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拍手小話3 司祭の毎年恒例行事

 それは、年に一度の恒例行事、とでも呼べばいいだろうか。

 大司教様とデュクロ司祭が、中庭の一角で相対していた。


「人生は一度きりだもの。

 僕は僕にしか出来ないことがある。

 結婚式も、葬式も、僕じゃなくてもできるでしょ?」


 デュクロ司祭はそう言って、大司教様に笑いかけた。


「わかっているが、ユルリッシュ。

 そのままではお前は……」


「マリエール大司教、僕は大丈夫だよ。

 好きにさせてくれてありがとう。

 僕には僕ができることをするよ」


 そのやり取りを物陰から見守っていた私とルロワさんは、思わず顔を見合わせた。


「大司教様、毎年あれをやっているらしいですよ?」


「毎年、ですか?」


「はい、マリエール大司教様としてはデュクロ司祭様のされていることを止めたいようなのですが……まあ、やめないですよね、あの人」


「そうでしょうねぇ」


 デュクロ司祭はやりたいと思ったらやるし、自分の信念を曲げることはないだろう。

 物陰に隠れている私たちの方にデュクロ司祭が近づいてくる。

 彼は私の方を見て、


「やあ、いらっしゃい、エステル君」


 と言って腕を広げた。


「年に一度の儀式が終わったから、出掛けようと思うんだけれど」


「年に一度の儀式」


 その表現には笑うしかない。


「うん、一年ぶり十回目ってやつかな」


 それはもうマリエール大司教も諦めたらいいのにという感じがしますが、諦めないだろうな。


「エステル君もいくかい? ちょっと孤児院にいくんだけれど」


「え、あ、はい」


 そう返事しつつ、私はルロワさんの方を見た。

 彼は小さく諦めたようにため息をつき、


「ご無理は、なさらないでくださいね」


 と言い、頭を下げた。


「行ってらっしゃいませ」


「ありがとう、ルロワ君。じゃあいこうか、エステル君」


 そして、デュクロ司祭は私に手を伸ばした。

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