アルメリアからの依頼
続きです。
アベルとジールの子孫達“人類”は、この地上の生存競争を勝ち抜き、文明を持つに至っていた。
しかし、『楽園』を追放した後も“人類”の往く末を見ていた『天空神ソラテス』は、人々の“心”に悪が蔓延っている事に心痛めていた。
『神々の石板』に触れ、『神々』と同じ『知恵』を持つに至り、己の『似姿』として『自由意思』を与えられた人々だったが、それを正しき事には使わずに、悪しき事にしか使わなかったからだ。
自分で額に汗して働くよりも、他人から奪う方が楽だと“堕落”してしまったのである。
そうした末に、地上には暴虐と悪徳が溢れかえったのだった。
その事を『天空神ソラテス』は嘆き、『人』を創造した事をひどく後悔した。
そして『天空神ソラテス』は言った。
「私は、創造した『人』を地上から消し去ろう。『人』をはじめとして、家畜やはうもの、空の鳥に至るまで。私は、これらを創造した事を失敗だと思うからだ。」
そうして、『天空神ソラテス』は、『天』より大雨を降らせ、この地上を浄めるべく、大洪水を引き起こし、“人類”を一掃しようとしたのだった。
しかし、そこにロトという若者がいた。
彼は、『天空神ソラテス』の御心に叶う、清く正しい“心”の持ち主であった。
『天空神ソラテス』は、その若者の存在に、全てを洗い流す事を思い留まり、ロトに『方舟』を建造する事を命じたのだった。
「ロトよ。私はこれよりのちに、大洪水を引き起こし地上を浄めるつもりだ。だが、そなたが私の言う通りの『方舟』を造るのならば、そなたとその家族の命、動物達の命は助けよう。」
「おお、偉大なる我らが父よ。御心に従いましょう。」
ロトはその言葉通りに『方舟』を建造し、『方舟』を完成させた彼は、彼の家族と地上にいるありとあらゆる動物をつがいで『方舟』に乗り込ませたのだった。
『方舟』の完成を待っていたかの様に、『天空神ソラテス』の言葉通りに『天』より大雨が降り注ぎ大洪水を起こして、『方舟』以外の全てのものが洗い流されていった。
その大洪水は40日40夜に及んだが、ようやく鎮まった時には、『方舟』は『アルゴダ山』に流れ着いていた。
こうして、『天空神ソラテス』との約束を守ったロト達は、『祝福』を受け、『人』や動物は全滅の危機を免れたのだったーーー。
ー『アクエラ創世記 方舟』の記憶の断片よりー
◇◆◇
みなさん、ご無沙汰しております。
アキト・ストレリチアです。
僕も13歳になり、この世界では、と言うか、『ロマリア王国』では『成人』した事に相成りました。
ま、だからと言って、僕は二度目の『成人』ですから、今さら“心境的”に大きな変化がある訳でもないのですがね・・・。
それよりも、僕の中での大きな変化は、ようやく“レベル500”に到達した事でしょうか?
『ゲーム』でもそれなりに時間が掛かる“レベリング”ですが、それを『リアルの世界』でやるとなると、実際体験してみて分かりましたが、時間が掛かるとかそういうレベルではありませんでした。
なんせ、こちらの世界に『転生』してから、毎日休まず様々な事を学んで、それでも干支が一回りする時間を経てもなお到達出来なかったので、“レベル500”に至るのが如何に困難かがお分かり頂けるかと思います。
これが『ゲーム』ならば、大抵の人はある程度のところでサジを投げるのではないでしょうか?
今やほとんど『習慣化』しましたが、途中から気分はどこかの“修行僧”や“修験者”みたいでしたから。
また、アルメリア様の『加護』がなければ、いくら僕が『英雄の因子』と言う特殊な『能力』があったとしても、“レベル500”に至るのは無理だったかもしれません。
以前にも言及しましたが、ただ『ゲーム』の様に『モンスター』や『魔獣』を狩り続けるだけでは“レベル500”には至れないからです。
先程“たとえ”として出した“修行僧”や“修験者”の様に、俗世を捨てて“修行”に没頭したとしても、この世界ではせいぜい“S級冒険者クラス”で頭打ちになるのが関の山でしょう。
そうした意味では、この世界の『システム』は相当“カラい”のかもしれませんね。
さて、そんな僕ですが、半ば『限界突破』の『試練』を放棄しようかと考えていました。
前述の通り、“レベル500”に至るのには相当な時間を要しましたし、この世界の『偉人』とか『英雄』と呼ばれる者達でさえ、そこに至ったのは『歴史的』にも極わずかです。
『リベラシオン同盟』を設立して、『ライアド教・ハイドラス派』と事を構える覚悟の出来ている僕ですし、それには『武力』がないよりはあった方が良いのも理解しています。
しかし、もちろん今現在この世界に“レベル500”に至った僕と同等の存在はいないと言う計算もあったのですが、『モチベーション』を保てる自信が無かった、ぶっちゃけこれ以上の“レベリング”が面倒になったってのもありました。
所謂、一種の『燃え付き症候群』だったのですね。
だけど、“今”はちょっと“事情”が変わりまして、『限界突破』をせざるをえなくなりました。
その“事情”とは、アルメリア様との会話にさかのぼります。
・・・
「鏡さんよくないっスかっ?」
「バッカおめー、片桐さん一択だろーがよっ!」
この『おっぱい女神』、いよいよスーファ〇だけでは飽きたらず、初代プレ〇ステーションにまで手を出していた。
今やっているのは、不朽の名作『ときめ〇メモリアル』だ。
いや、鏡さんもいいんだけど、つーか全員可愛いんだけど、当時の僕のハートを射抜いたのは片桐さんだ。
そこは、やはりおっさん(今現在は13歳の少年だが)になっても譲れない(ちなみに2では一文字さん推しだ。いやこちらも全員可愛いんだけどねっ!?)。
「って、そーではなく。何か“用事”があったんじゃないんですか?」
あーだこーだと、二人でしばらく『攻略』を進めていたのだが、ハッと気付いて僕はアルメリア様に質問した。
まぁ、多少流されてしまったが(つーかやっぱり『前世』の『マンガ』・『アニメ』・『ゲーム』の様な『娯楽』に飢えているのかもしれんが)、呼び出されていた事をはたと僕は思い出していた。
「えっ?・・・ああっ!そうでしたっスねっ!?」
この女神も“素”で忘れとったな・・・。
まぁ、僕も人の事は言えないけど。
ちゃんと『セーブ』してから、『電源(?)』を消して、おほんっとアルメリア様は神妙な顔で僕に向き直った。
いや、今さら取り繕っても遅いんだが・・・。
『私室限定』の『装備』である、ジャージにドテラ、ボサボサ髪に黒ぶちメガネは健在だし・・・。
いや、今さらあえてツッコミもせんが。
「まずはアキトさん。“レベル500”達成おめでとうございますっスっ!」
「・・・えっ?あっ、マジすか。ようやく“レベル500”したんですねー。」
「・・・何だか反応が薄いっスねぇ~。この世界では『歴史的快挙』っスよ?もうちょい喜んでもいいんじゃないっスか?」
「いや、そうは言われましても・・・。」
以前にも言及したと思うが、この世界では『ステイタス』を『ゲーム』の様に自分で“開く”事が出来ない。
なので、大抵の場合は、村や町、都市部の行政機関や『冒険者ギルド』などにある『魔道具』で、定期的に“更新”する事を推奨している。
そうしなければ自分の『ステイタス』を確認する事が出来ないからである。
まぁ、僕らの場合は少し特殊で、アルメリア様に“見て”貰えば即座に確認する事も出来るのだが、これも以前言及したが、レベル400を越えてからは『パラメーター』に『数値的』な変化は一切ないのである(実際には“内在的”に変動しており、490から500にかけてその分が一気に上がる様だが)。
それ故、僕は面倒になってレベル400を越えた辺りから“更新”をサボりがちになっていた。
“更新”をしないと『レベルアップ』しないって訳でもなかったしねー。
ただ、『レベルアップ』による『数値上』の変化は、『ステイタス』由来の身体能力にも直に影響するので、多少の“違和感”は出てしまう。
それ故、定期的に“更新”する事は、己の“力量”を再確認する上でも理にかなっているのである。
ま、僕みたいにそこら辺を“感覚”で『調整』しちゃう人もいるけどねー。
あんまりオススメはしない方法なんだけど・・・。
そんな訳もあり、何とも感慨もないまま僕は“レベル500”に到達していたのだった。
いや、もちろん嬉しい気持ちや達成感もあるにはあるが、それよりも長かったなぁ~って気持ちの方が大きかったのである。
「ま、それは良いっス。“本題”はここからっスから。あっ、後で“更新”はしときましょうねっ?」
「あっハイ。」
“更新”をサボってた事を咎める様に、アルメリア様に笑顔で『圧』をかけられ、僕は反射的にそう返事を返した。
ふうっと雰囲気を変えて、アルメリア様は真剣な表情で再度口を開いた。
「それで“本題”なんスけど、諸々の“事情”でワタシのこの『生体端末』も想定より早めに保てなくなりそうなんっスよ。」
「あぁ~・・・。何かすいません・・・。」
これには僕も思い当たる節があった。
元々、今のアルメリア様は自立型の『生体端末』であり、この世界の『一級管理神・アルメリア』とは別の『側面』、『忘れられた神』にして『英雄』の『導き手』として彼女は『シュプール』にいる。
当初は『15年』ほどで『生体端末』が保てなくなると言っていたが、僕らが『リベラシオン同盟』を設立し、その事にも間接的だが“協力”して貰った結果、それが『負担』になったのだと思われる。
『世界』に対して『不干渉』の理に抵触している可能性があるからだ。
「いえ、それはワタシが好きでやった事っスからお気になさらずに。それに、かなり早めにアキトさんも“レベル500”しましたし、後は『限界突破』の『試練』をクリアして頂ければ、ワタシの『導き手』としての『役目』も終わるっスからね。」
「あぁ~、それなんですけど・・・。」
「いえ、アキトさんのおっしゃりたい事は分かるっスよ。これだけ『時間』が掛かった“レベリング”を再度行うモチベーションが持てないって事っスよね?」
流石に長い付き合いなので、アルメリア様には僕の考えはお見通しだった様だ。
やる事はやるし、一度『ハマる』とアレなのだが、基本僕は“めんどくさがり屋”だしねー。
「それに関しては、アキトさんの考えも分かるんスけど、ちょっとマズイ状況になったので、是が非でも『限界突破』の『試練』を受けて頂く必要が出てきたっスよ。」
「マズイ状況?」
コクリとアルメリア様は頷いた。
「アキトさん。以前お話した『失われし神器』・『召喚者の軍勢』の事は覚えていますか?」
「ああ、あれから結構時間も経ちましたし、『ハイドラス派』が再び『召喚者の軍勢』を使用でもしたんですか?」
僕は、ニルが混乱の内に持ち去った『失われし神器』の事を思い出していた。
「その通りっス。で、その結果、とんでもない事になりまして・・・。」
「???」
苦々しい顔でアルメリア様は呟く。
「アキトさんは『フルダイブ技術』とか『VRMMORPG』とかって“言葉”に聞き覚えがあるっスか?」
「もちろんです。これでも年季の入った『オタク』でしたからねぇ~。」
某作品等の大ヒットで意外と“最近”みたいな印象があるが、この手の『仮想現実』や『仮想世界』を取り扱った作品は、結構昔からあるジャンルの一つだ。
当然『オタク』として僕もそのジャンルの事は知っている。
「なら話は早いっスね。“今現在”の『地球』では、その『フルダイブ技術』や『VRMMORPG』が現実のモノとなったんスよ。」
「ええっ!?マジすかっ!?『技術』の進歩ってすげぇなぁ~。」
僕の『地球時代』にも、すでに『VR技術』はあったけど、あれは主に『視覚』だけを取り扱ったモノだった。
まぁ、それでも“VR元年”だ何だと凄く盛り上がっていたけれど、それが『フルダイブ技術』ともなると多くの『オタク』達(だけではないと思うが)が“夢想”したであろう『物語の“中”に入る』事が可能になったと言う事だ。
いち『オタク』としては、僕も是非とも『体感』してみたいモノである。
・・・いや、ちょっと待てよ?
このタイミングでその話をするって事はっ・・・?
「えっ?もしかして・・・」
「お気付きになりましたか?以前にもお話したっスけど、おそらく『召喚者の軍勢』の『効果』は、『地球』の『神話』や『伝承』・『伝説』等、そして『ゲーム』などの『データ』を『再現』する事だと思われるっス。これに『フルダイブ技術』が絡んでくると・・・。」
「・・・『異世界人召喚』、とかっ?」
ハハッと軽く笑いながらそう言ってみたのだが、アルメリア様は神妙に頷いた。
Oh、マジかよ・・・。
「正確には、とある『VRMMORPG』の『アバター』を『召喚』したんスけど、『アバター』と“リンク”していた『プレイヤー』の“魂”も一緒にくっついて来てしまったんスよ。」
「うわぁ、それは何とも・・・。災難ですねぇ~。」
僕も正確な『フルダイブ技術』の概要までは知らないが、おそらく『仮想現実』と『プレイヤー』を『電気信号』で繋ぐ事が“キモ”である筈だ。
つまり、本来なら途方もない『エネルギー』を使う筈の『召喚魔法』や『異世界転生』・『異世界転移』ではあるが、『召喚』されたのは『データ』である『アバター』のみであった筈なので、『召喚者の軍勢』の『効果』での『召喚』が可能だった。
しかし、不幸な事に向こう側で『フルダイブ技術』が発達した事により、『アバター』と“リンク”で繋がっていた『プレイヤー』の“魂”も『アバター』と一緒にくっついて来てしまい、こうした“イレギュラーな形”で『地球人』が喚び出されてしまったと言う事なのだろう。
当然、『元の肉体』から“魂”、この場合は『脳機能』になると思われるが、が離れてしまったので、『元の肉体』は『地球』では『脳死』と判定されて『処理』されている事だろう。
まぁ、そもそも『地球』に“帰る方法”も、今現在は分かっていないから、そこの心配をするだけ無意味なんだが・・・。
「それどころの騒ぎじゃないっスよっ!『召喚』されてしまった『地球人』達の『アバター』は、全員アキトさんと同じく“レベル500”なんス。彼等自身には、アキトさんの様な特殊な『能力』は元来備わっていなかったっスけど、“次元”を越えた影響か、『召喚者の軍勢』の影響かは分かりませんが、特異な『異能』を発現してる様なスよ。つまり、限りなくアキトさんに近しい“存在”になっているって事っスよっ!?」
「ふむ、それは凄いな・・・。それがアルメリア様が『限界突破』を勧める理由ですか?」
『召喚』したのが『ライアド教・ハイドラス派』である以上、僕やその『地球人』達の立場や気持ちはともかく、『敵対』する可能性は高い。
しかも、僕と同等の『力』を持つとなれば、僕も“レベル500”に胡座をかいている場合じゃない、と言う事だろうか?
「いやいや、お忘れっスか?今回は意図的でないにしても、『異世界』から“魂”を『召喚』してしまったっスよ?しかも、アキトさんに近しい“存在”で、なおかつ、ルドベキア先輩とも『リンク』で繋がっている訳でもないっスよっ!?」
「あっ・・・。」
忘れてた・・・。
別の『世界線』の『霊的エネルギー』がこちらの世界に与える影響を・・・。
「『世界』のバランスの崩壊・・・!?」
「そうなんっスよっ!しかも、『導き手』のポジションは当然ながら『至高神ハイドラス』になりますので、今さら今のワタシが『介入』したところで、『縁』を打ち消す事も難しいんスよぉ~。アキトさんと違って、ルドベキア先輩との『リンク』がある訳でもないっスから。」
「そりゃ、マズイですねぇ・・・。」
今現在のこの世界では、『失われし神器』を使用しない限り『召喚魔法』や『異世界転生』・『異世界転移』はほぼ不可能なので、今までそれについて考える必要もなかった。
前回に『召喚』されて、『パンデミック』を引き起こした『モンスター』や『魔獣』も、元は何らかの『ゲーム』の『データ』の再現だった様なので、もちろん“魂”を持っていた訳ではない。
なので、『世界』に与える影響は、『パンデミック』以上のモノではなかった。
しかし、今回はもちろん不幸な事故だとは思うが、“魂”を持つ『地球人』が『召喚』されてしまった。
なおかつ、彼等は僕に近しい“存在”、つまり『英雄の因子』所持者と同等の『力』を持つ者達、強力な『魂』のエネルギーを持つ別の『世界線』の者達であり、しかも、『至高神ハイドラス』との『縁』が結ばれてしまっている。
それ故、すでに影響が出ているのか、はたまた彼等の死後に影響が出るのかは知らないが、この世界に多大な『悪影響』をもたらす可能性があるのか・・・。
「影響はすでに出ているっスよ。アキトさんの場合は、『魂』のエネルギーは『英雄の因子』の『能力(『事象起点』など)』に変換されるので、『悪影響(厳密には『世界』に影響を与えるのだが『悪影響』ではない)』を出さないっスけど、それを持たない『地球人』達は、『魂』のエネルギーを制御出来ていないっス。今は微々たる量ですが、本格的に何らかの“アクション”を起こし始めると、どうなるかはワタシにも分からないっスね。そもそも、こんな“ケース”は初めてっスからね。」
「・・・対策はあるんですよね?」
『召喚』されてしまった『地球人』達が悪い訳では当然ないが、彼等を起点とした『世界』のバランスの崩壊、すなわち、天変地異や生態系の変質や変化が起こる可能性がある。
それどころか、このまま何もしなければ、この世界がアルメリア様でさえ予測出来ない事態になるおそれがあるのだ。
こちらの世界に生きる者として見過ごせない状況であった。
(そもそも、僕の本来の目的は『冒険者』になって『古代魔道文明』や『空飛ぶ都市』の『遺跡』を発見・発掘する事だ。
まだ、その“冒険”にも出ていないのに、『世界』が崩壊しては困ると言った個人的な事情もある。)
「もちろんっス。アキトさんの『限界突破』。これが“鍵”を握っているっス。」
「ふむ、そこに繋がる訳ですか・・・。アルメリア様が僕に『限界突破』を勧めていた理由は分かりました。しかし、僕が『限界突破』したところで意味はあるんでしょうか?」
「ええ。おそらくアキトさんは『限界突破』をただの『レベル上限』の解放だと思っていると思います。しかし、この世界でもその“真実”に辿り着いた者達は、一部の『神々』以外にはいないかもしれませんが、『限界突破』とはすなわち、・・・ああっ!!??」
「だ、大丈夫ですかっ!?」
瞬間、以前も一度目撃した事があったが、アルメリア様の『輪郭』に“ノイズ”が走った様にぼやけた。
・・・もしかして『制約』に抵触したのだろうか?
「・・・アハハッ、だ、大丈夫っス。だけど、やっぱりワタシから“真実”をお話する事は難しいっスねぇ~。アキトさんお一人に色々なご負担をお掛けしてしまうのは心苦しいのですが・・・。」
そういえば、以前『祖霊』・シルウァも“真実”がどうとか言っていたな。
もしかして、『限界突破』もこの世界の『根幹』に関わる話なのかもしれない。
「まぁ、それは仕方ないでしょう。アルメリア様が気に病む必要はありませんよ。よくわかりませんが、要するに僕が『限界突破』をする事で、『世界』のバランスを崩壊する事態を回避出来るって事ですよね?」
コクリとアルメリア様は頷いた。
「先程も言いましたが、ワタシのこの『生体端末』もそう長く持ちそうにないですし、今見た様に、ワタシから“真実”を語る事も出来ません。なので、せめてもの“アドバイス”として、『限界突破』の『試練』の“方法”だけでもお伝えするっス。その後の事は、アキトさんにお任せする事になるっスが・・・。」
「まぁ、何とかしますよ。仲間達もいますしね。」
流石に自分一人では無理かもしれないが、僕にはこれまでのこの世界の生活で得た、頼りになる仲間達がいるのだ。
アルメリア様がいなくなったとしても、やってやれない事はない筈だ。
「そう、っスね。アイちゃん達も、アキトさんほどではないにしても、“レベル500”に近しい者達。アキトさんの『英雄の因子』の『能力』を使えばあるいは・・・。」
「・・・あの、アルメリア様?」
ブツブツと呟くアルメリア様に、僕は訝しげに声を掛ける。
「ああ、すいませんっス。それで、『限界突破』の『試練』の“方法”なんスけど、名のある『竜』とタイマンで勝つ事っス!」
「いやいや、無理ゲーじゃないっスかっ!?」
確かに“レベル500”に到達した(だろう)僕だが、タイマンで『竜』と戦り合うのは流石に無謀と言うモノだ。
『竜種』は、この世界でも『最強種』の一角であり、正に『伝説』とか『伝承』にうたわれる“存在”だ。
しかも名のある『竜』となると、その強大な『力』は強いとか弱いとかの次元を越えている。
流石、『試練』と言うだけあって、とんでもない無理難題を出すモノである。
「でも、アキトさんなら“勝算”はあるっスよね?」
「いや、まぁ、無い事は無いですが・・・。」
そもそも、『純粋』な『竜種』はその強大な『力』故に、“絶対数”が少ないので、『人間種』の『領域』で出逢う確率は極めて低い、と言うかほぼ無いと言って差し支えない。
とは言え、『竜種』の中でも『亜竜種』に分類される『ワイバーン』などの『下位種』は、『知能』も『モンスター』や『魔獣』程度故に、『人間種』の『領域』で出逢う事もある。
『下位種』とは言っても、『竜種』の端くれなので、他の『モンスター』や『魔獣』とは一線を画した“強さ”だが、何の因果か、僕はそいつらとは何度か戦り合った経験がある。
その経験に加え、『伝説』や『伝承』を紐解いて『情報』を集めたり、『竜種』の『行動パターン』をシミュレーションしたりして、しっかり“対策”を立てて挑めば、例え名のある『竜』と言えど、今の僕なら“勝算”はある。
まぁ、あるにはあるが、出来れば戦いたくはないんだけどねー。
「はぁ~、前言撤回したくなってきましたよ。『限界突破』する必要がなければ、拒否してましたよ、いやマジでっ!」
「まあまあ、そうおっしゃらずに。アキトさんだけが頼りなんスよぉ~。」
「はぁ~・・・。」
いくら(おそらく)今現在この世界(ほぼ)最強の“存在”になった僕だが、別にどこぞの“戦闘民族”の様に『闘い』が好きな訳ではない。
こちらに世界に来てから、色々“変化”したが、基本的に『ヘタレ』なんだから、僕は。
まぁ、やらねばならないから、『覚悟』を決めるしかないのだが・・・。
「となると、名のある『竜』を探すところから『試練』はスタートしてるんですかね?」
「いえいえ、アイちゃんの『故郷』の近くにいるっスよ?」
「ああっ!確か『山の神』と呼ばれる『竜』でしたっけ?アイシャさんに『英雄』の事を教えた。」
そういえば昔、アイシャさんからその様な説明を受けた記憶があるなぁ~。
「けど、一応『鬼人族』の皆さんに『信仰』されている“存在”でしょうに・・・。そんな『竜』と戦り合って大丈夫なんですかね?」
『鬼人族』の皆さんに恨みを買う様な事態は出来れば避けたいのだが・・・。
「それについては大丈夫だと思うっスよ?『鬼人族』の皆さんは基本的に『脳筋』なので、腕自慢の方々は、年に数えるほどですけど、『山の神』に挑む方々もいるみたいっスから。まぁ、アキトさんは『人間』ですけど、『力』を示せば『鬼人族』も認めてくれるでしょうし、問題ないっスよ。」
「ハハハッ、そういえば身近に“戦闘民族”いたんだった・・・。」
着実に僕の“退路”は塞がれている訳ね。
「はぁ~、じゃあ、まぁ、準備を始めますか・・・。」
「頑張って下さいねっ!」
キラキラと良い笑顔でアルメリア様は僕を鼓舞した。
何か腹立つな・・・。
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現時点でのアキトのステイタス。
名前:アキト・ストレリチア
性別:男
種族:人間
職業:リベラシオン同盟・実動部隊リーダー
年齢:13歳
レベル:500
HP:4812
攻撃力:4924
防御力:4862
力:4831
耐久:4715
器用さ:4931
敏捷性:4964
素早さ:4973
知性:5000
精神:5000
運:982
魅力:5000
魔素感受性:100
魔法習熟度:1000
(特記事項:『英雄の因子』所持者
発現能力:九死一生・言語理解・神格化・事象起点・変幻自在・精神感応(※『悪感情』限定)
『リベラシオン同盟』・実動部隊リーダー
称号:英雄、戦士、魔法使い、結界術士、魔闘気使い、魔獣使い、狩人、農夫など
特殊技能:槍術、棒術、杖術、剣術、体術、魔法、結界術、魔闘気、交渉術など)
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