた。


「もらっただべ!」


「ギーギャ!」


 ティーナに空中で胴切りにされたリザードマンが、地面に激突して息絶える。


 ビビはレフティスワルキューレを次々と撃ちまくり、空を飛ぶガーゴイルは直ぐに殲滅された。

 僕もジェノシスライトを使ってみたいんだけど、使う程の敵が出て来ないんだ。



 朧の夜桜を納刀して、魔物達に黙祷を捧げる。素材を全て回収して、皆一箇所に集まった。


「クルルウェ! クルルウェ! クルルウェ!」


「ホロホロもお疲れ様」


「クルルウェ!」


 ホロホロは僕のペットの鳥さんだよ。特に何かをする訳じゃないんだけど、どうしても着いてきたいみたいでね。太い首に抱きつくと気持ち良いんだ。


「えへへ、で? 迷宮の扉は見つけてくれた?」


「クルルウェ?」


「だと思った。よしよーし」


 首を傾げるホロホロを撫で回してモフり倒す。


「ホロホロばかり⋯⋯」


「ん?」


 ビビも撫で回されたいのかな? 寝る時にしてあげよう。


「アーク隊長殿。あれそうでねーが?」


「あ、多分そうだね」


 ティーナが見詰める方向には、一際大きな大陸があった。二十六階層から二十九階層まで、ああゆう大きな大陸に扉がある事が多かったんだ。



 もうここまで来ると、他の冒険者さんとすれ違う事が無いね。


 僕達は無事に迷宮の扉を見つけると、そこから少し離れた場所で野営を始めた。


 僕の作った素人ログハウスは、ティーナの手によって生まれ変わったんだよ。

 お風呂もとっても広くて、寝室も大きなベッドが二つ並んでいます。キッチンも新しくなり、石窯も本格的になっている。

 暖炉もあって、揺り椅子も三つあるんだ。流石にドワーフさんだよね。


「良い家になったよね」


「私はどんな所でも良いけど」


 ご飯とお風呂を済ませ、ビビとベッドに横になる。隣りのベッドにはティーナがいて、仰向けで天井を見つめていた。


「ねーねーティーナ。三十階層のボスはどんなやつか知ってる?」


「三十階層のボスは情報が多いだ。なんでも魔法は効かねーらしいべ? 物理攻撃にも強ぐ、巨大な紫色のカメレオンだとか聞いただぁ。八本足で、毒があんぶねえとか⋯⋯それでな──」


 僕とビビは静かにティーナの話を聞く。ティーナも強くなってきたんだけど、やっぱり怖いのか体が震えていた。


「着いて来るかはティーナに任せようと思う。どうする?」


「⋯⋯確かに強ぐなるっで目標さクリアしただ。だども、もっと上が目指せるなら行きたいだべよ」


 ティーナは震える手を天井へ向けて伸ばす。そしてグッと握ると、何かを決意したような目に変わった。


 もうティーナは一人でもDランクの魔物を狩る事が出来る。それは装備によるところが大きいけど、一年も努力すれば化けるかもしれない。


 ふふ⋯⋯負けないよティーナ。


 そんな戦士の目を見た僕は、なんだか嬉しさが込み上げてきた。


「ふっ、今日はティーナと寝てやろう」


「あ、僕も!」


「や、なんだべ! さ、三人は狭いだべよ!」





 翌日、僕達は三十階層のボス扉のある部屋に到着した。


 流石に三十階ともなれば、並んでいる人は一人もいないね。


「準備はいい?」


「勿論だ」


「んだべ!」


 これを倒せば最上位ランカーさんと同じ六つ星だ。


 僕達は横一列になり、銀色に輝く扉へ同時に触れる。





(。・ω・)σ゛

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― 新着の感想 ―
[一言] ティーナの見た目がいつの間にかロボットみたいに……
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