反撃の狼煙
続きです。
◇◆◇
「『リベラシオン同盟』っ!!??では、もしや貴方が『ルダ村の英雄』殿、なのですかっ!!!???」
「あれ、よくご存じですね?あんまり目立たない様に活動してきたつもりなんですが・・・。」
「それはちょっと無理があるんじゃないかなぁ~、アキト。私達って、結構あちこちで人助けをしてたじゃん。」
「人の口に戸は立てられませんからねぇ~。」
「それに、あんまり隠すつもりもなかったでしょ?ボクと初めて会った時も、アッサリ素顔や正体をバラしていたし。」
「あぁ~、そう言えば、リサさんと初めて会った時に、『デクストラ』の皆さんや『サージェント商会』のメレディーさんとも会いましたもんねぇ~。彼らは『ヒーバラエウス公国』とも交流があるでしょうし、彼らが簡単に言いふらすとも思えませんが、『冒険者』や『旅商人』であれば、『情報交換』は必須ですもんねぇ~。」
「お前は“自覚”が足りねぇ~ぞ、アキト。俺の様に慎ましく生きなきゃ~よぉ~。」
「「「「貴方(セレウス様)が言わない(仰らない)で下さいっ!!!!」」」」
「お、おぅ・・・。」
レティシアがキラキラとした表情で、興奮した様にアキト様達に駆け寄りました。
しかし、その反応も分からなくはありません。
私も『リベラシオン同盟』の“英雄譚”は聞き及んでいましたから。
曰く、数年前『ロマリア王国』・『トラクス領』・『ルダ村』にて、未曾有の『パンデミック』があり、全滅の危機に瀕した『ルダ村』でしたが、そこに一人の若者が『他種族』の仲間達を率いて現れました。
若者は、『伝説』の中でしか語られる事がない様な『大魔法』を使い、数千を越える『モンスター』や『魔獣』の軍勢を壊滅状態に追い込み、『他種族』の仲間と共に『厄災』を見事退けてみせたのだと言います。
曰く、数年前『ロマリア王国』と『ヒーバラエウス公国』とを結ぶ要所、『コロナエ領』の『交易都市』・『ダガの街』周辺に巣くっていた一大犯罪組織・『ランツァー一家』を壊滅させ、『ロマリア王国』と『ヒーバラエウス公国』の交易の正常化・活性化に一役買ったとか。
未確認の『情報』ですが、『ランツァー一家』と繋がっていた『コロナエ領』の領主・レイモン伯爵の不正を暴き、失脚させたのも『リベラシオン同盟』が裏で関与していたとかいないとか。
それ以降は、表立った『武勇』を聞く機会はありませんでしたが、“風の噂”では人知れず『ロマリア王国』の『悪徳貴族』達を裁いてたと聞いています。
事実、近年の『ロマリア王国』は、『冒険者』や『旅商人』からの評判も上々で、市民生活も明らかに豊かになっていると聞き及んでいますし。
また、こちらも未確認の『情報』ですが、『ロマリア王国』の『魔術師ギルド』が始めた“新事業”、『生活魔法』と名付けられ、『平民』向け(もちろん、それでもそれ相応の価格がするそうですが)の極初歩である『基礎四大属性魔法』がそれぞれ『付与』されている『魔道具』の開発・研究・販売においても、『リベラシオン同盟』の関与があったとか。
こちらは、まだまだ『一般市民』には浸透していない様ですが、耳聡い『冒険者』や『旅商人』はこぞって買い求め、重宝しているそうです。
『生活魔法』が、『ロマリア王国』内外に広く普及していくのも時間の問題でしょう。
『魔法技術』の流出は、『魔術師ギルド』や『貴族』などの『特権階級』の間では長らく『禁忌』とされて来ましたから、『第三者』の関与があった事は想像に難くありません。
ですが、これは非常に有効な一手でもありましたし、私が『ロマリア王国』の『魔法技術』に興味を惹かれた切っ掛けともなりました。
そもそも、『魔法技術』を学んだ事がない者に、その『生活魔法』を『模倣』する事は不可能に近い事ですし、仮に出来たとしても、それも極初歩である『基礎四大属性魔法』に過ぎません。
むしろ、それが出来る者は、『魔法』に対する“素養”が非常に高い事を意味しますから、『出自』は気にせずに積極的に重用し、本格的に『魔法技術』を学ばせた方が、『魔法技術』や『魔術師ギルド』の今後の発展の為には非常に有意義であると思います。
また、『技術』の発展においても、様々な人々に普及し、利用された方が、新たな『活用法』・『アイデア』を生み出す可能性が高いのは、『歴史的』にも証明されておりますしね。
まぁ、もっとも、頭の凝り固まった方や『権力』に固執している方は、その『ロマリア王国』の『魔術師ギルド』の一連の活動に対して否定的・批判的な意見を言う方もおりますが、それは、ハッキリと申しますと、ただの『時節』が読めない方々でしかないと私は考えております。
結局、『技術』と言うのは、広く活用されるからこそ意味のある物で、大事に『秘匿』していても意味はありませんからね。
もちろん、『魔法技術』が大きな危険性を孕んでいる事は私も重々承知しておりますが、その辺の配慮を含めての『基礎四大属性魔法』のみの流出に留めている様ですし。
まぁ、もっとも、その手の方々と言うのは、“理屈”や“道理”ではなく、ご自身が気に入らなければ、全て“悪”なんでしょうけれどね。
と、まぁ、『リベラシオン同盟』の『功績』は(その真偽を含めて)上げればキリがありませんけれど、その『リベラシオン同盟』の方と、繋がりが出来た事は私としては僥倖ですわ。
彼らが己の『身分』を偽っている可能性も、まだ否定出来ませんけれど、先程の件から鑑みても彼らが圧倒的な『力』を持っているのは疑い様がありません。
それに、先程のアキト様の発言も、私としても非常に興味を惹かれています。
・・・
「うわぁっ~~~!!!感激だなぁっ~~~!!!ワタシ、あなた方に憧れていたんですよぉっ~~~!!!先程の“立ち合い”もお見事でしたっ!!!“噂”に違わぬ凄まじい『使い手』でいらっしゃるっ!!!」
「そういう貴女も相当な『使い手』ですね。先程の僕らの“動き”が見えていた様子ですし、公女殿下と、そちらの女性を守る様が堂に入っていた。『護衛騎士』、と言ったところでしょうか?・・・あ、いや、もしや、僕と同じ『高レベル』の『魔法戦士』、ですかっ?」
「凄いっ!!!よくお分かりになりましたねっ!!!『ヒーバラエウス公国』では『魔法士』は、『戦士』としても『魔法使い』としても、一流の『成績』を修めた者だけに与えられる特別な『称号』なのですが、『他国』ですと『魔法士』は、少し『戦士』の『技術』を学んだ程度の、実際にはただの『魔法使い』であると聞き及んでいましたからねぇ~、って、えぇっ!!!???」
「ふぅ~む、確かにそれは言い得て妙ですね。『ロマリア王国』の『魔法士部隊』も、実態はただの『貴族』の集まりですからね。どちらかと言えば、『魔法部隊』と言った方が正しいですし、『戦士』や『兵士』としての『力量』は、まぁ、決して高いとは言えませんね。けれど、『魔法使い』の『力』は『軍』としては当然無下にも出来ません。必然的に、高い『特権』や『地位』が与えられるのは、まぁ、よくある話でしょう。」
「いやいや、そうではなくっ!!!えっ!?あんなにお強いのに、『魔法使い』でもあるんですかぁっ!!??」
「いやいや、貴女もそうではありませんか。」
「いやいや。」ヾノ ゜Д゜)
「いやいや。」ヾノ ゜Д゜)
僕と、短髪で栗毛の『魔法士』の女性は、お互いに謙遜しあったりして、話が一向に進まなかった。
どこの『社会人』の日常風景だろうか?
(ちなみに、彼女が『高レベル』の『魔法戦士』であると気付けたのは、彼女が特殊な刻印の服を身に付けていたからである。
武器類は『悪党』達に取り上げられている様だが、それは“意味”が分からなければ、ただそう言う“模様”の服に見えるから、『悪党』連中も気付けなかったのだろう。
しかし、それはもちろんただの服ではなく、一種の『魔法発動体』であった。
“立ち居振舞い”から、『戦士』としても“一流”であると分かるのに、『魔法発動体』まで持っているとなれば、高確率で『魔法戦士』であると思ったのだった。)
と、そこに、少し幼い印象を受けるものの、今現在の僕よりは、(おそらく)年上だろう黒っぽい髪の、高級なローブを着崩した女性が会話に割っては入ってきた。
「レティシアぁ~。そのおにーさんは、『魔法使い』なんて生易しいレベルの『使い手』じゃないと思うよぉ~?多分、『古代語魔法』の『使い手』でもあるんじゃないかなぁ~?それ『古代魔道文明』の『知識』をふんだんに盛り込んだ物だよねぇ~?大分、『魔改造』されてるみたいだけどぉ~・・・。」
「へっへぇ~ん、凄いでしょぉ~!この『杖』は、ボクとダーリンとアイシャちゃんの合作で、世界に二つとないボクの一番の自信作なんだよぉ~!!!まぁ、もっとも、ダーリンが『竜語魔法』を体得してからは、あんまり役に立たないんだけどねぇ~。」
「いえいえ、そんな事はありませんよ、リサさん。この『杖』は『武器』としても使えますし、もちろん『魔法発動体』にもなるし、移動手段にも使える優れものですからねぇ~。確かに『竜語魔法』は、おそらく『魔法技術』の体系としては最上位に位置する非常に優れた『術儀』でしょうけど、そのあまりの利便性・強力性故に、普段の生活や戦闘においては使いどころが限定されてしまいますからねぇ~。・・・しかし、この『杖』の『秘密』を即座に看破されるとは素晴らしい『知識』をお持ちの様だ。もしや、『ヒーバラエウス公国』の『古代魔道文明』の『研究者』でいらっしゃいますか?」
ローブの女性の『知識』には僕も驚かされた。
確かに、今現在の僕の愛用の『杖』は、『祖霊』の大樹から削り出した(もちろん、『祖霊』・シルウァの許可は貰っている)、金属にも勝る硬度を持つ不思議な材質の木材をベースに、『精霊石』や『精霊結晶』を始めとした貴重な『鉱石類』を贅沢に使用し、『失われし神器』・『召喚者の軍勢』が発掘された『遺跡』や『選定の像』から得られた『知識』をフル活用して、『鍛治職人』・リサさんと、『金細工職人』・アイシャさんとの合作で製作された一品である。
そこに刻印されている『魔法陣(魔法式)』は、『古代語魔法』と呼ばれる、失われた『古代魔道文明』時代の言語なのだが、よほどの『古代魔道文明』に造詣の深い『知識』を持っていなければ、ただの不思議な“模様”に見えるだろう。
僕は、『英雄の因子』の『言語理解』の『能力』でその“意味”が理解出来るが、『古代語魔法』に一定の『法則性』を見出だすのだけでも、それだけで相当な年月を要する筈である。
この女性は、それをごく短時間でやってのけた。
相当『古代魔道文明』に精通している証拠である。
おそらく、『魔法士』の女性に、その特殊な刻印の服を与えたのも、このローブの女性であろう。
「そうだよぉ~。あっ、ボクはリリアンヌ・ド・グーディメルだよぉ~。リリって呼んでねぇ~。ディアーナ様とボク達を助けてくれてありがとぉ~ねぇ~。もうダメかと思ったよぉ~。」
「おっと、興奮していてご挨拶が遅れましたね。ワタシは、レティシア・フランドールと申します。リリアンヌ様の『護衛魔法士』を仰せつかっております。この度は、助太刀感謝致します。ワタシが不甲斐ないばかりにっ・・・!」」
「いえいえ、多勢に無勢ですから気に病む必要はありませんよ。改めまして、アキト・ストレリチアです。」
「セレウス・カクトゥスだ。セレウスでいいぜ。」
「私はアイシャ・ノーレン・アスラ。アイシャでいいよ~。」
「主様のお側付きをしております、エルネスティーネ・ナート・ブーケネイアです。ティーネとお呼び下さい。」
「ボクはリーゼロッテ・シュトラウス。リサって呼んでねぇ~。」
その流れで、アイシャさん達もそれぞれ自己紹介をした。
今現在の僕らは、“いつもの様”に顔を隠していないので、当然アイシャさん達が『他種族』である事は彼女達も分かった様だ。
「『鬼人族』に『エルフ族』、『ドワーフ族』に『人族』のパーティー、ですか・・・。“噂”通りですわね。」
「その“噂”と言うのがどんなモノなのか、激しく気になるところですが、ディアーナ公女殿下達は、なぜこの様な『遺跡類』に?リリアンヌさんとレティシアさんは『遺跡類』の発掘や調査に来た事は想像に難くありませんが。」
「だからリリでいいよぉ~。そうそうぉ~。『ロマリア王国』でも同じだと思うけど、『古代魔道文明』の『遺跡』は手付かずで残っている事が多いからねぇ~。一般的には『古代技術』の有用性はなかなか理解が及ばないと思うし、『古代魔道文明』の『遺跡』には『歴史的価値』はあっても、分かりやすい『財宝』や『金目の物』ってのもあんまりないからねぇ~。もちろん、『探索者』系の『冒険者』や、所謂『盗掘者』達が侵入する事はあるけど、ぶっちゃけ“採算”が取れないからねぇ~。」
「あぁ~、確かに。『古代魔道文明』の『遺跡』は、まぁ、埋もれてしまった物も含めて、古くから有りますもんねぇ~。当然、そうした“場所”は、『魔獣』や『モンスター』、もしくは『盗賊団』の『根城』になる事も多いし、『罠』のある所も多い。それらの様々な脅威を乗り越えて手に入る物が、もちろん、分かりやすい『財宝』や『金目の物』がある場所もあるでしょうが、そのほとんどは一般的にはがらくたに見える古ぼけた『遺物』しか出てきませんから、まぁ、割に合わないでしょうねぇ~。実際、『冒険者』の間でも、『探索者』系はなり手の少ない不人気分野で、数もそう多くありませんからねぇ~。」
「まぁ、とは言え、どの『世界』にも『好事家』がいるから、今日においても、『古代魔道文明』に関する『知識』や『資料』はそれなりに遺されているんだけどねぇ~。だけど、不人気と言う意味では、『古代魔道文明研究者』も同じだよぉ~。人ってのは、目先の利益を優先しがちだから、使えるかどうかも分からない『古代技術』を研究するより、今現在の『技術』を発展させる事の方を優先するからねぇ~。おかげでボクも、『ヒーバラエウス公国』では変わり者扱いさぁ~。」
「世知辛い世の中ですよねぇ~。『古代魔道文明』は『現代魔法』の源流となっていますから、『魔法技術』の発展を考えれば、むしろ積極的に調査すべき物なのですが・・・。もちろん、僕も『資金』の問題は分かっていますが、それでも『歴史』や『ロマン』が分かっていない人のなんと多い事かっ・・・!!!」
「おおぉっ~!!!おにーさんは話が分かるねぇ~。さっきから感じていたけど、どうやらボクらは『同志』、なのかもしれないねぇ~?」
「僕もそう感じていましたっ!!!いやぁ~、ここまで『古代魔道文明』に“愛”を持っている人に会うのは初めてですよっ、リリアンヌさんっ!いや、リリさんっ!!!」
ガシッと僕とリリさんは握手を交わす。
『オタク』特有の感覚だが、同じ『分野』を愛する者同士は、一気に“距離感”がつまるモノである。
すでに、僕はリリさんを10年来の友人の如く感じていた。
「リリさんの『研究テーマ』は何ですか?僕は、『伝説』の『空飛ぶ都市』の痕跡を追い求めているんですよぉ~。」
「おおぉ~、おにーさんは『ロマン』が分かってるねぇ~。それはボクも気になる所だけど、ボクの『研究テーマ』はもっと現実的なモノさぁ~。『古代魔道文明』が生み出した『古代語魔法』や『魔道学』の研究や活用。おにーさんも気付いたと思うけど、レティシアに贈った服も、その成果の一環だねぇ~。まぁ、ボクの『目標』まではまだまだ道のりは長いんだけどねぇ~。」
「ほうほう、なるほど。・・・っ!」
「・・・っ!」
・・・
「おう、ディアーナの嬢ちゃん、だったか?悪いな。アキトのヤツ“研究者スイッチ”が入っちまったモンでよ。代わりに俺らが話を聞いとくぜ?」
アキトのヤツが珍しく暴走したモンだから、代わりに俺らでディアーナの嬢ちゃんから“事情聴取”をする事にした。
アイシャ、ティーネ、リサの嬢ちゃん達も、アキトの暴走ぶりには若干飽きれ気味である。
まぁ、俺やアルメリアの嬢ちゃん以外に、アキトと“同レベル”で『古代魔道文明』の話が出来るヤツが今までにいなかったから分からん話ではないがな。
俺やアルメリアの嬢ちゃんも、『制約』がある以上、あまり突っ込んだ話は出来なかったしな。
「しょ~がないなぁ~、アキトは。」
「ですが、生き生きとされていますね、主様。」
「まぁ、ダーリンは『古代魔道文明』オタクだからねぇ~。ボクらじゃ、ダーリンの話に着いて行けないし、話の合う人と出会えて嬉しいんじゃないかなぁ~?」
「私も、あんなに生き生きとしたリリを見るのは初めてですわ。私もリリとは友人同士ですが、残念ながら、彼女の話は高度過ぎて、私はもちろん、『ヒーバラエウス公国』の者では、誰も着いて行けませんでしたからね。もっとも、彼女の提唱する『理論』自体はとても『利用価値』の高いモノであると私は考えております。それ故、私は彼女の『資金提供者』となったのですわ。」
「ほうほう。一種の『パトロン』、『スポンサー』ってトコか。んで、その『資金提供者』であるディアーナの嬢ちゃんは、ローブの嬢ちゃんのところに、その進捗を確認しに赴いていたが、それを絶好の機会と睨んだコイツらに襲撃される事となった、ってところかい?」
「ひ、ひぃぃぃぃっーーー!!!???」
俺がジロッと一睨みすると、先程までブツブツと現実逃避気味に頭を抱えていた『ヒーバラエウス公国』の『貴族』とおぼしき男は、ガクガクと震え始めた。
何とも肝の小さい野郎だなぁ~。
「全くもってその通りですわ。しかし、この件は私の慢心が招いた事でもあります。まさか、私の護衛達も抱き込まれていようとはっ・・・!ひとえに、私に人徳がなかった、と言う事なのでしょうね・・・。」
「いやいや、そんな事ぁねぇ~よ。ディアーナの嬢ちゃんの『生命』を狙ったって事は、そんだけコイツらも追い詰められていたって裏返しでもある。つまり、コイツらにとっても嬢ちゃんの『影響力』が無視できないレベルになったって事さ。まぁ、俺らがたまたま居合わせなかったら、嬢ちゃんらの『生命』は無かったかもしれんが、こうして何の因果か助かってるんだ。嬢ちゃんの『天命』はまだまだ尽きちゃあいないのさ。」
まぁ、この『結果』はアキトの『事象起点』の『力』だろうが、そうした意味では、この嬢ちゃんらの存在は、アキトにとっても重要な意味を持つってこったな。
しかし、ディアーナの嬢ちゃんは、『生命』を狙われた事や、部下の離反や『貴族』の裏切りによって、気丈に振る舞っちゃいるが、内心は傷付いて、自分の『器』に疑問を持ち、自信を喪失している様だ。
まぁ、『公女』って『立場』にあっても、まだまだ年若い娘だから、当然っちゃあ当然なんだがなぁ~。
「そう、でしょうか・・・?」
「そうそう、気にする事はないよっ!世の中変な人も多いからねぇ~。ディアーナさんの『立場』の事は私には分からないけど、どう考えても、女の人を大勢で襲う方が悪いに決まってるじゃんっ!」
「そうですよ。こんな連中の為に、貴女が気に病む必要はありません。彼らも彼らで自分で選んだ道なのですから、それがどの様な『結果』になろうと、自分で責任を負うべき事ですからね。」
「そうそう。どういう“事情”があるかは知らないけど、泣き寝入りだけはダメだよ。やられたらやり返さないと。」
「ピンチは時にチャンスにもなるモンさ。おそらくコイツは、肝の小ささ故に、本来は狡猾で計算高い、慎重な男なんだろう。しかし、それ故に、“猜疑心”の塊みたいな男でもある。本来、裏から操る系のヤツが、“現場”にいるなんて事はリスク以外のなにものでもない。しかし、コイツは自分の目で見たモノしか信用しない。つまり、誰の事も信頼していないのさ。もちろん、コイツの考えうる限りの『詰み』の状態にしてこの“場”にいるんだろうが、俺らみてぇ~な“イレギュラー”の介入はコイツの頭の中にゃあなかったんだろ~よ。ま、お陰で、ディアーナの嬢ちゃんにとっちゃあ、一番面倒だろうコイツを労せず捕らえられたって訳だ。コイツは、それこそたんまり『情報』を持ってるだろうからよ。ディアーナの嬢ちゃんにとっても、これはチャンスでもあるんだぜ?それに、ディアーナの嬢ちゃんを裏切るヤツが早めに見つかった事も、考え様によっちゃあラッキーでもある。いざと言う時に後ろから寝首をかかれなくて済むからな。モノは考え様、ってな。」
「なるほど・・・、確かに・・・。」
「むしろディアーナの嬢ちゃんは、今回の事で、強力な『武器』を持つ事となった訳だ。コイツが持つ『情報』や俺らの存在。使い様によっては、『ヒーバラエウス公国』の『敵性貴族』を一掃する事も出来るぜ?まぁ、これは嬢ちゃんの決断次第だがな。」
さっきまでは、少し自信を失っていた様だが、元々聡明な娘なのだろう。
冷静に、今現在の自身の状況を勘案し、注意深く『情報』を吟味している様だ。
「・・・一つ疑問があります。先程のアキト様の発言で、ある程度推察する事は出来ますが・・・。なぜ、私に手を貸して頂けるのでしょうか?本来、この件は『ヒーバラエウス公国』の『内輪揉め』ですわ。ここから先は、『リベラシオン同盟』は本来なら関わり合わなくとも良い“案件”です。それを、なぜ・・・?」
「それは、こちらにとっても『ヒーバラエウス公国』の国内情勢が安定した方がメリットがあるからです。先程も申し上げましたが、『食糧問題』や『鉱石類』の取引についてや、『ヒーバラエウス公国』の特殊な『魔法技術』との『技術提携』を求めて『リベラシオン同盟』は『ヒーバラエウス公国』にやって来ました。ですが、どうやらその前にそちらの問題を先に解決しなければ、その『交渉』もいつ行えるか分かりませんからねぇ~。これは、一種の『内政干渉』に当たるかもしれませんが、あいにく僕らはただの『冒険者』であり、『ロマリア王国』から派遣された『使者』でもありません。つまり、何をするのも『自由』なんです。公女殿下を自発的にお助けする事も、ね。」
と、そこに、いつの間にかローブの嬢ちゃんとの“オタトーク”を切り上げたアキトがそう発言した。
あ、ちゃんと話は聞いてはいたのね・・・。
「っ!!!」
「まぁ、とにかく、さっさとこの件を解決して、“仕事”の話をしましょう。そうすれば、僕も心置き無く『遺跡類』の調査が出来る訳ですしねっ!!!」
あ、“本音”はそれなのね。
まぁ、理由はともかく、いつも以上にアキトがやる気になってるから、この『貴族』の男や『ヒーバラエウス公国』の『悪徳貴族』連中には少し気の毒だが、まぁ、『自然災害』に見舞われたと思って諦めて貰おう。
少なくとも、“被害に遭う”って事は、そいつらに後ろ暗い事があるって訳だからな。
「とりあえず、何時までもここにいても始まりませんから、まずは“事後処理”から始めますかっ!」
「おうっ!」「うんっ!」「ハッ!」「りょ~かぁ~いっ!」
「・・・何だか面白い事になってきたねぇ~!」
「まさか、自分が“英雄譚”に関わる事になろうとはっ!!!」
「・・・有難う、御座います・・・。」
ディアーナの嬢ちゃんは、うっすら涙を浮かべて深々と頭を下げながら感謝の言葉を述べた。
やはり、多少なりとも気を張っていたのだろう。
心強い『味方』を得て、それが少し緩んだのかもしれんなぁ~。
さ~て、少しばかり忙しくなるぞぉ~。
・・・
「おっと、悪い。どうやら『タイムオーバー』の様だな。」
「あらら、まだまだ『修行』が足りませんかねぇ~?」
「いやいや、そんな事はない。っつか、短時間とは言え、常時俺を『顕在化』していられるレベルなら、今回の件で『徳を積む事』になるだろうから、かなり『霊能力』も“強化”される事になるんじゃねぇ~かな?」
「大分セレウス様の『顕在化』にも慣れてきましたからねぇ~。今なら日に数回は『顕在化』させられますし。」
「使えば使うほど、『霊能力』も“強化”されるからなぁ~。まぁ、『徳を積む事』、ほどじゃないがな。」
「なるほど。では、また就寝前にでも。」
「おう、じゃあな。」
そう言うと、セレウス様は光の粒となって消えてしまいました。
何を言ってるか分からないと思いますが、私にも何が起こってるのか分かりません。
リリとレティシアも、私同様にポカーンッとしております。
「あの、アイシャ様・・・。私の目の錯覚でしょうか?セレウス様が消えてしまわれた様に見えましたけれど・・・。」
私は、恐る恐る『鬼人族』のアイシャ様と名乗られた方にお声を掛けました。
「ああ、うん、大丈夫っ!アキトの『心の中』に還っただけだからっ!!」
「「「・・・はっ???」」」
「お三方・・・。私から申し上げるのはアレなのですが、主様やセレウス様がなさる事に一々反応されていては、この先身が持たないかと存じます。」
「そうだねぇ~、あんまり気にしない方が良いよぉ~?ボクらも“事情”は知ってるけど、正直よく分かってないのが実情だし。まぁ、ダーリンとセレウス様にはボクらの『常識』は通用しないから、とりあえずそれだけ分かっておけば良いよぉ~?」
『エルフ族』のティーネ様、『ドワーフ族』のリサ様も続けて忠告されました。
一体どういう事でしょうか?
「さて、んじゃ始めますかねぇ~・・・。」
しかし、その後、私達は、アキト様達と深く関わる様になってから、その言葉の意味を目の当たりにする事となりましたーーー。
誤字・脱字などありましたら、ご指摘頂けると幸いです。
今後の参考の為にも、ブクマ登録、評価、感想等頂けると幸いです。よろしくお願いいたします。
また、もう一つの投稿作品、「遊び人・ハヤトの異世界事件簿」も本作共々ご一読頂けると幸いです。




