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生き延びる知恵は負けないよ。この慢心野郎!

 タイトルをスッキリさせました。PVが落ちてもこのままいこうと思います。






side ベス



 緊張感の高まる中、私はゴクリと生唾を飲み込んだ。


「随分勝手に言ってくれるな。私は友を探して精霊界に来ただけだ。お前──」


 燕尾服の男が一瞬ブレたかと思った。油断していたつもりはないが、唸る拳が顔面に迫る。


 速い! 避けるのは難しそうか⋯⋯体を(ひね)りながら首を(よじ)り、威力を限界まで抑えた。それなのに、意識が飛びそうな程の衝撃に襲われる。


 なんて力⋯⋯く、こっちの言い分は聞く気無しか⋯⋯


 私は抵抗出来ずに吹き飛ばされて、森の地面を転がっていく。でもこれはチャンスかもしれない⋯⋯

 吹き飛ばされた先で、気配を消して走り出す。これで上手く逃げれれば良いけど、そんなに甘い話はないだろう。

 あんな化け物二人の相手なんか出来る訳が無い。だからせめて一人を相手にしたかった。


 久しく忘れていた感覚だな。ドラグスでゆっくりしていたせいか、少し平和ボケしていたらしい。

 絶対強者に襲われるなんて、何十年ぶりの事なのだろう。


「逃がしませんよ」


「⋯⋯執念深いやつ⋯⋯見逃してくれても良いんだけど」


 一応それっぽく焦った演技をする。逃げたいのは本心だから、リアリティーはあると思う。


「ユリウス様から貴女を殺せと言われたんでね。さっきのは手応えが不十分でしたから、死んだとは思えなかったんです」


 スピードは確実に負けている⋯⋯全てにおいて、私よりステータスが上なんだろうな。


 ゴルディスを取り出して、振り返りざまに殴りつけた。


「ふ、笑止」


 ──ズガァン!


 不利な体勢から振り回したゴルディスを、三本角が素手で殴り飛ばす。


 力の差がわかっていたけど、こんなに簡単に弾かれるのは厳しいぞ⋯⋯クソ!


 弾かれて跳ね上がった私の両腕が戻る前に、三本角が胴体に蹴りを叩きこんできた。


 私は弾かれた玉のように吹き飛んでいく。なんて威力⋯⋯ぶつかった体が大木を薙ぎ倒し、数百メートル先で制止した。


「ごは⋯⋯」


 やはり強い⋯⋯こんな逃げ腰では直ぐにやられてしまう。だがもう一人の魔族とは、もっと距離を離したいんだ。


 “アレ”をやるしかないか⋯⋯


 高位魔族が部下に命令したんだ。参戦してくるとは思えないけど、慎重に行動した方が良い。


 作戦として厳しいけど、準備だけはしてしまおう。実力が劣ると思ってくれているのなら、きっと上手くいくはずだ。



「今のはちゃんと入れたつもりでしたがね⋯⋯何で生きてるんです? エルダードワーフではないのでしょう?」


 悠然と歩いて来る脅威に、下唇を噛み締めた。倒せる気は全くしないね⋯⋯何とか立ち上がり、体についた土を払う。


「見逃してくれないと言うのなら⋯⋯」


 身体強化を施して、三本角にゴルディスを叩きつける。


「死ね!」


「そんな攻撃で死ぬ訳ないでしょう。はあっ!」


 ──ガギィイン!


 三本角は何も無い空間から、黒くて長い八角棍を抜き出した。魔法では無いな⋯⋯きっと無詠唱魔術だろう。

 その取り出した八角棍は、細身ながら私のゴルディスを受け止める。普通の剣なら叩き折れるのに、いったいどんな材質をしているのか。


 こんなやつの相手など、どこかの英雄がやれば良いじゃないか。私には他にやりたい事があるんだよ。


「馬鹿力が⋯⋯」


「貴女が言いますか? ドワーフがこんなに力が強いとは思いませんでしたよ」


 ガリガリと武器同士が火花を散らす。


 私も今は全力で攻撃出来ないし、受け止めた三本角も全力じゃないんだろうな。三本角は勝利を確信している筈だ。私の力を軽く見てくれてありがとう!


「はぁああ!」


「無駄です」


 ──ドンッ!



 ゴルディスがまた跳ね上げられた。私のがら空きの胴体に、黒い八角棍が突き刺さる。

 やっぱり桁違いに強い⋯⋯


「ぐぅ⋯⋯」


「⋯⋯」


 流石にここまでかな⋯⋯でももう目的は遂げたと勘違いさせられるだろう。


「白々しい演技ですね⋯⋯いつからですか?」


「さあな⋯⋯最初からじゃないか?」


「く⋯⋯貴方には私がただの間抜けに見えていたと言う訳ですか」


「ああ、笑いを堪えるのには苦労したぞ?」


「⋯⋯」


 体から八角棍が抜かれると、そこからは血が出てこなかった。こんなやつの相手はしてられないからな⋯⋯生き延びるために必要なのは、如何に強者と戦わないかに限る。


 ボロボロと崩れ落ちる私の体を見て、初めて三本角が顔を歪めた。


 この体はただの“ハイパーメタルグラディエーター”。私を八角棍で貫いた事で、やっと生身じゃないと気がついたらしい。


「名を聞いておこうか。私はアルフレッドだ」


「⋯⋯自己紹介なら、戦闘(デート)に誘う前にしてくれ」


 魔族に名を知られるのは遠慮させていただくよ。


 完全に崩れ落ちた私を見て、アルフレッドは来た道を引き返す。

 アルフレッドが見えなくなってから、本体の私は地面から這い出した。


「ふぅ⋯⋯しんどいわ⋯⋯痛い⋯⋯」


 実際ギリギリだったからね。蹴り食らったところまでは私だったし⋯⋯肋骨何本折れてるんだ? 本当に死ぬかと思った⋯⋯


 ポーションを取り出して飲み干す。転がっていたゴルディスを回収して、安堵の溜め息を吐いた。


 気がかりな事が多いね⋯⋯何故魔族が精霊界に? そもそもここは精霊界なのだろうか?



 森の中を歩いて行くと、いきなり荒野が視界に飛び込んでくる。そのずっと先には雪原があり、光る綿毛が飛んでいた。

 色々と無茶苦茶な場所だね⋯⋯精霊界である可能性は高いはず。


 空の色もおかしい。もうそろそろ暗くなりそうだ⋯⋯ん?


 遥か遠くの雲の切れ目、その先に巨大な城が見えたような気がする⋯⋯もしかしたら精霊がいる街かもしれないな。


 そこに行けば? もしかしたらクオーネの情報が手に入るかもしれない。アルフレッドと名乗った三本角に見つかると厄介だから、日が完全に落ちてからあそこまで行ってみるか。








 これからは、色々なしがらみとかをとっぱらい、自由に書いてみようと思います。

 応援してくれると嬉しいです(><)

 頑張ります!

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― 新着の感想 ―
[一言] ええ。しがらみなんてドブに捨ててしまえばいいんです!
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