破壊者
続きです。
世の中には、“寄生動物”、と呼ばれる生物が存在する。
細かい説明は省くが、寄生植物や寄生虫など、つまり別の生物(宿主)に寄生する生物。
だから“寄生動物”、なのである。
もちろん、中にはその生物(宿主)を食い尽くすヤバい寄生生物も存在するが、そこまでではなくとも、その生物(宿主)の脳にまで入り込み、異常な行動の変化をもたらす事があるなど、やはりあまり好ましいものではない事も往々にしてある。
もっとも、その種によっては、宿主と寄生生物が各々に補い合う関係、共存共栄の様な関係となっている例もあるらしいのであるが。
まぁ、それはともかく。
しかし、これはあくまで物理的な寄生でしかない。
当然ながら、何の因果関係もなく、また物理的接触もせず、寄生体が宿主に宿る事など、本来ありえない事である。
だが、ここで思い出して頂きたい。
(最近出番のめっきり減ってしまった、本来は主人公である筈の)アキトの“心の中”に存在する者達の存在を。
そう、彼の中には、全く別の存在、自我を持つ魂が内在しているのである。
もちろん、スピリチュアルな事柄をあえて考慮せず科学的に判断するとなると、こうした存在は、所謂“二重人格”と呼ばれる精神障害に分類される事であろう。
しかし、アキトに関しては、当然そういう障害ではなく、本当に精神体、思念体、アストラル・バディ、あるいは幽霊(神霊)とも呼ばれる存在が宿っているのである。
もっとも(色々と助言する事や干渉する事はあるし、心の中で好き勝手にやってはいるのであるが)、彼らはアキトの邪魔をするつもりは基本的にはない。
しかし逆に、宿主の精神や肉体を乗っ取ってしまうタイプのそうした存在がいないとも限らないのである。
言うなれば、“悪魔憑き”とか“憑依”である。
セレウスが体験し、ハイドラスが目撃したのは、こうした類の事柄だった訳である。
では、その正体は何か?
彼らが調べていた場所から、その答えは自ずと出てくる。
すなわち、“アドウェナ・アウィス”にセレウスは乗っ取られる事となってしまった訳であるーーー。
◇◆◇
ー・・・簡単に引っ掛かってくれましたね。ー
どこかで、呆れた様な雰囲気の声が鳴り響いた。
ー“ヒト”は好奇心には抗えないものなのですよ。どれほど高名な学者であっても、未知の事象には子供の様な純粋さや好奇心に支配される事も珍しい話ではない。まして、彼らは自ら主を識ろうとしました。その結果がこれなのですよ。ー
ー自ら罠にかかりにいった、と?ー
その質問に、コクリと頷いた様な雰囲気が感じられる。
ーええ。もちろん、一口に“罠”とも言いにくいのですがね。主を識ろうとするならば、一度主に成ってみれば良い。そういう意図があって、あえて主は自らの“人格データ”を遺されたのかもしれませんし、ね。ー
ーふむ・・・。ー
セレウスの身に起こった事。
それは、“アドウェナ・アウィス”の遺した“人格データ”、すなわち『幽霊(正確には残留思念)』による精神的な乗っ取りであった。
これによって、“セレウス”は、セレウスでありながら全く別人になってしまったのである。
もちろん、『霊魂』、すなわち“魂の力”を扱えるセレウスやハイドラスには、自身の精神を守る所謂“精神防壁”が備わっている訳であるが(超常的な力を扱う場合、それがないと本来の人格が侵食される可能性があるからである。よくて廃人、下手をすれば生ける屍か悪霊の様な、世界に厄災をばら撒く存在になってしまうのである。)、しかしそれも、当然完全なものではない。
油断していたり、不意をつかれる、またはその“精神防壁”を超える強力な『霊魂』であれば、それらをすり抜ける事が可能なのだ。
今回のケースの場合、油断と“アドウェナ・アウィス”という、自分達より更に上位の存在による精神干渉だった事もあり、さしものセレウスも防ぐ事が出来なかったのであった。
ー・・・しかしこれで、貴方が彼らを放っておいても構わない、と言った意味が分かりました。ー
ーそうでしょう。そもそも今現在の彼らは、我々ではすでに対処出来ないレベルの存在となっていますからね。我々に出来る事は、せいぜい嫌がらせじみた妨害くらいが関の山ですが、それだと益々我々に対する警戒を強めるだけです。それならば、下手な事はせずに、それを何とか出来る存在、主にお任せするのが合理的だと判断したのですよ。ー
ー放っておいても、自分達で罠にハマりに行ってしまう。しかも、いくら警戒したとしても、流石に主には彼らでも敵わない、という事ですね。ー
ーええ。ー
全ては、マギやネモ、いや、その後ろにいる“アドウェナ・アウィス”の思惑通りだった訳である。
むしろ、なまじ知性がある分、“識りたい”という欲求には抗えない事を、“アドウェナ・アウィス”は十二分に理解していたのだろう。
ー・・・しかし、問題となるのは、“彼”が何を成されるおつもりなのか、全く予測が出来ない事ですね。・・・まぁ、主のなさる事なので、我々が口出しする事ではありませんが・・・。場合によっては、思ったより早く我々の“役割”が終わりを告げる事もあるかもしれません。ー
ー・・・ー
マギやネモは、あくまで“アドウェナ・アウィス”が生み出した人工知能である以上、“アドウェナ・アウィス”に逆らう事は出来ないのだ。
セレウスに取り憑いた“アドウェナ・アウィス”の行動いかんでは、彼らの“役割”の終焉、あるいはこの惑星の未来そのものが決定付けられる事となる訳であった。
で、そんな“セレウス”は言うとーーー。
「ハッハッハッ!気持ちいいっ〜!!」
久々に感じる五感を、存分に楽しんでいるのであったーーー。
???
ー・・・まさか、よりにもよって“奴”が封じられた遺跡に踏み込むとはな・・・。ー
ー・・・これも、ある種の因縁でしょうか・・・?それともっ・・・!?ー
ーいや待て。結論を出すのはまだ早い。少なくとも彼らからは、特別な波動は感じられない。ー
ー・・・しかし、彼らはどちらも、ある種の“イレギュラー”ですよ?そこに何か、ヒントがあるのやも・・・ー
ー・・・否定は出来ん、か。ー
一方その頃、宇宙のどこかで、“アドウェナ・アウィス”の思念達もやはり、人工知能達から送られた映像によって、“セレウス”の動向を観測していた。
ー・・・とりあえず、観測を続行しよう。いずれにせよ、あの惑星は“実験場”の一つに過ぎん。何かあったとしても、こちらとしては特に問題がないからな。ー
ーむしろデータが集まるのなら、大いに意味がある事でしょう。それにもしかしたら、彼らの出会いが今後大きな意味を持ってくるかもしれませんし、ね。ー
ー・・・ふむ。ー
短い会話の中で結論は出た様である。
観測の続行。
彼らはすぐに、人工知能達にそう指令を出した。
ー・・・しかし、”自由“を求めた者同士が邂逅するとは、な。ある意味、皮肉なものだな。ー
ー・・・そうですね。ー
◇◆◇
「・・・腹減ったなぁ〜」
一通り高速による空中散歩を楽しんだ”セレウス“は、久々に感じる空腹に顔をしかめていた。
「どこかに食えるもんは、と・・・」
そして、上空からキョロキョロと辺りを見回し、獲物がいないか物色し始めた。
「おっ・・・!」
と、しばらくすると、シカっぽい草食動物がかけていく後ろ姿を発見する。
”セレウス“を警戒して逃げたのであろう。
”セレウス“はそれに狙いを定めると、狩りが始まった。
ヒャンッ!
と、言っても、彼我の戦力差は圧倒的である。
“セレウス”が雑に間合いを詰めると、次の瞬間、その動物の首と胴は切り離されていた。
狩りは一瞬で終わったのである。
「よっ、と。」
手慣れた様子で解体を始める“セレウス”。
これは、セレウス自身の知識なのか、それとも“セレウス”の持つ知識なのかは定かではないが、ともかく先程の雑さとは裏腹に、全身余す事なくキレイに加工されたのである。
「一応、供養はしてやるか。」
次いで、切り離された首から上を丁寧に土に埋めると、どこから取り出したのか木の苗木をその上に突き立てて、所謂“合掌”のポーズを取った。
「・・・さて、と。」
ある意味、“アドウェナ・アウィス”の宗教観が垣間見える貴重な瞬間だったのだが、そこはそれ、この場にいるのは“セレウス”だけだったので、残念ながらそれを識る機会は誰にもなかったのであるが。
“セレウス”はおもむろに立ち上がると、適当な枯れ木を集め、先程狩ったシカ(?)肉を焼き始める。
しばらくすると、周囲に良い匂いが漂い始める。
ゴクリッ。
“セレウス”は生唾を飲み込んだ。
もうそろそろ頃合いか、と、串状の棒に突き立てた焼きたての肉にかぶりつく。
「あちっ・・・!ハフハフッ、ゴックンッ!う、うめぇ〜!!!」
当然ながら焼きたての肉は熱かったのだが、それ以上に“セレウス”にとっては、もう覚えていないくらい久しぶりの食事は、何ものにも代えがたい感動であった。
口の中が火傷するのもいとわず、“セレウス”は次々と肉にかぶりついた。
欲を言えば、ここに塩・コショウでもあればなお良かったのだが、生憎調味料の類は持ち合わせていなかったのである。
「ちょっと探してみっかなぁ〜。なけりゃ、作っちまえば良いし。・・・ん?」
などと呟きながら、“セレウス”は周囲の異変に気が付いていた。
野生動物が存在するという事は、当然ながらここら辺には他の野生動物も存在する訳である。
そうした者達が、バーベキューによって周囲に漂っていた良い匂いを釣られて集まって来たとしても何ら不思議な話ではない。
グルルルッ!
おそらく肉食動物の類だろう。
それが複数頭、“セレウス”を威嚇する様に低い唸り声を上げていたのである。
その目は、“それをよこせ”、と如実に語っているかの様であった。
「なんだ、獣連中か。こりゃ、俺が狩ったんだ。オメェらはオメェらで狩りをしな。シッシッ。」
本来ならば、ビビって逃げ出すタイミングであろうが、先程も述べた通り、“セレウス”と彼らでは圧倒的な実力差がある。
ビビるどころか、“セレウス”はつまらなそうに手を振ったのだが、空腹だった獣達には逆効果だった様である。
グルルルッ!!
一斉に“セレウス”を襲おうと試みたのである。
疾風の如く早さで“セレウス”に殺到する獣達。
だが、
「・・・あんっ!?」
「「「「「っ!!!」」」」」
“セレウス”のひと睨みに、先程の勢いが嘘かの様に獣達は大人しくなった。
ここに来て、ようやく本能的にケンカを売ってはいけない相手だと気が付いたのであろう。
「・・・さっさと失せろ。」
静かな声色に、言葉が分かった訳ではないだろうが、今度は獣達も大人しく引き下がっていった。
それを見送ると、再び食事を始めながら“セレウス”は呟いた。
「ったく、獣が狩りを忘れたら意味ねぇだろうに。いや、これも生存競争なのかねぇ〜」
呟きながらも、もっちゃもっちゃとスゴイスピードで焼けた肉がなくなっていった。
しばらくの後、
「ふぅ〜、食った食った。マジで生き返る感じだったなぁ〜。」
満足そうに呟いた“セレウス”は、感慨深げに頷いていた。
食欲は、生物にとって極めて重要な欲求の一つである。
他からエネルギーを吸収し、生命活動を維持する為、というのももちろんあるが、“生きている”という実感を感じる上でも、である。
例えば、もう一つの重要な欲求には睡眠欲があるが、このどちらかが欠けると、非常に重大なトラブルになりかねない。
食欲がない、眠れない。
現代社会では、こうした悩みを持たれる人々も多い事であろうが、これらは、身体機能的にはもちろん悪い事なのであるが、精神疾患を誘発する可能性も極めて高いのである。
逆に言えば、食べて眠れるのなら、まだそこまでは心配いらない。
むしろ、例え嫌な事があったとしても、食って寝て、コロッと忘れられる人々は、非常に健全かつ強靭な心身を持っている、という事である。
まぁ、それはともかく。
いずれにせよ、“食べる”事はすなわち“生きる”事であり、そして長らく肉体を持たなかったであろう“セレウス”が久々に体験する“食事”というのは、異性との性交渉にも勝る快楽を感じる事でもあったのである。
「・・・食ったら眠くなってきたなぁ〜」
まるで子供の様な事を呟く“セレウス”。
当然、それはあまりよろしい事ではない。
と、
ークソッ!身体を返しやがれっ!ー
「・・・ん?」
“セレウス”は周囲をキョロキョロ見回した。
「・・・幻聴か。」
ー幻聴じゃねぇよっ!テメェの頭ん中でしゃべってんだっ!ー
「・・・おおっ!」
“セレウス”は、納得した様にポンッと手を打った。
「この身体の元の持ち主か・・・。いやいや、一瞬分からなかったぜ。普通、誰かに乗っ取られたら人格が消滅しちまうからなぁ〜。」
サラッと怖い事をのたまう“セレウス”であったが、むしろその声色は称賛の方が勝っていた。
「中々優れた“力”の持ち主の様だな。これなら、俺も色々と出来そうだ。」
ーごちゃごちゃうるせぇよっ!さっさと俺ん中から出ていきやがれっ!ー
「そいつは出来ない相談だ。俺も久々の現世だし、色々と愉しみたいからよ。ま、犬に噛まれたと思って諦めるんだな。・・・ってか、どうやって分離すんのか俺自身も分かっていないし・・・(ボソッ)。」
ーはっ・・・!?テメェ、“アドウェナ・アウィス”なんだろっ!?ー
「おお、よく知ってんな。“アドウェナ・アウィス”に辿り着いてるって事は、よほど進んだ文明力をもってるか、よほど強力な“力”を持っているか・・・。あるいは両者か。」
ーなら、スゲェ技術力とか何とかで俺を乗っ取ったんじゃねぇのかっ!?ー
「ハッハッハ、聞こえてたか。ま、仲間達はそうなんだろーが、生憎俺はそん中でも出来損ないでよ。何せ、中等学校さえ中退した身だ。恐れ入ったかっ!」
ーな、なにぃっ〜〜〜!!!???ー
セレウスの驚愕はいかほどのものだったのであろうか?
当たり前だが、“アドウェナ・アウィス”にせよセルース人類にせよ、アクエラ人類にせよ地球人類にせよ、全ての人々が優れている訳ではない。
セレウスの基準で言えばセルース人類を例に挙げると分かりやすいが、“能力者”がいれば、そうでない人々もいる訳である。
また、ソラテスら科学者がいれば、そうでない一般市民もいる。
まぁ、セレウス含めた移民船団のクルー達は、何某かの能力に優れた者達が選出されているから忘れがちなのだが(そうでなければ、未知の惑星にて生き残る事は困難だろう事が予測されたからである)、いくら“アドウェナ・アウィス”と言えど、当然ながら言い方は悪いが“落ちこぼれ”もいるのであった。
ーじ、じゃあ、テメェは何だって、御大層にあんな場所にいやがったんだっ!?ー
セレウスの疑問も当然であろう。
流石に“アドウェナ・アウィス”が、ただの悪ふざけでこんな配置をしておく筈がないからである。
それならば、この謎のアドウェナ・アウィス人も、流石にただの一般人ではない筈である。
「そりゃあれだ。俺が“アドウェナ・アウィス”とは全く違った思想を持っていたからさ。オメェらの文化でもあんだろ?社会の爪弾きモン、ってのがさ。」
ー・・・一体何をやらかしたんだ。ー
「いや、別に・・・。ただ、“アドウェナ・アウィス”を全滅させようとしただけで・・・」
ー・・・・・・・・・は?ー
“セレウス”の発言に、セレウスは固まってしまった。
“アドウェナ・アウィス”の全滅。
つまりは、“セレウス”は同族を皆殺しにしようとした、という事である。
価値観や文化は人それぞれだから一概には言えないが、少なくともセルース人類の基準で考えれば、同族殺しは重大な罪となる。
まぁ、それが“アドウェナ・アウィス”達に当てはまるかは議論の余地はあるが。
ーな、何だってそんな大罪を犯そうとしたんだ・・・?ー
「・・・“アドウェナ・アウィス”の事を知ってんなら分かんだろ?アイツら、どんどん傲慢になっていったんだぜ?」
ーあっ・・・ー
以前にも言及したかもしれないが、“アドウェナ・アウィス”は極めて高い文明力と技術力を持つに至っている。
そして、その一部はこの宇宙の“創造主”に成り代わり、“この世界”を支配(管理)しようとしていた。
所謂『支配者』である。
一方で、それを良しとしない勢力も存在していた。
まぁ、『支配者』に対する一種のカウンター的な意味合いもあったのかもしれないが、それが『解放者』である。
つまり、“アドウェナ・アウィス”という同じ種族でありながら、全く別の主義・思想を持った勢力が存在した事の証左なのである。
セレウス達が体験した『神話戦争』も、言わば彼らの代理戦争だった訳であった。
まぁ、この惑星においてはセレウス達が勝った事により、『解放者』側の勝利となった訳であるが、とは言えど、あくまでこの広い宇宙の中のたった一つの惑星における結果でしかない。
別の惑星では、また違った結果になっている事であろう。
まぁ、それはともかく。
しかし、そんな相反する思想が“アドウェナ・アウィス”にも存在するのであれば、もっと過激な思想を持った者達がいたとしても何ら不思議な話ではない。
自らの傲慢さを嘆き、もっと自然のままに、ナチュラルに生きる事を主張した者達も存在したのである。
それが、『破壊者』だった訳である。
「まぁ、結局俺らは危険分子として倒され、こうして各地に封印された訳だけどな。」
ーつまり“テロリスト”みたいなモンだろ?なら、処刑しちまえば良かったんじゃねぇ〜の?ー
「いやいや。下手に処刑でもしようもんなら、“アドウェナ・アウィス”の場合はむしろ悪手なのさ。肉体から解放された精神や霊魂が、際限なく周囲に降り注いじまうからなぁ〜。そうなりゃ、第二第三の『破壊者』の誕生、って事さ。」
ーなるほど・・・。いたちごっこ、って奴か。ー
「そ。だから“封印”。長い年月をかけりゃ、もしかしたら浄化や四散が上手くいくかもしれねぇし、逆に文明の“破壊者”として利用するつもりだったのかもしれねぇけどよ。」
ーふむ・・・ー
「ああ、別に心配しなくても大丈夫だぜ?あくまで俺の目標は、同族達だけだからよ。だから、“この世界”で暴れるつもりはない。むしろ、今はただ、久々の自由を謳歌したい、って気持ちの方が大きいな。」
ー・・・いや、それは良いんだが・・・。何も俺の身体でそれをする事はねぇ~だろ。ー
「さっきも言ったろ?俺も分離の方法は分からねぇんだ。犬に噛まれたとでも諦めてくれ、ってな。ま、もしかしたら“アドウェナ・アウィス”の遺した他の遺跡に何らかのヒントが遺されている可能性はあるが、いずれにせよ、今すぐにゃ無理な話よ。そういう訳で、しばらくは厄介になるぜ?」
ー・・・はぁ〜・・・ー
セレウスは深いため息を吐いたが、身体を共有している関係からか、“セレウス”が嘘を言っていない事も理解出来ていた。
彼は、本当に分離の方法を知らないのである。
そして、セレウス自身も、『霊魂』、すなわち“魂の力”を高いレベルで扱う力はあるが、他者に憑依した事はないし(“化身”はあくまで自身の分身)、こちらも分離の方法は知らなかったのである。
そんな訳で、一つの身体に二つの『霊魂』が同居する、という奇妙な事になったセレウスは、諦めると共に今後の事を考える事とするのであったーーー。
ーそういや、お前、名前は何て言うんだ?ー
「あん?俺か?俺は、
ネメシス、
とでも呼んでくれや。」
ー・・・厨二病かよ。ー
「うっせ。」
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