3.僕から君へ
手紙を送ってから一週間経った頃に、一通の封筒が郵便受けにはいっていた。封筒には丸い字で、僕の家の住所がかかれていて、中には先日僕が送った手紙がはいっていた。部屋に戻って手紙を取り出し、内容を見てみたけれどどこを見ても僕が送ったままの文面で、封筒以外に彼女の文字は見当たらなかった。あぁ…やっぱり…返事はなしかぁ……とベッドに倒れこみ、手に持っていた封筒は床に放り投げる。するとカランッという音がして、封筒が床に転がった。…ん?カラン?今カランっていった…?起き上がるのが面倒くさくて、横になったままベッドの端から床を覗くと、投げた封筒の中から銀色の何かがチラリと顔を見せていた。あれは…なんだろう?腕を一生懸命伸ばしてみるが届かず、仕方なく起き上がって封筒を拾い上げ、中から何かを取り出す。
「…かぎ…?」
それは銀色の割と新しそうな鍵で、おもちゃの、というよりはおそらくどこかの玄関を開けるものだろうということが分かった。
「かぎ……家……住所?」
ふと封筒を見てみると、僕の住所の下に小さな字でどこかの住所が記されていた。鍵とその住所を見比べる……これは、ここの鍵…?普段だったら警察に届けるべきだと考えるはずだけど、今は何だかそんな気にならない。なんだろう…何だか確かめてみたい気がする……
君へ
こんにちは、また手紙を送って迷惑かもしれないけど許してください。この間送った手紙が住所だけ変えて、そのまま戻ってきました。封筒が変わっていたから僕は勝手に、君に読んでもらえたんだろうと思って嬉しくなりました。それと封筒の中に鍵が入っていました。それと君が僕の家の住所以外に書いたもう一つの住所、を見ました。ここに行けば、君に会えるのでしょうか。僕は勘があまり良くないから、もしかしたら全然違うかもしれないけれど、何だかそんな気がしたので行ってみることにします。この手紙がいつ着くのかは分からないけれど、もし会うことができるのなら、その前に着いているといいなと思います。この手紙を送ったのは、いきなり君に会うのは君に迷惑になるかもしれないと思ったからです。一応行くよと伝えてからがいいかなと思って。じゃあ今から準備をします、またね。
僕より
やっぱり言葉を書くのって難しい。うまく伝わるかどうか不安だな。変に見えないだろうか、なんか……いや、こんなこと悩んでないで早く手紙を出さないと。伝わらなかったら会った時にちゃんと説明すれば良いのだから……
カバンに少しの服とクッキーを詰め込み、手には今から送る手紙と送られてきた封筒と鍵を持って、部屋を飛び出す。また君に会えるかもしれないという希望からか、僕の心には久しぶりに光が差していた……