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暴れん坊魔法使い・体育教師の巻・其の3

「それはね、あたしがいじめてた『将来はエリートになっていじめっこを見返してやる』なんてガリ勉してた奴らが、レベルの高い大学を狙いすぎてね、浪人した結果就職氷河期にぶち当たったからよ」


 あいつら今頃どうしているのかしら。この寒空の下凍えているのかしら。


「そこそこお勉強ができたやつらはね、民間に就職したのよ。そいつら就職したばかりのバブル絶頂期の頃は『公務員? 体育教師?』なんてさげすんだ目をしてきたけれどね。バブルが崩壊したとたんに、あたしのことをうらやんでくるのよ。『いいなあ、わたしも公務員になれば良かったよ』なんてね」


「それがうん99の人生なんですか。いいなあ。うらやましいです」


「そうでしょう? うらやましでしょう? その公務員の安定した高収入がもたらすおこづかいでお姉ちゃんがお嬢ちゃんを買うのよ」


「お、お願いします」


 ぷ。奴隷として買われる側が『お願いします』ですって。これが運0の人間の成れの果てか。みじめったらありはしないわね。さて、何から始めようかしら。


「ちなみにあんた、親はどうしてるのよ」


「そ、それは……母親が二人ともその就職氷河期に直撃した世代でして。非正規労働とか派遣切りとかで、とても娘の面倒なんか見てられないと逃げ出したんです。おかげでわたしは中学もろくに通えずに、こうして奴隷の身分になってしまったんです」


 あらあらそれはそれは。あたしが小中学校時代にいじめ抜いた就職氷河期連中の娘が、中卒になって奴隷になるくらいの年月が過ぎてたのね。月日が過ぎるのは早いものだわ。


「お嬢ちゃん、何ぼさっとしてるの! あたしが奴隷としてあんたを買ったのよ。スカートめくってパンツ見せるくらいしなさいよ」


「も、申し訳ありません」


 なにせ、体育教師になって生意気なガキどもを怒鳴り散らすだけで安定した高収入がもらえるお気楽な人生だったからな。就職氷河期連中の子供が何才になるかなんて考えもしなかったわ。その子供が今あたしの前でパンツを見せている。ああゆかいゆかい。


「ほら、今度は四つん這いになるくらいしなさいよ。あんたは奴隷なんだからそのくらいして当然なのよ」


「つ、つつしんでやらせていただきます」


 ひょっとしたら、このお嬢ちゃんあたしが小中学校の時いじめてた連中の娘だったりして。だとしたら、いじめ母娘どんぶりじゃない。まさにいじめっこ世にはばかるね。


「お嬢ちゃん。あんたは奴隷なのよ。へたくそなダンスだけ見せてればいいなんて考えてたら大間違いなんだからね。そのあたりわかってるの?」


「そ、それでは何をすればよろしいのでしょうか。なんなりとお命じください」


 いやいや、公務員は福利厚生も充実しているけれど……奴隷を買うというのは何者にも変えがたい快感ね。あたしが生徒に1日いばり散らしていれば、奴隷少女を買えるだけの給料がもらえるんだから公務員様様よね。こんな手厚い福利厚生を維持してたらこの国の財政は破綻するに決まってるけれど、あたしが死ぬまでは持つだろうから安心ね。


「奴隷といえば焼印よ。決まってるじゃない。あたしは火炎呪文の使い手なんだからね。あんたにやけどをマーキングしてやるわ」


「そんな、焼印なんていくらなんでも……」


 思い出すわあ。中学の時の体育祭のリレーですっ転んだ運動音痴にタバコで根性焼きした時のことを。さすがにバレたけど、あたしが根性焼きした運動音痴がほかの学校に転校しておしまいになったのよね。


 学校側もそんなことを表ざたにしたくないし、運動音痴も騒ぎ立てるだけの根性なんてなかったし。もみ消されてちゃんちゃんとなるのは当然の話よね。あたしが中学の時のクラス担任の先生や教頭先生に校長先生。自分は先生方に教わったことをしっかり受け継いでおります。


 あたしが受け持つクラスでも、一人いじめられっ子を決めてそいつを教師であるあたしが率先してはずかしめております。そうすることで、クラスが一致団結してたいへん教育上良いのであります。四十人の中の一人が犠牲になることでほかの三十九人が成長するのですから。これはたいへん優れたシステムだと実感しております。


 教師という職業は、受け持ちの生徒を一人や二人、精神病院送りにしたり自殺させることで初めて一人前になるものだと実感する今日この頃であります。


「黙りなさい。ああもういいわ。あたしがあんたを専属の奴隷にするわ。それならいくら焼印をつけようがあたしの勝手でしょ。あんた立ちんぼでしょ。ケツ持ちに案内しなさい。あたしがあんたを身請けするって。中卒の奴隷なんて、公務員様の安定した高収入からすれば安いもんなんだから」


 ああ、じれったい。


「奴隷のくせになに嫌そうにしてるのよ。どうやら教育が必要なようね。いいでしょう。体育教師様であるこのあたしがきっちり教育します。火炎呪文! ファイアー!」


「はい、アウトー」


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