表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
103/214

精霊の体は凄いです

 新章もよろしくお願い致します。






 トンテンカンテントンテンカンテンと、響く槌の音を想像していたんだ。でも実際は、ヘイズスパイダーの吐いた消化液の除去をしているところみたい。


 トラさんどこかなー? 時計塔の修理を手伝うって言ってたけど⋯⋯


 精霊さんに見つかると、僕は崇められたりするようになっちゃったんだ。完全に隠れるのは無理だけど、今はこっそりと動いているの。


 物陰に隠れるのって楽しいよね! 何でビビは真顔なの? 楽しくないの?


 振り返って頭を撫でてあげると、少し頬が緩んだ気がする。


「いいから! アークはトラを探すんだろ? 早く見つけてしまえ」


「うん。そうだね」


 そうでした。色々忘れるところだったね。


 精霊さん達は様々な容姿をしている。水が人型になったような精霊さん、闇が牛の形をした精霊さん、さっきのマリーみたいに、桜の枝が頭から生えた精霊さんもいるね。


 一旦作業を止めて、皆で休憩をするみたいだ。トラさんは猫だから、直ぐ見つかるかと思ったのに⋯⋯


「アーク。あそこにいるぞ?」


「ん?」


 ビビの指差した方向を見ると、一人時計塔の隅っこに腰掛けるトラさんがいた。


 皆と一緒にに休憩すれば良いのにな⋯⋯あんなに離れた場所にいなくても⋯⋯


「⋯⋯ちょっと行ってくるね」


「結局出て行くんだな」


「ちょっとやりたい事があったからさ」


 皆の前に出ていくと、精霊さん達がギョッとした顔になった。


 僕が半分精霊になったのを皆知らないからね。でも驚かせちゃって申し訳ないです。


「こんにちは」


「人間が⋯⋯精霊に!?」

「こんにちは!」

「こ、こんにちは」


 様々な反応だね。トラさんも僕を見てびっくりしているみたい。


 とりあえずこの消化液をどうにかしないと⋯⋯蜘蛛は、口から麻痺の毒とか吐き出して、獲物が暴れないようにするって聞いた事がある。

 この消化液も、それに近い毒ならば、僕の魔法でどうにか出来るんじゃないかな?


「ちょっと試してみても良いですか?」


「えーと、何をなさるのでしょうか?」


 精霊さん達の中から、女性型の精霊さんが進み出てくる。


 多分着物ってやつだね。勇者様の絵本で出てくるけど、リアルで見るのは初めてだなぁ。

 紺色の着物で、流水をイメージした刺繍がされていた。フクロウのお面をつけていて、青い髪をアップでまとめている。


 多分水の上位精霊さんかな? オンミールさんやアイセアさんと同じくらいの存在感があるね。


「ちょっと魔法を試させて下さい。もしかしたら消化液がなくなるかも?」


「それはとても有り難いお話です」


「やってみますね。トラさーん!」


 トラさんの名前を呼んで手を振ると、びっくりしてから瞳を彷徨わせる。


「ちょっと来て」


「うにゃあ⋯⋯わかったにゃ」


 別にトラさんいなくても良かったんだけどね。


 トラさんを目的の場所に立たせて、僕は肩によじ登る。左手に魔力、気力、自然の気をかけあわせて、魔法の範囲と質を上げさせてもらったんだ。


 難しいコントロールになるんだけど、イフリンと沢山練習したんだから。



「いくよ。“キュアポイズン”」


 僕の放ったキュアポイズンが、何十倍にも強化されて消化液に降り注ぐ。消化液は瞬く間に綺麗になり、透明な水へと変化した。


「凄いにゃ! アークはにゃんでも出来るのにゃ?」


「何でもは出来ないけど、これくらいならね。乗せてくれてありがとう」


 ふふふ⋯⋯やっぱり凄いよ精霊の体はね。自然の気を混ぜると、威力が何倍にも膨れ上がるんだ。

 上位精霊さんも驚いているね。あ、ビビも驚いてる。


「神々しい光でございました。まるで神々の操る魔法のようで、ドキドキしてしまいましたわ」


「えへへ、これで作業も楽になりますね。“ドライミスト”」


 僕がもう一度魔法を唱えると、そのドライミストもかなりの威力を発揮した。


 水溜まりになっていた消化液も、瞬く間に蒸発してしまう。


 弱くてドラシー頼りになっていた魔法も、全てがバージョンアップしたんだよね。

 しかも火や炎の魔法は、イフリンのお陰で威力が桁違いに上がったんだ。


 トラさんから降りて、その手をギュッと握る。ピンクの肉球がぷにぷにしてる。


「うにゃ? どうしたんにゃアーク?」


「別に?」


 これで作業は捗るよね。精霊さん達の輪に入ると、御礼にフルーツを差し出された。

 お城で見たカラフルな葡萄があったので食べてみると、色んな味の生クリームみたいで美味しかったよ。


 この体になって、精霊さんから凄く好かれる体になっちゃったみたいだね。遠巻きに眺めていた精霊さんも、少し話をするだけで嬉しそうにしてくれるんだ。



「皆またね」


「ええ。ありがとうございました。アーク様」


 着物の精霊さんと握手をして、その場を離れる。


 最後にトラさんをもふもふしておいた。あんまりこの場所にいても、作業の手が止まっちゃうだろうからね。

 それにトラさんも、精霊さん達の輪に入れたみたい。良かった。


「ありがとにゃ。アーク⋯⋯」


「お仕事頑張ってね。トラさん」






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 半分神様?になった件。 本人は便利程度にしか考えてなさそうですが... あと、思ったんですけど精霊=寿命がない 半精霊=寿命が長い=成長が遅い=アーク成長しない? ま、まさかそんなことは…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ