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デタラメな冒険譚が僕にくれたもの〜憧れを追いかける少年〜  作者: まあ(ºωº э)З
第七章 いきなり始まるスローライフ?
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古(いにしえ)の国“デナートロス”






 ビビと凄く仲良くなりました。もう父様より仲良しかもしれないね。母様、アーフィア、ビビは僕の優先度トップになります。次点はいっぱいでわかりません。


 さて、これからどうするかなぁ⋯⋯まずこの世界は何なの? 意味がわからないよ。

 何を試されているのかわからないけど、僕は黒狐様に怒ってます。背後からイフリンとノーム様とムーディスさんの力を借りて、ドラシーのエレメンタルブレイクを時を止めて頭に叩き込んでも許される気がする。


「アーク⋯⋯今背筋に悪寒が⋯⋯」


「気のせいだよ」


「「「「「クルルウェ! クルルウェ! クルックルックルッククルルウェ! クルルウェクルック! クルルウェ!」」」」」


 クルクル大合唱⋯⋯今鳥さん達はどこからともなく増殖し、全部で二十羽ちょいになってます。餌になるヘイズスパイダーは沢山あるから、好きなだけ食べさせてあげてる訳だけども⋯⋯


 トイレは他所でやってくれるから、地面が汚くなったりはしないんだ。抜けた羽根を集めて、柔らかいベッドが作りたい。


 っと、それは置いといて⋯⋯


「街を探さなきゃかな⋯⋯」


「この手紙通りに動くのも癪だけど」


「でも街に行けば欲しい物が手に入るかもよ?」


「私はメイド服のままでも構わない」


「チキンとか」


「そ、そそそそこまで言うなら! 今直ぐ行こう!」


 あはは。ビビ、変わったね。前より少し柔らかくなったよ。


 僕の視線に気がついて、ビビは少し照れたようにそっぽを向いた。


 実際問題として、調味料とかお菓子も補充したいんだ。精霊界に来てからかなり消費しちゃってるし、沢山あって困る物でもないしね。


 メイド服を着ていると、ビビは大人の姿になる事が出来ない。多分服が破けちゃう⋯⋯普通に大人の服を買うのも良いなと思う。


「直ぐに見つかるかな?」


「わからん」


 ビビの言う通りわからない。でももしかしたらわかるかも? 裏技を使いたいと思います。


 僕は鳥さん達の方を向いて、軽く咳払いする。


 知ってそうな(ひと)に聞いてみよう。


「鳥さん。街がある方角わかる?」


「クルルルー。クウェ、クウェ、クウェ」


 鳥さん達がある方角を体ごと向ける。全員がそちらを見ているので、もしかしなくてもそっちに街があるんだね。


 鳥さん皆が見つめる先は、ずっとジャングルが続いているよ。ここからじゃ見えないけど、ジャングルを超えた先に街があるのかもね。


「ありがとう鳥さん」


「クルルウェ!」


 鳥さん達に御礼のヘイズスパイダーを出してあげると、皆喜んで突っつき始めた。

 僕とビビは何を用意するでもなく、とりあえずその方向に向かって飛翔する。





「アーク。あれじゃないか?」


 鳥さん達が示した方向へ飛んで行くと、ビビが先に何かを発見した。ビビは目が良いよね。僕も悪くは無いと思うんだけどさ。


 平地で魔力の薄い場所に街が作られるんだよね。その方が魔物の被害を減らせるらしいんだ。

 魔導飛行艇の船長から聞いたんだけど、魔力の濃い場所に現れる魔物は強力で厄介なんだとか。

 そのために、魔導飛行艇も魔力の薄い場所を移動する。そうすると、必然的に街の上を通る事になるらしい。


 ビビの発見した物が、僕の目でも確認が出来た。


「うわ⋯⋯凄く大きい⋯⋯お城があるし、どこかの国の首都みたいだね」


「⋯⋯ん? ⋯⋯あの国は⋯⋯」


「どうかしたの?」


 ビビが首を傾げながら、顎に手を当てていた。


「気のせいかもしれない。ちょっと知っている場所に似ていただけだ」


 それは⋯⋯普通に考えれば気のせいだとは思うけどね。この場所が現実だとしたら、僕達に精神的な負荷がかかっている事の説明がつかない。


「⋯⋯んー、やはりここは⋯⋯デナートロスだ」


「デナートロス?」


「私達の住むドラグスから遥か南東に行くと、そういう名前の国がある」


「じゃあここは現実世界だって言うの?」


「その可能性は無いと思う。正確に言えば、“あった”が正しい」


 どういう事なんだろう? 一度街から離れた街道に降りる。


「少なくとも、私達の住んでいた世界とは違う⋯⋯デナートロスはな、私が生まれて間も無い頃に滅んでいるのだ」


「え? 滅び?」


 街道にはぽつりぽつりと人の姿が見える。国としては滅んだけれど、街として残ってるって事なの?


「じゃあこの街は、昔は王都だったって事かな?」


「違うぞ。デナートロスは滅んだんだ。完全にな」


「え?」


「数百年前、魔族との大きな争いがあったらしい。その時に魔族に使われた魔術のせいで、デナートロスは砂漠に呑み込まれたんだそうだ。長い年月をかけてな⋯⋯」


「じゃあ僕達の元の世界では、この国は砂漠の中なの?」


 ビビがコクリと頷いた。とても衝撃の事実⋯⋯この緑豊かな土地が、今砂漠に覆われているなんて⋯⋯


 ん? という事はつまり⋯⋯?


「ここは遠い昔の世界なの?」


「わからないが、多分そうなる」


 えーっと、うぅ⋯⋯頭が混乱するね。こんな時はちょっと踊ってみる? うん、何も解決しないよね。


「じゃあ街行ってみよっか?」


「消えた筈の国。少し楽しみだ」


 ビビと小さく笑い、ゆっくり街道を歩いて行く。擦れ違う人と挨拶をしながら、気がつけばワクワクしちゃってたんだ。



 ビビと街に着きたら何をしようかな? 食料品の調達に、あと僕の武器も必要だよね。


 あぅ⋯⋯ドラシーが恋しいです⋯⋯


 そんな時、遠くで魔物の反応をキャッチする。


「ビビ!」


「わかってる。たく、街と逆方向ではないか」


 十五分くらい歩けば街に着く所にいたからね。でも、魔物に誰かが襲われているみたいなんだ。


 Sスタンダードの状態になると、ビビを背中に乗せて走り出した。

 力を込めた足が地面を砕き、目にも留まらぬ速さで加速する。


「ビビはメイドさんのフリしといてね」


「わ、わかった。にゃん」


 メイドさんはにゃんとか言わないんだけど⋯⋯猫耳メイド喫茶で働いてたから仕方ないね。


 街道は森へと続いていて、視界はどうしても悪くなる。でも気配は掴めているから問題は無いよ。


 剣戟の音と、爆発する何かの音が聞こえてきた。街道には壊された馬車と、撒き散らされた荷物が見える。


 中に人はいないみたい。きっと森の中で戦闘中なんだ。


 折れた枝、焦げた幹に足跡の着いた地面。現場の状況からでも方向がわかる。


「見つけた!」


 森の中の少し開けた場所で戦闘中みたいだね。敵はスケルトンソルジャーが五体に、スケルトンナイトが一体。

 人は冒険者が四人にお婆さんが一人。きっとお婆さんが行商人で、冒険者が護衛に雇われているのかも。


 護衛の冒険者は、一人がお婆さんを背負っている。残り三人がスケルトンを牽制しているみたい。


「ビビはお婆さんの元へ」


「わかった。にゃん」


 ビビを降ろし、僕は高くジャンプする。


「加勢します!」


「だ、誰だ!」


 一声かけるのはマナーだよね。


「“超重踵落とし”」


「ギャ!」


 ──ズガァァアン!!


 衝撃に大地が揺れ、人も魔物も揺れに耐えるように踏ん張った。

 僕の足元では、司令官っぽいスケルトンナイトが粉々になっている。


「子供か!? だが助かった!」


 冒険者達の真ん中で戦っていた人が、僕に御礼を言った。


「いいえ」


 僕はそれだけ言うと、“加歩”でスケルトンソルジャーへ近く。


「ガギ!」


「“岩砕脚”」


 ──バァガアン!


 急に現れた僕に驚いたスケルトンソルジャーが、持っていたバックラーでガードしようとする。


 でも僕の力を受け止める事は出来ないよね。ガードした腕ごと上半身が砕けてしまった。


「すげえ⋯⋯形勢逆転だな」


「お前達もあれぐらいの働きをせんか!」


 お婆さんが手に持った杖で、自分を背負う冒険者の頭を小突いている。


「痛た⋯⋯無茶言わないで下さいよぉ〜婆さん」


 このスケルトン達は、多分Dランクの魔物だね。オークが何とか倒せるくらいの人には、囲まれたら厳しいかもしれないよ。


 お婆さんの言葉に苦笑いする冒険者さん達。でもまだスケルトンがいるから油断しないでね。


「“震激雷波掌”!」


 ──ボン!


 僕の攻撃に耐えかねたスケルトンソルジャーが、砂のように崩れ去った。


「俺達も殺るぞ! はあぁあ! “斬馬絶刀(ざんばぜっとう)”」


 冒険者さんの一人が、大きな刀で豪快な一太刀を放つ。速い踏み込みからの袈裟斬りに、スケルトンソルジャーも剣でガードをするしか無かったみたい。

 重い攻撃にで、腕が耐えきれずに折れてしまったらしい。次に返す刀も避けきれず、斜め下から切り上げられたスケルトンソルジャー。


「やってやったぜ!」

「俺もいく! “パワースラッシュ”!」

「“シャドウウォーリアー”! からの〜“バックスタブ”!」


 攻撃に出た冒険者さん達に、スケルトンは程なく討ち取られた。


 良かったね。助けに来て正解だったかな。怪我人も誰もいないみたいだよ。


「いや〜助かったぜ」


 頭をぼりぼり掻きながら、僕の前にリーダー風の冒険者さんが近づいてくる。


「気にしないで下さい。僕が勝手にやった事ですから」


 笑いかけると、冒険者さんも笑顔で返してくれた。


「デナートロスに向かっているのかな?」


「はい。僕ともう一人──」


「こっちの子はなんだい?」


 僕に声をかけながら、お婆さんがビビに指を向ける。今紹介しようかと思ってたところだったから丁度いい。









 結構大事な章になるでしょう(っ ॑꒳ ॑c)

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