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魔族の変身。デモゴルゴン様






side ビビ



 本来の姿に戻ると、少しの高揚感が得られる。アークからもらった血の力が活性化して、戦闘をするための体に作り替えられているようだ。


 相手の魔族は、今までの敵とは比べ物にならない。

 ハリボテとはいえ、大陸のように大きな街を真っ二つにしたんだ。

 アークの強さは信じている⋯⋯でも、あんな敵とは戦わせたくない⋯⋯だが、ごねている場合じゃないんだ。

 私がここで躊躇すれば、中級精霊達もここに残ってしまう。そうなれば、戦いの巻き添えになってしまうだろう。


「アーク! 私も一緒に戦わせてくれ! あれは危険なんだ!」


「⋯⋯」


 ベスがそう叫ぶが、アークは空高く舞い上がった。本当なら、私だってベスのように叫びたいんだよ。


 黒い魔術の正体がわからない。街の断面が融解しているのを見れば、熱線のようなものだとは思うけど⋯⋯


 溶けた断面から、焦げた匂いが漂ってくる。


 幸いハリボテはまだ飛んでいるな。元々機関部などは無く、土と風の精霊が空に浮かべていただけだ。


 ベスの悔しそうな横顔を見て、私は肩に手をかける。

 作戦がバレている以上、今は急がなきゃいけないんだ。


 気は進まないが⋯⋯


「ベス」


其方(そなた)はビビ、アークを──」


「⋯⋯」


 ベスに魅了を使う。すまないな⋯⋯


 以前と比べ、私は大きく進化を遂げている。その支配力は、格段に強くなっている筈だ。


 ベスは精神もとても強い。だけど認識を少し変えるくらいならば、私の魅了が通ると思う。


「魔族はアークを殺したりしない。私達は私達の事をするぞ」


「⋯⋯そうなのか? それなら良い。取り乱して悪かった」


 アイセアが魅了を使った私を見て、少し微妙な顔をしていた。でも何も言わないのは、仕方ないとわかっているからだろう。


「さあ行くぞ! アークの指示は覚えているな?」


「大丈夫! 覚えてる! 早く切り刻みたいぜ」


 アクセイラが小さな力こぶを作った。確か体を刃物に出来る精霊だったかな?


「ああ、アーク様なら大丈夫だろう。負けやしないと思う⋯⋯俺達の隊長様はすんげーからな」


 ボーネイトが体から骨を生やし始める。骨は服を突き破り、武者のような鎧姿になった。


「親分なら瞬殺するでゲススス」


 お前はどこを目指してるんだマリー⋯⋯


 ああ、そうか。私がアークの所へ行きたそうにしていたのが、精霊の皆にはバレていたんだな。


「気を使わせた⋯⋯」


「気にするな、アーク様なら大丈夫。これは本心だ」


「シャニガル」


 白く光る大きな白馬。私に乗れと言うかのように、前足を曲げて首を下げる。


「じゃあ現地まで頼む。シャニガルよ」


「勿論だとも」


 跨るとシャニガルは立ち上がり、大きな声で嘶いた。風のように走り出し、私達は戦場へと走り出す。


 アークから作戦がバレている事を説明するように言われていたんだった。



side アーク



 僕と魔族のおじさんは、戦いの場を少し遠くへ移す。


 てっきりついて来てくれないかもって思ったたんだけど、あっさり来てくれたから拍子抜けしちゃったよ。


 きっと余裕があるんだと思う。顔に自信が漲っているからね。


「うん、ここで良いかな。何で素直について来てくれたの?」


 この場所は岩山の高台になっていて、ちょっと暴れたくらいじゃビクともしなさそうだ。

 空中戦はまだ嫌なので、さりげなく地面に着地する。


「お前に興味があったと言うのが本音です。人間と精霊の気配が混じるなんて、普通じゃ考えられないでしょう? 自然の気をどう扱っているのかが知りたいのですが、素直に話して下さいますか?」


「え? んーとねー⋯⋯こうふよふよしたやつを、ギュッと取り込むの。だけど、おじさんには難しいと思うよ?」


「⋯⋯感覚的に言われてはわかりませんね⋯⋯それで? 難しいとはどういう意味ですか?」


「おじさんには基礎となる器が無いからね。精霊契約が出来たとしても、(みずか)らが使う事は難しいよ。こういう事なんだ」


 魔気融合身体強化と、自然の気を混ぜ合わせて力を解放する。


 爆発的に跳ね上がった存在感に、魔族の人が明らかに動揺しているのがわかった。

 僕も初めてイフリンを見た時は、同じような顔をしていたのかもしれないね。


 頭髪が銀色に変わり、紫電がシールドのように体を包む。


 普段はなるべく力を抑えているんだよ。存在感を抑えないと、精霊さん達が皆傅いちゃうから。


「な、いったい何が!?」


 魔族の人が明らかに慌てている。何が起こったのかわからないって顔をしていよ。急に大きな威圧感を感じたせいか、体から汗が噴き出しているみたいだね。


 自然の気が感じられない人には、わからないのは仕方のないと思うんだよ。

 ただ、この大きな存在感は、精霊体になる前から感じとる事が出来た。謁見の間でイフリンに初めて会った時は、威厳と威圧感で圧倒されちゃったもの。


 僕の器はイフリンを向かえ入れる事が出来る程に、大きく強力に成長したんだ。だからイフリン程じゃなくても、僕から放たれる威圧感は相当なものなんだ。


 動揺しているうちに⋯⋯


「さっき言ってた計画について教えて下さい」


「侮っていたという事ですか⋯⋯まるで加護持ちのような気配⋯⋯まさか、勇者なのですか?」


 期待はしてなかったけど、やっぱり教えてはくれないみたいだ。

 勇者では無いんだけど、わざわざ言う事でも無いよね。


「⋯⋯」


「まあ良いでしょう⋯⋯私も全力で相手をしたいと思います」


 魔族の人の気配が変わり、目が真っ黒に変色する。


「邪神、デモゴルゴン様! 私に力をお与え下さい!」


 その言葉が言い終わると、天から黒い雷が魔族の人に降り注いだ。

 魔族の人の角が伸びて、体も一回り大きくなる。上半身の服が破け、筋肉が異常に発達した。


 相変わらず凄い魔力だね⋯⋯とても強そうに見えるんだ。デモゴルゴン様って何?


「後悔するが良い⋯⋯お前は実験動物として連れて行く」


「実験動物?」


 魔族と言うよりも、オーガやミノタウロスに近い見た目になったね。


 魔族の人が走り出す。拳を振りかぶり、力任せのハンマーパンチを繰り出してきた。

 バックステップで回避をすると、細い礫が僕の紫電に弾かれる。


「今のが見えますか」


 確かに凄いスピードだった。Sスタンダードになっておいて正解だったね。


 今度は横に手刀を薙いできた。リーチが足りないと思ったんだけど、黒い波動のようなものが放たれた。


 ちょっと無茶苦茶だね⋯⋯技の発動速度が早くて、ビビを相手にしているみたいだよ。

 避けるにも隙間が無い⋯⋯下にも潜り込めそうも無いかな。だったら、


「“岩砕脚”」


 体術スキルの岩砕脚を放つ。僕のスキルは、Sスタンダードで極限まで威力が高められているんだ。これくらいの攻撃なら吹き飛ばせると思った。


 ──ズガァァアン!


 まるで地面を蹴りつけたかのような衝撃⋯⋯何とか蹴り砕く事は出来たけど、体勢が大きく崩されてしまった。そこを狙いすましたかのように、魔族の人が体当たりを仕掛けてくる。


「くらえ!」


 邪悪なオーラを放つそれは、当たればただではすまなそう。


 そんなの当たりたくはない。


 仕方ないから地面を蹴り、上に跳んで避けてみる。


 ギリギリ躱せてホッとしたよ。でも魔族の人は驚愕に目を見開いていた。


「⋯⋯今のを避けますか⋯⋯それに、私のダークソウルを容易く打ち破るなんて⋯⋯」


 さっきからなんなんだろう⋯⋯この人は本気でやってないの?


「変身したのに小手調べですか?」


 やる気が無いのかと思うくらいに、ただ真っ直ぐ突っ込んできたんだ。

 イフリンと訓練をしていたからか、ちょっとやそっとじゃ驚かないよ。


「連れて行くのは僕です! ちゃんと計画とか話してもらいますからね!」


 なるべく急いで倒さなきゃ、フレイガースも心配だもの⋯⋯







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― 新着の感想 ―
[一言] 強くなり過ぎたアーク。 そりゃ、精霊になったんだから強いよね。 しかもイフリンのお墨付きでしょ?
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