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デタラメな冒険譚が僕にくれたもの〜憧れを追いかける少年〜  作者: まあ(ºωº э)З
第七章 いきなり始まるスローライフ?
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体育座りするしかねーべ(´・ω・`)






 アーク探検隊二日目。ティーナは順調に強くなっている⋯⋯でも、


「あんぎゃァァあああ!!!」


 魔物が出て止まる度によく転ぶんだよね。手を貸して立ち上がらせると、申し訳なさそうな顔をする。

 滑るローラー靴は急停止に弱いみたいで、改良の余地が沢山あった。


「んー⋯⋯ティーナばかり狡い。ローラー靴楽しそうだね。ビビ」


「私は羨ましいとは思わないぞ? それに走った方が速い」


「あんたら体力のお化けだべか⋯⋯わだすの方がバテてるべ」


 二階層もスケルトンばかり出てきたんだ。ティーナの武器は特殊なハンドアックスと、爆弾のような魔導具を投げたりしている。

 高起動なローラー靴を使って、ジグザグに動いて敵を翻弄(ほんろう)する。すれ違いざまにハンドアックスで攻撃するんだけど、その高起動にティーナも翻弄されてるんだよね。


 全部が噛み合って、バッチリ決まるとかっこいいんだ。それに、ティーナの靴は壁も天井も走れちゃうんだよ。本当に凄いんだから。

 こういう洞窟タイプの場所だと、縦横無尽に走る事が出来るね。ガジモンさんが言ってたようにちょっと運動音痴だけど、低階層なら問題無さそう。

 転んでしまうと三十階層は危ない⋯⋯多分Cランクでスピードタイプの魔物が出たら、ティーナのカバーが間に合わないかもしれないもんね。


 三階層はスライムも混じってきた。スケルトンの体の中から飛び出してきたりして、不意を突いてこようとする。

 頭蓋骨や腰布に隠れていたりするんだけど、ビビが嫌そうな顔をしていたよ。


「ブラブラするな!」


「あれ、チンチ──」


「それ以上は駄目だ!」


 え? だってあれチンチ「ごほん」に見えたんだけど⋯⋯


 三階層も洞窟タイプなのは変わらないけど、少し敵との遭遇率が上がった気がするよ。


 四階層へ到着したところで、僕達は二回目の野営をする事になった。迷宮の中だから、昼も夜も無いんどけどね。


「も、もう駄目だで⋯⋯肩が凝って動けねえべ」


「ふむ⋯⋯私が肩の(ちち)を降ろしてやろうか?」


 ビビが赤いナイフを作り、ティーナの胸をペチペチ叩く。もう少し進みたかったけど、ティーナが体力的に限界を迎えちゃったから仕方ない。


 ビビに五階層への扉を探してもらい、その間に僕は夕食を作る。


 ティーナに雲海ズベーラを食べてもらいたいんだ。僕とビビも初めて食べるんだけど、どんな味がするんだろうね。

 無限収納から取り出し、タイムロックが解けた瞬間に紫電を浴びせた。

 ちゃんと気絶してくれて良かったよ⋯⋯もし逃げられたら大変だもんね。


 尻尾を落として血抜きをする。貰った刀で三枚におろし、少し塩をふりかけて水を抜いた。


 初めて刀を使いました。ガジモンさんありがとう。


 身は透き通るような白で、ちょっと薄切りにして一口食べてみる。


 歯ごたえがあって、コリコリとしているかな。噛めば噛む程脂が出てくる⋯⋯それと、海の香りがしない? 変わった味だね。


 あのおじいちゃん精霊さんは、焼いたら美味しいって言ってたよね。ちょっと火を通してみようか。


 次は少しお湯に潜らせてみた。すると、身がふわっふわになって、口の中でとろけていく。


 美味しい! うん。決めた! 今日は雲海ズベーラスープにしよう! 鳥団子も入れて、野菜もたっぷり入れればきっと最高だ。


 小麦粉でうどんを打つ。これは〆にしようと思う。


 紅茶を飲みながらキッチンで一息ついていると、家の扉が開いた。


「アーク。五階層の扉あった」


「おかえりビビ。場所は遠い?」


「そうでも無い、ティーナは?」


「ソファーで寝てるよ」


 ビビはソファーをチラリと見ると、僕にぎゅっと抱きついてきた。


 なんかちょっとドキっとしたんだ。何でなのかな?


 あ、ビビの目が赤くなってる⋯⋯


「アークぅ⋯⋯」


「ここで? ティーナ起きちゃうかもよ?」


 頭を撫でてあげても、瞳の色が戻る事は無い。我慢出来ないのかな? 背中もゆっくり撫でてあげたんだけど、ビビから激しい鼓動が伝わってきた。


「迷宮に入ってからなんだが⋯⋯私の、本能的な部分が強くなっているみたいだ」


「本能? どんな感じなの?」


「⋯⋯」


 僕はビビに押し倒される⋯⋯持ってた紅茶が零れちゃったよ。


 荒い呼吸を繰り返しながら、ビビが僕の上にまたがった。


 ちょっと乱暴だ。それだけ辛いのにな?


 暫く僕を見下ろしていたビビが、ふわりと上半身を重ねてくる。


 もう一度背中を撫でてあげよう。真子ちゃんの作ったメイド服は、すべすべしてて気持ち良いんだ。


「大丈夫?」


「今は見ないで⋯⋯」


 顔が真っ赤になっていた。僕の襟元をはだけさせると、ビビが甘噛みしてから牙をたてる。


「“オプティカルカムフラージュ”」


 ビビは吸血を僕以外に見られたく無いみたいだから、一応姿を消しておいた。

 ティーナは足を痙攣させて、死にそうな顔で眠っているよ。パンツ丸出しになってる⋯⋯


 この後皆で夕食を楽しんだんだけど、ちょっと上の空になっちゃったよ。雲海ズベーラは美味しかったよ? ティーナが体育座りするくらいに美味しかった。

 でも何故かビビが気になっちゃって、あまり料理に集中出来なかったんだ。





 次の日、やっぱり雲海ズベーラは美味しかったと思った。変な感じはあの時だけだったみたい。


 五階層を午前中に突破した僕達は、お昼にはボス部屋も見つけていたんだ。

 五〜八人くらいの人達が、何組も纏まって同じ場所にいたから変だと思ったんだよね。行ってみたら、次の階層へ進む扉があったんだ。

 小さな建物があって、その扉を何人かの武装した人が守っている。


「おい、お前達」


「はい?」


「子供がこんな場所で⋯⋯え?」


 きっと転移陣を管理してる人だと思う。その人が僕達の腕輪を見て驚いているみたい。


「僕達は一階層から来ました。あの扉がボス部屋ですか?」


「まじか⋯⋯こんなに小さいのに⋯⋯あ、ティーナ様まで!?」


 ティーナを見てびっくりする職員さん。ティーナは頑張ってるよ? 何回体育座り見たかわからないよ。


「直ぐに帰還の準備をさせていただきま──」


「待って下さい。一度戻るのはボスを倒してからです」


「へ?」






 這い寄るビビ様┌(⊙ω⊙┐)┐

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