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『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』  作者: 笠井 裕二
『リベラシオン同盟』発足

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代償

続きです。



『ダガの街』の情勢を『日本』の地方都市として置き換えて言うと、


『レイモン伯』=[知事、政治家、名士]

(※ただし、その『権力』は『日本』の比では無い)


『騎士団』・『憲兵』=[軍、警察、治安維持機関]

(※彼らは、所属としては『ロマリア王国所属』となる。その為、ある程度の『発言力』・『権力』を有しているが、構成メンバーは『平民』が主。幹部やトップクラスの管理職には『貴族』も当然いるが、彼らは『魔法士部隊』に所属出来なかった劣等感を多かれ少なかれ感じている。『レイモン伯』に直接的な『命令権』がある訳ではないが、さりとて当然ながら無視も出来ない)


『ランツァー一家』=[犯罪組織、暴力団]

(※ある程度『社会』に対しても影響力を持つ組織。一部では『必要悪』と見る風潮もあるが、そもそも、犯罪防止の受け皿たる『冒険者ギルド』があるので、ここまで堕ちた者はこの世界(アクエラ)ではある種救いようのない者達である。法整備が整っていない現状のこの世界(アクエラ)では、裁判をする事もなく処刑される事も多い)


であり、『コロナエ領』一番の『権力者』が、犯罪組織と繋がっている事を意味する。

本来なら、『騎士団』・『憲兵』ひいては、『国』が介入すべき案件なのだが、『領地経営』に関しては『国』が直接干渉するのは難しい。

これは『ロマリア王国』の力関係にも関わる事なのだが、『領地』とはある意味では、ロマリア王国(その国)の中に『別の国』がある様な状態なのだ(もちろん、『所属』はロマリア王国であるが、ある程度の『自治権』が認められており、その『自治権』は各『領地』の『領主』が握っている)。

『ロマリア王国』は、所謂『専制君主制』で、ロマリア王家(現在の王はマルク王)による統治が行われているが、王の『権力』も絶対ではない。

ロマリア王国(この国)一番の『権力者』である事は変わりないのだが、当然ロマリア王国(この国)も一枚岩ではないからだ。

大きく分けても『王派閥』と『貴族派閥』に別れているこの国(ロマリア王国)の政治運営には、『貴族』達が多大な影響力を有している。

それ故、不正や謀反の確固たる証拠でもない限り、『領地』や『貴族』達に介入する事は、王家であろうと難しいのが現状である(ある意味『内政干渉』になるし、『貴族』達の反発を招く恐れがある)。

もっとも、王家もただ静観している訳ではなく、『騎士団』・『憲兵』とは別に、所謂『間諜(スパイ)』を使って各『領地』の『貴族』達を監視してはいるが、『貴族』達も対抗手段を打っているので、イタチごっこであるのが現状で()()()(余談だが、少し前までは『ライアド教・ハイドラス派』による『貴族』達への()()()()が存在したが、現在は急激に減少している)。

そうした訳で、長い事『レイモン伯』と『ランツァー一家』の蜜月関係は続き、それに『騎士団』・『憲兵』は手を出せない状況が続いていたのだが、突如として、双方の『重要証拠』と共に、イザッコ・ランツァーが『ダガの街』駐在の『騎士団』の元に放り込まれたのだった。


(一体誰がこんな事を・・・。)


大半の者がそう考えたが、トップや幹部の『貴族』達に取っては突然降ってわいた『手柄』を()()()するチャンスだった。

()()()のコンプレックスを抱え、しかも『平民』の噂話に上がるほどの『公然の秘密』を、『証拠』を掴めない事で手が出せず、『無能』だ『給料泥棒』だ、などと陰口を叩かれてきた者達が、それを我慢できる筈もなかった。

『騎士団』・『憲兵』達に『箝口令』をかけ、『()()()』の存在は秘匿された。

その後は、まさに水を得た魚の様に、『レイモン伯』を追及、失脚させ、ランツァー一家の本拠地の壊滅(実際には、踏み込んだ時にはすでに壊滅していたが)に乗り出し、一躍『ヒーロー』の座を手に入れたのである。

その勢いはとどまる所を知らず、ランツァー一家を全て撲滅するまで止まらないかに見えたが、『検問所』の『憲兵』からの報告で、ストップがかかった。

隊商(キャラバン)を襲撃し、逆に返り討ちに遭い、ランツァー一家の『盗賊部門』の頭目が捕まったとの事だったのだ。

捕まえたのは、『騎士団』・『憲兵』にもその名が轟いている『A級冒険者パーティー』・『守護者(ガーディアン)』の異名を持つ『デクストラ』であった。

トップや幹部の『貴族』達は内心焦った。

この一連の『事件』の『()()()』は、この『デクストラ』であったのではないかと疑ったのだ。

そもそも、『騎士団』・『憲兵』は、『重要証拠』を掴む事が出来なかっただけで(まぁ、それもそれで問題だが、それほどの『実力(レベル)』を持っている者がメンバーの中にいなかった)、その後の『レイモン伯』の不正の調査や追及、ランツァー一家の捕縛・壊滅などの一翼を担っているので、治安維持と言う自分達の本分は全うしているが、そこは『人』である。

一連の功績を自分達のモノとしたい、これを機会に出世したいと言う『欲』が出てしまうのも無理からぬ話であった。

そんな訳で、『デクストラ』は要らぬ面倒事に巻き込まれる事とあいなったのである。


「やっぱり、『人』と言うのは突然降ってわいた『幸運』を、自ら『不幸』に変えてしまう生き物ですよねぇ~・・・。」

〈なかなかジークが合流しないと思ったら、そんな事になっていたんだね~・・・。〉


もっとも、幾度となく『潜入活動』に従事し、こうした事態に何度も遭遇してきたアキト達に取っては、これも想定の範囲内であったが。

『重要証拠』とイザッコを放り込んだジークは、念の為、『騎士団』・『憲兵』の動向を監視していた。

そして、()()()()()()自らの『功績』を主張し、無益な争いに発展しそうになっていたのだった。

ジークは、アキトから預かっていた『通信石(つうしんせき)』で、アキトにその事を報告したのだ。


(『通信石(つうしんせき)』とは、ニルやフロレンツ侯が『失われし神器(ロストテクノロジー)』・『召喚者の軍勢』を発見した『遺跡』から、アキトが発掘した『失われし神器(ロストテクノロジー)』・『通信球(つうしんきゅう)』の『模倣品(レプリカ)』である。『通信球(つうしんきゅう)』は、『地球』で言う所の『電話機』に相当する物で、その存在を知らなければ何に使う物か分からないだろう。『特殊な道具』は、現代の者達にも何となく特別な道具であると理解出来るのだが、『日常使いの物』は現代に生きる者達には理解出来ない事も多い。『文献』などと照らし合わせて研究する『考古学』は、この世界(アクエラ)ではまだまだ未発達の学問であるし、『遺跡』には『モンスター』や『魔獣』が棲み着いていたり、『罠』などもあり危険が伴う。アキトは、『英雄の因子』の能力『言語理解』と、『前世の記憶』により、ニルやフロレンツ侯が見過ごした『通信球(つうしんきゅう)』を発見し、その使い方を理解した。しかし、『日常使い』の道具であった為か、経年劣化による損耗が激しく使いモノにはならなかった。その為、『通信球(つうしんきゅう)』を研究し再現したのが『通信石(つうしんせき)』であった。もっとも、こちらはどちらかと言うと『トランシーバー』に相当する物である。それでも、これが公表されれば現代の常識を覆す『発明』であり、メリットとデメリットを比較しても大金や名声は手に入るかもしれないが、まず間違いなく面倒事に巻き込まれると考えたアキトは、仲間以外には『通信石(つうしんせき)』の存在を知らせてはいない。)


アキト達に取っては、囚われた『他種族』などの『奴隷』を解放出来れば、『名声』などいらないのだが(むしろ面倒事が増えるだけだと考えている)、それが相手には伝わらない事の方が多い。

それ故、()()()をしてまで、『リベラシオン同盟』の看板を掲げたのだ。


〈分かった。ジークはもう合流してくれ。いずれ『騎士団』もランツァー一家の元・アジトにも踏み込んでくるだろうから、そこに『メッセージ』を残しておこう。『デクストラ』の皆さんには申し訳ないが、それまでは辛抱して貰おう。〉

「はっ!」



◇◆◇



『デクストラ』のメンバーは、『検問所』でランツァー一家の事件を報告した事で、『騎士団』・『憲兵』に()()調()()と言う名の『軟禁状態』となった。

本来なら、『功労者』たる『デクストラ』は、称賛されこそすれ、その様な扱いを受けるのは不当である。

『騎士団』・『憲兵』はこの事がバレれば、折角上がった『評判』がまた下がってしまうだけなのだが、何故か強気だった。

一方で、『デクストラ』、ないし『冒険者』は『市民』の『評判』がすこぶる良い。

それだけ『冒険者』は、『市民』にとって身近な存在であると言う事である。

当然、『冒険者ギルド』も黙ってはいなかった。

特に、『デクストラ』は、『冒険者ギルド』としても無視出来ないビックネームである。

彼らを守らないと、今度は『市民』の怒りの矛先は自らに向く。

その事が分かっているからだ。

その事とは別に、『ダガの街』の『冒険者ギルド支部』のギルド長、ランドルフは『デクストラ』と親しい関係であったので、そう言った政治的な事がなくとも動いていただろうが。


「取り調べは理解出来るが、なぜ『デクストラ(彼ら)』を『軟禁』する必要があるんだっ!」


ランドルフは、『ダガの街』の『騎士団』・団長、クロヴィエに猛抗議していた。


「まあまあ、落ち着いて下さいよ、ランドルフさん。我々も、今回の件は慎重に事を進めたいのですよ。『デクストラ』の皆さんのお噂はかねがね伺っています。彼らなら、今回の件の『()()()』であってもおかしくはないでしょう?それほどの『腕』を彼らはお持ちだ。」

「『デクストラ(彼ら)』が()()である事は私が保証しよう。だが、彼らが今回の件の『()()()』でない事は冷静に考えれば分かるだろうっ!?彼らは、ここ数週間は『サージェント商会』の隊商(キャラバン)の『護衛』の任に就き、彼らと行動を共にしていたのだぞっ!?」

「・・・()()も含めての取り調べですよ。事が大きいのですから、取り調べも相応に時間が掛かります。どうかご理解下さい。」


クロヴィエとランドルフの主張は平行線だった。

今日で、『デクストラ』が『軟禁』されて一週間ほど立つ。

その間に、『騎士団』・『憲兵』は『レイモン伯』を拘束し、ランツァー一家の本拠地を壊滅させた。

『デクストラ』の供述を(もと)に、ランツァー一家の『残党』達を捕縛・駆逐し、『ダガの街』近郊のランツァー一家のもう一つの大きな拠点である『盗賊部門』が現在は主に利用している『元・アジト』にも兵を派遣させた。

もうすぐ、こちらも成果が出るだろう。

クロヴィエはひそかにほくそ笑んだ。

今回の事件の『()()()』が誰かなど、事ここに至ればもはや関係ない。

世間的には、今回の『功績』は既に『騎士団』・『憲兵』のモノだ。

今さら『()()()』が名乗り出た所で、ただのホラ吹きである。

ここら辺は、タイミングが重要であった。

事件発覚から早い段階で、『()()()』が名乗り出たら、『騎士団』・『憲兵』・世間的にも無視出来ない。

それ故、クロヴィエはその疑いと『実力』のある『デクストラ』を取り調べと言う名の『軟禁状態』にし、動きを封じた。

その後はスムーズに事が進んだので、クロヴィエは目論見が成功したと()()()をしていた。

そう、『デクストラ』のメンバーは、『リベラシオン同盟』の事を明かさなかったのだ。

逆に、『騎士団』・『憲兵』の圧力に屈した隊商(キャラバン)の一部の『商人』から、クロヴィエ達は『リベラシオン同盟』の事を知らされていたが、それこそが『デクストラ』の協力者なのではないかと勝手に()()()を重ねていった。

よくある話だが、既定の『筋書き』通りに話を進め様として、ろくに調べもせずに自分達の都合の良い様に解釈したのだった。


「ですが、ランツァー一家の『盗賊部門』の『元・アジト』に派遣した兵からの報告が来れば、『デクストラ(彼ら)』は解放しますよ。もちろん、盗賊捕縛の功の相応の褒賞も用意させましょう。我々も、『冒険者ギルド』と仲違いをしたい訳ではありませんからね・・・。」

「よくもぬけぬけと・・・。」


ランドルフの小さな呟きも、クロヴィエは涼しい顔で受け流す。

負け犬の遠吠え、くらいの認識だった。

しかし、クロヴィエの余裕も、派遣した兵からの報告で一気に崩れ去った。


「ご、ご報告しますっ!こ、これは失礼しましたっ!ご来客中でしたか・・・。」

「良い。ランツァー一家の件だろう?こちらは、『冒険者ギルド』のギルド長、ランドルフ殿だ。彼なら話を聞かれても不都合はないだろう。」

「はっ!り、了解しましたっ!」

「ふっ・・・。」


人は、自らの『功績』を誰かに自慢したい生き物だ。

『優越感』と言うか、『承認欲求』と言うか、そう言った(たぐい)のモノかもしれない。

しかし、今回の場合は悪手だった。


「ランツァー一家の『盗賊部門』の『元・アジト』も壊滅させました。と、申しますか、本拠地と同じく、我々が踏み込んだ時には既に壊滅しておりまして・・・。」

「・・・はっ?」

「『元・アジト』には、ほとんど手付かずの強奪品と、死傷した構成員だけが残されておりまして、『人身売買』用に捕らえられたと思わしき者達は全て『解放』されており、影も形もありませんでした。それと、この用な『メッセージ』が・・・。」

「か、かせっ!」


目論見が外れて焦ったクロヴィエは、余裕が消えて素の表情が漏れ出てしまう。

基本的にクロヴィエは、エレオノールを人質にした盗賊の男と同じく、自己評価が異常に高い。

現在の立ち位置が、己の『力量』に相応しいモノであると気付かず、もっと自分は高い能力を持っていると()()()している。

そうなりたいのであれば、『レベル』を上げる(成長する)努力をすれば良いだけなのだか、それには気付かない、あるいは目を逸らしているのだ。


「拝啓、『ダガの街』の『騎士団』・団長、クロヴィエ殿。

我々は、『リベラシオン同盟』の者です。

今回の、『レイモン伯』とランツァー一家壊滅は、我々が実行しました。

しかし、我々の目的は、『人質』の解放であり、そもそも我々に捕縛、逮捕する権限はありませんので、その『功績』と言いますか、事後処理はそちらにお任せします。

故に、()()をどの様にそちらで扱おうとも我々は関知しません。

ただし、『デクストラ』の皆さんは我々と関係ありませんので、不当な『軟禁』が続く様でしたら、実力行使も我々としては吝か(やぶさか)ではありません。

なお、我々はフロレンツ・フュルスト・フォン・トラクスの承認を受けた『組織』であり、何かございましたら、そちらまでご一報下さい。


我々の目的は、ロマリア王国の腐敗の根絶と、『人身売買』の根絶です。

()()()()()()()()()()()()()()()を、ゆめゆめ忘れません様に。

それでは、人々の為に尽力される事を願います。」


ご丁寧に、フロレンツ侯の『紋章』入りであり、また、『レイモン伯』とランツァー一家の『重要証拠』の『写し』まで添えられていた。


「・・・。フロレンツ侯だとっ!?ば、バカなっ!か、彼は、『貴族派閥』の中心人物だぞっ!?こ、この様な『組織』を承認するハズが・・・。」

「フロレンツ侯とは、また大物が関わってきましたな。彼の名を語っている以上、『リベラシオン同盟』と言うのは『本物』か、あるいは『偽物』だとしても、フロレンツ侯すら恐るるに足らない『組織』と言う訳ですな。いやぁ、我々の手には負えないレベルですなぁ。」

「くっ!?」


攻勢一転、今度はランドルフが白々しくそうのたまった。

悔しげに口唇を噛むクロヴィエだが、反論は出来ない。

フロレンツ侯は、ロマリア王国でも屈指の実力者(権力者)であり、クロヴィエの様な地方の一貴族が簡単に意見出来る相手ではないのだ。


「まぁ、いずれにせよ、事件が解決したのなら『デクストラ』を『解放』して頂きましょう。『デクストラ(彼ら)』に対する褒賞も忘れないで下さいよ?補償に関する事はまた後日調べて請求させて頂きます。なんせ、『デクストラ(彼ら)』」は『実力者』ですからなぁ~。『デクストラ(彼ら)』が()()調()()を受けていた一週間ほどで、どれだけの『損失』が出た事か・・・。」

「くっ!・・・わ、分かりました。今回はご協力頂き、誠に有り難う御座いました・・・。おい、『デクストラ』の皆さんを解放しろ。そう通達を出せっ!」

「は、はっ!」


クロヴィエは、『欲』を出した結果、今回の『功績』に自らの名を刻む事は出来たが、その一方で、しなくても良かった様々な『()()』を支払わなければならなくなった。

まぁ、これも彼が選択した結果であるから同情の余地はないのだが。

こうして、『レイモン伯』とランツァー一家壊滅の事件は静かに解決し、その『裏話』も幕を下ろしたのだった。



◇◆◇



「いやぁ~、()()()()とこんなに早く再会出来るとは思ってなかったよ~。それに、また助けて貰っちゃったねぇ~///。」

「はははっ・・・。リ、リーゼロッテさん達も、『()()()()』を目指されていたのですねぇー・・・。」

「もうっ、ボクの事はリサでいいよ、()()()()。」

「ちょっと、リーゼロッテちゃんっ!近付きすぎだよっ!」

「そ、そうですよ、リーゼロッテ殿っ!主様(あるじさま)は私がお守りしていますので、もう少し離れて下さいっ!」


ランツァー一家の元・アジトから『他種族』や『人身売買』の為に捕らえられていた人々を解放してから早一週間。

僕らは、解放した人々を伴って『ルダの街』に向かっていた。

僕らも、既にこの手の活動に慣れているので、対応もスムーズである。

『他種族』の人々に関しては、『シュプール』にて受け入れ、心身の療養・リハビリを施す。

『人間族』の者達は、『リベラシオン同盟』にて受け入れ、こちらも心身の療養・リハビリを施す。

その後は、その人々が望む形に添うように、出来るだけ便宜を図っている。

まぁ、『エルフ族』の場合は、ほぼ強制的に『エルギア列島』行きになるが、今の所(アルマ・エーヴァ・スヴィ以外)不満は出ていない。

他の『他種族』(こちらは数は圧倒的に少ないが)は、『他種族』の受け入れに積極的な『トロニア共和国』行きを奨めている。

現状、『他種族』がロマリア王国にいても、あまり良い事はないからな。

『人間族』に関しては、『リベラシオン同盟』の中心メンバーであるダールトンさんとドロテオさんに任せている。

が、ほぼ間違いなく、皆さん『ルダの街』に定住を希望する。

彼らにも『故郷』があるだろうが、その生活圏内で()()()()()にあっているので、致し方ない部分はあるが・・・。

ちなみに、『ルダ村』は現在『ルダの街』と改名し、ロマリア王国でも屈指の発展を遂げている。

人口は、既に一万人を軽く越え、日々その数を増している。

初めは、『パンデミック(モンスター災害)』からの、復興による一時的な好景気かと思っていたのだが、どうも違う様だ。

『ルダの街』の税収が低く、生活水準が高いと認知された結果だそうだ。

その為、わざわざこの地に移住希望をする者達も多いと聞く。

まぁ、他の『領地』から移住するのは、この世界(アクエラ)ではハードルが相当高いが、それだけこの地が魅力的と言う裏返しでもある。

話を聞けば、リーゼロッテさん達も仕事を求めて『ルダの街』を目指しているそうだし・・・。

そのリーゼロッテさん達とは、『ダガの街』近郊にて、ランツァー一家の襲撃部隊迎撃後に別れたのだが、つい先刻再会した。

今回は、『ルダの街』に向かう隊商(キャラバン)に便乗していたそうなのだが、運の悪い事に、『魔獣』達の襲撃に見舞われたのだ。

この隊商(キャラバン)は、メレディーさんの隊商(キャラバン)よりも規模が小さく、しかも、この世界(アクエラ)の『商人』としては、ありえない浅はかな考えで、『戦闘のプロ』たる『冒険者』を雇っていなかった。

もちろん、隊商(キャラバン)の『商人』達も戦う術を心得ているし、人数もそれなりにいるので、案外大丈夫そうな気がして気が大きくなるのも理解出来なくはないが、見積もりが甘過ぎた。

『魔獣』達に襲撃され、僕らが助太刀する前に、残念ながら命を落とした人も何人かいる様だ。

『盗賊』などの人間の襲撃の方が、組織だって動くので脅威度が高い様に感じるが、『モンスター』・『魔獣』の方が危険度は高い。

『盗賊』の場合は、『慰みもの』や『人身売買』の『商品』として捕らえられる事で、最低でも命は助かる可能性はあるが、『モンスター』・『魔獣』にはそうした理屈は通用しない。

そもそも襲撃している時点で、相手の事は『敵』か『餌』にしか見えてないので、命の危険は格段に高くなる。

偶然にも通り掛かった僕らが、その襲撃を発見し助太刀する事とあいなったのだった。

こうして、リーゼロッテさん達と再会したのだった。


「一度ならず二度までも助けて貰っちまって、アンタ方には感謝しかねぇぜ。」

「本当にありがとうございますっ!このご恩は、必ずお返ししますから・・・。」

「ああ、いえ、それには及びませんよ、ドニさん、シモーヌさん。僕らも降りかかる火の粉を払っただけの事。どうか気にしないで下さい。」


リーゼロッテさんの謎のテンションから解放され、僕はドニさん、シモーヌさんと言葉を交わす。

ちなみに、お二人の子どもであるアランくんと、エレオノールちゃんは、ハンス・ジーク・ユストゥスの男子組三人に殺到している。

今回は、解放した人々の護衛もあったので、僕とアイシャさん、ティーネが後衛を務め、彼ら三人が前衛で『魔獣』達を討伐した結果、子どもの人気を勝ち取った様だ。

実年齢と見た目は大人な彼らだが、中身は『男子中学生』の様なノリなので、彼らも子どもの憧れの眼差しを満更でも無い様子で受け入れている。

案外、子どもが好きなのかもな・・・。

まぁ、その一方で、隊商(キャラバン)の皆さんはお通夜状態だったが(実際亡くなった方もいるのであながち間違ってはいないが)、それでも、隊商(キャラバン)の隊長さんは僕らに声を掛けてきた。


「あ、ありがとうございました。おかげで、助かりました。」

「いえ、礼には及びません。僕らも降りかかる火の粉を払っただけの事ですから。しかし、ご忠告しておきますが、『護衛(『冒険者』)』は雇われた方がよろしいかと思いますよ?この世界(アクエラ)の、『街』や『村』の外は厳しい世界ですからね・・・。」

「は、はい・・・。」


隊長は、かなり年若い青年であった。

おそらく、駆け出しの『旅商人』であろう。

『商人』も様々な種類が存在するが、もっとも稼ぎが大きいのは『旅商人』である。

『旅商人』は、貿易を直に引き受けているので、卸価格の安い『現地』で買い付けをして、需要の高い『街』や『村』で高額で売り捌くので、実入りも良いが、反面危険も大きい。

当然、『商人』達も『冒険者』達と同じく『商人ギルド』を持ち、様々な教育や注意換気をしているが、どこにでも人の忠告を聞かない(たぐい)の人達や、自分だけは大丈夫と思い込んでる人達もいるので、こういった事例は後を絶たない。

駆け出しの『初級・中級冒険者』が、運良く依頼をスムーズにこなしていき、自分達の実力を過信し、無茶な討伐や狩りを行い、還らぬ人になる事も多々ある。

『冒険者ギルド』も『商人ギルド』も、人材を失うのは損失であるから、所謂斡旋する仕事も、実力に見合ったモノを紹介するのだが、ぶっちゃけ拘束力がある訳でもない。

最終的に決定するのは、その個人やチームなので、そこら辺はかなり難しい問題であった。


「まぁ、いずれにせよ、僕らの目的地も『ルダの街』ですので、ご迷惑でなければ同行しましょうか?僕も、知り合いの子どもが危険な目に合うのは見過ごせませんからね・・・。」

「ほ、本当ですかっ!?あ、ありがとうございますっ!!」


憔悴した様子の隊長さんは、僕の言葉に少し瞳に力が戻ってきた。

責任を感じていたのだろう。

某豆つぶドチビ主人公の作品でも言っていたが、痛みの伴わない教訓には意義が無い。

経験に勝る知識はない。

『知識』や『知恵』などが数多く存在していても、人は自らそうだと思わない限り、それはただの『記録』でしかないからだ。

彼らは、高い授業料を支払い、この世界(アクエラ)の『現実』を垣間見た。

これからは、あまり無茶な事はしないだろう。

亡くなられた方達には気の毒だが、()()()()()()()()()なのだ。

最終的に自分達の身を守れるのは、自分達だけである。



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今後の参考の為にも、よろしければ、ブクマ登録、評価、感想等頂けると幸いです。よろしくお願い致します。

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