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デタラメな冒険譚が僕にくれたもの〜憧れを追いかける少年〜  作者: まあ(ºωº э)З
第七章 いきなり始まるスローライフ?
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だべさ。だども。んだべ?





 ガジモンさんと転移所の出口へ歩いていると、瓶底メガネを掛け分厚い本を持った少女を見つけた。


 三つ編みで大人しそうな見た目かな? 身長はベスちゃんくらいありそうだね。


 その少女はガジモンさんの顔を見ると、走り寄って抱きつく。


「お? ティーナ。どうした?」


「じいちゃ。いずんなったらわだすも迷宮に潜れるん?」


 その少女はガジモンさんの孫らしい。訛りがある喋り方だなぁ。


 顔は全然似てないんだよね。ガジモンさんは屈強な体つきなのに、ティーナって呼ばれた子はヒョロりとしてる。


「わだすも迷宮さ潜りたいよぉ」


 ティーナさんはガジモンさんの首にぶら下がり、左右にブラブラと揺れていた。ちょっと面白そうかも。


 転移所の職員さんは、それが見慣れた光景だとスルーしているみたい。


「そんな事を言われてもな⋯⋯ティーナは運動音痴だろ? そんなんじゃ冒険者達に着いて行けんだろうが」


「それなら大丈夫だあ!」


 ティーナさんは首から飛び降りて、肩掛け鞄に手を入れる。すると、中からローラーのついた靴が取り出された。


 収納鞄になってるみたいだね。あれは何だろう?


「それは何だ?」


「これさ履けば、坂道を下るように滑る事さ出来るだ! 名ずけて“スイスイ進む君3号”だで!」


「3号⋯⋯んー⋯⋯だがなぁ⋯⋯」


 あれで滑れるの? 面白そうな靴だね。坂道を下るようにって、重量操作系の魔術でもかかってるのかな? 僕も試してみたいなぁ。


 ガジモンさんが僕をチラりと見た。


 え? 何? あ、ちょっと待ってね? 今何か嫌な予感がしたんだ。


 ビビの顔を見ると、ビビも同じ事に思い至ったらしい。

 急いでその場を離れようと振り返ったんだけど、ガジモンさんが有り得ない速度で僕とビビの前に割り込んだ。

 巨大が急発進&急停止したせいで、転移所のフロアにヒビが入る。


 エルダードワーフさん⋯⋯きっと戦えば普通に強いんだろうな。今筋肉がブレて見えたよ。この後って⋯⋯あれだろうね。


「なあアーク、ビビ、ちょっと話を聞いてくれるか?」


 やっぱりこうなるよね? 頼まれる内容はわかってる。だから僕もビビも頼まれる前に逃げたかったんだけど、肩を掴まれて動けなくされてしまった。


「ティーナは魚が好きだ。毎日七時間はしっかり寝かせてくれ」


「あの⋯⋯色々すっ飛ばしてませんかね? もう連れて行く前提なんですか?」


「危険は無いように頼むぞ? ほら、私の鍛えた刀もやっただろ?」


「え? そんなのもらって⋯⋯っ!!」


 いつの間に!? 僕の背中に横向きで長い刀が吊るしてある!


「一階層はまずこの道を真っ直ぐ進めば大丈夫だ」


「「⋯⋯」」


「良いな?」



 こうして急遽ティーナさんがパーティーに加わったよ。本人と一言も話してないんですけど⋯⋯





 暫く無言で歩いて行く。何故かティーナさんが先頭を歩いているんだ。

 ティーナさんは急に立ち止まると、いきなり後ろを振り返る。


「ごめんなぁ⋯⋯わだすのじいちゃが無理言ったな。名前を教えてくんろ」


 その顔は本当に申し訳なさそうにしていた。まあいっか⋯⋯最初の階層は危険な魔物は出ないらしいしね。


「仕方ないな⋯⋯私はビビだ。にゃん」

「僕はアーク。ケーキとお菓子が好きです。苦いのとお酒は嗜む程度です!」


「わだすはティーナと申しますだ。よろしくしてくんろ。アークにビビ⋯⋯ふだりともめんこいなぁ」


 ティーナさんがぺこりと頭を下げる。僕とビビより身長が高いから、お姉ちゃんみたいに見えるかもね。


「戦闘でも役に立てるとは思んますだ。探索も任してくんろ」


「大丈夫ですよ。気楽に行きましょう」


「あんら。気〜引き締めろって言われると思ったで。わだすは緊張感ねーってよぐ言われっから。それにしても二人はちんまいなぁ。何歳とね?」


「僕は六歳です」


「ふぇ? 見た目通りの年齢なんが」


 ティーナさんが物凄くびっくりして仰け反った。僕は半分精霊になったから、敏感な妖精族さんには人間じゃないと思われるのかな?


 何時までも話をしていても仕方ない。だって時間的にはもう夕方過ぎちゃったもの⋯⋯後数時間で夕食にしなきゃいけないし。

 僕達は迷宮の奥へと進みながら会話をしました。





 軽く走ってる程度の速度だけど、ティーナさんは危なげなく僕達に着いて来るね。ローラーのついた靴なんだけど、地面の凸凹はあまり気にならないみたい。


 洞窟の迷宮は不思議だなぁ。壁が緑色に光ってるんだよ。


 町があった大空洞の先は、アリの巣みたいに枝分かれしている。かなり広大でとても大変⋯⋯迷宮探索ってやっぱり厳しいよね。


 ちなみに僕がマップを書いている。ちゃんと誰が見てもわかるようにするのは難しいな⋯⋯


 でも簡単じゃクリア出来た時に喜べないかも。ケーキだって頑張ってからの方が美味しいもんね。


 ガチャガチャっと音が聞こえた。魔物の気配なんて無かったのに⋯⋯


 僕とビビが警戒を強めていると、どんどん音が大きくなっていった。


「上だ! アーク!」


「え?」


 ここは何も無い一本道だった。だから当然前と後ろを警戒していたのに⋯⋯この前ビビを襲った光を思い出して、ちょっと悔しくなったよ。

 上も警戒して当然じゃないか!


 迷宮の天井から、スケルトンの上半身が生えてきた。その落下地点から逃れるように、僕らは数歩後退る。


「どうする? アーク隊長」


 ビビがニヤリと笑った。


「僕が隊長なの?」


「当然だ。アーク探検隊だもんな」


 実はチーム名がアーク探検隊になったんだよ。僕は何でも良かったんだけど、何でも良いならそれでと言う事になった。


「まずはわだすからいぎたいな」


「じゃあティーナさんにお願いするね」


「呼びがた、ティーナで良か。アーク隊長殿」


「うん。わかった」


 そう話をしてる間に、スケルトンが地面に落ちてきた。


 スケルトンの身長は百八十センチくらいあるかもね。僕達と比べるとかなり大きいよ。


 武装は武器しか持ってなくて、体には薄汚れた腰布が巻いてあった。ほんのりと体から黒いオーラを発しながら、目のくぼみの奥に赤い光が見える。


 ──カタカタカタカタ⋯⋯カタカタカタ⋯⋯


 まるで骨が笑っているみたいだね⋯⋯あんまりじっくり見た事無かったけど、ちょっと怖いんじゃないの? やめてよね⋯⋯そういうの。


「あ、アーク隊長殿⋯⋯」


 ティーナがそろりとこちらを振り向く。


「ん? えと、ティーナ。どうしたの?」


 さっき自信たっぷりだったティーナが震えている? やっぱり見た目怖いもんね⋯⋯わかるよその気持ち。


「スケルトン⋯⋯どんどん増えでるべさ」


「うん。雨のように落ちてくるね」


 スケルトンは次々と落ちてきた。あんまりにも増えるものだから、道が完全に塞がれちゃったね。


「落ち着いてる場合じゃなかとよ! アーク隊長! 撤退するべさ!」


「え?」


 撤退するような状況には見えないよ? スケルトンが軍隊になっただけなんだから。


「え? じゃねーべさ! はやぐ逃げねーとておぐれになんど!?」


 んー⋯⋯そっか。ティーナには手に負えない数だったんだ。それなら、


「ビビ。お願い」


「わかった。試し打ちには丁度良いな」


 ビビがこの前手に入れたレフティスワルキューレを抜いた。それをクルリと一回転させて左手で構えると、スケルトンの軍隊に狙いを定める。


 レフティスワルキューレに魔力が流された。バチバチと赤い雷が迸り、それは直ぐに臨界点へと達する。


「“ピースオブマインド”」


 ビビが銃の引き金を引くと、激しい発砲音と共に銃口が跳ね上がる。

 打ち出された赤い光の玉が、幾重にも分かれて鷲の姿になった。


 その鷲の群れは目で追うには難しい速度で飛翔して、スケルトンの軍隊に突き刺さるかのように蹂躙する。


 魔力の変換効率が凄まじいよ⋯⋯威力を何倍にも高めているね。やっぱりこの武器は普通じゃないかも? 誰が作った物なんだろう?


 スケルトン達は砕け去り、あっという間にもの言わぬ屍になる。カタカタも言わないよ。


 赤い鷲が骨を一本ずつ咥えて戻ってきた。気に入ったやつを拾ってきたのかな?


「ふむ、悪くない⋯⋯逝ってよし」


 ビビが満足気に微笑む。鳥の姿が霞んで消えると、咥えていた骨が地面に転がった。


「な、な、な、なんだべさ今のは! スケルトンの群れが一瞬で!?」


「そんなに驚く事でもないよティーナ。今くらいの攻撃じゃ、Dランクの魔物を倒せる程度だから」


「Dランクぅ!? そんなのベテラン冒険者の領域だで⋯⋯」


 そっか。そう考えると、ティーナが驚くのは当たり前なのかな? ビビもどんどん強くなってるし、Aランクの魔物にも負ける事はないだろうし⋯⋯


「落ち着いてティーナ。僕達が弱かったら、ガジモンさんがティーナを任せる訳ないでしょ?」


「そ、それもそうだでな。わだすのじょーしきっちゃちーせーもんなんだでな⋯⋯も、もう大丈夫だべさ! もう驚いたりはしなかとよ!」


 ティーナさんが気合いを入れている。今のティーナさんなら大丈夫そうかな。


 それから数回の戦闘をこなしていたら、迷宮の壁に木製の扉が現れた。


「これは?」


「お? 宝箱部屋じゃねーべさ? 十階層まではトラップ無いらしいべ。サクッと開けて確認したら良いだでよ!」


 ティーナさんの訛りって色々凄いね。


 僕が扉を開けると、中からいきなり矢が飛んできた。咄嗟に炎で焼き払い、ティーナさんへ顔を向ける。


 不意打ちには慣れてるから良いけど、これがティーナさんなら死んでたかもしれないよ。


「あ、あははは⋯⋯絶対じゃねーみでーだな」


「⋯⋯こういう扉は僕かビビが確かめる事にするね」


「了解だでアーク隊長殿!」


 ピシッとした敬礼をするティーナ。ガジモンさんが心配する気持ちがわかったかもしれない。


 扉の奥は小さな部屋になっていた。僕達三人が入ると狭苦しい程度の広さかな。

 中央には小さな白い宝箱があり、良い物が入ってそうな気がしたよ。


 冒険らしくなってきた。ふふ、楽しいな。僕はやっぱり冒険者が好きなんだよね。


 宝箱の前にしゃがみ込むと、ビビが僕の頭を撫でる。


 よーし! それじゃあ開けてみよー!







(っ ॑꒳ ॑c)ワクワク

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