表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
134/214

神獣黒狐様とロボ子ちゃん






 竹林から伸びる細長い影を、何となく踏まないように歩いていく。ずっと下を見てたから、リーゼちゃんの背中に突っ込んじゃった。ごめんね?


 リーゼちゃんに案内された場所には、瓦屋根の大きい建物があった。入口は横にスライドさせるタイプの扉で、開けるとガラガラと音が鳴る。


「ここにはとても偉い方がいるのよ」


「偉い方?」


「そう。アークちゃんなら大丈夫だと思うけど、呉々も粗相はしないようにね」


「わかりました。でも緊張しちゃいます⋯⋯」


 またこういうパターンなの? 抜き打ちの謁見とか、そういうの心臓に悪いんだけど⋯⋯泣きそう。

 偉い方って、イフリンよりも偉いって事? 人間の王様よりも、イフリンの方が権力あると思うんだ。そんなイフリンよりも偉いんじゃ、父様や母様に近い人かもしれない⋯⋯ゴクリ。


 中に入ると、大きな木彫りの熊が御出迎えしてくれました。温泉の場所と同じで、靴を脱いで上がるみたいだね。

 リーゼちゃんの後を歩きながら、素朴な造りの建物に安らぎを感じる。

 縁側からは庭が一望出来て、地面には渦潮のような模様が描かれていた。


 何だかわからないけど凄い⋯⋯小さな砂利石? それで水の流れのように描いてるんだね。


 華やかな香りのする方を見れば、キンモクセイの花が咲いていた。


「こっちよアークちゃん」


「はい、すいません」


「ふふ。綺麗よね」


 いけない。目移りするのは後にしよう。リーゼちゃんに笑われちゃったよ。


 長い長い縁側を進み、リーゼちゃんがある場所で立ち止まり膝を着く。


「御使い様。アークを連れて参りました」


「入りなさい」


 薄い紙の扉から、男の人の声が返ってくる。それまで気配が感じれなかった事に、僕はかなり動揺してしまった。


 とてつもなく変な気配⋯⋯これは生物なの?


 ビビもびっくりしているみたいだね⋯⋯異質としか言いようがないよ。


「失礼します」


「し、失礼します」

「⋯⋯ます」


 リーゼちゃんが紙の扉をスライドさせると、若草色の畳が見えた。その部屋の奥には、白装束を着た男性が座布団の上で正座をしている。


 黒い髪に黒い狐の耳。一見獣人さんに見えるけど、中身は見た目とは違うものなのかもしれない⋯⋯そんな風に思った。


 部屋の中はとても広くて、掛け軸に刀が飾られている。座布団が三枚横並びにされていて、リーゼちゃんが右、ビビが左、僕が真ん中に座る事になったんだ。


「君がアークだね」


「はい。ドラグスのBランク冒険者をやらせていただいております」


「そうかい。こっちがビビかな?」


「はい」


「ふむ。悪くないな⋯⋯私は黒狐(くろぎつね)だ。かつては神獣と呼ばれていたが、今はこの通り隠居生活をさせてもらっている。宜しく頼むよ」


 朗らかに笑う黒狐様。黒狐って名前なのかな? 神獣ってどれくらい凄いのかわからないな。イフリンと父様の間くらいなのかな?


「本当に面白い子だね。イフリートが気にかける人間か⋯⋯今は半分が精霊の体となり、日々成長を続けていると」


 僕が面白い? イフリンとは仲良くなったよね。成長はもっともっとしたいよ。


「失礼します」


「入りたまえ」


 部屋に一人の女の人が入ってきた。十六歳くらいに見えるんだけど、この人は気配が薄い? 良くわからないです⋯⋯


「彼女はヒューマノイドなんだ」


「ヒューマノイド?」


「ああ、知らないよね。ロボットはわかるかい?」


「すいません。わかりません」


「まあそうか⋯⋯ロボットじゃわからないよな。人の手で作られた生物だと思ってくれたらいいよ」


 そのヒューマノイドさんが、お菓子とお茶を持ってきてくれたらしい。

 生き物を人の手で作るって凄いよね。それって神様みたいだ⋯⋯僕には想像もつかないや。赤ちゃんとは違うのかな?


 黒く長い髪の毛に、赤い袴姿が良く似合っていた。音もなく歩き、僕達の前にお茶菓子を置いていく。


「食べてから話を聞いてもらおうか」


 桃色の綺麗な和菓子と、おはぎが一個ずつお皿に乗っている。緑色のお茶の香りが新鮮だった。


「どうぞ。お召し上がりください」


「ありがとうございます。えーと、」


「私の名前は(しおり)です」


「ありがとうございます。栞様」


「あら、私に様なんてつける必要はありませんよ。私はただの雑用巫女ヒューマノイドになりますから」


 雑用巫女ヒューマノイド? 何かの役目みたいなものなのかな?


「じゃあ栞さんって呼びますね」


「お好きなようにお呼び下さいませ。お茶が冷めないうちにどうぞ」


 勧められた通りにお茶を飲んでみると、苦くて渋い味がしました。紅茶とはまた違うみたい⋯⋯苦手かなと思ったけれど、お茶菓子と合わせたら美味しかったよ。


「今、この精霊界には魔族が入り込んでいるんだ。それは知っているね?」


「はい。後ヴァンパイアロードがいるって聞きました」


「うん。その二人の狙いは、多分ここにある精霊界の(かなめ)を狙っての事だと思うんだ」


(かなめ)ですか?」


 魔族の目的がこの場所にあるのなら、ヘイズスパイダーは陽動に使われていたのかも? でも陽動にしては規模が大き過ぎるかもしれない。

 理由はわからないけど、精霊さんを沢山倒す必要があったとか? 考え過ぎだろうか?


「その説明をする前に、アークには栞の相手をしてもらいたい。君の力を私に見せてくれないかい?」


「僕の⋯⋯力ですか?」


 えと⋯⋯つまり、栞さんと戦えって事ですか?







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ユニバに行ってたらこんなにも更新されてた....。 読んだけど....
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ