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ノーム様とムーディスさん

 *説明文を少し足しました。






 マウンティスの街は、僕の想像を超えて綺麗でした。


 幻想的っていうのかな? 輝く水晶の天井に、キラキラ光る池がある。もうコレ凄すぎ! 飲み干しちゃうよ!


 街の雰囲気も好きだなぁ。ただ、精霊さんがいなくて寂しい風景でした。ビビとアイセアさん、そして中級精霊さん達と中を歩いたんだよ。


 普段は賑わっていたのかな? どんな様子だったんだろう。珍しい置き物とかも気になっちゃうけど、用があるのはそれじゃないんだ。

 僕がマウンティスを訪れたのは、ヴォイドさんから精霊酒の運搬を頼まれたからなんだよね。お酒なんて美味しくないですぅ⋯⋯僕は嗜む程度なので一滴も飲めません。


 各店を順番通りに歩き、工場からも精霊酒を集めて回る。ヘイズスパイダーの残骸も、向こうに戻った時に売れるよね。しっかり回収しておかなくちゃ。

 街には僕達以外に気配は無い。壊された家を見ると、とっても悲しい気分になるね。


 池の底から、何故か黄金が湧き出てない? キラキラの正体はこれか⋯⋯商人さんが見たら卒倒しそうだね。


 よいしょっとビビを背負い直すと、髪の毛から優しい匂いがした。


「ビビ、綺麗な街だね」


「ん、あ⋯⋯寝てにゃい⋯⋯から〜⋯⋯」


「そうだね」


 うんうん。寝てにゃい寝てにゃい。


 マリーと手を繋いでいるんだけど、かなり御機嫌な様子だね。ボーネイトがぐったりしてるけど⋯⋯ぼ、僕のせいじゃないよね? あまり戦闘で活躍出来なくて、ちょっと凹んでるみたいだよ。


 全ての酒場や工場、倉庫を片っ端から空にした。頼まれた仕事はお酒の全回収。普通に運んだら大変だけど、僕には無限収納がある。


「こんなところだね。ここが最後の酒蔵かな? 全部回収したらフレイガースに戻ろう」


 またいつか来たいな。ノーム様のお城も入ってみたいし、ビビにも綺麗な天井を見せてあげたいからね。





 僕達がフレイガースへ戻ると、待ちかねてたように街が動き出した。気になってたフレイガースの下側は、亀の甲羅みたいになってたんだね。


 オレンジ色の光が走り、それが音も無くフレイガースを浮かせている。


 魔力は感知出来ないから、魔力を使わない動力があるのかもね。もしこれが魔導飛行艇にも応用出来るのなら、ちょっと面白そうだと思う。

でも仕組みを聞いてもわからないだろうなぁ。僕そういうの詳しくないし。


 街の中を歩いていると、沢山の精霊さんに囲まれてしまった。何事!? って思っていたら、


「アーク様。ありがとうございました!」

「アーク様! この果物食べて欲しいです〜。甘いのです〜」

「アーク様〜。木の実もありますよ〜」

「生アーク様万歳!」

「凄い存在感! 眩しい⋯⋯眩し過ぎよ!」


 蛇みたいな精霊さんが体に巻きついてきたり、いきなり抱きつかれたり、おデコにちゅーされたりして大変でした。代わる代わるタライ回しにされて、なんかもう凄かったよ!


「えと、皆ありがとー。もらった物大事に食べるね」


 まだお酒を運んでる途中だし、あまりゆっくりも出来ないんだ。


 でも、精霊さん達との距離が近くなったみたいで嬉しいな。崇められるよりは、気安く接して欲しいからね。


 精霊さん達から戴いた食べ物は、どれも見た事の無い果物と木の実。どんな味がするのか楽しみだな。マリーがゲスい顔してるんだけど、何を考えているんだろうか⋯⋯


「ア〜クぅぅううーー!」


「あ、ベスちゃん!」


「会いたかった。アーク」


「そんなに離れてないでしょ?」


 走って来たベスちゃんに抱きつかれたんだけど、まだ離れてから半日くらいだと思う。戦いが終わった後だから、僕も会いたいと思ってたんだけどさ。


 マウンティスの住民が増えたから、フレイガースの人口密度がとても高くなってるね。

 家が無くても寝る必要は無さそうだから、暫くは耐えてくれると思う。


「待って〜ベス様〜」


 ベスちゃんの後ろから、見た事の無い精霊さんが走って来た。濡れた銅のような鮮やかな髪、健康そうな肌に深緑の綺麗な瞳、この精霊さんってもしかして?


「アーク。紹介するよ。この精霊がクオーネだ」


「は、初めまして! ベス様から先程話を伺いました。お見知り置きを」


 凄く綺麗な精霊さんだ。それにしても格が高い精霊さんだね。存在感が凄い⋯⋯もしかしたらノーム様の縁者じゃないかな?


「初めまして。僕はアーク六歳です。たまに子供と間違われますが、どうぞよろしくお願いします」


「え? あ、そうなの? 間違われ⋯⋯るのね?」


 自己紹介はバッチリだね! えへへ、頭撫でられて気持ち良い。


「クオーネは見つかったが、私も精霊界の問題を片付ける事にした。アークと一緒にいたいからな」


「ありがとう。ベスちゃんいると安心するんだ。だから何処にも行かないでね?」


「はぅ⋯⋯うん。ど、何処にもいかないよ! 二十四時間一緒だぞ」


「それは嫌かな?」


「ッ!!!」


 ベスちゃんの肋骨にスリスリしてから、僕は二人と別れてお城へ向かう。中級精霊さん達とも別れて、ヴォイドさんと合流した。



「ここに?」


「ああ、頼む」


 お城にある大きな倉庫へ、マウンティスから持って来た精霊酒を取り出した。

 量がもう本当に凄い事になったけど、これを楽しみにしている精霊さんは多いらしいよ?


「アーク殿。ノーム様が会いたいと言っていたぞ」


「そうなんですか? 何の用だろう?」





 キコノコさんに案内され、豪華な応接室に通された。銀糸の刺繍が鮮やかな黒い長椅子に座り、綿毛のような白い毛布でビビを包んだ。


 少し辛そうな顔をしてる⋯⋯膝枕をして、ビビの顔についた汗を吹いてあげた。そうすると、僕のその手が掴まれる。


 起こしちゃったかな?


「大丈夫? ビビ」


「⋯⋯私の⋯⋯左⋯⋯手⋯⋯すー、すー⋯⋯」


 ちゃんと起きた訳じゃ無いみたい。その左手は好きにすると良いよ。


 今ノーム様はイフリンと喋っているらしく、少し待っていて欲しいらしい。

 朝から沢山動いたから、僕も疲れ⋯⋯


 少しビビに折り重なるようにしていたら、瞼が重くなってくる。


 ま、まだ寝ちゃ駄目だよ、これからノーム様に合うんだからね。憎っくきアイツを思い出した訳でもないのに⋯⋯ジャンガ⋯⋯zzZ。





 肩が揺さぶられ、僕はそっと瞼を開けた。


「綺麗⋯⋯」


 何となくそう思って口にすると、クスクスと笑われてしまった事に気がつく。


「おはよう。アークちゃん」


 目の前には赤い髪の精霊さんが、屈んで僕の顔を覗き込んでいる。この精霊さんは、イフリンの後ろで手を振ってた⋯⋯イフリンの子供なのかな?


 意識が覚醒してくると、イフリンと二人の老人がいた事に気が付いた。


 あわわ⋯⋯恥ずかしいところを見られちゃったよ。


「ふぁ⋯⋯しゅいません⋯⋯寝ちゃってました⋯⋯」


「ハッハッハ。気にするな」


 立って挨拶するべきだろうと思ったんだけど、イフリンに手で制されて座り直した。


 赤い髪の精霊さんは僕の隣に座り、イフリン達は対面の長椅子に腰掛けた。


「おう。お前がアークか。話は聞いている⋯⋯マウンティスでも尽力してくれたとな。ノームだ」


「は、初めまして! ノーム様!」


 ノーム様が手を出してきたので、慌てて両手で握手をした。そうしたら、僕の体が光り輝いたんだ⋯⋯これは、あれだ⋯⋯二度目だから知ってるよ。びっくりし過ぎて眠気も吹き飛んじゃった。


「契約成立だな」


 そう⋯⋯僕はノーム様とも精霊契約をしてしまったみたいだ。


 いやー、本当にびっくり! イフリンに続いてノーム様もだなんて⋯⋯え? 本当に?


「儂はムーディスじゃ。よろしくな」


 ノーム様の隣に座っていた精霊さんも、僕の方へ手を差し伸べてくる。


「は、初めまして! よろしくお願い致します」


 ゴツゴツした手だね。武人の極み⋯⋯そんな言葉が頭に過ぎったよ。

 しっかりと握手をすると、また強烈な力が流れ込んできた感覚があった。


 ちょっと待って欲しい⋯⋯精霊さんの契約って挨拶みたいなもんなのかな?


「あ、あの。ありがとうございます」


 座ったまま頭を下げる。何を言うか迷ったけど、御礼を言うのが適切なような気がしたんだ。


 ノーム様は筋骨隆々な体をしていて、ドワーフを巨大にしたようなイメージの精霊さんだ。身長は多分二メートルくらいあるけれど、イフリンが隣にいるから小さく見える。

 ノーム様は土の最上位精霊。イフリンと同格のすっごい精霊の王様なんだよね。

 ムーディスと名乗った精霊さんは、渋めの顔にロマンスグレーの品のある髪、目は刃物のように鋭く、間違いなく強いと肌で感じた。


 凄い精霊さん達に囲まれちゃったよ⋯⋯き、緊張するぅ⋯⋯







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