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拍手小話1 膝枕
数日家を空けていたマティアスが帰ってきた。
居間の長椅子に腰かけて本を読んでいた私を見つけると、彼は、
「疲れたー」
と言い、私の隣に腰かけるとそのままごろん、と私の膝を枕に寝転がった。
「な、何をされるんですか、マティアスさん」
下を向くと自然と視線が合う。
マティアスさんは疲れた顔をして、
「えー? 枕だよー」
と言い、目を閉じた。
なにこれ、本当に寝るつもり?
そうしたら私は動けないじゃないの。
「ごめん、このまま寝るかも」
と言い、マティアスは大きな欠伸をした。
「え? あの……マティアスさん?」
名前を呼ぶけれど反応がない。
マティアスは寝息をたてはじめてしまう。
あ、寝ちゃった。
「……うーん、どうしよう」
寝てしまったものは仕方がない。
私は、小さくため息をついて微笑み、彼の頭をそっと撫でた。




