披露宴 3
続きです。
◇◆◇
「は、始めまして、英雄殿っ!お会い出来て光栄ですっ!」
「は、はぁ・・・」
「英雄殿はいつまでもお美しくていらっしゃいますわねぇ・・・。女の私から見ても、羨ましく思えますわぁ〜・・・」
「は、はぁ。ありがとうございます(?)。」
披露宴会場各所で、政治的な大人の駆け引きだったり、ある種の見定めが行われる中、とある人物の周辺は、それとはまた違った賑わいを見せていた。
その中心人物は、誰あろう、アルフォンスであった。
以前にも言及したが、今現在のアルフォンスは、エルフ族の代表的な立場であると同時に、マーティン商会のスポンサーにしてセレスティアの先生でもあった。
それ故に、こうして披露宴に招待されるのは不思議な話ではないのである。
(まぁ、ここら辺は、三国、というか人間族と『新人類』達の溝を何とかしようとしたカドックとノリスの計画も多分に含まれていたのであるが。)
しかし彼には、もう一つの重要な肩書が存在していた。
魔王軍との戦いにおいて、多大な功績を挙げた“英雄”、である事である。
もっとも、魔王軍との戦争自体、もはや数十年前の話になる。
それ故に、今の若者達はそれを実際に体験した世代ではないのであるが、中年以上の者達は実際にそれを体験した世代であり、そしてこうした場に集まる者達の中には、アルフォンス達の英雄譚を実際に見聞きした者達も多く集まっていたのである。
そんな者達からしたら、アルフォンスの存在は、向こうの世界で言うところのスーパースターに等しい。
しかもアルフォンスは、エルフ族の特性として、それだけの時間が経ったにも関わらずいまだ十代半ばほどの見た目であり、なおかつこちらもエルフ族の特性として、非常に整った容姿をしていた。
そうした事もあって、それなりに歳を重ねた紳士然としていた招待客も、憧れのスターに会った少年の如く目をキラキラさせていたり、マダム達や淑女達は、そのアルフォンスのあまりの美しさに、ため息を吐いたりしている、という中々にカオスな事となっていたのである。
その様はまさに、有名人の握手会か何か、という様相を呈していた。
(はぁ・・・)
流石のアルフォンスも、ひっきりなしに握手や挨拶を求められて辟易していた。
誰にもバレない様に、ひっそりと溜め息を吐いたりするほどである。
とは言えど、ここで人々を邪険に扱う事も出来ない。
先程も述べた通り、今現在のアルフォンスはエルフ族の代表的立場でもあるので、彼の行動がそのまま、エルフ族の評判に関わってきてしまうからである。
それにここでトラブルを起こすと、わざわざ招待してくれたカドックやノリス、バルドやセレスティアの顔に泥を塗る事にもなるので、彼からしたら、不本意ではあるが、このまま大人しく“握手会”を続けるしかなかったのであった。
「や、やったっ・・・!握手して貰ったぞっ!!!」
「・・・良かったですね。貴方は、昔から英雄殿には憧れを抱いていましたし。」
「ああ。本当は彼らの様な“冒険者”になる事が夢だったからなぁ〜。まぁ、諸々の事情によってそれは不可能だったんだが・・・。」
しかし、その甲斐あって、この場におけるアルフォンスの評判は上々であった。
まぁそれは、若干アルフォンス本人、つまり“英雄”というものに対する好意的な感情だった事は否定出来ないが、こうした事を繰り返していけば、エルフ族、ひいては『新人類』そのものにそうした感情が波及していく可能性もある。
(ちなみに余談だが、この時代においては、現在の様な“冒険者”という職業はまだ確立していない。
それ故に、彼が発した“冒険者”というのは職業的な事柄ではなく、単純にアルフォンス達の様に魔物達から人々を守ったりした者達、というニュアンスが近い。)
「・・・もしよろしければ、一度英雄殿を我が家に招待されてはどうでしょう?」
「それだっ!せっかくこうしてお近づきになれた訳だし、一度我が家にお招きして、ゆっくりと英雄譚をお聞かせ願うのも良いかもしれんなっ!」
パートナーの提案に、中年紳士はその手があったか、と興奮していた。
ここら辺が、こうした場の重要なところであった。
全く関わりのない者を招待するのはかなりハードルが高いが、曲がりなりにも一度挨拶を交わし、こうした場で顔を合わせる事によって、そこに“知り合い”という関係性が構築される事となる。
そうなれば、何かしらのパーティーを開催する際、その者に招待状を送っても、それは不自然な事ではなくなるのである。
所謂貴族、あるいは高い社会的立場を持つ者達が、わざわざ面倒なパーティーに参加する理由は、その繋がり、人脈を築き上げる為なのであった。
まぁ、それはともかく。
こうして、つつがなくイベントが進行していく中、ここで突如としてアクシデントが発生するのだったーーー。
・・・
どこの世にも、過激な思想を持つ者達というのは一定数いる。
もちろん、どの様な主義や思想を持ったとしても、それはその者の自由ではあるが、それで人々に迷惑をかけるのであれば、それがどんな御大層な主張であったとしてもあまりよろしい事ではないだろう。
まぁ、それはともかく。
「・・・・・・・・・」
その者は、表面上は大人しくバルドとセレスティアへの挨拶の順番待ちをしていた。
ここで少し話は変わるが、古来よりこうした場、何かしらの目的で人々が集う場というのは、暗殺の場としても非常に適していたりする。
何故ならば、そこにターゲットが確実にやって来る事が分かっているからであり、なおかつ“お披露目”という体裁もある為に、多少セキュリティが甘くなる事が往々にしてあるからである。
実際、向こうの世界の近代においても、パレードの最中に狙撃される、式典の最中に狙撃される、などという事案が発生している。
もちろん、そうした要人などには当然の如く警護が着いている訳であるが、不特定多数が多く集まる場では犯罪者が紛れ込む事も容易であり、いかに護衛対象を守り切る事が困難であるか、という事が、これらの事案からも如実に現れている訳であった。
「…それでは」
「ええ。ありがとうございました。」「ありがとうございました。」
「・・・っ!!!」
来た。
その者は思った。
自分の前の招待客が、バルドとセレスティアとの挨拶を終えて、いよいよ自分の番が回ってきたからである。
その者は、極度の緊張感から喉はカラカラ、目の前もやっと見える程度、といった感じになっていたが、(要らぬ)使命感から、何とかバルドとセレスティアの前に立つのだった。
「ほ、本日はお招き頂きまして、誠にありがとうございますっ!」
「いえ…」「ようこそ、お越し下さいました…。」
掠れる声で何とか絞り出した言葉によって、二人との会話が成立していた。
が、どことなく様子のおかしいその者に、バルドとセレスティアも不審に思っていた。
もっとも、どちらかと言えば善良な二人からしたら、体調でも悪いのだろうか?、という程度の単純な認識だったのかもしれないが。
しかし、すでに走り出してしまったその者からしたら、周囲の反応など気にかける余裕もない様であった。
「…実はお二人に、いえ、正確には奥様に、なのですが、贈り物がございます。」
「はぁ。」「何でしょう?」
何回も頭の中でシミュレーションを繰り返したのだろう。
先程の第一声とは裏腹に、その次の言葉は非常にスムーズに出てきた。
二人も、その者の言葉が気になったのだろう。
懐に忍ばせたその者の手に、二人は注視していた。
ここで一旦話は変わるが、向こうの世界の現代のイベント等においては、来場客の手荷物を検査する事が往々にしてある。
これは、暗殺とはまた違ったベクトルではあるが、何かしらの妨害などを狙ってか、危険物を持ち込もうとする者も中にはいるからである。
しかし、この場における会は、“結婚披露宴”という体であり、なおかつもっと広義の意味では、人々の交流の場でもある。
それ故に、相手の機嫌を取ろうとする目的で、贈り物をする事自体は咎められてはいない=手荷物検査は実施されていないのである。
それは、こうした者からしたら好都合だった。
スラリッ、と抜き身の短刀がその者の手には握られていた。
「っ!?」「っ?」
「あの世に送ってやるよ、“魔女”めっ!!!」
ギラリと危険な目をしたその者は、そのまま短刀を腰だめに構え、セレスティアに突撃した。
あまりに咄嗟の事に、バルドはもちろん、アルフォンスから色々と指導を受けていたセレスティアでさえ、それに何の反応も出来なかったのであった。
ここら辺は、達人とそうでない者達の境目なのだろう。
超一流の使い手ともなると、見てから判断する、のではなく、もはや無意識レベルで勝手に身体が危険に対処する為に反応してくれる。
しかし、そこに到達していない者達(そちらの方が大半なのだが)は、どれほど高い技術を持っていても、見て、考えて、行動する、というプロセスを起こす必要があるので、どうしても一瞬の隙が生まれてしまうのである。
殺ったっーーー!
その者は、自身の行動が半ば成功した事を確信していた。
確かに、このタイミングなら、確実にセレスティアを刺す事が出来た事だろう。
しかも、彼は抜け目のない事に、この短刀に毒も仕込んいる。
それ故に、たとえこれが致命傷にならなくとも、かすり傷だけでも彼の目的は達成されるのである。
・・・しかし残念な事に、彼は素人故に、所謂“本物”という存在を知らなかったし、そもそもそんな存在が現れる事さえ考えてもみなかったのである。
クルッーーー!
「・・・・・・・・・へっ?」
突然、その者の世界は反転した。
視界に捉えていた筈のセレスティアが突然いなくなり、空が見え、次いで地面が見えたのである。
もちろん、それを正しく認識する事すら出来なかった事だろう。
次の瞬間、その者が感じる事が出来たのは、激しい痛みだったからである。
「ガハッーーー!!!」
一瞬、呼吸する事すら出来ずに、その者は地面をのたうち回っていた。
「・・・困りますよ、お客様。本日の主役に、こんなものを向けられては・・・」
「・・・っ!!!???」
その者は、ようやく自分がいつの間にか転ばされた事に気付き、声のする方に目だけ向けられた。
そして驚愕する。
そこには、セレスティアと自分の間にいつの間にか割り込んでいた者がいたからであり、あまつさえ、先程まで自分が握っていた筈の短刀がその者の手にあったからである。
「い、いつの間に・・・」
「いえ、最初から居ましたが?」
しれっと答えるエルフ族の青年。
そう。
最初から、バルドとセレスティアの周囲には、彼の様な、所謂“護衛”が配置されていたのであった。
しかも、エルフ族という、ある意味ではその者がもっとも目の敵にする『新人類』が、である。
では何故その者は、彼らの存在に気が付けなかったのか?
答えは意外とシンプルで、彼らが“隠形”を使っていたからであるーーー。
アルフォンス達英雄四人組は、昨今の情勢もあって、いや正確には人間族との国交が回復した時点から、所謂“諜報活動”に力を入れていた。
情報の重要性など今更議論するまでもなく、いや、むしろ人間族と比べたら圧倒的に少数である『新人類』達にとっては、情報の取得こそ生き残る為には最優先事項である事から、特に“諜報活動”に力を入れるのはある意味当然の流れであろう。
で、実はアルフォンスがマーティン商会のスポンサーとなったのも、エルフ族の経済活動の活性化はもちろんだが、この“諜報活動”の一環でもあったのである。
特に“商人”という存在のもとには、交易を介して人、物、情報が集まる。
彼らは情報を使って、世の中のトレンド、つまり、人々が今何も求めているか、という事を読み取り商売に活かす訳であるが、逆に言えば、それを応用すれば、世の中では今何が起こっているか、を読み取る事も出来る訳である。
これらの活動の結果、イアード率いる教団が最近台頭して来た事。
その一部が、過激な思想を持ち始めた事。(まぁ、これも、自然発生的に起こった訳ではなく、ある程度イアードらに誘導されていた訳であるが。)
その過激派が何やら不穏な動きを見せている事、などが分かっていた訳である。
こうした情報があれば、当然、『新人類』達は自国の警戒レベルを上げる訳である。
そして、更に深読みすれば、自分達に味方しているマーティン商会、とりわけその中でも、特殊な能力を持つセレスティアが狙われる可能性が高い事も予測出来る訳なのである。
(その内容はともかく、自分達を裏切った、と考えられる者達が害を受ける事はよくある話である。
例えば、政治的対立によって他国に亡命した者とか、もっと身近な例で言えば、不正や違法行為を是正する為にあえて内部告発した者が攻撃を受ける事もよくある話だからである。)
これらの事からセレスティアには、常日頃から(本人も知らぬ間に)“護衛”が着いていたのであった。
彼らの力量は、“英雄”として覚醒したアルフォンスに次ぐレベルであった。
当然である。
彼らは、アルフォンスの直弟子達だからだ。
もちろん、覚醒を果たしたカエサルやアルフォンス達ほどの力は持ってはいなかったが、元々の身体能力は人間族を凌駕している上に、森で生きる者として高いレベルの“隠形”を納めていた。
更には、エルフ族特有の“精霊魔法”まで扱う事も出来る、まさに精鋭中の精鋭だったのである。
セレスティアを狙った賊が、アッサリ返り討ちに遭うのも無理からぬ話なのであった。
では、簡単に時系列を整理しておこう。
まず彼らは、自然と同化する形で、この披露宴が始まった時から、実はセレスティアらの周囲に待機していた。
その“隠形”は完璧の一言であり、招待客はもちろん、護衛対象であるバルドもセレスティアでさえ、その存在を知らなかったのだから、あくまで素人に毛が生えた程度の賊が気が付けなかったのも無理はない。
そして、賊が行動に起こした事を察知して、即座にセレスティアと賊の間に割って入り、勢い良く突っ込んでくる賊の足を払って一回転させると同時に、その手に握られた短刀を掠め取っただけなのである。
まぁ、言うは易し行うは難し、ということわざもある通り、それをアッサリやってのけた彼らの力量が凄まじいだけであり、通常のSPや護衛では、これほど見事な対処は不可能だった事だろう。
まぁ、そんな訳で。
「おぉ〜い、大丈夫かい?」
「はい、師匠。この程度の輩では、我々の警戒を突破する事など不可能ですよ。」
彼らが賊を拘束していると、招待客に囲まれていた筈のアルフォンスも一足遅れて現場に到着していた。
「えっ・・・!?み、皆さん・・・?」
何が起こったのか分からない、といった様子だったバルドとセレスティアだったが、見知った顔が現れると、ようやく状況を理解した様であった。
「ど、どうされましたっ!」「何事ですかっ!?」
そこに、アルフォンスより更に数分遅れて、この会の実質的な主催者であるカドックとノリスも現場に到着する。
それに、アルフォンスが対応する。
「いえ、ちょっとしたアクシデントですよ。もう、問題は解決しましたので、お二方は、皆さんへの説明をお願いします。」
「は、はぁ・・・」「い、一体何が・・・」
「かいつまんで説明しますと、セレスティアを狙った賊が紛れ込んでいたのです。ですが、彼は私の弟子達が拘束しました。それ故に、すでにこの場は安全です。まぁ、何故そんな事になったのか、という疑問はありますが、そこは賊から聞き出せば分かる事でしょう。」
「なるほど・・・」「流石ですな・・・」
アルフォンスの説明に、カドックとノリス(ついでにバルドとセレスティア)も納得していた。
そして、この様な事態をアッサリと解決してみせたエルフ族達の手腕に感心し、更に彼らへの信頼をより強固なものとしたのであった。
「くそっ、離せっ!」
「おっと、他の方々の目につくのは外聞が悪い。彼には即刻退場して貰おう。皆、頼んだよ。」
「お任せ下さい。」
往生際の悪い賊を見やると、アルフォンスは弟子達にそう指示を飛ばした。
他の招待客達も、異変を察知してザワザワと騒ぎ始めてしまったからである。
アルフォンスの弟子達は、打てば響く様にサッと賊を連行すると、屋敷の奥へと引っ込んでいった。
「・・・我々も行きますか。」「ですな。」
それを見ると、後の事は彼らに任せて、自分達は自分達でこの場の収拾を図る為にカドックとノリスも行ってしまった。
そして、この場にはバルドとセレスティア、アルフォンスだけが残された。
「・・・大丈夫かい、セレスティア?」
「え、ええ。少しビックリしてしまっただけよ。」
その場にへたり込む、様な事はなかったが、流石に青褪めた表情でブルブルと震えていたセレスティアに、バルドは優しく声をかける。
無理もない。
これまでにセレスティアは、心ない言葉などによって迫害を受けた事はあったかもしれないが、流石に暴力を振るわれた経験はなかったからである。
しかも、相手は明らかに自分を殺す事が目的だったのだ。
むしろ、それでも冷静さを保っているのは、曲がりなりにもアルフォンスの指導を受けた事があるおかげだろう。
「無理もないよ。命を狙われたんだ。それで平気でいられる方が、どうかしているだろう。」
アルフォンスも、それに理解を示し、優しくそう語った。
「だが、悪意ある存在、ってのは、どこに潜んでいるかも分からないものさ。君達には迷惑な話かもしれないが、望むと望まざるとに拘らず、これからもこういう事態は発生するかもしれない。もちろん、私の弟子達に護衛はさせるつもりだが、二人も多少の覚悟をしておいた方が良いだろう。」
「「・・・・・・・・・」」
その言葉に、バルドとセレスティアは複雑な表情を浮かべた。
しかし、二人はそういう立場なのである。
セレスティアの事情を除いたとしても、バートン家ほどの影響力を持つ家の次期後継者ならば、所謂“暗殺”という手段に出る輩がいたとしても不思議な話ではないし、そのパートナーであれば、同じくターゲットとなる可能性は高い。
もちろん、アルフォンスの言う通り、彼の弟子達は非常に優秀であるから、先程の様にそれらを未然に防ぐ事は出来るかもしれないが、世の中には絶対はないので、最終的には自分達で何とかしなければならない場面もあるかもしれないのである。
その時に、心構えが出来ていると出来ていないでは、その結果に雲泥の差が現れる事を、アルフォンスはこれまでの経験から知っていたのである。
それ故に、あえて言いにくい事を言ったのかもしれない。
「まあまあ、若奥様。お顔が真っ青でございますわよ?ご気分が優れないのですか?お飲み物でもお持ちしましょうか?」
と、そこに、この場で給仕役を務めていたバートン家の侍女が、慌てた様子で駆け寄ってきた。
どうやら、セレスティアの体調を心配した様子である。
それをキッカケに、アルフォンスはこれ以上何も言わず、この場をサッと離れる。
二人にも考える時間が必要だ、と考えたからかもしれない。
「え、ええ、ありがとう。少し疲れたのかもしれないわ。いただくわね。」
それを察してか、セレスティアも侍女にそう対応した。
彼女の好意を無にする事もない、と考えたからであろうーーー。
先程も述べた通り、どこの世にも、過激な思想を持つ者達というのは一定数いる。
「さて、誰の指示か、話すつもりはありますか?」
「・・・指示?何を言っているんだ?」
屋敷の一室に連れ込まれた件の下手人に、エルフ族の青年はそう問い質した。
それに、ふてぶてしい態度に変貌した下手人は、半ば嘲笑しながら答える。
その態度を不審に思ったエルフ族の青年は、別の質問をした。
「・・・セレスティアを排除する様に言われたのではないのか?」
「ハハハ、何を勘違いしてるかと思えば・・・。違うさ。我々が勝手にやった事だ。」
「・・・まて。我々、だと・・・?」
気になるワードに、エルフ族の青年は嫌な予感が頭をよぎる。
「・・・我々はどこにでもいる。
人間族に栄光を!
魔物達に死を!
“魔女”を殺せ!
『新人類』共を排除せよ!」
「・・・・・・・・・」
突然、狂った様に何某かのスローガンを叫ぶ下手人に、エルフ族の青年達は呆気に取られた。
「ガハッ・・・!」
「「「「「っ・・・!!!???」」」」」
そして、それを言い終わると、下手人は突然口から血反吐を吐き出した。
「自死っ!?」
「くっ・・・、毒かっ!?」
慌ててかけよると、すでに下手人は事切れていた。
即効性の毒を、おそらく口内に仕込んでいたのだろう。
これでは、事件の背景が一切分からなくなった訳である。
ーーーしかし、それよりも気になるのが、下手人が最後に言った言葉だ。
「っ・・・、セレスティアが危ないっ!!!」
エルフ族の青年はそう叫ぶと、彼らは再び部屋を飛び出すのであったーーー。
誤字・脱字がありましたら御指摘頂けると幸いです。
いつも御覧頂いてありがとうございます。
よろしければ、ブクマ登録、評価、感想、いいね等頂けると非常に嬉しく思います。
ぜひ、よろしくお願い致します。