決着 4
続きです。
カエサル達が攻撃を“レギオン”に通す為には、二つの大きな問題点をクリアする必要があった。
一つは、“レギオン”の“核”、すなわち『永久原子』にダメージを通せる事、である。
物理的な攻撃ならいくらでも叩き込む事が可能なカエサル達だが、それでは今現在、ほぼ無限に再生する事が可能な“レギオン”には決定打にはなり得ないからである。
もちろん、ある種の時間稼ぎにはなるかもしれないが、残念ながらカエサル達にはいくら待っても援軍は現れる事はないし、万が一解放軍(魔王軍に対抗する為に組織された人類側の軍隊)がカエサル達の助太刀に来たとしても、今や人類の中でも突出した存在になりつつあるカエサル達に比べたら、まだ人類の範疇に入る者達がいくら束になっても、同じく決定打には欠ける状況である事は言うまでもない。
それどころか、今や植物や“精霊”達からも『霊魂』を喰らっているらしい事が判明している“レギオン”にとっては、新しい“エサ”が向こうからやってくるのに等しい状況となる。
それは、むしろ状況を更に悪化させるだけに過ぎない。
それ故に、カエサル達にとっては、彼らだけで、しかもこの場で“レギオン”を倒しきらなければならない、という条件が課せられているのに等しい訳であった。
まぁ、それはともかく。
しかし幸いな事に、これについては覚醒を果たしている事に加え、カエサルに何か考えがある様なので、ある意味一番の問題点はクリアしている事となる。
問題となるのはもう一つの方だ。
すなわち、確実に“核”に攻撃を届かせる事、であった。
これがどういう事かと言うと、当たり前だが、レールガンがいくら強力であろうとも、それを防ぐ手立てがあるからである。
レールガンも、基本的には“弾”となる金属片を射出する方式である。
つまり、避けようと思えば避けられる訳であり(もちろん、そんな事は普通は無理だが、人知を超えた存在である“レギオン”なら可能かもしれない)、もっと確実な方法として、幾重もの“防壁(障壁)”で防いでしまえば良いのである。
もちろん、とてつもない速度で放たれるそれは、例え“弾”を避けようと防ごうと、副次的に発生するであろう衝撃波などまでは完全には防げない事も考えられるのであるが、再三述べている通り、物理的な攻撃では“レギオン”には実質的には効かないのである。
つまり、確実に“核”に届きうる攻撃を完璧に叩き込むのは、かなりの至難の業なのである。
もちろん、相手が全く気付いていない状況での狙撃ならばそのハードルもかなり下げる事は出来るのであるが、同じく覚醒を果たしているであろう“レギオン”が、その事に気付いていないと考えるのはかなり楽観的かつ希望的観測に過ぎないのであるーーー。
◇◆◇
ーアレハナンダ・・・?ー
ー・・・“ヒカリ”ダ・・・ー
ーアタタカイ・・・ー
ーコワイ・・・ー
ーシニタクナイ・・・ー
ーキエタクナイ・・・ー
今や、バラバラの思考力を持っている“レギオン”であったが、やはりと言うか何と言うか、カエサル達が何かしようとしている事に気付いた様であった。
もっともそれは、ある種“レギオン”を浄化してくれるものでもあるので、中にはこの状況からの解放を望んでいる“思念”もあったのだが、やはり生物としての生存本能からか、大半がそれを忌避する“思念”となっていた。
となれば、それから逃れよう、とするのはある意味当然である。
あるいは、ほぼ無限に増殖、再生を繰り返す細胞を使って、あるいは変質させての“硬化”。
自身の肉の身体そのものを“鎧”として、“核”を守ろうとする動きが働いたのであった。
このままカエサルらがレールガンをぶっ放したとしても、これらの条件が重なると、先程も述べた通り、“レギオン”の“核”に攻撃を通す事はかなり無理筋となる事だったであろう。
・・・このままならば、であるが。
ーーーーー・・・!!!???ーーーーー
「へいへぇ〜いっ!休んでないで、俺らとも遊んでくれよぉ〜!」
ザシュッーーー!
ーギャアァァァァ〜〜〜!!!ー
しかし、そうは問屋が卸さない。
カエサル達には仲間が存在するからである。
もちろん、今は離れた位置にいるので、残念ながら今現在のこの世界の通信技術では、前衛組とカエサル達が綿密な意思疎通を図る事は、普通ならば不可能な話である。
実際、アベル達前衛組は、カエサル達が何か作戦を立てている事も知らず、アベルの決死の特攻、という作戦を別に立てていた。
先にも述べた通り、互いに別々に動いた場合、奇跡的に噛み合う事でもない限り、大抵は互いの行動がマイナス要素となる可能性の方が高い。
それ故に、仲間間での意思疎通は非常に重要なのであるが、ここでも、彼らが覚醒を果たした事による恩恵を受ける事となったのである。
すなわち、“念話”、であったーーー。
・・・
〈ちょっと待って下さいっ!〉
「「「「「!!!???」」」」」
場面は、少し前に遡る。
アベルの決死の特攻で話がついた前衛組が、いざ作戦を実行に移そうとしたタイミングで頭の中に“声”が響き渡ったのであった。
「・・・そ、その声は、カエサルかっ!?」
〈そうです。・・・ああ、上手くいって良かった。〉
しばし呆気に取られた前衛組であったが、ここで(偽)セレウスと(偽)ハイドラスとの邂逅の経験が生きる事となる。
通常の音声によるコミュニケーションではなく、脳内に直接語り掛ける様な、所謂“テレパシー”の存在を知っていたからこそ、すぐにそれが幻聴ではなく、カエサルの“念話”だと気が付いたのであった。
もっとも、いくら覚醒を果たしているとは言えど、様々な“能力”を使いこなすのはそれ相応の経験が必要となるのだが、カエサルはそれに高い適応力があった様である。
まぁ、いずれにせよ、結果としてそれなりに距離の離れた前衛組とカエサル達が、綿密な意思疎通を図る方法を獲得した瞬間でもあったのである。
「お前、いつの間にっ・・・!」
カエサルの適応力に、純粋に賞賛の声を上げるアベル。
が、それに手放しで喜んでいられる状況ではないので、カエサルは反応もそこそこに、対話を続ける。
〈セレウス様やハイドラス様もやっていたので出来るだろうとは思っていましたが、まさかすんなり成功するとは思いませんでしたよ。まぁ、それは良いとして、皆さんは奴に特攻するつもりの様ですけれど、それは少し待って貰っても良いですか?〉
「何で・・・」
そんな事を?
という言葉を続きは、カエサルによって遮られる。
〈聞こえたんですよ。意識していないかもしれませんが、おそらく覚醒を果たした事によって皆さんも、“念話”を獲得しているのかもしれません。実際、どうなってるか分かりませんが、皆さんと僕は、今問題なく意思疎通を可能にしていますしね。〉
「・・・なるほど?」
正直、何がどうなっているかはチンプンカンプンだったが、今はその事を気にしている状況ではない事をすぐに思い出した。
「まぁ、それは良い。それよりも、カエサルには何か考えがあるのかい?」
〈ええ。具体的な説明をしている時間がないので省きますが、僕とルドベキアで、奴の“核”の狙撃を試みたいと思っています。もちろん、物理的な手段ではなく、“霊的”な手段として、ですがね。上手くすれば、おそらく一撃で奴を沈黙させる事が可能だと考えていますが、しかしここで問題点が・・・。〉
「・・・もしかして、奴もそれに気が付いている?」
〈ええ。“念話”の仕組みがどうなっているかは分かりませんが、まだまだ目覚めたばかりの僕らでは、それは広範囲に広がっている可能性も考えられます。〉
「ふむ・・・。」
色々と便利な“念話”、すなわち“テレパシー”だが、ここら辺は向こうの世界の通信機器と同様で、場合によっては傍受されたりする可能性も当然考えられるのである。
特に、彼らは所謂“オープン”な状態で“念話”をしている、という状況に近い。
仮に、“念話”に対する理解力が高くなり、他の者達には傍受出来ない状態にする事が可能にならない限り(まぁ、そもそも“念話”という能力を獲得する必要があるのだが、この場に存在する者達は、高い“霊能力”、“超能力”に目覚めている者達ばかりである。当然、“レギオン”もそれに該当する存在だ。)、相手にこちらの意図が筒抜けである可能性を考慮する必要があったのである。
となれば、打てる手段は一つしかない。
「・・・撹乱、か。」
〈ええ。狙撃が来ると分かっているなら、当然対策を取られている、と考えるのが自然です。しかし、逆にそちらに気を取られているのならば、皆さんへの意識が疎かになっている可能性が高い。それ故に、皆さんには、危険な水域に突入しない程度に、奴に攻撃を仕掛けて欲しいのです。当然奴も、自分を殺し得る力を持つ皆さんの事は流石に無視出来ない訳ですからね。つまり、奴の思考を分散させるのです。〉
「狙撃を警戒すれば私達の方が疎かになり、私達を警戒すれば狙撃の方が疎かになる、か。確かに、普通なら有効な作戦だろう。」
相手に選択肢を多く与える事は、戦いにおいては非常に有効な手段となる。
例えばサッカーで言えば、ディフェンス側は相手のドリブル、パス、シュートをそれぞれ警戒しなければならない訳である。
それだけで、成功率は三分の一。
しかもそこに、フェイントも織り交ぜるとなると、その難易度は更に上がる。
しかもそれを、瞬時に判断しなければならない。
そうでなければ、それこそ棒立ちのままアッサリ抜かれたりするからである。
この様に、腹の読み合いが必要となってくる場面では、相手により多くの選択肢を与える=それだけ考えなければならない、つまり、隙を作りやすいのである。
人間の頭は一つしかないので、これは当たり前の話なのだが、しかし“レギオン”は、そうではない可能性もあった。
〈ご懸念は分かります。奴は、おそらく多数の意識の集合体だ。それ故に、複数の思考をそれぞれ独立して出来る可能性がある。〉
「・・・ッスね。」
向こうの世界の伝承と同様に、あの“レギオン”も無数の『霊魂』の集合体である。
それ故に、普通の生物とは違い、てんでバラバラに思考をする事が出来る可能性があった。
(というか、実際それをしているのだが。)
しかし、複数の思考が出来る事、マルチタスクと、実際にそれらを実行・処理出来るかどうかは、また別問題なのである。
〈先程の件も参考にするならば確かにそれはあるかもしれませんが、身体はそうは行きません。もちろん、複数の“触手”が存在するので一見そうは見えないんですが、こちらから観察していた限り、やはりそれらにもある程度の制限がある様に見えました。具体的には、複数の“触手”で攻撃出来るのならば、全方向から攻撃すれば良いものを、それをしていなかった。おそらく、いくら思考出来ても、それがダイレクトに身体に反映出来ていないのではないでしょうか?〉
「あっ・・・!」
そうなのだ。
いくら“レギオン”がとてつもない存在だとしても、あくまで身体は“一つ”しかない。
いや、もちろん、本来ならばありえない筈の複数の“触手”を持っている不定形の身体もあって一見してそうは見えないのであるが、あくまでベースとなっているのは元・ドレアムの身体なのである。
もちろん、先の例にもある通り、小型の“レギオン”に分裂をする事は可能なのかもしれないが、しかしそれはあくまで別の存在として独立しただけに過ぎないのである。
むしろ、カエサルの作戦を鑑みれば、そうなってくれた方が実は都合が良い。
〈僕としては、正直どちらに転んでも問題はないのですよ。こちらに気を取られれば、それだけ皆さんが奴を討つチャンスが広がる訳ですし、皆さんに気を取られるならば、こちらに奴を討つチャンスが回ってくる。しかも先程の様に複数に分裂してくれたら、むしろチャンスです。先程の例を見るに、奴の分裂は脅威ではありますが、しかし一方でエネルギーも分割している事が分かります。実際、奴はエネルギーを補給する為に沈黙を貫いていましたからね。つまりそうなれば、回りくどい事はせずとも、こちらの狙撃で終わりとなる。不確定要素も多いですが、今、この場においては最適な解だと自負しております。〉
「「「「「おおっ・・・!!!」」」」」
アベル達は感嘆の声を上げた。
確かに、多少穴はあるまでも、バラバラに動くよりも遥かに効率的な作戦であるし、しかも決め打ちではなく、柔軟に作戦の変更も可能な流動性もあった。
少なくとも、アベルが決死の特攻を仕掛けるよりかは、遥かにマシな作戦であろう。
後は、仲間を信じてやりきれるかどうか、というところか。
そして、その結束は、幸いな事にカエサル達は持ち合わせていたのである。
「・・・それで行こうぜっ!」
「ああ、今度こそ、完全に終わらせてやろうっ!!!」
〈〈「「「応っ!!!」」」〉〉
ーーーかくして、最悪の化け物である“レギオン”との最後の戦いの火蓋が切って落とされた訳であるが・・・。
・・・
ーシネシネシネッ!ー
ージャマダジャマダッ!ー
“レギオン”は焦っていた。
強烈な“光”を放つ“何か”を警戒し、回復したエネルギーを使っての防御態勢を構築しようとした矢先に、まるでそれを見透かした様にアベル達が自身に攻撃を仕掛けてきたからであった。
もちろん、カエサル達との打ち合わせ通り、あくまで危険な水域には飛び込まない程度の浅い攻撃に過ぎななかったので、自身を殺しきれるほどの脅威ではない事は分かったのであるが、しかし、流石に無視も出来なかった。
何故ならば、彼らからも、やはり強烈な“光”、すなわち自身を殺し得る力がある事が理解出来たからである。
故に、下手に無視を決め込むと、その刃が自身を貫く可能性がある訳で、迎撃や警戒を余儀なくされたのであった。
ここら辺は、カエサル達の作戦通りであった。
陽動と撹乱。
様々な状況においても使える手段であり、しかも極めて有効な手段でもある。
まぁ実際には、カエサル達が普段“阿吽の呼吸”でやっている事なのだが(前衛組が引き付けている内に、後衛組での魔法攻撃で一掃する)、逆に普段からやり慣れていたからこそ、“レギオン”相手にも上手くハマった形であろう。
しかし、普段と違うのは、その判定が非常にシビアな事であろうか?
ただ単純に、敵の注意を引き付けて魔法攻撃をぶっ放せば終わるのとは違い、“レギオン”の場合は、その弱点(“レギオン”の“核”である『永久原子』)を正確に撃ち抜かなければ意味がないからである。
それ故に、焦燥感が募っているのは、カエサル達も同様なのであった。
「まだかい、カエサルッ!?」
「落ち着いてくれ、ルドベキア。当然奴も、こちらも警戒しているんだ。そう簡単に弱点を晒す筈もないだろう。」
「・・・」
忌々しげに“レギオン”を眺めながら、ルドベキアは押し黙った。
ルドベキアからしたら、仲間達が決死の攻防を繰り広げている中、それを黙って眺めている様なものなのだ。
もちろん、慎重にタイミングを見極めているからであり、当然ただ単に遊んでいる訳ではないのであるが、それでも焦りが募るのは無理からぬ事であろう。
一方のカエサルも、内心焦りを抱いていた。
が、努めて冷静さを装っていたのである。
何故ならば、これが最初で最後のチャンスだと理解していたからである。
ここまで八面六臂の大活躍を果たしているカエサルだったが、実際にはかなり限界ギリギリ状態だったのだ。
確かに、パワーアップからの覚醒によって、もはやアクエラ人類の限界を軽く突破した彼であるが、しかし先にも述べた通り、彼らはまだ“器”が完全に出来上がった訳ではなく、正式な『資格』を得ている訳ではなかったのである。
つまり、肉体的にも精神的にも、かなりの無茶をしている状況なのであった。
実際、カエサルは一度、“レギオン”の“触手”を切り離した時、意識を失う、という状況に追い込まれている。
これらは、慣れない力を行使した結果であろう。
その後も、“情報の検索”と“念話”、という力を行使しており、今度倒れたら、流石に死ぬ事はないかもしれないが、少なくとも戦線に復帰する事は当面不可能となってしまう事だろう。
それはカエサル自身も薄々勘付いていた。
ここでカエサルが脱落すれば、当然仲間達との連携に穴を開ける事となる。
当然それは、仲間達の生存率を一気に引き下げる事となるだろう。
それ故に、何としてもここで一発で仕留めなければならないのである。
万が一失敗すれば、自身と仲間達の命は失われる事となるのはほぼ確定であるし、最悪、この世界に厄災をばら撒く存在を世に解き放つ事となる。
故に、慎重にもなる。
絶対に失敗出来ないからである。
そのプレッシャーは半端ではないだろう。
自分自身だけでなく、仲間達の命も一身に背負っている状況なのだから。
・・・だが、そういった極限の状況に追い込まれる事は、何も悪い事ばかりでもなかったーーー。
突然だが、“ゾーン状態”という言葉・概念を知っているだろうか?
これは、集中力が高まって実力がフルに発揮できる状態を指している。
特にスポーツや芸術などの分野でよく用いられる概念であり、この状態であると、
・集中力が高まり、パフォーマンスが向上する
・自分の能力を最大限に発揮出来る
・時間の感覚が変わったり、楽しさや満足感が高まったりする
・周りの景色や音などが意識の外に排除され、自分の感覚だけが研ぎ澄まされる
などの現象が起こるそうだ。
いやいや、それってフィクションでしょ、と思われるかもしれないが、実際のアスリートなどは、こうした状態を経験される方も多いそうである。
そうした者達は、信じられないくらいの記録や成果を発揮する事もしばしばあった。
もっともその為には、極限の緊張感、つまりプレッシャーが絶対条件となり、更にはそれに押しつぶされずに、それを跳ね返せる精神力が必要不可欠なのであるが。
では、何故そんな話をしたのかと言うと、ちょうど今のカエサルが、まさしくその状態になろうか、という状況だったからである。
“狙撃を絶対に成功させなければならない”、という極限のプレッシャーと緊張感の中、しかしカエサルの頭の中は妙に静かであり、言うなればそれによって集中力が非常に高まっていたのである。
更には、ここでも彼らの覚醒が良い方向に作用したのである。
先程述べた通り、いくら鍛え上げたとは言えど、あくまで普通の人々でさえそうした境地に至る事があるのだから(誤解なき様に明言しておくが、あくまで“超能力”や“霊能力”を持っていない、という意味での普通である。)、すでに人類の範疇を超えた彼らなら、もっととんでもない事になる可能性があった。
具体的には、まさしく“見えている世界”が変わったのであるーーー。
・・・何だっ!?
仲間達と“レギオン”の攻防をじっと眺め、狙撃のタイミングを見計らっていたカエサルは、突如として“視える世界”が変わった事に困惑していた。
もちろん、覚醒によって、これまで視えなかった『霊魂』、すなわち“魂の力”の残滓、みたいなものは視える様になっている。
そうでなければ、そもそも“レギオン”の真の“核”たる『永久原子』の位置、存在を知覚する事すら不可能だからである。
だが、今回、カエサルが体験している事は、それともまた別の“何か”であった。
先程、“ゾーン状態”という例を出したが、カエサルが今到達しているのは、それよりももっと深い領域である。
具体的には、この場において動く者、全ての動きを細部まで知覚出来ており、それどころか、何故かその細胞や筋肉、血液に至るまで、まるで全てが透けて視える様な感覚、だろうか。
しかも、それらが全てスローモーションの様に視え、次にどの様な動きをするかまで事細かに理解出来たのである。
当然それは、“レギオン”とて例外ではない。
集中力の高まっていたカエサルは、疑問(雑念)を一瞬で意識の外に追い出して、これは絶好のチャンスである、とシンプルに考えた。
そして、いよいよその言葉を口にしたのであった。
「今だっ!!!」
「っ!!!」
ドパンッーーー!!!
カエサルの合図と共に、今、運命を決定付ける弾丸が射出されたのであったーーー。
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