合流するアークと、アークの部隊
一応もう一度精霊達の情報を記載します。作中わかりやすく書いているつもりですが、わからなくなったら参照してください。
雷を纏うドレスの美人、アイセア。
水の惑星っぽい見た目のバブリン。
緑色の毛が長い狼、ウィディガー。
闇が鷹の形に具現化したような見た目のブラーティス。
白く発光する馬、シャニガル。
砂が人の顔の形になるジュスルン。
雪のようにふわふわした虎、雪月虎。
何故か小さな火竜っぽい見た目のアムラ。
頭から花を咲かせた女の子、マリー。
赤雷を纏う大きな兎、ヴォルティム。
美しいレイピアの形をしたシャムシェル。
空間を操る珍しい精霊さん、オルカタ。
体を刃物に変える褐色黒髪ショートのお姉さん、アクセイラ。
骨を操る不思議な精霊ボーネイト。
マウンティスの大きな入り口へ目指して飛ぶと、凄い迫力にびっくりしちゃったよ。
思えば三百体以上の精霊さんが、ヘイズスパイダーと戦っているんだもんね。
僕は遥か上空からビビ達の姿を探した。まずは合流したいんだけど、こんな混戦から探すのは難しいかな? それに、ノーム様は何処で戦っているんだろう? たまに凄く大きな力は感じるんだけどね。
気配拡大感知スキルを最大限に使い、戦場全体から探っていく。そして、
「見つけた!」
*
三人称視点
輝く白馬のシャニガルが、その体をさらに輝かせて嘶いた。一際強い光が収まると、味方の動きが数段速くなる。
シャニガルは祝福の精霊だ。それと同時に呪いの精霊でもある。
味方には優しい愛を、敵には容赦の無い鉄槌を。
シャニガルの瞳が怪しく紫色の光を帯び、ヘイズスパイダーに黒い粒子が降り注ぐ。その黒い粒子に触れた者は、頭痛、眠気、吐き気に襲われ、意識が混濁していってしまう恐ろしい呪いだった。
何が何だかわからなくなり、酷いと自ら死を望むようにもなる。
「ナイス! シャニー」
動きの悪くなったヘイズスパイダーに、獣のような笑みを浮かべた女が飛びかかる。
彼女の名はアクセイラ。その身を鋭利な刃に変える事の出来る精霊だ。
「にゃっはははは! へい、ホイヤー」
その身体能力は凄まじく、予測も出来ない動きからとんでもない斬撃を繰り出すのだ。
瞬く間に残骸へと変わるヘイズスパイダー。隙を見てアクセイラの背後から襲いかかろうとしたが、背中から大きな大剣が伸びて口刺しになった。
「私に死角はないのだよ。君」
ドヤ顔で胸をはるアクセイラ。だが、服が千切れてその胸が丸出しになる。
「いやん♡」
彼女はどこか抜けていた。そんなアクセイラに、水色の触手が伸ばされる。背中から這うようにして、その胸の先端へと吸い付いた。晒された胸を包み込むと黒くなり、チューブトップブラのようになる。
「ありがとう。バブちー」
水の惑星のような見た目のバブリンは、プルプルと体を震わせて返事をした。
動く砂の精霊ジャスルンが、地面を流砂に変えていく。足を絡め取られたヘイズスパイダーに、空から灼熱のブレスが襲いかかった。
そのブレスの正体はアラム。小さな火竜のような見た目をしているが、炎を司る精霊だ。お互いの得意な事を生かし、実に効率良く数を減らしている。
そこから少し離れた場所が、真っ白い霧に包まれていた。雪月虎とヴォルティムのモフモフコンビがいる所だ。
雪月虎の体からは、ドライアイスの煙のような物が噴き出している。その煙に触れたヘイズスパイダーが、瞬く間に凍りついていくようだ。
その凍ったヘイズスパイダーを、大きな兎のヴォルティムが蹴り砕いて回っていた。
雪月虎の強過ぎる力に、ヴォルティムはやる事が無かったらしい⋯⋯
ここまで順調そうに見えていたが、少し離れた場所で問題が起きていた。
「ビビ⋯⋯ちょっと! 大丈夫なの?」
「⋯⋯」
ビビは大量の汗を流している。普段からからかうアイセアも、そんなビビの様子に戸惑っているようだ。
手に持ったレイピアの精霊シャムシェルで、倒れそうな体を支えて何とか立っている状態だった。
「心配は⋯⋯無い⋯⋯」
「そんな状態で何を言っているのよ! 急にどうしちゃったっていうの!?」
「⋯⋯」
アイセアは取り乱しながらも、迫るヘイズスパイダーに極大の雷を落としていた。
ビビは荒い呼吸を繰り返し、目の焦点は合っていない。
どうしたら良いかわからずに、アイセアは兎に角ビビを守っていた。
「皆お待たせしました!」
そんな時、アークが空から舞い降りる。アイセアが大きく手を振ると、アークが目の前まで走ってきた。
「アーク! ビビの様子が変なのよ! どうしちゃったのかわからなくて⋯⋯」
「え?」
アイセアの焦りを感じとり、アークが急いでビビの顔を覗き込んだ。
「ん、大丈夫」
「ほ、本当に?」
そしてアークが優しくビビの頭を撫でると、その体が小さく縮んでいく。
「良く頑張ったね。お疲れ様」
「アーク⋯⋯」
崩れそうにふらついたビビを、アークは一度抱き締めてから背中に背負った。
「何なの? 治らないの?」
「⋯⋯今直ぐは無理ですね。フレイガースでも沢山戦いましたし、そろそろだとは思ってました」
紐で手足を括りつけて、落ちないように固定する。ビビはアークが来るまで進化を我慢していたみたいだ。アイセアはアークの説明を聞いて、ホッと息を吐く。
「ビビは阿呆なの? 言ってくれたら良かったのに!」
「⋯⋯」
この状態のビビはネガティブになる。アイセアの言葉にも言い返さずに、アークの背中に顔を隠した。
「もう⋯⋯仕方の無い子⋯⋯契約してる私にくらい弱味を見せなさいよ!」
「⋯⋯」
ビビが小さな声ですまないと言った。それはアークにしか聞こえない大きさで、アークにのみ許した甘えでもあった。
「さあ、沢山やっつけましょう!」
「後で覚えておきなさい! ビビ!」
きつそうな言葉を言いながらも、アイセアの表情はどこか優しげだった。




