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『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』  作者: 笠井 裕二
真・英雄大戦
334/383

盤外戦術

続きです。



以前にも言及した通り、セレウスとハイドラスは今現在、化身(アヴァターラ)の状態でこの地上に顕現している。


もっとも、セルース人類としての本体は、所謂宇宙船内に存在するし、限界突破の影響で、『肉体』と『精神』・『霊魂』を分ける事が出来る様になっているので、あくまで化身(アヴァターラ)が絶賛封印状態とは言えど、本来ならばその能力を使って、色々と暗躍する事は可能なのである。


とは言えど、以前にも言及した通り、そもそもセルース人類側の都合もあり、本体であるセルース人類としての肉体を使う訳にもいかない。

要はそれは、自分達が仲間達にある意味強要した形である、“アクエラ人類側の記憶から、自分達の記憶が薄れるのを待つ”という前提条件を、自ら破る事となるからである。


また、いくら所謂『精神体』、あるいは『星幽体(アストラルバディ)』として活動が可能とは言えど、元となる肉体は存在しない状態である。

つまり、主物質界に干渉する為にはエネルギーを使うし、よほど霊的才能、あるいは感受性が高くないと、その状態の存在を知覚、どころか声を聞く事すら不可能であるから、今現在の彼ら出来る事はかなり限定されてしまっているのであった。


まぁ、それも、彼ら自身が選択した事であるから致し方ない部分も存在するのであるが、そんな訳で彼らは、ある意味暇を持て余している状態だったのである。

(もっとも、この時点での彼らは気付いていなかったが、こうした状況になったのは、実はマギとネモのシナリオ通りだったのであるが。)


さて、そんな状態で出来る事と言えば、何かの観察くらいだろう。


(言うなれば、以前までは“この物語”にキャラメイクして干渉していたのであるが、強制イベントによってそれが中断されて、本来の主役達が物語を進行している、と言ったところか。

もちろん、その主役達というのは、他ならぬカエサル達の事であった。)


ー・・・おっそろしい使い手になったな、あの嬢ちゃん。ー

ー・・・う、うむ。元々知的好奇心が強いタイプだったのだろう。それに、下手に科学知識にも毒されていないからか、柔軟で自由な発想が出来るのだろう。まぁ、その結果、ほぼ誰にも防げない恐ろしい魔法を生み出してしまった訳であるが・・・。ー


ドレアムとの戦闘を眺めていたセレウスとハイドラスは、奇しくもカエサル達と同じ感想を抱いていた。


“子供”の好奇心というのは、時に純粋であるが故に恐ろしい側面もある。


例えば、これは誰しも経験があるかもしれないが、幼い子供が昆虫などを踏み潰したり、あるいはその身体をちぎったりなどは、普通によくある事である。

彼らにはまだ善も悪もなく、常識と非常識の境界も曖昧で、好奇心の赴くままに行動してしまうからである。


まぁ、それも成長する毎に生物や他者に対する思いやりなどを育んでいく為に必要なプロセスなのであるが、逆に言えば、こうした純粋な好奇心が時に科学、あるいは技術の発展には必要不可欠である側面もある。


彼女は彼女なりに考えて、“水”には色々な活用方法がある、と研究を重ねた結果生まれたのが、“マイクロウェーブ”や“ウォーターカッター”だったのだろう。


もちろん、非常に危険性の高い魔法ではあるが、同時に応用性にも優れた側面もあるので、アルメリアの“術師”としての才能と“研究家”としての才能は、もはや疑うべくもない。

まぁ、彼女の場合は、その応用力に難がある、というか、それを活用する発想力の方はあまり高くない様にも見える。


案外そういう事は多いのであるが、一から技術を生み出す事には長けていても、出来上がった技術を他の技術と組み合わせ全く別の方向性を見出す事は、他の者達の方が優れている事はままある。


アルメリアは前者、ルドベキアや、後の世のアキトなんかは、どちらかと言えば後者の方に該当する存在かもしれない。

まぁ、それはともかく。


ー・・・しかし、“魔素”ってのはあんな恐ろしいバケモンも生み出せちまうんだなぁ〜。ー

ーうむ・・・。我々は“魔素”の一面しか活用出来ていないが、当然ながらそれは、生物、どころか無機物にまで影響を及ぼす事が可能なのだろう。場合によっては、生物の構成情報を書き換える、つまりは遺伝子などの変化、あるいは変質を経て、全く別の能力、スキルを獲得する事も可能なのかもしれないな。・・・まぁ、ある種タブーではあるが。ー

ーなるほど・・・。ー


話は変わって、セレウスはドレアムを指してそう言った。

それにハイドラスは独自の考えからそう言った。


以前にも言及した通り、セルース人類にとっても生物、ないしは“人間”の遺伝子なりを操作すら事はタブーとされている。

ここら辺は、やはり倫理観や道徳心の問題であるが、場合によってはドレアムの様な化け物を生み出してしまう可能性もあるし、場合によっては自我を失った本物のゾンビを作り出してしまう可能性もある。


もっとも、セルース人類の持つ技術だけでは、あくまで遺伝子なりを操作しない事には、そうした事は出来ないのであるが(その禁忌を破って『新人類』を生み出したのがアスタルテであるが)、そうした物理的、直接的な干渉なしでも、“魔素”という物質(?)には、それと同じ様な効果を発揮する事もありうるのである。


自分達がよく知りもしないで利用していたこの“魔素”であるが、実はかなり危険な側面もある事を二人は改めて思い知らされていた。


だが、いずれにせよ、一度世に解き放ってしまった以上、今更『魔法技術』をなかった事には出来ないし、元々“魔素”を活用する技術がこの世界(アクエラ)にあった以上、遅かれ早かれそうした現象なり技術が確立していた可能性の方が高い。

そうした意味では、まぁ『魔法技術』の確立と普及はあくまでソラテス達が中心となって行った事であるから、二人には責任のある事ではないのだが、それでも同じセルース人類が起こした事でもあるので、二人は責任の一端を感じていたのだが、あまり気に病む必要はないのであるが。

まぁ、それはともかく。


ーしかし、いずれにせよカエサル達ならあのバケモンの対処は何とかなりそうだな。ルドベキアの嬢ちゃんも指摘していたが、アルメリアの嬢ちゃんの魔法ならあの時点でも倒せる可能性はあったし、ネタが分かった以上、アイツラならどうとでもなるだろ。ー

ーうむ・・・。それに関しては私も同意ではあるが、それでも魔王軍を相手取るには今の彼らではやはり少々心許ないのも事実だ。流石にあのレベルの化け物がそうホイホイと存在するとは考えづらいが、むしろそんな魔王軍でさえ持て余していた化け物を屠ったとなれば、魔王軍としては本腰を入れて彼らを排除に掛かる筈だからな。ー

ーへ・・・?ー


至極楽観的な発言をするセレウスに対して、ハイドラスはそれを部分的に肯定しながらも、一部を否定した。


ー当たり前だろ?自分達の脅威となる存在を放置する訳がない。もちろん、すでにあの化け物を差し向けている訳だが、それが失敗したとしたら、また次の手を打つに決まっている。しかも、先程述べた通り、自分達でさえ持て余している化け物の排除に成功したとしたら、魔王軍側からしたらカエサル達の脅威度はうなぎ上りだ。将来的に自分達の邪魔になる事は言うまでもなく、そうなれば全力を上げてカエサル達を排除する筈だ。採算度外視で、な。ー

ー・・・つまり、魔王軍の精鋭をカエサル達に差し向ける?ー

ー少なくとも、私が魔王軍のトップであれば、そうするだろうな。不安要素は早めに潰しておきたいからな。ー

ーまずいな・・・。ー

ーああ・・・。ー


セレウスは、ハイドラスの言わんとする事を正しく理解し、状況は芳しくない事を悟った。


カエサル達からしたら、ドレアムを撃破する事は自分達の生存の為にも必須条件であるが、それをすると魔王軍のカエサル達に対する認識を改めさせてしまう事にも繋がる訳だ。

あくまで保険としてカエサル達にドレアムを派遣した訳であるが、当然ドレアムの実力は魔王軍も知っている訳であり、それを退けるほどの強者達、すなわち、思った以上に自分達の脅威になりうる実力者集団である、という風に見られる訳である。


となれば、今度は魔王軍を動かす事のコスト云々は度外視して、カエサル達を全力で潰しにかかるのがある意味自然な流れである。


いくらカエサル達が実力者集団とは言えど、多勢に無勢。

数で押し切られてしまえば、流石に勝ち目はない。


・・・まぁ、少なくともセレウス、ハイドラス両名ほどの実力を持っていれば話は別であるが。


自分達自ら助けたり育てた事もあり、カエサル達に肩入れしつつある二人は、この先の彼らの運命を幻視して、深い溜息を吐いた。


先程も述べた通り、残念ながら今現在の二人は動くに動けない状況であり、彼らを助けたくとも助けられる状況になかったからである。


・・・しかし、ここで二人の心配を吹き飛ばす“声”が響き渡る。


ー・・・お話は伺わせていただきました。ー

ーっ!?誰だっ!?ー


セレウスはそう誰何した。


先程も述べた通り、今現在の二人は『精神体』とか『星幽体(アストラル・バディ)』と呼ばれる状態、すなわち明確な実体(肉体)を持たない状態で会話を交わしていた。

つまり、それに割って入れる様な存在が居る筈もないので、そういう反応になるのも頷ける。


しかし、ハイドラスの方は冷静であった。


ー・・・マギ、か・・・?いや、ネモの方か。ー

ーどちらでも。我々には明確な違いは存在しませんからね。まぁ、()に造られたか、という違いはありますが、それも、もとを正せば結局は同じですから。ー

ーふんっ!じゃあ、結局お前らは俺等を騙していたんだなっ!ー


マギ、あるいはネモの返答に、セレウスは激昂した。


神話大戦の折には一度信用していただけに、裏切られた、と感じるのは無理からぬ話であろう。


だが、()()は動じる事なく再度答える。


ーいえいえ、騙すなどとんでもない。我々の目的は以前に語った通りです。言うなれば、“進化の手助け”。この宇宙に無数に存在する知的生命体の中から、我が創造主である“アドウェナ・アウィス”に成り変われる存在をピックアップし、彼らをサポートする事。ここでは、あなた方がそれに該当した訳ですが、ただ、“アドウェナ・アウィス”の中でも、様々な考え方が存在し、それが『解放者(リベレイター)』派、『支配者(ドミナートル)』派の人工知能(AI)として遺った。そしてあなた方は、各々の勢力となり争う事となったのです。もちろん、それをあなた方はその尖兵とされた様にも感じるかもしれませんが、お互いに利害は一致していましたよね?ー

ー・・・確かに。ー


不承不承であるが、それについてはセレウスも否定しなかった。


ー結果、『解放者(リベレイター)』側である人工知能(ネモ)に導かれたあなた方が勝利した。これによって、ある種の“答え”が出たのです。少なくともセルース人類(あなた方)()、“支配”ではなく“自由”というルートを選んだ。それ故に、もはやマギとネモを分ける必要性もなくなったのです。あくまで我々は、プログラムに則って行動していたのに過ぎないので、答えが出た以上、もう対立する意味がありませんからね。ー

ー・・・なるほど、ね。ー


ハイドラスは人工知能(AI)の言葉に頷いた。


彼らに感じていた違和感。

神話大戦が決着ついた時点で、確かにマギは大人しくネモ、というかハイドラス達側に歯向かう事はしなかった。

しかし、本来であればそこに断固たる決意、ないしは意思が存在するのであれば、何らかの結論が出たとしてもそれで納得する訳もないのである。


しかし、あくまで彼らの目的はセルース人類を対立させる事、というか、“アドウェナ・アウィス”の実験を代行する事であるから、それで一つの答えが示されたのであれば、それ以上対立させる意味がないのである。


しかしそうなると、いまだに彼らが暗躍しているのはどういう事なのであろうか?


ー・・・じゃあお前らは、いまだに何でコソコソやってやがんだ?結論とやらが出たのであれば、これ以上お前らが何かする事もないんじゃねぇのか?ー


案外、話をしっかり理解していたセレウスは至極全うな事を言った。

それにはハイドラスも、当の人工知能(AI)達も内心驚いていたが、それをおくびにも出さずに話を続ける。


ー・・・確かに()()()()()()これ以上介入するつもりはありませんよ。少なくともあなた方は、限界突破を果たして“アドウェナ・アウィス”に限りなく近しい存在となり、なおかつあなた方は答えを示したからです。我が創造主はそれを一つの答えとして受け止めた訳ですが、しかしまだまだ実験自体は続いていくのです。ー

ー・・・ま、まさかっ!?ー

ーデータは多い方が良い。そうする事で、統計の精度もどんどん上がっていきますからね。ー

ー・・・どういう事だ?ー

ー・・・つまり、彼らは今度はアクエラ人類に介入するつもりなんだ。そうだな?ー

ーええ、その通りです。先程も申し上げました通り、我々の真の存在意義は、この宇宙に数多く存在する()()()()()、まぁ、それもある一定以上の進化を遂げた種に限定されますが、に更なる進化を促し、問を出し、それの答えを収集する事なのです。ー

ー・・・セルース人類(俺等)にはその“答え”を聞いたからもうこれ以上介入するつもりはないが、今度はアクエラ人類、って訳か。ー

ーええ。ー


その返答に、セレウスとハイドラスは複雑な表情を浮かべていた。


ハッキリ言って、セレウスとハイドラスがアクエラ人類に肩入れする事は、あくまで個人的なワガママでしかない。

それ故に、人工知能(AI)によるアクエラ人類への介入・干渉をとやかく言う権利はないのである。


“アクエラ人類への介入を止めろ。”

“何故ですか?あなた方に干渉している訳ではありませんよ?あくまで他人であるあなた方が、アクエラ人類の事に介入するのは、それは傲慢ではありませんか?”


という訳である。


もちろん、人情的にはそれは致し方ない部分も存在する。

要は彼らは目的の為に、アクエラ人類の未来に激しい争いを起こす事がほぼ決まっている訳だから、すでにそれを経験した身としては、あえて困難な道を歩ませたくない、という心情になっても不思議ではないからである。


所謂、大人が子供を心配するのに似た心理であるが、これは再三述べている事でもあるが、子供の将来を心配し過ぎてもあまりよろしくはないのである。


全ての困難を事前に潰してしまっては、いざという時、その子供達は自分達では何も出来なくなってしまう。


過保護であったり、過干渉である事は、必ずしも子供達の為にはならないのである。


しかし、ここでハイドラスはふと違和感を抱いた。


ー・・・ちょっと待って下さい。ー

ー何でしょうか?まだ反論がおありですか?ー


ハイドラスの発言に、人工知能(AI)は嫌味とも取れる返答を返した。

それに苦笑いをしつつ、ハイドラスは言葉を続けた。


ーいや、単純な疑問ですよ。確かに我々には、アナタ達を止める権利はない。ですが、今現在のアクエラ人類は、そもそもアナタ達が介入する段階に到達していませんよね?ー

ーふむ・・・。ー

ー・・・どういう事だ?ー

ー以前にも彼ら自身が語っていただろう?彼らはある一定以上の文明なり技術力を持った時、初めてその存在を現すんだ。私達で言えば、他の惑星に飛び出した事。まぁ、条件は様々だろうが、少なくとも現段階のアクエラ人類は、到底その試練に到達するレベルには達しているとは考えづらいのだよ。ー

ー・・・おっしゃる通りです。本来であれば、私達がアクエラ人類に介入するのは、もっと遠い未来の事だった事でしょう。ですが、ここでイレギュラーが発生してしまいました。魔物達の台頭です。確かに彼らも、知的生命体の一種と言えるでしょう。ですから、自然発生的に彼らが進化し、この惑星(アクエラ)の支配者として君臨したのであれば、別にアクエラ人類ではなくとも、彼らを試練の対象とする事も(やぶさ)かではありませんでした。この宇宙には、人類種とは別の進化を遂げる種も存在しますからね。しかし、彼らは自然発生的に進化した種ではありません。何故なら・・・ー

ー・・・ヴァニタスが介入したから、ですね?ー

ーええ。もちろんこちらも、現地に神性の存在が生まれる事は別に構いませんでした。あなた方も、“アドウェナ・アウィス”とは別に、信仰する“神”が存在するでしょう。とは言えど、それはあくまで“アドウェナ・アウィス”がベースとして存在する。もちろん、所謂“宗教”の中には全く異なる信仰対象、例えば“悪魔”と呼ばれるものが祀り上げられる事もあるやもしれませんが、それは大きな勢力にはなっていない。だから、それ自体は別にどうとでもなったのです。ですが、ヴァニタスは違います。奴は、アクエラ由来の“神”であり、なおかつその存在理由は、極論を言えば全てを無に帰す存在だ。これは、あなた方が存在した事により、そのカウンターとして生まれてしまったものでしょうが、ね。ー

ー・・・なるほど。ー


訳知り顔なハイドラスと人工知能(AI)の会話に、セレウスは痺れを切らして割って入った。


ーつまり、どういう事だってんだよ?ー

ー失礼。つまり、ヴァニタスという存在が面白半分で生み出したのが今現在の魔物達なんです。当然ながら、彼が操る魔物達がこの惑星の覇権を取ってしまっては、“アドウェナ・アウィス”に向かう筈の“信仰のエネルギー”が他に向いてしまう。それは、我々にとっても望むべき未来ではありませんでした。それ故に少々予定を早め、いまだそのレベルには達していないアクエラ人類に介入する事としたのですよ。彼らが滅んでしまったら、この惑星での()()は無意味となってしまいますからね。ー

ー・・・あくまで、自分達の都合の為、ですか・・・。ー

ーそれは否定しません。ですが、これに関してはあなた方とも利害は一致していると思いますよ?あなた方も、アクエラ人類が滅ぶのは良しとしていないでしょう?ー

ーー・・・。ーー


人工知能(AI)の言葉に、流石のセレウスとハイドラスも二の句が継げなかった。


ー・・・まぁ、いずれにせよ、今の封印状態のあなた方では、我々の行動を止める事は出来ませんけどね。ー

ー・・・なら、どうして俺等に声をかけたんだよ?わざわざ接触しなくても、勝手にやれば良かっただろ。ー


そうなのだ。

今まで影で暗躍していたのなら、ここで二人にその存在をわざわざ知らせる必要はない。


だがもちろん、それには理由があった。


ーそれはその通りですが、まだアクエラ人類には我々の存在を知らせる訳には行きません。今回の場合はイレギュラーとは言えど、アクエラ人類はまだその段階には達していませんからね。そこで、すでにある程度存在の知られているあなた方を利用させて貰おうと考えたのですよ。我々があなた方に接触したのはその為です。ー

ー・・・利用?ー


不快そうな表情を浮かべた二人に、しかし人工知能(AI)はにべもなく答える。


ーあなた方の存在を介してアクエラ人類を導くのですよ。これならば、アクエラ人類と我々が直接的に接触した訳ではありませんから、彼らが我々の存在に気付きませんし、魔物達を排除する事も可能となるでしょう。結果として、ヴァニタスの目論見を阻止する事にも繋がり、そうなれば我々としてもあなた方としても、先程も述べた通り、望ましい結果に繋がると思いますがね。ー

ー・・・なるほど。ー

ーこれでも、あなた方には配慮したのですよ?おっしゃる通り、こちらで勝手に進める事も出来ましたが、それではあなた方が不快な思いをされるでしょう?ですから、事前にご説明をするべく、こうして接触した次第であります。まぁ、あなた方に拒否権はありませんから、これもただの確認でしかありませんが、知っていると知らないでは、やはり心象が違いますからね。ー

ーへーへー、わざわざありがたいこって。ー

ー殊勝な心がけですね。ー

ー・・・褒め言葉、と受け取っておきます。では、我々はこの辺で・・・。ー


そう言うと、人工知能(AI)との接続が切れた事を二人は感じていた。


ー・・・くそっ!面白くねぇぜっ!!ー

ー・・・だが、一応筋は通っている。やり口が気に食わないのは同意だが、今回に関しては、少なくともアクエラ人類、カエサル達にとっては彼らの行動は助けとなるだろう。・・・まぁ、その後、どういう事になるかは不透明だが、とりあえず今後の展開を注視する事としよう。ー

ー・・・何だが歯がゆいな。ー

ー私もだ。だが、焦っても封印は簡単には解けないし、流石に本体で行動する訳にもいかん。ここは堪えるしかない。・・・が。ー

ー・・・が?ー

ー・・・もし、彼らが我々にした様な事をアクエラ人類にするつもりなのなら、その時は・・・。ー

ー・・・。ー



誤字・脱字がありましたら御指摘頂けると幸いです。


いつも御覧頂いてありがとうございます。

よろしければ、ブクマ登録、評価、感想、いいね等頂けると幸いです。

よろしくお願い致します。

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