混じり物
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side ボーネイト
ちょっと、ちょっと待ってね? アーク様女子風呂に連れて行かれちゃったよ⋯⋯
あれは流れるような作業だった。分かれ道にさしかかると、アクセイラ、ベスさん、アイセアさんが、なだらかなカーブを描くようにアーク様の進路を誘導していたように見えたんだ。
口出しすると後で怖そうだったから、何も言えなかったんだけどね。
「どうしたにゃ?」
「何でもないよ。君はトラだったかな?」
「そうにゃ。宜しくお願いにゃ」
「宜しくね」
妖精と精霊のハーフ。彼は精霊界に住んでたと聞いたけど、精霊は混じり物が好きでは無い。
それには理由がいくつかあって、彼もその事を良くわかっているだろう。
それと、混じり物という言い方は蔑称だ。それをトラに言えば、間違いなく傷つけてしまう事になる。
まずハーフとして子供が生まれると、親の精霊の力が著しく低下する。
存在の力を重んじる精霊界では、それ自体が愚行と蔑まれるのだ。
そしてもう一つの理由として、ハーフは自然の力を上手く操れない。飛べもしなければ、何も出来ずに食べる事は一丁前だと揶揄されるてしまう。
しかしそれは偏見というものだ。
確かに精霊の力は上手く扱えないかもしれない。それに毎日何かを食べなきゃならないのも事実だろう。
だけど肝心なところが見られていないのだ⋯⋯ハーフというものは、決して皆が皆弱い訳じゃ無い。
鍛錬をすれば、力が多少は扱えるようになるだろう。豊富な魔力を有し、親精霊の属性の魔法を何倍にも強化出来るんだから。
そして最後にハーフというものは、誰よりも愛されて生まれてきたんだ。じゃなければ、彼の親が彼を生む決断に至っていないだろう。
「ねえトラ。精霊界は住みずらいかい?」
「⋯⋯そうにゃぁ⋯⋯でも、父ちゃんと母ちゃんがいるからにゃあ」
「はは、それは大きな理由だね」
体を流し、温泉に浸かる。トラならこの先も大丈夫だな。シャニガル、バブリン、アムラは服を着てないから、温泉に浸かるのが早かったね。
「ボーネイト! 私を洗え!」
「ま、マリー⋯⋯ちょっとは前を隠しなよ⋯⋯」
「そんな事言って、本当は嬉しいんだろう? 私の柔肌を蹂躙するが良い」
「温泉に入ったばかりなんだけど⋯⋯」
「⋯⋯」
でーんと仁王立ちするマリーに、諦めて温泉から立ち上がる。ひょいっと抱き上げると、マリーは嬉しそうに花を揺らした。
マリーはまだ無理しているのかな? 両親がいなくなって、明らかにどこか変なんだ。
「マリー」
「なんでゲス?」
「⋯⋯何でもない」
何も言う気はないみたいなんだよね⋯⋯そっと頭を撫でてみたら、一瞬顔が歪んだ気がした。
早く気持ちが吐き出せるようになったら良いな。今は傍にいてあげる事を考えよう。
「あ、あ、あ、ボーネイト⋯⋯ん、んんー♡ とろりとした液が⋯⋯あんん♡」
「ちょ、変な声出さないでよ!」
「あん♡ あ、あ、あ、濡れちゃう⋯⋯上の花が濡れちゃうよ〜♡」
「変な言い方しないで。シャンプーしてるだけでしょ!」
マリーの花が暴れ回り、中々上手く洗えない。上の花って何さ! 下の花があるって事!?
「ボーネイトは食べられないよね?」
唐突に出たマリーの言葉に、髪を洗う手が一瞬止まる。
「ああ、逆に食ってやるさ」
少し動揺したのがバレたかな? お湯をかけてマリーの泡を流す。タオルで顔を拭いてあげると、笑顔のマリーが現れた。
「げっへっへっ⋯⋯旦那。御背中流しましょうかい? 私のカ・ラ・ダ・で♪」
「はいはい。大きくなったらね」
変な知識ばっかり蓄えて⋯⋯これはマリーのお母さんの影響が強いな。
「チッ⋯⋯所詮胸でゲスか⋯⋯」
「胸の話して無いよね!?」
「目がエロい!」
「酷い!」
体を洗い終わると、マリーは女子風呂へお酒を取りに行った。
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side アーク
また来たいな。良い温泉だったよ。
ビビが服を着せてくれた。大人の姿になったビビは、いつもより面倒見が良くなる気がする。
「なあアーク」
「ん?」
「アークから見て、私はどういう存在なんだ?」
僕にとって、ビビはどういう存在? んー⋯⋯なんだろう⋯⋯難しい⋯⋯ビビの存在ってとても大きいんだよ。
何て言うのが正しいのかな? 僕の大事な⋯⋯
「宝物? 家族かな?」
「⋯⋯そうか」
多分そんな感じだね。ビビがいない生活は考えられないもの。
ビビは少し頬を染めると、いつもの小さな姿に戻った。大人の姿のままじゃ、体が大きくて合う服が無いからね。いくつか用意しても良いかもしれない。
畳のある部屋に移動して、作った温泉卵を並べてみたよ。色々あって迷っちゃうな。
ビビは迷わず全部一個ずつ持って行ったんだ。鳥の卵はビビの好物だもん。爬虫類の卵もあるのかな?
僕は星マークのついた卵にしよう。テーブルの平面で卵を叩き、木の器に流し入れた。
卵白が真珠のように輝いていて、プルプルとして美味しそうだよ。
調味料にサラダドレッシングが数種類あるんだ。塩とトマトソースも取り出して、皆に自由に使ってもらう。
まずは味を確かめないと⋯⋯
匂いには癖が無いみたいだね。でもとっても美味しそうだと思う。
スプーンで白身を掬って一口啜ると、タンパクでコクのある味わいに感動した。
食べた事ない味だったんだ。こんなに美味しい卵は初めて食べるよ! 素材の味を活かしたいなら、単純に塩で食べた方が良いかも。
「うっま!!」
「ベスちゃん殻ごと?」
「美味しいにゃ」
ベスちゃんが豪快に卵を食べる様子は、どこか肉食獣を連想させた。毛がしっとり濡れてスリムになったトラさんが、行儀良く卵を食べているね。
精霊さん達は、皆幸せそうな顔で食べている。マリーの花が勢い良く回転して、根元から取れそうで心配になっちゃったよ。
「アークちゃん。それ食べたらちょっと良いかしら?」
口の中に卵が入っていたので、返事の代わりに頷いた。美味しくて仕方がないね。他の卵も気になっちゃう。
この場所へ来る途中で、リーゼちゃんが何か言ってたのは覚えているよ。確か、要がどうとか? 見せたい物があるって言ってたんだよね。
「アークちゃんとビビちゃんは私に着いてきて。他の皆はここで待っててね」
どんな話が待っているのだろう。精霊界の秘密のお話なのかな?




