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デタラメな冒険譚が僕にくれたもの〜憧れを追いかける少年〜  作者: まあ(ºωº э)З
第七章 いきなり始まるスローライフ?
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逃亡と森探し






 狼の数は〜⋯⋯うん、十匹だね。


 脅威度はどれくらいかな? 魔力はあまり感じないみたいだけど。


「アーク⋯⋯何かおかしくないか?」


 ビビが狼を見ながら首を傾げる。


 おかしいってどういう事? 普通の狼じゃ⋯⋯


 ──ドドドドドド!!!


 地面が揺れ、その振動が嫌でも足から伝わってきた。


 何これ? どういう事?


 その振動はどんどん大きくなり、狼もどんどん大きく⋯⋯


「え? あれ? 滅茶苦茶デカい!! 家よりデッカい!!」


「逃げるぞアーク!」


 僕は咄嗟に背中のドラシーへ手を伸ばした。でもそこには今何も無い。


 そうだ! ドラシーもベヒモスもノーム様に預けたんだった!


「アーク! 早く!」


 ビビに二の腕を掴まれる。


「う、うん!」


 急いで僕達は逃げ出した。でもどんどん音が大きくなるし、草原に隠れる場所はどこにも無い。焦って対策を考えていたら、ビビが僕の後ろへ回った。


 僕を背中から捕まえたビビが、一気に空へ舞い上がる。それと同時に、僕達のいた場所が狼の群れに呑み込まれた。


「ふわぁ〜間一髪。ビビ飛ぶの速くなったね」


「私も進化しているんだ⋯⋯それより」


 狼は僕達を見上げている。飛んで行ったら着いて来ちゃうかな? それに様子が変かも⋯⋯


「尻尾振ってるね」


(じゃ)れられても困るってもんだ⋯⋯」


 身の危険を感じるサイズ差だよ⋯⋯戯れられたらどうなっちゃうんだろう。


「さて、どうするアーク」


「匂いは届いてないと思うんだ⋯⋯だから」


 僕は更に上空にある雲を指さした。雲の中を飛べば、見失って追って来たり出来ないよね。それを見たビビは、説明をしなくても理解してくれたみたい。


「なるほどな。そうしよう」


「うん。じゃあ僕も自分で飛ぶね」


「いや! いい! その必要は無い!」


 ビビは急いで服のボタンを数箇所外すと、僕を抱え直して大きくなった。

 髪の毛も解き、綺麗な銀髪が風に(なび)く。


「どっちへ行こうか」


「ビビの好きな方で良いよ」


「わんコロには悪いが、逃げさせてもらう事にしよう」


 ちょっと危ないだろうしね。でも背中に乗ってみたかったな⋯⋯一匹だったら遊べたかもしれないけどね。





 雲の中から時々地上を見ながら、休まず二時間飛びました。僕はビビの腕の中で、干された布団のようになっている。


「お、森を見つけたぞ」


「良かった。せめて木が欲しかったんだよね。家を土だけで作らなきゃいけなくなるところだった」


「アークとの家なら何でも良い⋯⋯土に穴を掘っただけの家でも私は良いんだ」


 ビビが僕を抱え直してくれる。もしかしてビビは土が好き? 家を建てたら地下室も作ろうかな。


 あ、


「針葉樹林だ。家作りやすいかも」


「そのようだな。家を作るのに良さそう」


 ビビの赤黒い羽根が小さくなると、ゆっくり高度が落ち始めた。


「ビビはどういう風に飛んでるの?」


 羽根を動かす素振りをしなくても、高度を自由に変えるんだよね。


「どうと言われてもな⋯⋯生まれつきだし」


 謎は謎のままでした。みすてりあすぅ⋯⋯


 因みに精霊が飛ぶ方法は、体の中のツブツブをぶわぁっとさせると飛べるんだ。簡単でしょ?



 地面へおりて、大きな針葉樹を見上げた。平均的に高さ三十メートルはあるね。木の種類まではわからないけど、これならしっかりとした家を作れそうだよ。


「ちょっと太くないか?」


「確かにね。少し小さいのにしようか」


「そうだな。目安は?」


「ギリギリ抱ける太さのやつかな?」


「じゃあ私が切るから、アークが木を選んでくれ」


 役割分担が終わり、丁度良い太さの針葉樹を探す。僕とビビは一日中フル稼働して、五十五本もの針葉樹を確保した。


 枝も綺麗に落とし、真っ直ぐ並べて段積みする。これだけあると迫力あるよ。


「ビビ。ログハウスの建材に生木を使って大丈夫なのかな?」


「わからん。一応アークの水魔法で乾燥させると良い」


 作りたい家のイメージはあっても、それがどのように作られているのかわからない。


 僕もビビも大工じゃないからね⋯⋯詳しくわからないのは仕方ない。こういう時は感でやるしかないんだよね。

 どうせなら良い家建てたいな。家建て終わったら、次の指示が書かれた紙が出てきたりする?


「建てる場所が決まったら、その時にまた考えよう」


 ──キュルルル⋯⋯


 お腹が空いたと思っていたら、お腹自(みずか)ら訴え出てきました。ごめんね⋯⋯和菓子食べてっきりだったよ。


「夕飯どうする? 何か探す?」


 とは言ったものの、何処に何があるのかわからない。ビビも同じ事を考えたらしく、軽く首を横に振った。


「ある物で済まそう。そうだな⋯⋯焼き鳥とかが良いんじゃないか? 深い意味は無い」


「ソウデスネー」


 ビビは焼き鳥だね。あ⋯⋯焼き鳥もうあまりストックが無いや⋯⋯今回の分はあるかな。


「どうかした?」


「焼き鳥の在庫が無くなるみたい」


「何だと! 由々しき事態だ⋯⋯食べる物が無いと言うと⋯⋯」


「無くなるのは焼き鳥だけね? 食べ物は沢山あるから大丈夫だよ?」


 好物が無くなるのは寂しいよね。鳥を見つけたら捕まえなくちゃ──?


 背筋に悪寒が、


 ──ボバババババババ!!


「「ッ!!!」」


 高速で何か重たい物が迫ってくる。いきなりの事に驚きながら、僕とビビは真上にジャンプした。


 ──ボワァァア!


 それは漆黒の大鎌だった。周囲の木を物ともせずに、僕達の真下を通過する。


 何!? いったい誰が?


 地面に着地すると、大鎌の通った場所に生えていた木が次々と倒れた。無闇な自然破壊は駄目なんだよ? あまり人の事言えないけどさ⋯⋯


 大鎌は大きな弧を描き、ある場所へと戻っていった。


「きひ。きひひ⋯⋯残念でーす!!」


 不気味な女の人の声が聞こえてくる。戻ってきた大鎌を、流れるような動作でキャッチをする。それを両手でクルクル回し、そのままダンスをするかのように振り回した。


 全身真っ黒なローブを羽織り、狐のフードを目深に被っている。そしてその人の背中には、大きく『1』の文字が見えたんだ。







 謎が謎を呼ぶ⋯⋯黒狐様の試練が始まりました(´>∀<`)

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― 新着の感想 ―
[一言] アークとビビの同時強化訓練みたいな感じで良いですね。 これが終わればビビが魔物という枠から抜け出せそうな感じでもあり、面白いです
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