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デタラメな冒険譚が僕にくれたもの〜憧れを追いかける少年〜  作者: まあ(ºωº э)З
第七章 いきなり始まるスローライフ?
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ビビの笑顔






 夕焼けに染まる空が、フードの影を色濃くしている⋯⋯目から下しか見てないけど、血を吸う時のビビのような牙が見えた。


 あの人は何で攻撃してきたのかな? 僕達ちだったから良かったけど、普通の一般人なら死んでるよ⋯⋯


 ビビが僕の前に一歩出て、赤いレイピアを光らせる。そう言えば僕は丸腰でした。収納から何か出しておこう。


「ありがとうビビ」


「アークには指一本触れさせんぞ」


 鎌の人の目的は何? 父様のナイフを取り出して、逆手に持って構える。少し腰を落として、何をされても対応出来るようにした。


「くひひ⋯⋯」


 不気味な笑いを浮かべながら、どんどん距離を詰めてくる。お互いが安全だと想定するギリギリのラインで、鎌を持つ人が足を止めた。


「貴女は何ですか? 黒狐様と関係が?」


「勿論あるよぉ〜。事情は喋れはしないけど〜。我の名は“首狩り一号機”。この世の悪を倒すため! 人々の笑顔を守るため! 愛とか正義とか良くわからないけど、そんな事を叫ぶ人を狩るのが役目なんだ」


 大袈裟な身振り手振りで語ったけど、結局悪い人なんじゃん。


「と言うのも初めてなんだ。生まれて二時間のベイビーだから」


「え?」


 ベイビー? この人は僕の年下なの?


「さあ戦おう!」


「え? ちょっと待って! 僕達に戦う理由なんて無いよね?」


 鎌を投げられたけど、だからと言って戦う必要は無いと思ったんだ。一応話も出来るみたいだし、警戒は解かないけど距離は保てている。


「アーク⋯⋯あまり気を許すな」


「うん、わかってる」


 まずはどうしたらいいんだろう。黒狐様に、僕は何を試されているのかな?


「あーあーやだねぇ。戦う理由? つまんねーの。かったりーよそんなの。阿呆なの馬鹿なの死ねばいいのに。そんなのはどうでもいいんだよ綺麗子ちゃんが! ⋯⋯そうだな。理由が欲しいなら作ってやるさ!! ひへぇへぇ⋯⋯けひひひ」


 さっきよりも不気味な笑い方を見て、頭から冷水を被った気分になる。

 狐フードの人が、手を握って親指を地面にくるりと向けた。


 魔力の反応は無い⋯⋯でも危機感知スキルが明らかに異常を告げている。いったい何がどうなって⋯⋯


「アーク!!」


 ──ドン⋯⋯


 ビビの叫ぶ声が聞こえて、それと同時に僕は蹴り飛ばされた。

 何故僕は蹴られたのか⋯⋯ビビと視線が交差した瞬間、優しい笑顔を見せられる。


 どうして? 何が起こって──


 ──カッ!


 ビビの体が、白い閃光に包まれた。目を開けている事も出来ない程の光が、天から雲を穿いて地上へ突き刺さった。


 ビビはこれに気がついたんだ。だから僕を蹴り飛ばして⋯⋯


 激しい熱風が身を焼いた。炎魔法に高い耐性のある僕が、痛いと感じる程の熱だった。


 これはまずい!


「ビビ⋯⋯ビビー!!!」


 全ての光が収まって、溶けた地面から白煙が立ち昇る。何かの余波と思われる青い稲妻が、暴れ狂うように地面を這い回った。


「うぅ⋯⋯び、ビビ!」


 そこには大きな穴が開いている。こんな強い威力のある攻撃に、僕は寸前まで気がつく事が出来なかった。


 確かに魔力の反応は無かったよ!? どうしてこんな!!


「ビビ⋯⋯どこ? ビビー!」


 ビビの姿が無い⋯⋯どこに行ったの? ビビがいない⋯⋯気配も無い⋯⋯どうして? ビビ⋯⋯


「戦う理由を作ってやった! 褒めて褒めて〜! ひっひっひっひ⋯⋯ひひゃひゃひゃひゃ」


 それは雑音でしか無かった。全ての意識を総動員して、ビビの姿を探し回る。


 いない⋯⋯いないいないいない⋯⋯ビビ⋯⋯どこ? どこなの?


「なあ? いつまでそうしてるんだ? おーい!」


 ビビがいないんだ⋯⋯ずっと一緒にいてくれたビビがいないんだ⋯⋯


 どうして? 何でいないの?


 煮えたぎるマグマとなった地面に手を突き入れる。きっとこの中にビビはいる。


 かき分けてかき分けて⋯⋯どこかにいる筈なんだから。


「死んだんだよ! ほら、最高の理由だろ? ひひゃひゃひゃひゃ」


 意味がわからないよ⋯⋯ビビ⋯⋯どこにいるの? 見つからない!



「なんだ? 泣いてんのか? 現実見ろよ。死んだんだよそいつは」


「⋯⋯」


 死ぬわけ無いよ。ビビだもん⋯⋯やっと、やっと心を開いてきてくれてたんだ。

 ビビはいなくなったりしないんだ⋯⋯これから一緒に夕飯を食べるんだから。


「ビビ? ねえビビ⋯⋯ビビ⋯⋯」


「くだらない⋯⋯試すもなにも腑抜けだこりゃ」


「黙って⋯⋯」


 雑音がうるさい⋯⋯ビビが見つからないよ?


 ビビ⋯⋯温泉で言ってたよね? 行きたい所があるんでしょ? ビビの行きたい所、僕も行ってみたい。ビビがいなきゃ、その場所がわからないよ⋯⋯


「あーもういいよ⋯⋯終わり終わり〜」


 狐フードの人が、僕の背中目掛けて大鎌を投げてくる。本当に、今は放っておいて欲しい⋯⋯


 何で? 何でなんでナンデ? なんでビビはいないの?


 心の奥底から、黒い感情が溢れてくる。黙ってって言ったのに⋯⋯


「邪魔をするなよ」


 どこから出たのかわからない声だった。それはとても平坦で、不吉なものを孕んでいた。

 自分の感情がコントロール出来ない⋯⋯どうしてこんなに苛立つんだ?


 ビビが⋯⋯いないんだ⋯⋯


 飛んできた大鎌に手を伸ばし、回転に合わせて指で止める。勢いを止められた大鎌は、青い炎に巻かれて溶けていく。


「止めたぁ!? な⋯⋯ななななんだよ急に!? 大事な鎌が!!」


「大事な⋯⋯鎌?」


 何を取り乱しているんだ⋯⋯鎌なんてどうでもいい⋯⋯今僕は、この人を許せそうもない⋯⋯


『イフリート』


『アーク? どうした?』


『“使う”よ?』


『⋯⋯わかった』







 次話を⋯⋯次話を待つのじゃ(ृ ु ´灬`)ु

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― 新着の感想 ―
[一言] バーサークアークですね。
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