いざ温泉へレッツゴー!
枝帽子さんに案内されて、お城の中にある食材保管庫にやって来ました。
どんな食べ物があるのか楽しみなんだ。でも今回必要なのは卵だけなんだよね。温泉卵楽しみだよ。
「ここら辺、に、卵、ある。好きに、持って、行くと、良い」
「ありがとうございます。キコノコさん」
卵は色々な種類があった。薄青い卵、長細い卵、真っ赤な卵、真っ黒な卵。
精霊界の卵って面白いね。星のようなマークがついた卵もある。シマシマ卵に〜クリスタルのついたでっかい卵!? え? これ⋯⋯ドラゴンの卵だったりしない? 立派過ぎるんですけど!?
「アーク。酒も持っていかないか?」
「んー、そうだね。精霊さんお酒大好きみたいだし、飲みたい人もいるよねきっと」
「私も興味があったんだ。風呂で飲む酒は美味いだろう」
お酒の味は僕にはわからないよ。
ビビが大きな酒樽を担いできた。そんなに必要になるのかな? 足りないよりは余る方が良いと思うけどね。
気になる物はとりあえず収納してきたよ。ドラゴンっぽい卵は持って帰ってみようかな? ギルドで調べたら何かわかるかもね。
中庭に行くと、バブリンが大きな馬車になってたよ!? シャニガルがそれに繋がれていて、引っ張って行けるようになっているみたい。
馬車には屋根が無くて、それどころか車輪も無い。赤髪のお姉さんもいるよ?
車輪が無いからソリになるのかな? 呼び方は馬車で良いかな。
えーと、メンバーは?
ブラーティス、ウィディガーがいないや。毛が濡れちゃうから? ジャスルンは砂だから濡れたくないだろうし⋯⋯雪月虎もいないな。ボルティムもいないや⋯⋯もふもふ組さんは温泉嫌なんだね。
「ア〜ク!」
「あ、アイセアさんこんにちは」
「こんにちは。温泉楽しみね!」
楽しみなのはその通りなんだけど、アイセアさんがニヤニヤしているよ? 僕より楽しみだったりするのかな?
あ、シャムシェルもいないね。剣だから? 湿気が嫌なのかもしれない。
「アーク、来たにゃ」
「良かった! 来てくれてありがとうトラさん」
「さ⋯⋯さ⋯⋯さそ⋯⋯」
「ん?」
「さ、誘ってくれてありがとうにゃ」
「ふふ。勿論だよ」
トラさんの様子が変だったので、とりあえず笑ってあげた。何を気にしてるのかわからないけど、もっと自然体でいて欲しいな。
ベスちゃん、マリー、火竜の精霊アムラ、アクセイラ、ボーネイトもいるね。
ベスちゃんが背後から捕まえに来たので、気が付かないフリしてからサッと避ける。えへへ、残念僕の勝ち〜。
「くぅ⋯⋯さっきのリベンジをしようと思ったのに! また腕を上げたな」
「不意打ちを避ける練習をさせたのはベスちゃんだよ?」
僕は毎日成長してるのです。沢山戦ってきたからかな? 父様に比べたら笑われちゃうね。まだまだ頑張ろう。
「親分。早く行こうでやんす」
「うん。わかったでやんす。マリー」
*
シャニガルはどんどん加速する。向かった先は大きな雪山? 美しい三角の大きな山が、真っ白く染まっていた。
一面の銀世界か⋯⋯確かに温泉に入りながらだと綺麗かもしれないね。
「アーク様、あれは精霊界の要と言われている四季山なんだよ」
「四季山?」
「見てて」
ボーネイトが指し示す方向を見ると、途中からガラリと風景が変わっていた。
新芽が芽吹く春の様相に、僕は目を疑ってしまう。シャニガルがどんどん加速していくと、今度は夏のような陽気になった。
「凄い! 凄いねボーネイト。来た事あるの?」
「いや、来るのは初めてなんだ。ここにいる皆ね。この四季の山は、普段立ち入りを禁止されているんだよ」
「それで私が来たってわけ」
僕とボーネイトの会話に割り込んで、赤髪のお姉さんが口を開いた。
「アークちゃんには見て欲しい物があるんだ。パパからも言われてるのよ?」
「イフリンが?」
「うん。そう言えば自己紹介がまだだったよね? 私の名前はファウリーゼ。リーゼって呼んでね」
ファウリーゼさんが手を差し出してきた。赤髪のお姉さんはファウリーゼって名前なんだ。
「よろしくお願い致します。僕はアーク。Bランク冒険者です。リーゼ様」
「ふふ。私の事は呼び捨てかちゃん付けにしてね」
朗らかに微笑むリーゼちゃん? 呼び捨てよりはちゃん付けの方が良いなぁ。
「じゃあリーゼちゃんって呼ぶね?」
「うん」
友達が一人増えました。僕、今思ったんだけどね、人間より精霊さんのお友達の方が多くなってきたような気がする。
勿論人間の友達も沢山いるよ? ギブでしょ、モカちゃんでしょ、マーズちゃんでしょ、バススさんにミラさんとシェリーさん。冒険者にもそこそこ友達がいるよね。鎧のおじさんと猫耳さん。ターキ達もね! ミルクさんは友達かな? んー⋯⋯多分? きっとね! 僕は⋯⋯クレアも友達だと思ってる⋯⋯クレア弄りたいなぁ。スキル仕込みたいなぁ。
【この時クレアは何かを感じ取り、尻尾を最大限に膨らませていたとかいないとか⋯⋯】
夏の陽気もなりを潜め、乾いた涼しい風が吹き抜けた。
「うわー! すっごく綺麗!!」
景色が赤く染まっている。秋の風を感じながら、紅葉する山に感動した。
なんて良い場所なんだろう⋯⋯勇者様の絵本に出てきそうだよ。
綺麗な小川が流れていた。山の岩肌から、綺麗な滝も飛沫を上げている。
綺麗な紅葉に飛び跳ねた川魚。凄い凄い凄い!
その紅葉した世界のド真ん中に、風情のある御寺のような建物が建っていた。
「アークちゃん、落ちちゃうよ」
「凄いです! 綺麗ですよ!」
「わかったからちょっと落ち着いて」
これはとても感動しました。木造の御寺に瓦屋根だよ!? 勇者様の絵本だと、髪の毛の少ないビハクさんがいる筈だよね!?
「シャニガル。あの大きな庭へ下ろしてちょうだい」
「畏まりました。ファウリーゼ様」
ぐんぐん高度が下がっていく。僕はリーゼちゃんに後ろから抱きとめられていた。
もう⋯⋯僕子供じゃないんだから落ちないよ? ね? だから離してくれないかな?
斜め上を見上げたら、こめかみに唇を落とされた。
はい、すいません。大人しくしてます⋯⋯('・_・`)
御寺の境内にシャニガルとバブリンがゆっくりと下りて行く。
手入れが行き届いた庭には、落ち葉一つ落ちていない。
ん? あれ? なんだろう? 空気が変わった?
「アークちゃん⋯⋯もしかしてわかったの?」
僕が違和感に首を傾げていると、リーゼちゃんが僕の顔を覗き込んできた。
「えと、何か⋯⋯不思議な感じがしました?」
「そう⋯⋯」
んー、そろそろ離して欲しいんだよ? 僕だけ置いてかれちゃうよ。皆バブリンから降りちゃったし。
「早く行こうよーリーゼちゃん」
「ふふ。まずは温泉だー」
「温泉だー!」
楽しい楽しい温泉だ。中はどうなっているのかな?
ちょっとナレーションの表現を試してみました。一人称視点にナレーションを挟む方法が使えれば、主人公に入り込めながら三人称一視点もしくは三人称神視点の雰囲気を味わえたりしないかなと⋯⋯
本格的に使うのでは無く、今回加えたクレアのように出来ればなと考えました。
作風が崩れる訳では無いと思いますので、読者様には御安心頂けると幸いです。
もっともっと読みやすく、楽しい作品を作れるように頑張ります(*^^*)




