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デタラメな冒険譚が僕にくれたもの〜憧れを追いかける少年〜  作者: まあ(ºωº э)З
第七章 いきなり始まるスローライフ?
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ガジモンさんと転移の腕輪






 僕とビビはグラウンドの中央に腰を下ろした。ラックさんに指示をされて、体育座りになる。


 ビビの得意な座り方だね。反省中はいつもこれなんだ。


「いいかい君達。本当なら門前払いしているところだけど、特別に試験をしてやるんだからな」


「はい! ありがとうございます!」

「恩着せがましい⋯⋯」


「ん? 何か言ったかい?」


「いえ! 何も言ってません!」

「言ってません。にゃん」


 ちょっとびっくりしました。こういう登録みたいなのがある時は、ビビに大人になってもらった方が良いかもね。

 そうすれば多少スムーズに事が進む気がするよ。


「ちゃんと聞いてくれよな? この迷宮はね、一階層からスケルトンが出るんだ。力も強いから、油断してると直ぐに死んでしまう。だから君達みたいな子供が挑戦するのは難しいのさ」


「スケルトン! ゴーストじゃないなら大丈夫ですぅ⋯⋯ゴーストは怖いですし⋯⋯本当にやめて下さいとしか言いようがなく、もし急に後ろから脅かされたりなんかしたら、一気に全ての力を解放してしまうかもしれません」


「⋯⋯この迷宮にゴーストはいないよ。それに肝試しじゃないんだから⋯⋯魔物が脅かしてくる事は無い」


 そんなのわかんないよ? わっ! ってされたらどうするのさ。怖⋯⋯


「えーと、試験は何をするのですか?」


「そうだな⋯⋯まずは逃げ足の速さを見ようか。追いかけるから逃げてみな」


 なんだ。試験って言うから戦うのかと思ったよ。なんて言うか、今考えたような試験だよね。


 僕とビビは立ち上がり、ゆっくりその場から離れた。


「まずはメイドの子からかな」


「わかった」


〜十分後


「ゼヒュー⋯⋯ゼヒュー⋯⋯ゼヒュー⋯⋯きょ、今日はこの辺で勘弁し、してやる⋯⋯ゼヒュー⋯⋯」


「そうか」


 小鹿のように笑う足を押さえて、ラックさんは何とか言葉を発していた。

 ビビは一メートルくらいの距離で、ずっとバックステップだけで逃げていたね。全く捕まる気配が無かったよ。


「隙あり!」


「無い」


 ──ズシャア!


 ビビが襲いかかってきたラックさんを、余裕をもってヒラリと躱した。


 この人は遅いな⋯⋯走るの苦手なのかもね。それとお尻が出てますよ?


「こ、こういうスケルトンもいるって実演しただけだ⋯⋯」


「ありがとうございます! 次僕ですね!」


「走れる訳無いだろ! 次は魔力測定だ!」


「はい!」

「走れよ⋯⋯」


「何か言ったかな?」


「何も言ってません!」


 僕は何も言ってません。


 魔力測定とか初めてだね。何をするのかな?


 ラックさんがヘロヘロと歩き、丸い水晶のような物を持ってきた。


 占いでもするのかな? あれをどうするの?


「まずはお手本を見せてやる」


 ランクさんがその水晶に魔力を流し始めたのがわかる。魔力の流れを見れば、だいたいやり方は理解出来るね。


「こうすると水晶が光り出すんだ。そして──」


 ──この後も色々やらされたんだ。魔力測定では水晶が割れちゃって大変だった。力の測定や短距離走なんかもやらされたね。

 ラックさんの驚愕顔のレパートリーには驚きました。そして何だか周りが賑やかになってきたよ。僕達を見守る冒険者さん達がいて、値踏みされているようにさえ感じる。


 まさかとは思うけど、勧誘されたりするのかな?


「アーク⋯⋯いい加減馬鹿らしくならないか?」


「ビビ。もう少し我慢しよ?」


「アークがそう言うなら⋯⋯」


 迷宮の探検が始まらないまま、この町で一泊とか嫌だからね。ビビが不満に思うのも良くわかる。


「ま、まだだ! あの的を見ろ!」


 ラックさんがまた何かを用意したみたいだ。僕とビビはうんざりしながら、ラックさんの試験に付き合ってあげる。


「あの的は竜の鱗を削って作った物だ。この場所から魔法で攻撃して、見事破壊出来たら試験合格だ!」


「わかりました!」

「自分が出来ない事をさせるな⋯⋯」


「何か言ったかな?」


「何も言ってません!」

「ません」


 ビビの機嫌が良くないのには理由がある。後で何かしてあげよう。

 多分これは精神圧縮によるストレスが、自分でも気がつかないうちに表に出てるんだと思うんだ。

 僕はまだ大丈夫だけど、これからまだまだ辛くなるからね。ビビには覚悟をしてもらわなくちゃ。


 僕達は軽い魔法で的を壊す。イフリンと契約しているから、ファイアバレットでも破壊する事が出来た。


 竜の鱗って言っても、生きた状態とは違うだろうね。ビビは赤い手裏剣のような物を投げる。それが的に突き刺さると、増殖して針山のようになった。

 あれが生き物に当たった時を考えるとゾッとするね⋯⋯ラックさんも同じ事を考えていたようで、その顔を真っ青にしているよ。


「馬鹿な⋯⋯有り得ない⋯⋯」


 僕の的は溶解し、ビビの的は粉々⋯⋯膝をつくラックさんの後ろでは、僕達に拍手をする人がいた。

 もっさりとした髭が凄いドワーフさんで、髪の毛はくすんだ金色だった。


「素晴らしい。ハルキバルがお前さん等をもてなせと言うから、気になって見に来て正解だったわ」


 そのドワーフさんはゆっくり僕達に近づいてくる。


 あれ? 身長が二メートルはあるかもしれない? 横にもかなり大きい⋯⋯オーガもびっくりのマッスルボディー!?


「こんにちは!」

「こんにちは。にゃん」


「おーおーこんにちは。カッカッカッ」


 歩く度に地面が揺れた。鉄板を何枚も重ねたような胸部装甲⋯⋯ガントレットも凄く重そうだね。


「エルダードワーフのガジモンだ。転移所の管理者をしている」


「僕はアークです。山中で鳥に囲まれる日々を過ごしています」

「ビビ。にゃん」


「よろしくな。着いて来い」


 有無を言わせない迫力がある。放心するラックさんが気になったけど、今はガジモンさんに着いて行こう。


 転移所の中に豪華な部屋があり、大きな円卓に沢山の肉料理が並んでいた。


 もう肉肉肉尽くし! 凄く食欲を刺激する匂いだね。


「もてなしと言えば肉と酒しか思いつかなくてな」


「いえ。僕達は迷宮を探検したいだけなのです。だから⋯⋯その──」


「そうだったのか⋯⋯ケーキも用意させてるんだが、無駄に──」


「もてなしを受けたいと思います!!」


 もてなしは断るべきでは無いんですよ! ええ、絶対にね!


 それから僕達はお肉を美味しくいただきました。ガジモンさんは、骨付き肉を丸ごと口に放り込む。


「肉に余すところなんかねえんだ。カッカッカッカ!」


 本当に豪快だ⋯⋯鳥の丸焼きなんて、そのまま齧り付いてるよ。ビビはそれを、目からウロコとばかりに見詰めている。


 真似しなくて良いからね? 鳥の骨は危ないんだから。


 肉汁のしたたるステーキを、僕は小さく切って口に運ぶ。


「美味しい」


 僕が厚切りのステーキを一枚食べる間に、ガジモンさんは大皿を五枚ペロリと完食した。


 見ていて圧巻だったね。お肉は飲み物ですよ? と、言っているかのようでした。


 生クリームたっぷりのホールケーキを沢山収納して、僕はとっても幸せです。

 カーテンを掴んでクルクル回転しちゃうくらい嬉しい。


 給仕の人が空いたお皿をどんどん片付けていく。御礼を言ったら笑顔を返してくれたんだ。


 空いたテーブルの上を、滑らせるように何かを放られた。それは銀色のただのリングで、装飾品にしてはシンプル過ぎた。


「それを腕に付けて行きな。ボスを倒せば、転移所から星を与えられる。三人以下のパーティーでボスを倒せば金の星、それ以上の人数で倒せば銀の星だ。現在三十五階層まで探索が進んでいるが、三十五階層のボスは未討伐だ。五階層ごとにボスがいるから、トップ連中は皆六つ星になるな」


「了解しました」


 リングに左手を通すと、それは僕の腕に吸い付くように小さくなる。見た目は硬そうだけど、引っ張るとゴムみたいに伸びるね。


「ハルキバルの推薦のようなものだしな⋯⋯一応全部の扉を使う事は許可する。だが、無理して死ぬような事にはなるなよ? 特に三十五階層のボスは情報がねえんだ。何層から行くんだ?」


 迷宮ボスとの戦闘では、倒さない限り抜け出す事が出来ない。だから余程の自信が無いと、階層の主には挑戦出来ないよね。


「一層から順番に行きたいと思います! 星がもらえるって素晴らしいです! ふんす!」


「そうか。わかったぜ。もし三十五階層のボスに挑む時は、一言報告をしてくれよな。新しい転移ゲートを持って行って欲しいからよ」


「わかりました」


 あはは。楽しみだな⋯⋯やっと迷宮探検が出来るよね!


 星を集めて腕輪をキラキラさせたい! ランキングも上げて、いつかマイ滑車を手に──


「滑車はいらん」


 こうして僕とビビの迷宮探検が始まりました。






お肉食べたいなぁ(っ´ω`c)

ローストビーフ大好き侍ヾ(:3ヾ∠)_

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