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デタラメな冒険譚が僕にくれたもの〜憧れを追いかける少年〜  作者: まあ(ºωº э)З
第七章 いきなり始まるスローライフ?
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閑話 ぞうきばやしのまほうつかい☆ 






三人称視点



 ギブ、モカ、マーズの三人は、とうとう魔力感知を修得した。汗まみれの三人の絆は、結果となって固く、硬く、堅く、難く結びついた!

 それはもうこんがらがってもつれ合いながら、良くわからない事になっているぅ。


 三人はレジャーシートの上で座禅を組み、それぞれが自由に集中力を高めていた。


「アーク君アーク君アーク君アーク君アーク君アーク君アーク君アーク君アーク君アーク君アーク君アーク君アーク君アーク君──」


「ちょっと! モカ! うるさいわよ!」


「まあまあ。モカちゃんが集中するための呪文なんだからさ」


 ギブがマーズを(なだ)め、モカは少し肩を落とした。アークがいなくなって十数日が経過している。旅行だとは聞いているが、ずっと会えなくて寂しいと思っていた。


「そ、そうだけど⋯⋯私達が集中出来ないじゃないの⋯⋯」


「ご、ごめんなさい⋯⋯マーズお姉ちゃん、ギブ君」


「仕方ないわね⋯⋯耳栓しましょうか」


 マーズはモカとギブに耳栓を渡す。(あらかじ)めこうなる事はわかっていたようで、用意の良さが女子力の高さを示していた。かもしれない。


 それからは皆、音の無い世界になる。マーズはそう確信していた。


「クライブおじ様クライブおじ様クライブおじ様クライブおじ様クライブおじ様クライブおじ様クライブおじ様クライブおじ様クライブおじ様クライブおじ様クライブおじ様クライブおじ様」


「「⋯⋯」」


 マーズの呪文が始まると、聞こえないフリをするモカとギブ。ギブはその呪文を聞きながら、似た者姉妹に頭を抱える。



 集中力を高めるのは準備運動のようなもの。瞑想してから(およ)そ三十分⋯⋯ここからが訓練の本番だ。


「ギブ君? 疲れた顔してるね?」


「だ、大丈夫。さあ、始めようか」


 モカとギブとマーズは互いに手を繋ぎ、魔力操作の訓練を開始する。


「アーク君いつ帰ってくるんだろう⋯⋯もうずーっと旅行にいってるのよね」


「俺、出発の時アークから何も聞いてない。そんなに急な旅行ってある?」


「わからないわよ⋯⋯でもアークの両親は『全く』心配した様子は無かったわね。ヘラヘラ笑ってたもの」


話しながらも魔力操作は続けている。モカちゃんはアークに会いたくて、頻繁に領主様の屋敷へ(おもむ)いていたのだ。勿論裏口になるが、クライブやミトが気がついてくれる事がある。


「ベスさんと旅行らしいよね。アークの事だから、何処かで何かと戦ってたりして」


「有り得るわね。私達の想像もつかない事をしてそうだわ」


「アーク君⋯⋯早く帰ってきて欲しいなぁ」


 三人の思う事は同じだ。アークは色々と滅茶苦茶で、常識もどこかおかしかった。だが、アークは礼儀正しく明るい性格で、いつも皆の中心にいた。


「もしかしたら、アークは仕事で町を出たのかもしれないよね」


「「どういう事?」」


「ベスさんもアークも冒険者でしょ? 両親にはまだ秘密って言ってたから、旅行って事にしたんじゃないかなーって思ったんだ」


 ギブの予想は正しい。正しいが、最初から別行動とは予想もしていなかった。まさか帰り道に精霊界へ行って、そこから更に別の世界へ行ってるなど誰が予想出来ようか⋯⋯


 現在、冒険者ギルドは混乱の極みにあった。ベスからもたらされた勇者と魔族の情報に、銀閃(アーク)の失踪事件。それを聞いた職員のモチベーションの大きな低下と、待ってはくれない物資の調達依頼。

 迷宮の探索も手は抜けないし、キジャは爆発寸前まで追い込まれている。


「もっと早くアークに会いたかったなぁ」


「お姉ちゃん! アーク君は私の! 取っちゃ嫌!」


「そうじゃないのよモカ。アークにもっと早くに会えてれば、一緒に冒険出来たかもしれないでしょ?」


「⋯⋯そうだね」


 皆で一緒に遊びたい。そんな想いから、マーズはそんな事を言った。だがマーズもモカもギブも知らなかったのだ。冒険者という職業が、皆の想像しているより遥かに大変だと言う事を。

 アークが何回死にかけたか、それを知る者はここにはいなかった。


「俺、もっと強くなったら冒険者やってみる」


「ギブ君は研ぎ師になるんじゃないの?」


「アークを見てたら、俺も世界中の剣を見て回りたくなったんだ。そのためには、一人でも大丈夫なくらい強くならなくちゃって思って」


「ギブは強くなるわ。だってもう初級剣術がレベル3なんだから。私まだレベル1なのに」


「ありがとうマーズちゃん。でもまだまだなんだ」


 この三人にとって、基準がアークになっていた。ギブはまだまだだと思っているが、実際はもう冒険者試験を突破出来る実力がある。それはマーズもモカも同じで、いずれこの三人の名前は世界に轟くものに成長する。

 だが、それはまた別のお話だ。


「アーク君が帰るまでに、魔法覚えてびっくりさせようね」


「うん」

「勿論よ!」





 キジャは執務室で書類をさばきながら、キツい酒を呑んでいた。アークが死んだとは考えていないが、アルフラの対応の悪さに頭にきている。

 そんなイライラを隠さないまま、キジャはターキを呼び出していた。


「マスター。大丈夫ですか?」


「大丈夫そうに見えるか?」


「いえ⋯⋯すいません」


「⋯⋯いや、今のは俺が悪かった⋯⋯座ってくれ」


「はい」


 ターキはソファーに腰掛けて、普段見ないキジャの余裕の無さに眉を寄せる。


「まだ極秘なんだがな、アークが消えた」


「え?」


 キジャは重そうな口調で、されど伝える事を簡潔に語る。


「ちとよ、アルフラに行っちゃくれねーか?」


「アルフラ⋯⋯観光地じゃないですか」


「アークがイグラムの帰りに寄った場所なんだが、そこで失踪したらしい⋯⋯」


「⋯⋯なるほど」


 ターキは直ぐに考え始める。まず移動の手段と時間、用意する物などに不備は許されない。真面目で堅実な性格を信じて、キジャはターキが適任だと判断をした。


「お前は情報を集めるのに向いてるからな。経験不足だとは思うが、他にも人を呼んであるのよ」


「依頼を受けるのは構いません。他の人とは誰ですか?」


 その時、キジャの執務室を誰かがノックした。


「マスター。リフレです」


「入れ」


 エルフのリフレ。彼女の事は知っていたが、ターキはリフレの美貌に息を呑む。長い二人旅になると想像したせいもあるが、ターキは思春期真っ只中なのだった。


「リフレには道中色々教わると良い。魔導車の手配もしてあるから移動も心配するな。アークを頼んだぜ」


「「はい!」」


 こうしてターキとリフレは旅立った。しかしターキは知らなかったのだ。リフレは乗り物酔いが激しく、逆に世話をするはめになるなんて。


 いつでもターキはお母さんポジションになるのだった。







 語りべチックな三人称書いて見ました(っ ॑꒳ ॑c)

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