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『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』  作者: 笠井 裕二
『リベラシオン同盟』発足
45/383

『ノクティス・フィーリウス』

続きです。



◇◆◇



ジュリアン側は、極秘裏に『情報屋』を介して『掃除人(ワーカー)』と接触していた。

ジュリアン側の『依頼』を受けた『掃除人(ワーカー)』チーム・『ノクティス・フィーリウス』は、協議の末、ダールトンが方々で『募集』を掛けていた『技術者移住計画』に紛れ込み、『ルダの街』に『潜入』するプラン()で合意した。

一応、『冒険者パーティー』として『潜入』するプラン()や、『仕事』を求めて『移住』してきた『平民』を偽り『潜入』するプラン()もあったのだが、そうなると少人数故に、今現在の『ルダの街』の現状を考えると特に怪しい事ではないが、やはり目立ってしまう。

しかし、これが『技術者移住計画』となると纏まった人数が動く事になるので、『ノクティス()フィーリウス()』が目立つ事もない、と言う訳である。


「・・・後の事は『ノクティス・フィーリウス』の皆さんにお任せします。くれぐれも、『()()』の存在は内密にお願いしますよ?」

「承知しておりますとも。後は、我々にお任せ下さい。我々も、『掃除人(ワーカー)』と言えども、信用が大事です。『依頼主』の『秘密』は守りますよ。それに、高い『前金』を貰っていますしね。」


王都『ヘドス』の『スラム街』、その場末の『酒場』にて、『掃除人(ワーカー)』チーム、『ノクティス・フィーリウス』の『リーダー』・ギールとジュリアンの『使者』は密会していた。

『ノクティス・フィーリウス』を『技術者移住計画』の一員に仕立てあげる『裏工作』が終わり、後は『潜入』するだけとなった。

ジュリアンの『使者』がその事を伝え、最終確認を『ノクティス()フィーリウス()』にしていたのだった。

それに、朗らかな様子の『外面(かめん)』で応えるギール。

ジュリアンの『使者』は、その『正体』を悟らせない様にマントを目深に被っていたものの、その口元は若干の不安や恐怖からか、はたまたこの『場』の不衛生さからかは分からないが、酷く歪んでいた。

どうにか平静さを装って、『使者』は無言で金貨一枚を机に置くと、軽い会釈をすると足早に『酒場』を出て行った。


「ヒュ~ッ♪豪気だねぇ、『御大尽』ってのは。リーダー、今回の『依頼人』は()()()じゃね~の?一体何者なんだろうなぁ~?」


『使者』が去ると、何処からともなくギールに素早く近寄り、金貨を指で弄びながら二十歳そこそこの青年がそう言った。


「口を慎め、シュマイト。何時もの様に、『依頼人』の詮索は無しだ。『欲』をかくと、命がいくつあっても足りないからな。」

「へ~い。」

「それほどか?」


ややむっつりした陰鬱な印象の青年が物影から現れ、ギールにそう問いかけた。


「ああ、そうだ、アルファー。『前』で50、『後ろ』で100だ。」

「ひゃ、150っ!?法外も良いとこじゃねーかっ!?確かに、命がいくつあっても足りねーな・・・。『口止め料』込みってこったろ?」

「そうだ、ドゥクサス。おそらく、相当に有力な『貴族』だろうが、それ以上の詮索は止めとけ。()()()()()?」


やはり物影から現れたスキンヘッドの厳つい青年は、顔を歪めながらそう感想を漏らした。


「りょ~か~い♪ま、俺も『ヤられる』より『ヤル方』が好きだし、『報酬(ギャラ)』さえ貰えれば何でもいいよぉ~。で、『ターゲット』と『取り分』は?」


ヘラヘラとしながらも、シュマイトは目付きだけはギラギラした様子に変わる。

それには、ギールも苦笑しながら、無言で『似顔絵』を机に放り投げた。


「『ターゲット』は3人。『リベラシオン同盟』とか言う『組織』の『中核人物』だそうだ。

『ルダの街』・町長のダールトン・トーラス。

『ルダの街冒険者ギルド支部』・『ギルド長』・ドロテオ・マドリッド。

後は、一部で噂の『魔獣の森の賢者』・アルメリア・ストレリチアの弟子で、『ルダ村の英雄』・アキト・ストレリチアだ。」

「おいおい、ガキが混じってるじゃね~か。」

「『相手』が誰だろうと関係ない。俺達は、ただ『依頼』をこなすだけだ。」

「そうだな。それと、『取り分』は、『前』を『チーム分』で10、後は各自10ずつだ。『後ろ』は山分けとする。『チーム分』は俺が預かるが、異論は?」

「異議な~し♪」

「ない。」

「俺もだ。ただ、『ターゲット』が3人なら、俺らも1人あぶれちまうな。」

「それは逆にラッキーだろっ♪『サポート』に回ってこんだけの『報酬(ギャラ)』が入るなら美味しいじゃね~か♪」

「・・・そういう考え方もあるか。」

「ま、今日は『御大尽』様の残してった『金貨(これ)』でパァ~ッとやろうぜ♪」

「そうだな。今日は久々に『街』の方に行ってみるか?」

「いや~、別に『スラム街(ここ)』でい~だろ?『金貨一枚(これぽっち)』じゃあ『街』で飲み食いしたら、すぐすっとんじまうぜ~?その点、『スラム街(ここ)』なら『女』買ってもお釣りがくるしさ~♪」

「それもそうだな。『街』へは、『報酬(ギャラ)』が入ったら個人的に行けばいいか。」

「だな。」



王都『ヘドス』にも、『光と闇』が存在する。

この王都は、中心部に『王城』があり、その外周部を『貴族街』と呼ばれる『貴族』や『特権階級』が住む『街』があり、更にその外周部を『平民街』・『下町』・『農作地』と続いていく。

ノクティス()フィーリウス()』が『街』と呼称するのは、風光明媚な街並みや、歴史的建造物、『一般市民』や『商人』でごった返す市場など、一般的には『平民街』と呼ばれる『ロマリア王国(この国)』でも『エリート』である『平民』が暮らす街の事である。

この『平民街』の者達が『エリート』と呼ばれているのは、『貴族』達の『家』で働く『使用人』達だからである。

それ故、この世界(アクエラ)の『一般市民』としては珍しく、高い『教養』と『スキル』を持っている。

とは言っても、『学力差』故に、やはり『貴族』達には遠く及ばないのだが・・・。

逆に、ロマリア王国(この国)の中枢である『王城』には『平民』はよほどの事がない限り入る事も叶わない。

それこそ、『王城』で働く者達は、『貴族』や『特権階級』の者達に限られてくるからである。

『王城』は、ロマリア王国(この国)の『政治』の『中心』であり、『王族』や『貴族』や『特権階級』が集結する場所なので、当然ながら警備も非常に厳重であった。

さて、では『スラム街』はどこに位置するかと言うと、『下町』と呼ばれる、所謂『普通』の『市民』達が暮らす『町』の一角である。

この『下町』で暮らす者達は、周辺で働く『農民』が主で、その他は様々な『職人』や『冒険者』、『商人』などもここに居を構えている者も多い。

『平民街』に比べると、ややグレードは下がるが、人々で賑わう『大衆酒場』や『大衆食堂』、『歓楽街』なども存在する。

『スラム街』は、そんな『平民街』や『下町』の『光』の部分とは対極の『闇』の部分であり、そこには様々な『事情』を持つ者達が細々と暮らしている。

所謂『戦災孤児』だったり、『娼婦・男娼』の住みか兼商売場所だったり、『犯罪者』の隠れ蓑だったり色々である。

『闇ギルド』とも関わりの深い場所であるが、こうした場所もある意味では必要なのかもしれない。

世の中『綺麗事』ばかりではない。

掃除人(ワーカー)』チーム・『ノクティス・フィーリウス』も、元は別々の冒険者達だったが、今現在ではそれぞれ『犯罪者』として『指名手配』されている身である。

殺人・強盗・強姦などなど、様々な『犯罪』行動の末に『冒険者ギルド』を追われ、王都の『スラム街』にそれぞれ流れ着いたのだった。

しかし、元・冒険者としての経験や卓越した腕もあり、『政敵』を『物理的』に()()()()『貴族』には使い勝手の良い『取引相手()』でもあった。

野に下った『盗賊団』が所謂『チンピラ』だとしたら、『掃除人(ワーカー)』達は『プロ』である。

『金銭』さえ支払えば、『掃除人(ワーカー)』達は何でもやる。

更に、『依頼人』の『秘密』は守るし、それを『ネタ』に『脅し』をかける事もない。

と、言うか、そうした『下手』を打つ者達は、すぐに()()()()

基本的に『掃除人(ワーカー)』達は『犯罪者』が多いしその『仕事内容』も『非合法』な事もあり、法整備の整っていないこの世界(アクエラ)では、『権力者』側からしたら、『処分』しても全く問題にならない『人種』だからである。

その事を『熟知』している者達だけが生き残れる。

『自然界』とは違うが、『スラム街(ここ)』も、ある意味『生存競争』の『場』であった。

そんな中で、『ノクティス・フィーリウス』は、他の『掃除人(ワーカー)』チームより頭一つ飛び抜けたチームであり、特にリーダーのギールは『スラム街(ここ)』では知られた男であった。

ギールは、三十路そこそこの強面だが不気味な魅力を放つ男で、その本質は冷酷かつ残虐であるが、TPOに合わせた『外面(かめん)』を使い分ける高い知能も持っていた。

犯罪や暴力がはびこる『スラム街』において、住人や他の『掃除人(ワーカー)』達からは『悪のカリスマ』として畏敬の念を持たれている男だった。

その『資質』故に、『闇ギルド』とも繋がりを持ち、『幹部待遇』として迎え入れる用意もあるとの『噂』もあるのだが、本人は『現場』にこだわり、それを丁重に断っているらしい。

彼が欲しているのは、『権力』ではなく、『血』と『闘争』、それも『人間種同士』の殺し合いに魅せられた、やはり何処か狂っている男でもあった。



「いつも悪いなマスター。」

「いえ、いいんですよ、ギールの旦那。ウチも助かってますから。」

「『仕事』前の景気付けだ。じゃんじゃん飯と酒を用意してくれ。マスターも一杯やってくれよ。」

「ありがとうございます。」


薄汚れた『スラム街』の場末の『酒場』は、『掃除人(ワーカー)』達の『仲介所』でもあった。

掃除人(ワーカー)』達は、その『職業柄』、堂々と『看板』を掲げる事は出来ない。

『スラム街』は、ある種の『治外法権』とは言え(『貴族』側からの『圧力』故に、『憲兵』や『騎士団』などの所謂『警察機構』が無闇に踏み込めない)、生き残っている『掃除人(ワーカー)』達は非常に慎重だからである。

それ故、『掃除人(彼ら)』に『仕事』を『依頼』する際には、まず『情報屋』を探す事から始めなければならない。

その『情報屋』から『酒場(ここ)』の存在と『キーワード』を買い、『酒場(ここ)』でマスターと『キーワード』のやり取りをして、初めて『掃除人(ワーカー)』に繋がる。

もちろん、マスター自身も『依頼者』の『目利き』をする。

このマスターは、所謂『法・秩序』側の『人間』は、『経験則』と『ニオイ』で判別出来る。

『仕事内容』と『依頼人』をそれほど選ぶ事はない『掃除人(ワーカー)』達だが、流石に捕まりたい訳ではない。

その『試験』にパスした『依頼者』だけが、『掃除人(ワーカー)』と接触出来るシステムである。

それ故に、『掃除人(ワーカー)』達はこのマスターに全幅の信頼を寄せている。

『無法者』や『異常者』も多い『掃除人(ワーカー)』達だが、『暗黙の了解』でマスターの前でだけは、借りてきた猫状態である。

普段どれだけ対立していようとも、『酒場(ここ)』での『争い』は御法度であった。

それはギールも『ノクティス(チー)フィーリウス()』も同様で、『酒場(ここ)』では大人しく、とまではいかないまでも、暴れる事も(いさか)いを起こす事もなかった。


「しばらくはマスターの飯ともお別れだな~♪」

「どちらか遠くへ『御出張』で?」

「そっ、『トラクス領』の『ルダの街』にね~♪」

「どんなに早く『依頼』を片付けても、戻ってくるのには一ヶ月以上は掛かると思う。」

「それはそれは。『稼ぎ頭』の旦那方がいらっしゃらないとなると、『酒場(ウチ)』も閑古鳥が鳴いてしまいますなぁ。」

「何言ってんです、マスター。俺らの他にも腕のある『掃除人(奴ら)』はいるでしょうに・・・。」


ジュリアン側の『使者』が去ってから、今現在に至るまで『酒場』には『ノクティス・フィーリウス』とマスターしかいない。

ある意味『ノクティス()フィーリウス()』の貸切状態で、『仕事』前の宴会を楽しんでいた。


「いえ、ここだけの話なんですがね・・・。」

「どうしたんだ?」


若干シブい顔をして、マスターはギール達に声のトーンを落として話し始めた。


「最近、どうも『異変』が起きてる様でして、『お得意様』だった『貴族』様方が、続々と『失脚』してる様なんですよ・・・。まぁ、あくまで『噂』なんですが、少し『客足』が遠退いているのは事実ですからなぁ。平和なのは『一般市民』には良い事でしょうが、我々の様な『人種』には『死活問題』ですよねぇ。」

「ふむ、気になる話だな・・・。」

「いやいや、とは言っても、『掃除人(俺ら)』みてーな『仕事』が無くなる事はね~だろ♪今はちょっと『転換期』ってだけで、その内また『客足』も戻るんじゃね~の?」

「そうだな。『人間』は愚かな『生き物』だ。もしかしたら『客層』は変わるかもしれんが、この『仕事』が無くなる事はないだろう。」

「つっても、『客足』が途絶え気味なら、今回の『仕事』は渡りに船だな。しばらくは遊んで暮らせるだけの『報酬(ギャラ)』だしよぉ。」

「・・・。」

「どしたん、リーダー?」

「いや、少し気になる話だからな。一応、『情報屋』に調べさせておくかと思ってな・・・。」

「心配性だな~、リーダーは♪」

「私も、それとなく『情報』を集めておきますよ。『御出張』からお戻りの際には『詳細』も分かる事でしょう。」

「助かる。」

「いえ、お互い様ですからな。」

「ま、それはそれとしてよ~♪今日はナタリーちゃん空いてっかな~♪」

「シュマイト、お前な・・・。」

「いやいや、アルファーもドゥクサスも好きなくせに~♪」

「お、俺はべ、別に・・・。」

「これは気が付きませんで。すぐに遣いをやりましょう。ナタリーさんなら、『ローザンヌグループ』にも声を掛けさせましょうかね?」

「サンキュー、マスターッ♪」

「「・・・。」」

「まぁ、良いんじゃないか?『出張中』は、女も抱けない状況になるだろうしな。」


マスターが『裏』に引っ込むと、ギールがそうフォローした。


「・・・まぁ、そうだな。下手に(いさか)いを起こすと目立ってしまうしな。」


この『宴会』も、そして『女遊び』も、『ノクティス()フィーリウス()』なりの『仕事』に入る前の『儀式』であった。

掃除人(彼ら)』の『仕事柄』、その『仕事内容』は『暗殺』が大半を占める。

それ故、『仕事中』は目立つ事は避けなければならず、『ノクティス()フィーリウス()』の持つ『異常性』を封印しなければならない。

しかし、それだけでは『ストレス』が溜まってしまう為、『仕事』前にそれを上手く『コントロール』する為に派手に遊ぶのだ。

ある種の『験担ぎ』の様なモノである。


「お待たせしました。すぐにいらっしゃるそうですよ。」

「やっほ~♪しばらくは遊べないから、今日は楽しませて貰うぞ~♪」

「シュマイトの()()()()()は羨ましいな。見習いたくは無いが。」

「全くだ。」


シュマイトの様子に、呆れた様な表情を浮かべるアルファーとドゥクサス。

ギールも、肩を竦めながら安酒を煽っていた。

と、マスターの言葉通り、派手な化粧とセクシーな衣装に身を包んだ女性達が、すぐに駆け付けて来た。


「シュマイトさ~ん、御指名ありがと~。」

「ナタリーちゃ~ん♪」

「『御出張』ですって~?」

「そ~なんだよ♪しばらく会えないから、今日は目一杯可愛がってあげるね~♪」

「やだ、エッチ~。」


シュマイトは、お気に入りのナタリーと早速イチャつき始める。


「ギールさん達も、御指名ありがと。」

「ああ、悪いな、ローザンヌ。」

「いや、アンタ達ならいつでも歓迎だよ。もちろん、お代は頂くけどね?」


妖艶なローザンヌの冗談混じりの言葉に、一同はドッと沸き上がった。


「後、ギールさん達は女の子達を()()()()()()()()()?シュマイトさん以外、女に興味ないフリして凄いんだから・・・。アンタ達も、大変だったら『ヘルプ』呼びなよ!」

「「「・・・。」」」

「ギャハハハッ~♪リーダーもアルファーもドゥクサスも、ローザンヌ姐さんに言われてやんの~♪俺みてぇに素直になりゃ~い~のにね~、ナタリーちゃん♪」

「ウフフッ、そうね。」


ローザンヌに突っ込まれて、バツの悪い顔を浮かべるギール達。

その後、『酒場』に現れた『綺麗所』達を一人ずつ引き連れて、『ノクティス()フィーリウス()』の『スラム街』での夜は更けて行くのだったーーー。



◇◆◇



「・・・今日もか・・・。」


朝、目を覚ました僕は、ベッドの上の状況をボーッと確認すると、そう独り言を呟いた。



基本的に、『シュプール』は小さな『旅館』並みに部屋数が多いので、それぞれ『個人部屋』を割り当てている。

と、言っても、『ホブゴブリン(妖精執事)』達も好き勝手に部屋だったり、屋根裏だったり、様々な場所にいるので、選べる部屋数も限られてくるのだが、それでも今現在は部屋が余る事はあっても、部屋が足りなくなる事はない。

今現在の部屋割は、僕、アルメリア様、アイシャさん、ティーネ、ハンス、ジーク、ユストゥス、メルヒ(現在出張中)、イーナ(現在出張中)、リーゼロッテさんが『一人部屋』で、ドニさんとシモーヌさんのブリュネル夫妻が同室、アランくんとエレオノールちゃん兄妹が同室である。

その他には、『リハビリ』中の助けた『他種族』の人達も滞在中である。

ところが、どうやら僕はこの兄妹に気に入られた様子で(まぁ、『歳』も近いし、『子ども』同士だしね・・・。言ってて、少し悲しくなってくるが)、夜になると僕の部屋に突撃してくる。

どうやら一緒に寝たいらしい。

慕ってくれるのは僕も嬉しいので、それを許容していたのだが、ある日、エレオノールちゃんが『爆弾発言』をかましてから、状況が少し変わってしまったのだった。


「リサお姉ちゃんも一緒に寝ようよ~!」

「「「っ!!??」」」

「いやいや、それはマズイでしょ。」

「なんで~?」


いや、そんなキョトンとした無邪気な顔で見られても困るんだが・・・。

アランくん、改め、アランも、少し照れているし、もう女性を女性として意識し始めている年頃だろう。

とは言え、僕もアランも、今だに『第二次性徴』を迎えていないので、『安全』と言えば『安全』なのだろうし、エレオノールちゃん、改め、エリーに至ってはまだ幼すぎてその『意味』もよく分かっていないんだろうけど。

しかし、僕は『前世』の『記憶』を持つ『精神年齢』40オーバーのおっさんである。

何かある訳ではないが、色々な意味で『精神衛生上』よろしくない。


「・・・そうだね、一緒に寝よっか?」

「「っ!!!???」」

「ホント~!?やった~!!」

「いやいや、リサさんも何言ってんですっ!?」


リーゼロッテさん、改め、リサさんの発言に、僕は慌ててツッコミを入れる。


「別にいいじゃない、ダーリン。それとも、ボクと一緒は嫌、かな・・・?」

「うぅっ・・・。」


正直、嫌ではない(キッパリ)。

いや、リサさんは『ドワーフ族』故に、小柄な体躯と浅黒い肌をしているが、綺麗な顔立ちと所謂『トランジスタグラマー』な体型で、ぶっちゃけ僕の『ストライクゾーン』には入っている。

まぁ、だからこそ()()と困る訳だが、そこに追い打ちを掛ける者達がいた。


「はい、はぁ~いっ!私も一緒に寝る~!」

「アイシャさんっ!?」

「で、では、わ、私も。主様(あるじさま)の身を守るのは、従者として当然の役目ですから・・・。」

「ティーネまでっ!?」

「アイシャお姉ちゃんとティーネお姉ちゃんもっ!?やった~!」


満面の笑みで喜ぶエリーに、僕も反論をする事を躊躇ってしまった。

(あまり期待していないが)そーっとハンス・ジーク・ユストゥスに目配せをすると、綺麗に揃って首を横に振った。

その口元は、「諦めろ・・・。」と微かに動いている。

ついで、ブリュネル夫妻の様子を窺ったのだが、ドニさんは少し苦笑気味だったが、特に何も言ってはくれず、シモーヌさんに至っては僕らの様子を微笑ましく眺めているのだった。

Oh、味方が一人もいねぇ~。

アルメリア様は、最近『自室』に籠りっぱなしだし、アランが女性陣に対抗出来る筈もない。

詰みました。

はぁ~、もうど~にでもなぁ~れぇ~(なげやり)。



と、言う事があり、僕が寝ている内に、皆忍び込んで来る様になったのだ。

今も、エリーに抱き付かれ、エリー越しにリサさんに抱き付かれ、反対側にはアイシャさんが、その横にはちょこんとティーネがいる。

アランは・・・、寝相が悪いなぁ、ベッドから落ちているよ・・・。

どうやら皆、僕が起きている内は、抵抗されるだろうと予測して寝込みを狙っている様なのだが、これでも僕は結構敏感な方だ。

基本的に、この世界(アクエラ)は危険も多い『世界』だし、『シュプール』外だと、『街』や『村』の外は言うに及ばず、『街』や『村』の中も完全に『安全』とは言えない。

それ故、寝込みを襲われる事態も想定してアルメリア様に『訓練』を受けてきたし、そもそも『前世』でも些細な物音にも敏感な方だった。

肝が小さいと言ってしまえば、まぁそうなんだが、そんな訳で、『誰か』と一緒に寝る事はあまり得意な方ではなかった。

だと言うに、アランとエリーは最初から一緒だからまぁ良いとして、アイシャさんとティーネの『実力』は知っているのでまだ良いが、リサさんにまで『不覚』を取るのはどうなんだろう?

こう言っては何だが、リサさんの『実力』は僕らよりも随分落ちる。

それでも、おそらく『上級冒険者』クラスの『レベル』を持っているのだろうが、『戦闘系』に特化している訳でもないだろう。

何故なら、彼女は『鍛冶職人』。

『ゲーム』で言うと、『生産系』なので、『戦闘系』より『ステイタス』的にも『スキル』的にも一段落ちると言うのはよくある話である。

まぁ、この世界(アクエラ)は『ゲーム』に似通っているが、変な所で『現実的』なので、それも絶対ではないが、傾向はやはり似たようなモノである。

なので、彼女にまで気が付かないのはどうなんだろう?と、割とどうでも良い事で悩んだフリをしてみる。

いや、理由は分かっているんですよ?

僕の『中』で(アイシャさんやティーネ達はもちろん)、アラン・エリー・リサさんを『線のこちら側(身内)』と『認識』していると言う事だ。

まぁ、簡単に言うと、『気を許している』って事なんだが、こういう風にくだらない事で頭を使っておかないと、今度は()()問題が僕の『中』で発生してしまう。

つまり、何が言いたいかと言うと、年頃の女性と同衾(どうきん)するのは、やはり()()してしまう、と言う事である(照)。

何を童貞くさい事を、と思うが、っつか『今現在』は童貞でしたね、てへぺろ。

いかんいかん、落ち着け、僕。

アランは男の子だから論外だし、エリーは幼女だし、この二人は『癒される』としか感じないので良いのだが、残りの三人は問題である。

僕から見ても非常に魅力的な女性達と、まぁ前述の通り、今現在は何がある訳ではないが、一緒に寝ると言うのは『精神的』に非常に疲れる。

くだらない事でも考えてないと、妙に艶っぽい寝姿に、目を奪われてしまうのですよ、僕も健全な男子なモンで・・・。

・・・誰に言い訳してるんだろう?

はぁ~、何か朝から疲れたなぁ。

アホな事言っとらんで、『訓練』がてら『狩り』と『農作業』にでも出掛けようっと・・・。

と、言うのが、最近の僕の日常であった。

・・・いつまで保つかなぁ、僕の身体・・・。



誤字・脱字がありましたら、ご指摘頂けると幸いです。


今後の参考の為にも、よろしければ、ブクマ登録、評価、感想等頂けると幸いです。よろしくお願い致します。

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