コント:呪術師の結婚挨拶
ボケ「お義父さん…どうか娘さんを、僕に下さい!」
ツッコミ「ふむ…。君、名前は何と言ったかね?」
ボケ「渡辺です。渡辺圭」
ツッコミ「渡辺君。君、今仕事は何を?」
ボケ「はい。呪術師です!」
ツッコミ「そうか…。私は、会社員なので良く分からないんだが…その呪術師と言うのは、一体どんな仕事なんだ?」
ボケ「そうですね。イベント会場でまじないを行ったり、呪いをかけたり…」
ツッコミ「まじない?」
ボケ「ええ。イベント当日の天気が良くなるよう、神に祈りを捧げたり、夜な夜な悪霊と戦ったりしています」
ツッコミ「うーむ…」
ボケ「他にも、ご先祖様の霊を自分に降ろして依頼者と会話したり…」
ツッコミ「渡辺君。私が心配しているのは…その呪術師とやらは、毎月どれだけの稼ぎがあって、それできちんと娘を食わしていけるのかと言う事だ」
ボケ「はぁ。収入、ですか?」
ツッコミ「固い事と思うかもしれんがね。親としては、毎日の食事すらままならないような男に、娘を預けようとは思えんだろう?」
ボケ「はい。すみません…」
ツッコミ「謝らなくても良い。ただ、聞くに呪術師というのは、とても危険な仕事なんだろう。毎晩家に帰ってくるたび『今日は悪霊に腕持ってかれちゃったよ〜! ハハハハ!』では、夫としてどうなのかと聞いているんだ」
ボケ「ごめんなさい。今日はたまたま腕が無いだけで…あの、普段はちゃんと、二本生えてるんです」
ツッコミ「『この前呪い返しを受けちゃってさぁ、しばらく目玉が三つあるんだよね! 悪ぃ悪ぃ!』で、果たしてご近所さんは納得するかね?」
ボケ「こ、このデコのはちょっと友達から預かった奴で…すいません、今すぐ閉じさせます。こら、お義父さんをそんな目で見るな! ちゃんと閉じてろ!」
ツッコミ「『や〜い! お前の親父、下半身タコ〜!!』って、これから生まれてくる子供はいじめられやしないだろうか?」
ボケ「下半身、馬にもできます。そしたらケンタウロスみたいでカッコいいし、幼稚園の送り迎えも…」
ツッコミ「そういう問題じゃない。全く…こんなクリーチャーみたいな男の、一体どこに愛美は惹かれたんだ…」
ボケ「すみません…」
ボケ「マナちゃ…愛美さんは僕の、イルカみたいな優しい目が好きだって…」
ツッコミ「それは君が、イルカの悪霊に取り憑かれていただけだろう?」
ボケ「それから犬のような人懐っこさと、うさぎのようなふわふわ感と…」
ツッコミ「やれやれ。聞けば聞くほど、君という人物が分からなくなってきたよ。もはや、人間なのかすらどうか…」
ボケ「僕は人間です。呪術師という仕事に、誇りを持っています。トーナメントで優勝すれば賞金も出るので…お願いします! どうか娘さんを、僕に下さい!」
ツッコミ「もう良い、分かった。それで、その肝心の愛美はどこにいるんだ? 今日は一緒じゃなかったのか?」
ボケ「…娘さんなら、ここにいますよ」
ツッコミ「…何だって?」
ボケ「見て下さい…僕の胸。ここに、マナちゃんは…」
ツッコミ「その、顔のような痣は…渡辺君! 君、まさか…!」
ボケ「ええ。一週間前に、悪霊に襲われて仕方なく…ね。娘さんの魂は、僕の体内に吸収しました」
ツッコミ「そんな、愛美…! 信じられない…!!」
ボケ「マナちゃんは、僕の中でかろうじて生き続けている…彼女が肉体を取り戻すには、お義父さん、貴方の血と肉が必要だ」
ツッコミ「貴様ァ…最初から、それが狙いだったんだな!?」
ボケ「さぁ、次は貴方が答える番だ…数千年の歴史を持つ、偉大なる呪術の前に跪き、『娘さんを僕に下さい』」
ツッコミ「巫山戯るな…何が呪術だ! 娘を返せ!」
ボケ「いいえ。今夜こそは、力ずくでも娘さんをもらって行きますよ。貴方の肉片を手土産にねぇ!!」
ツッコミ「その薄汚い体から、今すぐ愛美を解放しろ! この三流ペテン師がァア!!」
ボケ「サラリーマン風情がァ、この僕に勝てるとでも思っているのかァア!! 呪術の威力、思い知れッ!!」
ツッコミ「ウオオオオオオッ!!」
ボケ「オオオオオオァアアッ!!」
ツッコミ②「ちょっと、二人とも!」
ツッコミ「愛美」
ボケ「マナちゃん」
ツッコミ②「大声で叫ばないでよ! 近所迷惑でしょ!」
ボケ&ツッコミ「「ごめんなさい…」」
ツッコミ②「そんな茶番してる暇あったら、早く私の呪いを解く方法を考えて!」
ボケ「はい…」
ツッコミ「すみませんでした…」
ツッコミ②「全くもう…今日はもう遅いから、帰りましょ。早くしないと、お化粧がドロドロになっちゃう…パパ、またね」
ボケ「じゃあお義父さん、また来ます」
ツッコミ「ああ。次は二人とも、ゆっくりしていってくれよ。その時までには、呪い解けてるといいな」
ボケ「はい。どうも、ありがとうございました」