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魔族との決着。“アーク”の力






「ゆるさん⋯⋯お前だけは⋯⋯」


「⋯⋯」


 ゆるさないって? 今ゆるさないって言ったの?


 怒気を強める魔族の人を見ながら、自分の身の内側から湧き上がる何かに気持ち悪さを覚える⋯⋯


 嫌だ⋯⋯こんな気持ちになるなんて⋯⋯


「⋯⋯ヘイズスパイダーを操っているのは貴方なんでしょうか?」


「だったらなんだと言うんです⋯⋯」


「⋯⋯」


 それだけ聞ければ十分⋯⋯もうこの人と喋りたくない。


「ふん、まあ良い⋯⋯本当の力を見せてやろう。はぁぁああ!!」


 さっき魔族の人の肩につけた傷が、時間が巻き戻るように再生される。



 良かった⋯⋯ちょっと安心したよ。再生の力が使えるなら、やり過ぎる事は無さそうだしね。


「これからお前を○☆…*&#*★*」


 魔族の人の声が遠くなる。極限まで集中力を高めると、時間がどこまでも圧縮されていく。

 ドラシーの魔気融合増幅スキルを使って、魔力と気力を爆発的に高めていった。淡い光を放つドラシーを見ながら、自然の気を練り合わせる。


 僕は、誰かの幸せを奪う人がゆるせないんだ。


 視界がセピア色に染まり、ドラシーを流れるように振り下ろした。


 一二三四五六七八九十⋯⋯


 振り下ろし切り上げ薙ぎ払い袈裟斬りに、突き出し捻り振り下ろし切り上げる⋯⋯


 まだだ、こんなんじゃ倒せない。


 限りなく緩やかに進む時間の中で、数百、数千もの剣の軌跡が突き進む。


 魔族の人は目を見開いているみたい⋯⋯驚くのは無理も無いよね。何かを喋っているようだけど、今の僕には届かないよ。



 涙を流すトラさんが脳裏を過ぎる。


 他にも泣いていた精霊さんだっていたんだよ。


 ──ブン!


 壊れた時計塔を見て、悲しそうにしていた精霊さん達がいた。


 家が無くなった精霊さんもいるんだよ。


 ──ヒュン!


 それだけじゃないんだ。


 長い時を生きる精霊さんが、どんなに悲しい想いをしているのか考えてよ!

 何百年も連れ添った友達が、目の前で食べられたらどう思うの!?


 ──ピシィイ!


 一振一振に想いを込めた。言いたい事が山ほどある⋯⋯


 でもね、言ったところで時間は戻らない⋯⋯僕には、時間を“止める”事しか出来ないから。


 体から灰色のオーラが溢れ出した。


 イフリンとの訓練で手に入れた力がいくつかある。その中でも、僕は僕としての力に目覚めたんだ。


 僕の半分は時を司る大精霊。でもまだその力は上手くは扱えないんだ⋯⋯そして長くも使えないんだよ。


 ゆっくりと停滞していた時間が、坂道を転がり落ちるかのように動き出した。


「“フルアクセル”」


「なっ!!」


 ──ズババババババババ⋯⋯


 幾千もの剣の奇跡が、セピア色の世界から飛び出していく。いくら魔族と言っても、これに耐えきれはしないと思うんだ。


「ぐぎゃあああ! 待て! 待て待て待て待て待て!!」


 情け容赦の無い斬撃が、幾重にも魔族の体を斬りつける。


 待てと言われても無理だからね⋯⋯その斬撃は、既に過去のものだから。


 急激に力を消耗して、足がふらつきそうになるのをドラシーで支えた。


 やっぱり辛い⋯⋯


「はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯ふぅ」


 確かイフリンが言ってたんだよね。こういう時は何か言えって。何て言うかなぁ⋯⋯そうだなぁ⋯⋯


「⋯⋯僕は時の大精霊。僕に追いつける者はにゃし、し⋯⋯噛んじゃった⋯⋯」


 ボロボロの姿になった魔族の人が、白い煙をあげながら後ろに倒れる。


 仰向けで白目を剥き、小刻みに痙攣しているね。体の変身が解けて、出会った時の姿に戻ったみたいだ。


 また動き出したりしないよね? 大丈夫だとは思うんだけど⋯⋯うぅ⋯⋯し、死んで無いよね?


 近寄って脈を確かめてみると、確認する事が出来なかった。ちょっと焦ったけど、体内にはまだ魔力が残っているみたいだよ。

 魔族の生体とかわからない。でもきっと大丈夫!


「“タイムロック”」


 自分をどこまでも加速させるフルアクセルと、タイムロックの二つの力が使えるようになったんだ。タイムロックは対象の時間だけを止める力で、その大きさ次第で消耗するエネルギーが違う。


 魔族の人はピタリと止まり、石のような灰色になった。


 成人男性くらいの大きさなら、止められても五秒が限界かな。


「⋯⋯上手く出来たね」


 時間さえ止められれば、無限収納へしまう事が出来る。

 生き物が収納出来ないのは、ゴブリンやオークで既に確認しているんだよね。もし何でも収納出来るんだとすれば、戦わずして勝つ事が出来るんだけど⋯⋯オークもギルドに帰ってから血抜き出来るようになる。


 でも、そんなに上手い話は無いか。


 地面に寝っ転がり、自然回復力向上のポーションを取り出した。

 ちょっと行儀が悪いけど、横を向いてチビチビと舐める。


 やっぱりポーションは美味しくないよ⋯⋯マカロンで口直ししよ。


「もぐもぐ⋯⋯美味しい」


 魔族の人を捕らえたのは良いけど、何処で出せば良いのかな? キジャさんに渡せば大丈夫? ちょっと後でイフリンに相談してみよう。

 魔族の人が起きた時に、ドラグスだと暴れられたら被害が怖い。寝ている間に無力化出来るかもわからないし、まずは話をイフリンに聞いてみてだね。


『なかなか悪くなかったぞ』


『えへへ、そうかな?』



 体が全然言うことを聞かない。この戦いが終わったら、もっとフルアクセルの練習をしよう。



 もっと強くならなくちゃ⋯⋯父様と母様が遠過ぎるよ⋯⋯


 地道にコツコツ頑張るのが僕だから。追いつくまで待っていてね。






 チートや:(;゛゜'ω゜'):

 アークさんがチート使いよったで!


 イフリンの出番はまだでした(っ ॑꒳ ॑c)


 40万PV超えてました! 沢山読んでいただき、ありがとうございます(´;ω;`)


 ブクマも1000件が見えてきましたが、まだちょっと遠いですねヽ('ㅅ' ;ヽ三 ノ; 'ㅅ')ノ


 これからも頑張りますm(*_ _)m

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― 新着の感想 ―
[一言] oh。アークさんや。それは【時の権能:停止・加速】的なものかね?
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