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デタラメな冒険譚が僕にくれたもの〜憧れを追いかける少年〜  作者: まあ(ºωº э)З
第七章 いきなり始まるスローライフ?
139/214

お金の問題なんだよ! 炎神の化身

 遅れてすいません(´;ω;`)

 仕事で疲れて寝てしまい⋯⋯ヽ('ㅅ' ;ヽ三 ノ; 'ㅅ')ノ


 今日もよろしくお願いいたしますm(*_ _)m






 いつの間にか髪の毛が銀色へ変わっていた。感情の昂りで、自然とSスタンダード状態になっていたのかもしれない。


 体の内を蝕むような業火⋯⋯黒い感情という名の炎の塊⋯⋯それがメラメラと燃え上がり、不安や焦りが消えていく。


 このまま⋯⋯この黒い感情に身を任せるのも悪くないかな。


 やり場の無い想いを呑み込んで、炎は瞬く間に大きくなっていく。

 どうしようもなく許せないんだよ⋯⋯何でこんな気持ちにならなきゃいけないの。


 父様と母様の物語に、悲しいお話なんて一つも無いんだ⋯⋯


『イフリート』


『ぐぅ⋯⋯』


『大丈夫?』


『ああ、時間の流れが違うせいかもしれん⋯⋯いくぞ』


 魂のパスから、僕の右手に力が流れ込んできた。手の平を上に向けると、極小の火の玉が形成される。


 もっと⋯⋯もっとだ。


 火球は周囲に波動を放ちながら大きくなる。ゆっくりとした心臓の鼓動のように、規則正しいリズムで輝きを放った。

 それは波紋のように広がって、空間がねじれているようにすら見える。まだ⋯⋯こんなんじゃ足りないよ。


 さっきまで五月蝿かった鎌の人は、この火球を見て表情を引き攣らせていた。これが何か理解出来てるのかな?


 火球は拳よりも大きくなり、さらに膨張を続けている。


「おい! そ、そんなもん落としたら、この空間がぶっ壊れちまうだろ!」


 “この空間”⋯⋯ね。やっぱり作られた世界なんだ。


「⋯⋯ビビを探すのに、お前は邪魔だ」


「まだそんな事を⋯⋯」


 ビビは大事な存在なんだよ⋯⋯不器用でとっても優しい人なんだよ。ビビが何をしたって言うの?


 どうして思い通りにならないんだ⋯⋯僕の⋯⋯何がいけなかったんだ⋯⋯


「返せよ⋯⋯ビビを返せ」


 暗い感情が湧き上がる。赤黒い稲妻が迸り、激しい風が撒き散らされた。

 火球が一気に膨れ上がり、辺りの森に火がついた。


 驚愕して目を見開く鎌の人が、ジリジリと後退り始めるのが見える。


 逃げるの? 今更? 話し合いもせずに、二度も攻撃をしてきたのに⋯⋯


「⋯⋯逃げられるわけがない」


 大きくなっていた火球が収縮し始め、飴玉サイズの球体に変化した。それを口の中に放り込み、喉の奥へ流し込む。


「の、呑み込んだ!?」


 これは自然の力を操る精霊の力と、何でも吸収しようとする“人間”の力の合わせ技だ。僕以外にこれが出来る者はいないとイフリートは言っていた。


「タイプ“イフリート”。“炎神の化身”」


 体が内側から変化を初めていった。髪の毛に赤が混じり、左半身がプレートメイルに包まれる。

 赤と金で彩られた豪華な鎧と、王族にのみ許されるようなマントが背中でたなびいていた。


(わたし)に焼き滅ぼせぬ物はない。灰すら残らんと知れ」


 イフリートと僕の精神が、溶け合うように混ざり合う。魔族との戦いですら使わなかった奥の手だけど、これを使わせたのはお前の責任だ。


 周囲が灼熱の地獄へ変わる。見渡す限りの草木が燃えて、大地からマグマの柱が噴き上がった。



三人称視点



 アークを怒らせるのが仕事だった。悪役を演じるのは楽しかったが、これは完全に想定外である。

 彼女の名前はミザネ。首狩り一号機と名乗ったのは、ただのノリと勢いだった。


(不味い不味い⋯⋯体内温度が限界だ! なんだよあの化け物! 聞いてないよ!)


 バックステップで距離を置くミザネ。しかし、ちょっとやそっと離れたくらいじゃ意味が無い。

 ミザネは戦闘用に作られたロボットだ。その性能は、成体となったドラゴンすらも易々と蹂躙する事が出来る。


(嫌だ〜! 壊されたくない! 逃げなきゃ逃げなきゃー! やっべえー! どうすっかなー)


 考えても答えなんか出ない。そもそも衛星砲を使ったのが間違いだった⋯⋯最初は威力を落として使う予定だったが、雰囲気に流されてレベルMAXに⋯⋯


 そんな阿呆な自分を殴りたいと思いつつ、アークから兎に角離れようと一目散に逃げ出した。


(オーバーヒート寸前だ⋯⋯きっと追われるだろうが、考える時間だけでも稼がないと)


 アークとの距離がグングン開いていく。ミザネは耐熱エネルギー防壁を展開し、高速冷却カプセルを呑み込んだ。


(何故動かないんだ?)


 ミザネが軽く振り返ると、アークは空を睨んでいた。プレートメイルに包まれた左手を空へ向けると、青白い槍が真っ直ぐ飛び出した。


 その光景を見ていたミザネが息を呑む⋯⋯そして数秒後には絶望した。


(人工衛星が破壊された!? どんだけ金かかってると思ってんだ!! チクショー!)


 ミザネは人工衛星の座標情報を受信していたのだ。それが無くなったって事は、破壊されたと考える方が正しい。


(本来炎をちょっと浴びたくらいで破壊されるような物では無いんだ。しかも地上からの攻撃で落ちるなんて⋯⋯意味がわからん)


 アークには人工衛星が見えていた。イフリートと融合して、能力が有り得ない程に跳ね上がっていたのである。

 ビビを攻撃した人工衛星を、アークが残しておくわけはなかったのだ。


 機械の体だと知っていても、ミザネは体が震えるのを感じた。


(ちょっと待って⋯⋯待ってよ!)


 アークの左手から、続いて二射、三射と青白い槍が放たれる。その光景に愕然として、数秒後にまた人工衛星の反応が途切れて無くなった。


(クソクソクソー!! それ作るのどれだけ大変だと思ってんだ!?)


「何処へ行く気?」


 ミザネは近くからアークの声が聞こえ、急いで背後を振り返る。そこには大地に空いた大穴があり、アークがその上で浮遊していた。


 これ⋯⋯え? 衛星砲の着弾地点!?


「な、何で? あれだけ距離を離してた筈なのに!」


「その“距離”を焼いただけだ。お前は(わたし)からこれ以上離れる事は出来ない。離れる“距離”が存在しない」


「⋯⋯意味が⋯⋯」


 意味がわからない。ミザネは確かに走って逃げたのだ。それがいつの間にかスタート地点へ戻されていた。


(なんてデタラメな⋯⋯有り得ない!)


「試してみたらどうだ?」


 アークは冷たい視線をミザネに向けた。精神にイフリートが混ざり合い、普段のアークより明らかに冷酷になっている。


「く⋯⋯」


 ミザネは走り出した。グングンと速度を上げているのが体感でわかったが、背後にいるアークとの距離が開く事は無かった。


(なんだこれ!? どうなってるのよ!? それに、耐熱エネルギー防壁があるのに温度が上がってる!? これ以上は⋯⋯)


 ミザネは足を止めて振り返る。


「お願い! 悪かったと思ってるから逃がして!」


「⋯⋯」


 その言葉を聞いて、融合したアークの部分が激しく揺さぶられた。


(⋯⋯何でそんな⋯⋯僕は何がしたいの? この人をいたぶりたかった? 違う⋯⋯ビビに、ビビに会いたいだけなんだよ⋯⋯)


 アークの目から、次々と涙が溢れ出した。怒りに呑み込まれていた悲しみが、不意に表へ出てきたようだ。


(ビビ⋯⋯戻ってきてよ⋯⋯ビビ⋯⋯)


『アーク! 心を乱し過ぎだ! 融合が崩れるぞ!?』


『だって⋯⋯ビビがいないんだよ。イフリン⋯⋯』


『落ち着けアーク! 下手をすると死んでしまうぞ!?』


 心のバランスが崩れた事で、力が不安定に暴走を始める。アークの輪郭がボヤけ、体の崩壊が始まった。



side ビビ



 悲しい⋯⋯悲しい⋯⋯悲しい⋯⋯寂しい⋯⋯


 そんな感情が、私の心へ流れ込んでくる。


 私はなんだ? 何をしているんだ?


 上下左右もわからない。手も足も無ければ、体も存在しないようだ⋯⋯


 初めての感覚に、精神すらもバラバラになりそうな気がする。そんな私を繋ぎ止めているのは、流れ込んでくる悲しみと寂しさだった。


 これは何処から流れ込んできてるんだ? 何も見えない⋯⋯聞こえない⋯⋯


 どうして私はこうなった? 私はなんだというのだろうか?


 ビビ⋯⋯


 そんな声が聞こえた気がする。


 そうだ⋯⋯私はビビだ⋯⋯大切な友からもらった名前⋯⋯この名前には、こうなりたいという意味を込めてつけたんだ。

 私は人間になりたい⋯⋯この冷たい体では、○○○を暖めてやる事も出来ない。


 ○○○ってなんだ? 私の大事な存在だった気がする。


 悲しい⋯⋯悲しい⋯⋯悲しい⋯⋯会いたい⋯⋯


 青い光が見えたんだ。私には目が無いというのにな⋯⋯


 その光はどんどん強くなり、一つの宝石となった。


 この宝石は⋯⋯知っているな⋯⋯私と○○○との絆だ。


『どこ? ビビ⋯⋯どこにいるの?』


 私を探し求める声が聞こえた。耳も無いというのに⋯⋯不思議な感覚だな⋯⋯


 青い宝石はリングとなり、魔法陣が輝き始める。


 そうだ。これは私が○○○から貰った大切なリングだ。テイムされた時に、契約の証として突然指に巻きついた。


 私は○○○が大好きになったんだ。家族のようだと言ってもらえた。私が欲しい幸せをいつも与えてくれるんだ。


 何故名前が思い出せない⋯⋯私はその者を愛している。


『ビビ⋯⋯会いたいよ⋯⋯』


 ああ、私も会いたいよ⋯⋯今直ぐ会って抱きしめてやりたい。


 私は何をしているんだ?


 頭の中に映像が飛び込んでくる。動きを止めた狐フードの女と、いつもと違う○○○の姿だった。


『ビビ』


 どうしてそんなに辛そうな顔をしている? 何故?


 私は激痛を感じた。それと同時に、こうなる前の事を思い出す。


 そうだった⋯⋯空に違和感を覚え、見ると光のような何かが降ってきた。それをアークに伝える暇も無く、咄嗟に蹴り飛ばしたんだった。


 私はビビ、彼はアークだ。思い出す事が出来た。


 アークの輪郭が微かにボヤける⋯⋯どうしたんだ? 力が暴走しかけているのか?


 このままじゃいけない。アークを死なせてなるものか!


 アークは私に居場所をくれた。嬉しい言葉も沢山くれた。温もりをくれた。渇きを癒してくれた。笑顔をくれた。一緒に目指す夢を分けてくれた。ずっと一緒にいてくれると言ってくれた。


 人間と同じように接してくれたんだ!


 全てを思い出した⋯⋯呆けている場合か! なんだ私のこの状態は!?


 全体が(きり)のように(かす)んでいる。ここまで体を破壊された事は無い⋯⋯でも何がどうなっているのか理解出来た。


 この契約の指輪が無かったら⋯⋯私は消えていただろうな。


 体を一気に再生する。魔力は十分に満たされている。


「アーク!!」


「ッ!!」


 アークが私に気がついた。


「う、嘘だろ⋯⋯再生したのか!」


「お前はうるさい! 死ね!」


 血晶魔法でハンマーを作り、女の頭に叩きつける。


 手応えは変だったが、完全にぶっ殺せた筈だ。


「ビビ⋯⋯ビビー!」


「アーク、待たせたな」


「ビビが消えちゃって⋯⋯わけがわからなくなっちゃって⋯⋯」


 アークの頭が銀髪へと戻ったようだ。良かった⋯⋯無事で良かった。


 抱き着いてきたアークを受け止めて、私はアークの頭を撫でる。


 試練だか試験だかわからないが、あの神獣には一発殴らせてもらおうか⋯⋯





 ビビー(><)

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