最強の力。全てを支える大地の化身
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三人称視点
数度の衝突で、地面に大きなクレーターが出来上がる。
精霊四大王の一角であるノームは、煙管をふかしながらながら眼前の男に注視していた。
「えげつねえ攻撃だな? 流石は神域の超生物だぜ⋯⋯なぁ? ノーム様?」
「ふん⋯⋯儂はまだなーんもしとらんよ。ウザったい蝿を叩いただけじゃしのう」
ノームと対峙しているのはヴァンパイアロード、名はレバンテスだ。
既に全身がボロボロで、着ていた衣服も血に染まっていた。
(しんどいな⋯⋯何で王様が出てくるんだよ。これじゃ狩りに参加出来ねぇ)
「魔族も一緒に来ているらしいが、そいつらは何をしておる」
「はっはっは。大した理由じゃないぞ? ちょっとそこまでピクニックってな」
──カンッ⋯⋯
ノームが煙管を軽く振ると、空中で何かが弾かれた。その瞬間、視認出来ない速さの土杭が地面から生えて、レバンテスの全身に突き刺さる。
「ガハ⋯⋯」
正に一瞬の事だった。タメも何も無く、息をするように大地をノームが操った。
痛みに顔を歪ませたレバンテスは、何とか霧となってすり抜ける。深刻なダメージは受けないが、精神的にも疲労が溜まっていく。
もしもヴァンパイアの体でなければ、今の一撃で確実に死んでいただろう。
「痛てーな⋯⋯マジで⋯⋯だが相性は悪くねえ。“極血乱槍星”」
「つまらんわい⋯⋯」
レバンテスの放った血晶魔法の槍が、ノームに向かって放たれた。しかしノームは全く動こうとはしない。
──ガガガガガガガガガガン⋯⋯
それは確かにノームの体を捉えた筈だったが、ノームには傷一つ無かった。避けようと身構える事すらなく、つまらなそうに煙管を振り下ろす。
──カンッ⋯⋯
「ッ!!!」
レバンテスの立っていた大地が、勢い良く陥没していく。その周囲二十メートルに、いきなり高重力が襲いかかった。
「くぅ⋯⋯てめえ」
「その状態でも喋れるのか。まだまだいけるな」
──カンッ⋯⋯
「がああぁぁああ!!」
「重力千倍じゃ。なかなか味わえんじゃろ?」
──カンッ⋯⋯
更に高重力に押し潰される。レバンテスにかかる重力が更に十倍となり、一万倍の重力に押しつぶされた。
「儂はノーム。大地、鋼の化身なり。何人も儂を傷付ける物は無く、その全ては無駄に終わるだろう。大地は儂の手の平じゃ」
レバンテスはもう物言わぬミンチとなり、クレープ生地以下まで引き伸ばされている。
だが、これで仕留められないから厄介なのだ。レバンテスは体をまた霧に変化させて、ノームの重力による拘束から逃げようと足掻いていた。
──カンッ⋯⋯
更に十倍の重力を与えるノーム。そしてその上から、超巨大な六角柱が降りてきた。それは黒光りしていて、材質などがわからない。ただ、石か金属なのは間違いないだろう。
──ズズズズゥゥウン⋯⋯
ノームの力によって、メリメリと地面に埋まる六角柱。レバンテスに蓋をするように、超重量で密閉した。
「⋯⋯やはり反応は消えぬか」
それでもレバンテスの気配は消えない⋯⋯実力は圧倒的に開いているが、相性的には最悪だったのだ。
ノームにはヴァンパイアを倒す決定的な技が無い。絶望こそしないが、長期戦は望んでいないのだ。
──ドン! ドドドドドドンッ!!
連続した爆発音が聞こえた。六角柱にヒビが入り、何かが外へ這い出てくる。
「むちゃくちゃだぜ⋯⋯ノームさんよ」
「ふんっ」
ノームはゆっくりさせる暇など与えないと言わんばかりに、数々の攻撃をしかける。トラバサミのように地面を動かして、レバンテスの下半身が分かたれた。
「くっそ! くぅ⋯⋯痛えな!」
それでも再生するレバンテスに、ノームは深くため息を吐く。
「キリがないわい」




