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デタラメな冒険譚が僕にくれたもの〜憧れを追いかける少年〜  作者: まあ(ºωº э)З
第七章 いきなり始まるスローライフ?
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神獣の試練は圧縮スローライフ?

 六章、精霊界の大移動ですが、前後編と分けさせていただきました。

 これから七章が始まり、八章で後編or






『今わかったよ⋯⋯僕は⋯⋯神様と対面しているんだ』


 そんな考えが頭の中に浮かんで、妙に納得出来たんだよね⋯⋯


 黒狐(くろぎつね)様は絶対に強い⋯⋯って言うか異次元の存在だよ。イフリンもとっても凄いけど、黒狐様には僕じゃ測れない強さがある。

 上手く言えないけど、イフリン、ノーム様、ムーディスさんの力を借りたとしても、今の僕でどこまで戦えるのか⋯⋯


「場所を変えるよアーク。ここじゃ何も出来ないからね」


 圧倒的な存在感だった⋯⋯言葉の一つ一つに重圧を感じる。でも、僕にはその正体がわからないんだ。


 あれは魔力なの? それとも気力?


(しおり)、頼んだよ」


「はい。黒狐様」


 栞さんが指を地面に向けると、その先端から細いレーザーのようなものが照射された。レーザーは石の床をガリガリと削り、二本、三本と増えていく。

 両手の指を十本全部使って、あっという間に幾何学模様が描かれた。


 僕には魔法陣に描かれている意味はわからないけど、話の流れからすれば移動する何かの魔術? だと思う。


 魔法陣は直ぐに完成した。かなり複雑な形だと思うんだけど、完成まで七秒くらいだったと思う。


 栞さんって凄いんだね。なんで指全部をバラバラに動かして、あんなに綺麗な模様が描けるんだろう?

 僕も並列思考を使えば、栞さんのように出来るのかな? それには練習が必要だね。


 次に栞さんが上を向くと、その口の中から水筒のような物が出てきた。


 あまりの事に驚いちゃったよ!? 黒狐様は全く気にしてないから、何度か見てるのかもしれないけど⋯⋯


 栞さんは、その水筒の中身を魔法陣へ流し込む。緑色のキラキラした液体が、削られた窪みの中へ満たされた。


「これは転移の魔法陣だ。使い捨てだけどね。順番に入りなさい」


 黒狐様が魔法陣を踏んで、そこへ魔力を流し始める。魔法陣は明るい輝きを放ち、真上に向かって光の帯が伸びていく。それが凄く綺麗だと思ったんだ。


 栞さんが水筒を口の中へ戻すと、魔法陣へ飛び込んで姿を消した。


「さ、早く行って」


「わかり⋯⋯ました」


 でも動けないんだ⋯⋯まだ黒狐様の圧力は消えていない。それでも立ち上がらなくちゃ⋯⋯こ、これくらいで挫けてたら、世界一の冒険者になんかなれないよ!


「うぐぅ⋯⋯ああ!」


 何とか立ち上がった僕を見て、黒狐様はニヤリと笑った。ビビも冷や汗を流しながら、僕より先に立ち上がっていたよ。


 一歩一歩魔法陣へ近づいて行く。隣へ並んだビビの手を取り、僕らは一緒に飛び込んだ。


 僕はどんな時でも諦めないからね!





 って気合いを入れてたんだけど、草原の只中に転移したみたいだよ。周りには背の低い草しかなくて、なだらかな丘になっているんだ。

 室内からいきなり外へ出たからか、耳の奥に違和感がある。


 さっきまでの重圧が嘘のように無くなって、実に晴れ晴れとした気分になった。

 吹き抜ける風が草を揺らし、ポカポカした陽気が春を思わせる。良い場所だね。


「アーク」


「ビビ」


「ここは?」


 それは僕にもわからない。先に入った栞さんは何処へ行ったのかな?


「! ⋯⋯あぁ⋯⋯これは⋯⋯」


 わかっちゃったよ⋯⋯あぅぅ⋯⋯


「どうした? 何か感じたか?」


 この感覚は良く覚えているよ⋯⋯最近体験したばかりだからね。


「ここ、イフリンと訓練した空間に似てるんだ。体じゃなくて、精神的な負荷がかかっているのを感じるよ」


「そうなのか?」


 ビビにはまだわからないか⋯⋯不思議そうな顔をしながら、僕を覗き込んでくる。その顔をじっと見ていたら、ハッとした顔になって視線を逸らした。


 実感するのは数日ここで過ごしてからだね。この特殊な場所では、精神的な疲れが慢性化するんだ⋯⋯それが結構後で効いてくるんだよね⋯⋯


 そんな時、空から一枚の紙が降ってきたんだ。


 何だろうと思って、僕とビビは空中で揺れる紙を同時にキャッチする。紙には短く文字が書いてあって、その内容を覗き込んだ。


【家を作れ】


「え? これだけ?」


「家だと?」


 わけのわからない場所へ来たかと思えば、いきなりここで生活をしろって言うの? もし事前に知っていたら、ケーキとか沢山買い込んでいたのにな。ついでに家具とかクマさんとかもね。


 狼の遠吠えが聞こえ、直ぐに魔力拡大感知を使う。まだ遠い場所にいるけど、残念ながらこっちに気が付いていそうだね。


 草原ばっかりだけど、ここはどんな場所なんだろう?


 澄み渡る青空に、どこまでも続く緑のフィールド。どっちに行けば何があるんだろう⋯⋯ちょっと楽しみになってきたね。


「アークと⋯⋯二人きりで⋯⋯生活⋯⋯ど、どうしよう⋯⋯わ、私⋯⋯アークにちゃんと告白出来るかな? 好きだと⋯⋯言えるだろうか⋯⋯チャンスだと思うんだけど⋯⋯」


「???」


 ビビが小さな声で何かを呟いた。反対側を向きながら、両手で顔を覆っている。


「どうしたのビビ。体調悪い?」


「大丈夫。大丈夫だわ!」


「だわ? 本当に?」


「だ、大丈夫!」


「そ、そう?」


 おかしなビビ。それにしても⋯⋯家かぁ。作った事無いなぁ。道具も無いし、難しいものは作れないかもしれないよ。


「体調悪くなったら直ぐに言ってね? おんぶするから」


「え? そ、そう⋯⋯体調不良にならない体が怨めしい⋯⋯」


「ん?」


「何でも無い⋯⋯」


 どれくらいの時間ここで生活しなきゃいけないかわからない状況で、最初からつまづく訳にはいかないね。


 こちらへ走って来る狼の群れが、弓スキルの“ディスタントビュー”で確認出来た。



 僕とビビは黒狐様に試されているんだ⋯⋯力を見たいと言われたけど、戦うとは言われていなかったね。勝手に僕が戦うと勘違いしてたみたい。


「ビビ。一緒に頑張ろうね」


「す、末永く宜しく⋯⋯」


「え?」










 甘々展開になるのだろうか⋯⋯?(ºωº э)З

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[一言] ビビの勘違いムーぶw
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