『ノクティス・フィーリウス』
続きです。
◇◆◇
ジュリアン側は、極秘裏に『情報屋』を介して『掃除人』と接触していた。
ジュリアン側の『依頼』を受けた『掃除人』チーム・『ノクティス・フィーリウス』は、協議の末、ダールトンが方々で『募集』を掛けていた『技術者移住計画』に紛れ込み、『ルダの街』に『潜入』するプランで合意した。
一応、『冒険者パーティー』として『潜入』するプランや、『仕事』を求めて『移住』してきた『平民』を偽り『潜入』するプランもあったのだが、そうなると少人数故に、今現在の『ルダの街』の現状を考えると特に怪しい事ではないが、やはり目立ってしまう。
しかし、これが『技術者移住計画』となると纏まった人数が動く事になるので、『ノクティス・フィーリウス』が目立つ事もない、と言う訳である。
「・・・後の事は『ノクティス・フィーリウス』の皆さんにお任せします。くれぐれも、『我々』の存在は内密にお願いしますよ?」
「承知しておりますとも。後は、我々にお任せ下さい。我々も、『掃除人』と言えども、信用が大事です。『依頼主』の『秘密』は守りますよ。それに、高い『前金』を貰っていますしね。」
王都『ヘドス』の『スラム街』、その場末の『酒場』にて、『掃除人』チーム、『ノクティス・フィーリウス』の『リーダー』・ギールとジュリアンの『使者』は密会していた。
『ノクティス・フィーリウス』を『技術者移住計画』の一員に仕立てあげる『裏工作』が終わり、後は『潜入』するだけとなった。
ジュリアンの『使者』がその事を伝え、最終確認を『ノクティス・フィーリウス』にしていたのだった。
それに、朗らかな様子の『外面』で応えるギール。
ジュリアンの『使者』は、その『正体』を悟らせない様にマントを目深に被っていたものの、その口元は若干の不安や恐怖からか、はたまたこの『場』の不衛生さからかは分からないが、酷く歪んでいた。
どうにか平静さを装って、『使者』は無言で金貨一枚を机に置くと、軽い会釈をすると足早に『酒場』を出て行った。
「ヒュ~ッ♪豪気だねぇ、『御大尽』ってのは。リーダー、今回の『依頼人』は当たりじゃね~の?一体何者なんだろうなぁ~?」
『使者』が去ると、何処からともなくギールに素早く近寄り、金貨を指で弄びながら二十歳そこそこの青年がそう言った。
「口を慎め、シュマイト。何時もの様に、『依頼人』の詮索は無しだ。『欲』をかくと、命がいくつあっても足りないからな。」
「へ~い。」
「それほどか?」
ややむっつりした陰鬱な印象の青年が物影から現れ、ギールにそう問いかけた。
「ああ、そうだ、アルファー。『前』で50、『後ろ』で100だ。」
「ひゃ、150っ!?法外も良いとこじゃねーかっ!?確かに、命がいくつあっても足りねーな・・・。『口止め料』込みってこったろ?」
「そうだ、ドゥクサス。おそらく、相当に有力な『貴族』だろうが、それ以上の詮索は止めとけ。消されるぞ?」
やはり物影から現れたスキンヘッドの厳つい青年は、顔を歪めながらそう感想を漏らした。
「りょ~か~い♪ま、俺も『ヤられる』より『ヤル方』が好きだし、『報酬』さえ貰えれば何でもいいよぉ~。で、『ターゲット』と『取り分』は?」
ヘラヘラとしながらも、シュマイトは目付きだけはギラギラした様子に変わる。
それには、ギールも苦笑しながら、無言で『似顔絵』を机に放り投げた。
「『ターゲット』は3人。『リベラシオン同盟』とか言う『組織』の『中核人物』だそうだ。
『ルダの街』・町長のダールトン・トーラス。
『ルダの街冒険者ギルド支部』・『ギルド長』・ドロテオ・マドリッド。
後は、一部で噂の『魔獣の森の賢者』・アルメリア・ストレリチアの弟子で、『ルダ村の英雄』・アキト・ストレリチアだ。」
「おいおい、ガキが混じってるじゃね~か。」
「『相手』が誰だろうと関係ない。俺達は、ただ『依頼』をこなすだけだ。」
「そうだな。それと、『取り分』は、『前』を『チーム分』で10、後は各自10ずつだ。『後ろ』は山分けとする。『チーム分』は俺が預かるが、異論は?」
「異議な~し♪」
「ない。」
「俺もだ。ただ、『ターゲット』が3人なら、俺らも1人あぶれちまうな。」
「それは逆にラッキーだろっ♪『サポート』に回ってこんだけの『報酬』が入るなら美味しいじゃね~か♪」
「・・・そういう考え方もあるか。」
「ま、今日は『御大尽』様の残してった『金貨』でパァ~ッとやろうぜ♪」
「そうだな。今日は久々に『街』の方に行ってみるか?」
「いや~、別に『スラム街』でい~だろ?『金貨一枚』じゃあ『街』で飲み食いしたら、すぐすっとんじまうぜ~?その点、『スラム街』なら『女』買ってもお釣りがくるしさ~♪」
「それもそうだな。『街』へは、『報酬』が入ったら個人的に行けばいいか。」
「だな。」
王都『ヘドス』にも、『光と闇』が存在する。
この王都は、中心部に『王城』があり、その外周部を『貴族街』と呼ばれる『貴族』や『特権階級』が住む『街』があり、更にその外周部を『平民街』・『下町』・『農作地』と続いていく。
『ノクティス・フィーリウス』が『街』と呼称するのは、風光明媚な街並みや、歴史的建造物、『一般市民』や『商人』でごった返す市場など、一般的には『平民街』と呼ばれる『ロマリア王国』でも『エリート』である『平民』が暮らす街の事である。
この『平民街』の者達が『エリート』と呼ばれているのは、『貴族』達の『家』で働く『使用人』達だからである。
それ故、この世界の『一般市民』としては珍しく、高い『教養』と『スキル』を持っている。
とは言っても、『学力差』故に、やはり『貴族』達には遠く及ばないのだが・・・。
逆に、ロマリア王国の中枢である『王城』には『平民』はよほどの事がない限り入る事も叶わない。
それこそ、『王城』で働く者達は、『貴族』や『特権階級』の者達に限られてくるからである。
『王城』は、ロマリア王国の『政治』の『中心』であり、『王族』や『貴族』や『特権階級』が集結する場所なので、当然ながら警備も非常に厳重であった。
さて、では『スラム街』はどこに位置するかと言うと、『下町』と呼ばれる、所謂『普通』の『市民』達が暮らす『町』の一角である。
この『下町』で暮らす者達は、周辺で働く『農民』が主で、その他は様々な『職人』や『冒険者』、『商人』などもここに居を構えている者も多い。
『平民街』に比べると、ややグレードは下がるが、人々で賑わう『大衆酒場』や『大衆食堂』、『歓楽街』なども存在する。
『スラム街』は、そんな『平民街』や『下町』の『光』の部分とは対極の『闇』の部分であり、そこには様々な『事情』を持つ者達が細々と暮らしている。
所謂『戦災孤児』だったり、『娼婦・男娼』の住みか兼商売場所だったり、『犯罪者』の隠れ蓑だったり色々である。
『闇ギルド』とも関わりの深い場所であるが、こうした場所もある意味では必要なのかもしれない。
世の中『綺麗事』ばかりではない。
『掃除人』チーム・『ノクティス・フィーリウス』も、元は別々の冒険者達だったが、今現在ではそれぞれ『犯罪者』として『指名手配』されている身である。
殺人・強盗・強姦などなど、様々な『犯罪』行動の末に『冒険者ギルド』を追われ、王都の『スラム街』にそれぞれ流れ着いたのだった。
しかし、元・冒険者としての経験や卓越した腕もあり、『政敵』を『物理的』に消したい『貴族』には使い勝手の良い『取引相手』でもあった。
野に下った『盗賊団』が所謂『チンピラ』だとしたら、『掃除人』達は『プロ』である。
『金銭』さえ支払えば、『掃除人』達は何でもやる。
更に、『依頼人』の『秘密』は守るし、それを『ネタ』に『脅し』をかける事もない。
と、言うか、そうした『下手』を打つ者達は、すぐに消される。
基本的に『掃除人』達は『犯罪者』が多いしその『仕事内容』も『非合法』な事もあり、法整備の整っていないこの世界では、『権力者』側からしたら、『処分』しても全く問題にならない『人種』だからである。
その事を『熟知』している者達だけが生き残れる。
『自然界』とは違うが、『スラム街』も、ある意味『生存競争』の『場』であった。
そんな中で、『ノクティス・フィーリウス』は、他の『掃除人』チームより頭一つ飛び抜けたチームであり、特にリーダーのギールは『スラム街』では知られた男であった。
ギールは、三十路そこそこの強面だが不気味な魅力を放つ男で、その本質は冷酷かつ残虐であるが、TPOに合わせた『外面』を使い分ける高い知能も持っていた。
犯罪や暴力がはびこる『スラム街』において、住人や他の『掃除人』達からは『悪のカリスマ』として畏敬の念を持たれている男だった。
その『資質』故に、『闇ギルド』とも繋がりを持ち、『幹部待遇』として迎え入れる用意もあるとの『噂』もあるのだが、本人は『現場』にこだわり、それを丁重に断っているらしい。
彼が欲しているのは、『権力』ではなく、『血』と『闘争』、それも『人間種同士』の殺し合いに魅せられた、やはり何処か狂っている男でもあった。
「いつも悪いなマスター。」
「いえ、いいんですよ、ギールの旦那。ウチも助かってますから。」
「『仕事』前の景気付けだ。じゃんじゃん飯と酒を用意してくれ。マスターも一杯やってくれよ。」
「ありがとうございます。」
薄汚れた『スラム街』の場末の『酒場』は、『掃除人』達の『仲介所』でもあった。
『掃除人』達は、その『職業柄』、堂々と『看板』を掲げる事は出来ない。
『スラム街』は、ある種の『治外法権』とは言え(『貴族』側からの『圧力』故に、『憲兵』や『騎士団』などの所謂『警察機構』が無闇に踏み込めない)、生き残っている『掃除人』達は非常に慎重だからである。
それ故、『掃除人』に『仕事』を『依頼』する際には、まず『情報屋』を探す事から始めなければならない。
その『情報屋』から『酒場』の存在と『キーワード』を買い、『酒場』でマスターと『キーワード』のやり取りをして、初めて『掃除人』に繋がる。
もちろん、マスター自身も『依頼者』の『目利き』をする。
このマスターは、所謂『法・秩序』側の『人間』は、『経験則』と『ニオイ』で判別出来る。
『仕事内容』と『依頼人』をそれほど選ぶ事はない『掃除人』達だが、流石に捕まりたい訳ではない。
その『試験』にパスした『依頼者』だけが、『掃除人』と接触出来るシステムである。
それ故に、『掃除人』達はこのマスターに全幅の信頼を寄せている。
『無法者』や『異常者』も多い『掃除人』達だが、『暗黙の了解』でマスターの前でだけは、借りてきた猫状態である。
普段どれだけ対立していようとも、『酒場』での『争い』は御法度であった。
それはギールも『ノクティス・フィーリウス』も同様で、『酒場』では大人しく、とまではいかないまでも、暴れる事も諍いを起こす事もなかった。
「しばらくはマスターの飯ともお別れだな~♪」
「どちらか遠くへ『御出張』で?」
「そっ、『トラクス領』の『ルダの街』にね~♪」
「どんなに早く『依頼』を片付けても、戻ってくるのには一ヶ月以上は掛かると思う。」
「それはそれは。『稼ぎ頭』の旦那方がいらっしゃらないとなると、『酒場』も閑古鳥が鳴いてしまいますなぁ。」
「何言ってんです、マスター。俺らの他にも腕のある『掃除人』はいるでしょうに・・・。」
ジュリアン側の『使者』が去ってから、今現在に至るまで『酒場』には『ノクティス・フィーリウス』とマスターしかいない。
ある意味『ノクティス・フィーリウス』の貸切状態で、『仕事』前の宴会を楽しんでいた。
「いえ、ここだけの話なんですがね・・・。」
「どうしたんだ?」
若干シブい顔をして、マスターはギール達に声のトーンを落として話し始めた。
「最近、どうも『異変』が起きてる様でして、『お得意様』だった『貴族』様方が、続々と『失脚』してる様なんですよ・・・。まぁ、あくまで『噂』なんですが、少し『客足』が遠退いているのは事実ですからなぁ。平和なのは『一般市民』には良い事でしょうが、我々の様な『人種』には『死活問題』ですよねぇ。」
「ふむ、気になる話だな・・・。」
「いやいや、とは言っても、『掃除人』みてーな『仕事』が無くなる事はね~だろ♪今はちょっと『転換期』ってだけで、その内また『客足』も戻るんじゃね~の?」
「そうだな。『人間』は愚かな『生き物』だ。もしかしたら『客層』は変わるかもしれんが、この『仕事』が無くなる事はないだろう。」
「つっても、『客足』が途絶え気味なら、今回の『仕事』は渡りに船だな。しばらくは遊んで暮らせるだけの『報酬』だしよぉ。」
「・・・。」
「どしたん、リーダー?」
「いや、少し気になる話だからな。一応、『情報屋』に調べさせておくかと思ってな・・・。」
「心配性だな~、リーダーは♪」
「私も、それとなく『情報』を集めておきますよ。『御出張』からお戻りの際には『詳細』も分かる事でしょう。」
「助かる。」
「いえ、お互い様ですからな。」
「ま、それはそれとしてよ~♪今日はナタリーちゃん空いてっかな~♪」
「シュマイト、お前な・・・。」
「いやいや、アルファーもドゥクサスも好きなくせに~♪」
「お、俺はべ、別に・・・。」
「これは気が付きませんで。すぐに遣いをやりましょう。ナタリーさんなら、『ローザンヌグループ』にも声を掛けさせましょうかね?」
「サンキュー、マスターッ♪」
「「・・・。」」
「まぁ、良いんじゃないか?『出張中』は、女も抱けない状況になるだろうしな。」
マスターが『裏』に引っ込むと、ギールがそうフォローした。
「・・・まぁ、そうだな。下手に諍いを起こすと目立ってしまうしな。」
この『宴会』も、そして『女遊び』も、『ノクティス・フィーリウス』なりの『仕事』に入る前の『儀式』であった。
『掃除人』の『仕事柄』、その『仕事内容』は『暗殺』が大半を占める。
それ故、『仕事中』は目立つ事は避けなければならず、『ノクティス・フィーリウス』の持つ『異常性』を封印しなければならない。
しかし、それだけでは『ストレス』が溜まってしまう為、『仕事』前にそれを上手く『コントロール』する為に派手に遊ぶのだ。
ある種の『験担ぎ』の様なモノである。
「お待たせしました。すぐにいらっしゃるそうですよ。」
「やっほ~♪しばらくは遊べないから、今日は楽しませて貰うぞ~♪」
「シュマイトのこういう所は羨ましいな。見習いたくは無いが。」
「全くだ。」
シュマイトの様子に、呆れた様な表情を浮かべるアルファーとドゥクサス。
ギールも、肩を竦めながら安酒を煽っていた。
と、マスターの言葉通り、派手な化粧とセクシーな衣装に身を包んだ女性達が、すぐに駆け付けて来た。
「シュマイトさ~ん、御指名ありがと~。」
「ナタリーちゃ~ん♪」
「『御出張』ですって~?」
「そ~なんだよ♪しばらく会えないから、今日は目一杯可愛がってあげるね~♪」
「やだ、エッチ~。」
シュマイトは、お気に入りのナタリーと早速イチャつき始める。
「ギールさん達も、御指名ありがと。」
「ああ、悪いな、ローザンヌ。」
「いや、アンタ達ならいつでも歓迎だよ。もちろん、お代は頂くけどね?」
妖艶なローザンヌの冗談混じりの言葉に、一同はドッと沸き上がった。
「後、ギールさん達は女の子達を壊さないでおくれよ?シュマイトさん以外、女に興味ないフリして凄いんだから・・・。アンタ達も、大変だったら『ヘルプ』呼びなよ!」
「「「・・・。」」」
「ギャハハハッ~♪リーダーもアルファーもドゥクサスも、ローザンヌ姐さんに言われてやんの~♪俺みてぇに素直になりゃ~い~のにね~、ナタリーちゃん♪」
「ウフフッ、そうね。」
ローザンヌに突っ込まれて、バツの悪い顔を浮かべるギール達。
その後、『酒場』に現れた『綺麗所』達を一人ずつ引き連れて、『ノクティス・フィーリウス』の『スラム街』での夜は更けて行くのだったーーー。
◇◆◇
「・・・今日もか・・・。」
朝、目を覚ました僕は、ベッドの上の状況をボーッと確認すると、そう独り言を呟いた。
基本的に、『シュプール』は小さな『旅館』並みに部屋数が多いので、それぞれ『個人部屋』を割り当てている。
と、言っても、『ホブゴブリン』達も好き勝手に部屋だったり、屋根裏だったり、様々な場所にいるので、選べる部屋数も限られてくるのだが、それでも今現在は部屋が余る事はあっても、部屋が足りなくなる事はない。
今現在の部屋割は、僕、アルメリア様、アイシャさん、ティーネ、ハンス、ジーク、ユストゥス、メルヒ(現在出張中)、イーナ(現在出張中)、リーゼロッテさんが『一人部屋』で、ドニさんとシモーヌさんのブリュネル夫妻が同室、アランくんとエレオノールちゃん兄妹が同室である。
その他には、『リハビリ』中の助けた『他種族』の人達も滞在中である。
ところが、どうやら僕はこの兄妹に気に入られた様子で(まぁ、『歳』も近いし、『子ども』同士だしね・・・。言ってて、少し悲しくなってくるが)、夜になると僕の部屋に突撃してくる。
どうやら一緒に寝たいらしい。
慕ってくれるのは僕も嬉しいので、それを許容していたのだが、ある日、エレオノールちゃんが『爆弾発言』をかましてから、状況が少し変わってしまったのだった。
「リサお姉ちゃんも一緒に寝ようよ~!」
「「「っ!!??」」」
「いやいや、それはマズイでしょ。」
「なんで~?」
いや、そんなキョトンとした無邪気な顔で見られても困るんだが・・・。
アランくん、改め、アランも、少し照れているし、もう女性を女性として意識し始めている年頃だろう。
とは言え、僕もアランも、今だに『第二次性徴』を迎えていないので、『安全』と言えば『安全』なのだろうし、エレオノールちゃん、改め、エリーに至ってはまだ幼すぎてその『意味』もよく分かっていないんだろうけど。
しかし、僕は『前世』の『記憶』を持つ『精神年齢』40オーバーのおっさんである。
何かある訳ではないが、色々な意味で『精神衛生上』よろしくない。
「・・・そうだね、一緒に寝よっか?」
「「っ!!!???」」
「ホント~!?やった~!!」
「いやいや、リサさんも何言ってんですっ!?」
リーゼロッテさん、改め、リサさんの発言に、僕は慌ててツッコミを入れる。
「別にいいじゃない、ダーリン。それとも、ボクと一緒は嫌、かな・・・?」
「うぅっ・・・。」
正直、嫌ではない(キッパリ)。
いや、リサさんは『ドワーフ族』故に、小柄な体躯と浅黒い肌をしているが、綺麗な顔立ちと所謂『トランジスタグラマー』な体型で、ぶっちゃけ僕の『ストライクゾーン』には入っている。
まぁ、だからこそ色々と困る訳だが、そこに追い打ちを掛ける者達がいた。
「はい、はぁ~いっ!私も一緒に寝る~!」
「アイシャさんっ!?」
「で、では、わ、私も。主様の身を守るのは、従者として当然の役目ですから・・・。」
「ティーネまでっ!?」
「アイシャお姉ちゃんとティーネお姉ちゃんもっ!?やった~!」
満面の笑みで喜ぶエリーに、僕も反論をする事を躊躇ってしまった。
(あまり期待していないが)そーっとハンス・ジーク・ユストゥスに目配せをすると、綺麗に揃って首を横に振った。
その口元は、「諦めろ・・・。」と微かに動いている。
ついで、ブリュネル夫妻の様子を窺ったのだが、ドニさんは少し苦笑気味だったが、特に何も言ってはくれず、シモーヌさんに至っては僕らの様子を微笑ましく眺めているのだった。
Oh、味方が一人もいねぇ~。
アルメリア様は、最近『自室』に籠りっぱなしだし、アランが女性陣に対抗出来る筈もない。
詰みました。
はぁ~、もうど~にでもなぁ~れぇ~(なげやり)。
と、言う事があり、僕が寝ている内に、皆忍び込んで来る様になったのだ。
今も、エリーに抱き付かれ、エリー越しにリサさんに抱き付かれ、反対側にはアイシャさんが、その横にはちょこんとティーネがいる。
アランは・・・、寝相が悪いなぁ、ベッドから落ちているよ・・・。
どうやら皆、僕が起きている内は、抵抗されるだろうと予測して寝込みを狙っている様なのだが、これでも僕は結構敏感な方だ。
基本的に、この世界は危険も多い『世界』だし、『シュプール』外だと、『街』や『村』の外は言うに及ばず、『街』や『村』の中も完全に『安全』とは言えない。
それ故、寝込みを襲われる事態も想定してアルメリア様に『訓練』を受けてきたし、そもそも『前世』でも些細な物音にも敏感な方だった。
肝が小さいと言ってしまえば、まぁそうなんだが、そんな訳で、『誰か』と一緒に寝る事はあまり得意な方ではなかった。
だと言うに、アランとエリーは最初から一緒だからまぁ良いとして、アイシャさんとティーネの『実力』は知っているのでまだ良いが、リサさんにまで『不覚』を取るのはどうなんだろう?
こう言っては何だが、リサさんの『実力』は僕らよりも随分落ちる。
それでも、おそらく『上級冒険者』クラスの『レベル』を持っているのだろうが、『戦闘系』に特化している訳でもないだろう。
何故なら、彼女は『鍛冶職人』。
『ゲーム』で言うと、『生産系』なので、『戦闘系』より『ステイタス』的にも『スキル』的にも一段落ちると言うのはよくある話である。
まぁ、この世界は『ゲーム』に似通っているが、変な所で『現実的』なので、それも絶対ではないが、傾向はやはり似たようなモノである。
なので、彼女にまで気が付かないのはどうなんだろう?と、割とどうでも良い事で悩んだフリをしてみる。
いや、理由は分かっているんですよ?
僕の『中』で(アイシャさんやティーネ達はもちろん)、アラン・エリー・リサさんを『線のこちら側』と『認識』していると言う事だ。
まぁ、簡単に言うと、『気を許している』って事なんだが、こういう風にくだらない事で頭を使っておかないと、今度は別の問題が僕の『中』で発生してしまう。
つまり、何が言いたいかと言うと、年頃の女性と同衾するのは、やはり緊張してしまう、と言う事である(照)。
何を童貞くさい事を、と思うが、っつか『今現在』は童貞でしたね、てへぺろ。
いかんいかん、落ち着け、僕。
アランは男の子だから論外だし、エリーは幼女だし、この二人は『癒される』としか感じないので良いのだが、残りの三人は問題である。
僕から見ても非常に魅力的な女性達と、まぁ前述の通り、今現在は何がある訳ではないが、一緒に寝ると言うのは『精神的』に非常に疲れる。
くだらない事でも考えてないと、妙に艶っぽい寝姿に、目を奪われてしまうのですよ、僕も健全な男子なモンで・・・。
・・・誰に言い訳してるんだろう?
はぁ~、何か朝から疲れたなぁ。
アホな事言っとらんで、『訓練』がてら『狩り』と『農作業』にでも出掛けようっと・・・。
と、言うのが、最近の僕の日常であった。
・・・いつまで保つかなぁ、僕の身体・・・。
誤字・脱字がありましたら、ご指摘頂けると幸いです。
今後の参考の為にも、よろしければ、ブクマ登録、評価、感想等頂けると幸いです。よろしくお願い致します。