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異世界を斬る! 体育教師の巻・其の3

「さあさあ、どの奴隷にする? お嬢ちゃん。好きな奴隷を選んでいいのよ」


「はーい。警察です。みなさん抵抗しないでくださいね。逃げるなんて考えないでくださいね」


 まずい! 警察のガサ入れだ。別に逮捕されてもあたしは無敵の公務員様。クビどころか逮捕記録のもみ消しだって簡単にできちゃうけれど……そうなったら、いま現在むらむらしているあたしのいやらしい欲望を発散できなくなっちゃう……留置所で一発ってのも悪くないけれど。


 よし、ここはせっかく若くて世間知らずな連れがいることだし。この女の子を身代わりにしてトンズラ……あれ? あの女の子がいない。あいつ、あたしをほっぽって自分だけ逃げたわね。なんて恩知らずな。


「はい、逮捕。おたくには黙秘権があってうんぬんかんぬん」


 ああん、お縄になっちゃった。なんで警察が来るのよ。奴隷市場は黙認ってのが世間一般の常識でしょ。奴隷商人のやつ。きちんと警察に付け届けしておきなさいよ。それとも、警察のノルマ稼ぎってやつ? これだから警察は嫌いなのよ。


 生徒の進路がどうなろうとノルマがどうのこうのなんて言われない体育教師の世界を見習いなさいよ。体育教師なんて、大学受験にはまるで関係がないんだからノルマなんてないのよ。だから生徒のことなんてちっとも配慮しない教育的指導ができるんだから。


 そんな上司にこびへつらって、ノルマを稼ごうとわめき散らすなんて恥ずかしくないの。ただ自分が気にくわない生徒をいびりたいからわめき散らすあたしを見習いなさいよ。いやだ、そんなこんな考えてたら留置場に放り込まれちゃったわ……


 あらら、留置場の同居人には、あたしが退学に追い込んだ勤労アルバイト新聞配達少女と勤勉オーバーワーク故障者少女がいるじゃない。警察もなかなか気が利いているわね。留置場でしっぽりお楽しみなさいってことなのね。そういうことなら、たっぷり楽しみますか。ここは奴隷市場じゃないから当然タダよね。


「ねえねえ、その後の妹さんたちはどうなの? 修学旅行にはいけたの?」


「あ、先生。お久しぶりです。それが、最近ますます景気が悪くなってわたしの奴隷の稼ぎだけじゃあやっていけそうになくて」


 おやおや。奴隷嬢のふところ具合も不況の影響が直撃してるんだ。公務員様の安定した高収入には関係ない話だけどね。


「そうなんだ。それじゃあここはひとつ先生としてもと生徒の進路相談に乗ってあげるわね。そんな妹持ちの奴隷の解決法はたった一つよ。妹も二人とも奴隷にするのよ。奴隷の姉妹どんぶりを楽しみたいって需要はあるからね。かせぎは三倍どころかグッと増えるわよ」


「でも、妹は中学生と小学生でまだ義務教育だから……」


 あら。義務教育ですって。これだから世間知らずの奴隷はダメなのよ。


「そんなの心配ないわよ。義務教育ってのはね、『教育を受けさせる義務が保護者にある』ってことなのよ。だから、中学生と小学生の妹さんが学校に通わずに奴隷になっても妹さんは何も責められないの」


「そうなんですか。でもそれじゃあ保護者がわりのわたしが……」


「おっと、そうだったわね。なら、学校には通わせなさい。現役JCにJSの奴隷っていうのも需要があるから。なに、ちっとも問題ないわ。義務教育期間の女の子が奴隷になると考えるから問題なんであって、奴隷の女の子が義務教育を受けると考えれば美談になるんだから。安心しなさい。妹さんの教育係は先生がなってあげるから」


 あたしはこの奴隷市場の顔なじみだからね。この不況のご時世奴隷市場に足しげく通えるなんて公務員でもなきゃあできない話だから、当たり前と言えば当たり前だけど。おかげで『新人奴隷嬢の教育お願いします』って市場側から頼まれるんだから。


 さて、教育者として元生徒のひとりの悩みを解決したところで、もうひとりの悩みも解決しちゃいますか。これも教師のつとめよね。


「どう? あれから故障したところの調子は」


「先生じゃないですか。それがあんまりよくないんです。あたしが勝手な自主トレーニングで故障したってことになっちゃったから、学校や県や国からも賠償金払ってもらえませんでしたし」


 そうだったわね。この子が怪我した時の職員会議で『わたしはそんなトレーニングを命じておりません』なんてあたしが言ったからそんなことになったのよね。『この事件もみ消したいんだよね。学校は責任取りたくないんだよね』なんて周囲の空気に耐えきれずにあたしが発言したらそれが採用されちゃったのよね。


 同調圧力って怖いわあ。で、県や国も賠償金払わなかったのよね。この子も一般下級国民の生まれみたいだし。そんな子が日教組がよりぬいた弁護士軍団相手に賠償金なんて取れるはずもないもんね。


 でも、ここはもと顧問として面倒見てあげないと。なにせあたしは聖職者である教師なんだから。


「そういう時は……」


「ほら、オブギョウさまのお裁きだ。とっとお白州に行くんだ」


 なによ。人がせっかく身体の不自由な人間がどうすれば手っ取り早くお金を稼げるかレクチャーしようと思ってたのに……オブギョウ様! いまオブギョウ様のお裁きと言われましたか、留置場係さん。

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