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デタラメな冒険譚が僕にくれたもの〜憧れを追いかける少年〜  作者: まあ(ºωº э)З
第七章 いきなり始まるスローライフ?
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住む場所探しは大変でした。






 昨晩は木の洞を見つけて眠ったんだ。狭かったおかげで少し体が痛い⋯⋯流石に何があるかわからない場所で寝るのは危ないから仕方ない。

 何かがくれば気配でわかるけど、念には念を入れる事にしたんだ。

 ビビと毛布に包まって、“オプティカルカモフラージュ”で姿を消した。これで魔力がわからない動物には、僕達を発見する事が出来ないんだ。


 そう思ってぐっすり寝たんだけど⋯⋯


「⋯⋯」


 木の洞の出口に、黒くてデッカいモフモフした何かの前足が見える。


 困ったなぁ⋯⋯匂い対策はしてなかったから? 犬っぽい何かが外で待っているのかも⋯⋯


 ビビの体が少し動いた。起きたのかな?


「アークぅ⋯⋯ちゅー⋯⋯」


 いつものように、ビビは寝ぼけているみたい。


 ちゅーって言われても⋯⋯どうしよう。僕からちゅーした事は無いんだよね。


 僕の腕の中で、目を閉じながら顎を上げるビビ。直ぐ近くにある顔を見ていたら、何だか少しドキドキしてくる。ちょっとおかしいかも⋯⋯どうしちゃったんだろう⋯⋯


 薄ピンク色の唇に、ゆっくり口を近づけていった。ビビのお願いだったら、僕は出来る限り叶えてあげたいと思うよ。


 ゆっくり唇と唇が触れ合うと、柔らかい感触が伝わってきた。少しして口を離すと、ビビの表情が幸せそうに緩む。

 そんな顔を見てしまったら、ちゅーするのも悪くないと思えるよ。


「アークぅ⋯⋯私は酸っぱくない⋯⋯」


「どんな夢みてるの?」


 ビビはそのまま寝ちゃったんだ。本当に⋯⋯どんな夢みてるのかな? モフモフした前足みたいなのが気になるけど、僕ももう少しだけ眠ろう。


 ジャン⋯⋯zzZ





 おはようございます! 良い朝です! ただね、やっぱり木の洞の出口にはモフモフがいる。

 モフモフだな〜モフモフの〜モフモフだぁ〜。


 ビビが起きていたみたいで、僕の顔を覗き込んでいる。綺麗な青い瞳が瞬きして、少し恥ずかしそうに頬を染めた。


「お、おはよう」


「おはようビビ。良く寝れた?」


「うん⋯⋯ずっと抱いててもらって、安心したのかも」


 安心した? 僕もビビがいて安心するよ。


 ムギュっと抱きしめて、頬でサラサラした銀髪に触れる。気持ち良い⋯⋯でも今日はお風呂入りたいね。昨日あんなに動いたんだもの。


「ビビはどんな夢を見ていたの?」


「ッ!!! わ、私! 何か言ってた!?」


「い、言ってないよ?」


 ビビがあまりに取り乱したので、少し誤魔化しておこうと思った。本当にどんな夢を見ていたんだろう。


「その⋯⋯昨日の事なんだが⋯⋯その、すまなかった」


「昨日の事?」


「首閉めて、き⋯⋯キスした事だ⋯⋯その、そんなつもりじゃなかったから⋯⋯」


 昨日のね⋯⋯あれはびっくりしちゃったよね。首を絞められたのは苦しかったけど、それを気にしているのかな?


「僕は全然“気にしてない”よ」


「!」


「これっぽっちも気にしてないからね」


「⋯⋯」


 僕の言葉を聞いて、ビビがショックを受けたように固まっている⋯⋯何でなのかな? 全然気にしてないのにな。


 この後ビビに血を吸われたんだけど、いつもより痛かった気がしました。



 木の洞からほんの少し顔を出す。モフモフの正体を確かめなきゃいけないよね。

 綺麗な黒い体毛が、夜空のように煌めいて見える。


「凄く綺麗だね」


「狼か? 昨日の奴とは違うんだな」


 狼は静かに寝息を立てていた。めちゃくちゃ大きいね⋯⋯今なら触っても大丈夫じゃないかな?


 僕が何をしようとしたのかを察知したビビが、間に割り込んで首を横に振る。


「こんなに大きいんだ。懐いたら大変だろ?」


「うぅ⋯⋯確かに。ドラグスに連れていけないよね」


「どちらにせよ、まずは家を建てなければならない。⋯⋯私とアークだけの⋯⋯」


「え?」


「いいから行くぞ」


「うん。わかった」





 それから五日間が経ちました。


 色々な場所を見て回ったんだ⋯⋯家を建てたいのに、何処へ行っても大きな狼さんに見つかっちゃうんだ。嗅覚って侮れません⋯⋯


 なかなか良い場所が見つからなくて困ったんだけど、滝の裏側に洞窟を発見しました。

 隠れ家的な雰囲気で良いなと思う。ビビも気に入ったみたいだけど、住みずらいに決まってるよね。

 暗い、多湿、騒音、それに蝙蝠が出入りしているみたい⋯⋯流石にここには住めないなと思ったよ。


「良い場所なんだがなぁ⋯⋯」


「ここは遊び場になりそうだよね」


 さらに洞窟の奥へ入って行くと、光が射し込んでいる場所を発見する。でも普通には通れなそうだ。


「私が向こう側を見てこようか?」


 最近ビビが使えるようなった霧化をするのかな? でもそれだと僕が見れないんだよね。


「多分大丈夫。直ぐに通れるようにするね」


 狭くて通れなさそうにみえるけど、これくらいなら何とかなりそうな気がするよ。


 隙間に手を差し込んで、スライドドアのように隙間を拡げた。これは力技ではなくて、ノーム様と契約したから出来るようになったんだ。


 限度はあるけど、今なら岩も地面も自由に動かせるんだよ。


「アーク⋯⋯いつの間にそんな事が出来るようになったんだ?」


「ビビが寝ている間かな?」


「私がサボっていたみたいに聞こえる!」


「ノーム様と契約した時、ビビ寝てたからね。あの時はビビ進化してたから、僕の膝を枕にして寝てたんだよ?」


「全然覚えてない⋯⋯私はあと何回進化するんだろう⋯⋯」


 それは僕にもわからない。今度吸血鬼に関する本を探してみよう。


 洞窟の中から、光に向かって階段を作った。手摺りもつけて、ちょっと本格的な石造りの階段に見える。


「ん? 花の良い香りがするな」


「ちょっと待って。僕も行くよ」


 ビビを追いかけて階段を駆け上がると、一面が綺麗なお花畑になっていた。


 黄色い花、青い花、白い花、赤い花。


 花の名前はわからないけど、とっても良い所だね。


「アーク! ここにしよう! 私達の家!」


「うん。水辺も近いし良さそう!」


 ここは多分滝の上になるんだろうね。山の隙間から水が流れて来てるんだよ。

 ここなら狼にも見つからないし、家を建てたら畑も作れそうだ。


 ──バサバサ⋯⋯


 僕とビビの頭の上を、大きな影が横切った。


 ⋯⋯また何か問題かな? 僕は溜め息を吐きながら、そっと音のする方へ振り返る。






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