再会 2
続きです。
◇◆◇
「やるな、あの人間。」
「うん。何か技術はチグハグだけど、不思議とちゃんと噛み合ってるね。確実に強いよ。」
一方その頃、カエサル達が魔物達の襲撃を受けているところを、例の4人組は遠巻きにそれを眺めていた。
何の因果が、結局カエサルと同じ結論に達して同胞達のもとを去った彼らは、アルフォンスの聞いた声に従って、やはりカエサル達と同じ目的地を目指していたのである。
それは今現在では“封印の大地”と呼ばれる、セレウスとハイドラスが魔物達を封印した場所であり、当然目的地が同じであるならば、いつかはかち合う運命だったのである。
そしてそれはやはりドラマチックな事に、カエサル達が魔物達の襲撃を受ける、という場面であった。
それを発見した4人組は、元々人間族寄りの立場であった事から当然の如く助太刀するつもりだったのだが、この謎の旅人達の予想外の実力に、予定を変更してある種の観戦へと流れを変えたのである。
(特に鬼人族のアベルなんかは、“力こそ全て”、といった脳筋至上主義的な側面もあったので、強者の戦いには興味があったのであろう。)
「・・・しかしあの人間、何処かで見た覚えがあった様な・・・?」
ポツリと呟くドワーフ族のヴェルムンド。
それも当然だ。
カエサルはマグヌスの息子であり、一緒に『魔石』を発掘する旅にも同行した事もある。
しかし、それから少なくとも十年弱の時が流れている。
当然お互いに成長しているから(特に、少年期の成長は身体も顔つきも大きく変化する。)、それがすぐに記憶にあった彼と結び付かないのも無理はない。
それに、4人組もマグヌスやセシリアの顛末は耳にしていた。
夫婦二人がすでにこの世を去っているなら、何処かでその息子であるカエサルも同じ流れを辿った、と想像するのも、これは無理からぬ話であろう。
ウンウンと唸るヴェルムンドを尻目に、獣人族のフリットが小さく叫んだ。
「あれっ?あの人間族の青年が下がったよ?」
「・・・どうやら、女と交代するつもりか?大丈夫なんかよ?今度こそ助太刀すっか?」
「・・・いや、あれ程の使い手が代わりを任せるんだ。あの女性達もかなりの実力者なんじゃないかな?まぁ、一応いつでも駆け付けられる様にはしておくが、もうしばらく様子を見よう。」
魔物達相手に無双していたカエサルだったが、このタイミングで魔物の相手を彼に任せて雑談(解説?)をしていたルドベキアとアルメリアにバトンタッチしたのである。
それに、ちょっと分が悪いかと考えたアベル達だったが、彼女達の実力にも興味を覚えたのか、いつでも割って入れる様な態勢を築きながらも、引き続き観戦する事に決めた様であったーーー。
・・・
「さぁ〜て、いっちょやりますかねぇ〜。」
「カエサルセンパイに足手まといだと思われない為にも、張り切っていきましょうっスっ!」
「う、うん。ほどほどに、・・・ね?」
「うっすっ!!!」
一方その頃、4人組の存在には全く気付いた様子もなく、ルドベキアとアルメリアはカエサルと交代して、魔物達との戦闘を開始しようとしていた。
セレウスとハイドラスに救われ、保護された頃はまだまだ幼い少女だった二人は、まだ“大人の女性”とは言えないまでもすっかり美しく成長していた。
実際、この二人に想いを寄せる少年や青年は多く、所謂“モテモテ”の状態だったのであった。
そして、当然ながら成長したのはその見た目だけでなく、中身も頭の方も立派に成長していた。
“ストレリチア荘”ではカエサルに次ぐ才媛として名高かったルドベキアは当然の事ながら、そのキャラクター性からはあまり勉学のイメージのないアルメリアでさえ、高い知能を持つに至っていたのである。
言い換えると、もちろん本人達の資質や努力も然る事ながら、“ストレリチア荘”の教育の質が極めて高い事の証左とも言えるだろう。
まぁ、それはともかく。
しかし、流石にあくまで人間族の、それも女性である二人は、カエサル以上に戦えるのか?、という疑問も湧いてくる事だろう。
実際、ある種特殊な環境とはいえ(例えば、見た目がとてもゴリゴリマッチョとは言えない者でさえ、見た目からは想像もつかないパワーやスピードを持っている可能性があるのがこの世界なのである。)、彼女達は身体能力的には向こうの世界の一般的な女性とそう大差はなかった。
しかし、そこはそれ、半ば強引ではあったが、魔王討伐へと旅立とうとしていたカエサルについてくるくらいである。
しっかりと二人にも、“戦う力”というものが備わっていたのであった。
さて、ここで一旦話は変わってくるのであるが、この世界の『魔法技術』には、多くの物語やゲームなんかと同様に、『基礎四大属性』というものがあった。
『基礎四大属性』、すなわち、“火”、“水”、“風”、“土(地)”といった、“世界”を構成する上で重要な役割を果たす現象や事象、物質の事である。
で、この中で、やや語弊があるかもしれないが、“土(地)”属性は、他の属性に比べて地味な印象やわりかし不遇だったり不人気なイメージを持たれる事も多かったりする。
しかし、当然ながらこの“土(地)”属性が、他の属性に比べて弱い、なんて事は全然ない。
いや、むしろ“最強の属性”の呼び声も高いほどであった。
これが何故かというと、我々人間の様な陸上に暮らす生物にとって、“土(地)”というのは、まさしく全ての“土台”、だからである。
足場を崩されてしまえば、どんな達人だろうと立ってはいられない。
そしてその“足場”に直接影響を与えられる“土(地)”属性が、弱い訳がないのである。
それに、実は応用範囲も非常に広い。
以前、アキトも実践してみせていたが、隆起と陥没を上手く組み合わせる事によって、まさしく“地形”を自在に操る事すら出来るからである。
アキトはそれを、土木工事に役立てていたが(水堀の建築)、それだけでなく、地面を隆起させて土壁も作る事が出来るし、なだらかな地形にする事によって、建物の土台や広場、畑なんかも作る事が可能である。
この様に、拠点作りにも非常に役立つのであるが、当然ながら戦闘にも使える。
例えば、敵陣の進行方向に落とし穴を作る事によって罠にハメる事も出来るし、逆に土壁で閉じ込める事も可能だ。
想像力次第では更に応用範囲が広がる可能性のある、非常に応用性と利便性に優れた属性なのであった。
(ちなみに、先程“最強の属性”の呼び声も高い、と述べたのは、地震を起こせる可能性もあるからである。
もちろん、流石にいくら“魔法”といっても、事前準備なしに自然災害規模の、それも大災害規模の地震を起こす事は一人の術師には不可能であるが、逆に言えば、準備さえしっかりすれば、それも不可能ではない、という事でもある。
地震の恐ろしさなど今更語るまでもないだろう。
仮にその大災害規模の地震を特定のポイントで自在に操る事が出来れば、これは最早戦う、とか以前の問題である。
当たり前だが、生命体には拠点となる場所が必須であり、それは魔王軍とてそうであった。
そこを地震が襲えば、身体を休める事の出来る建物も崩壊するし、地震の影響によって起こる火災によって食糧などの物資も壊滅的な被害を受ける。
場合によっては津波が押し寄せる可能性もあり、そうでなくとも多数の者達が死傷する事であろう。
この様に、戦う前に相手に壊滅的な被害を出せる“土(地)”属性が最強の呼び声も高いのは、ある種当たり前の話なのであった。
更にはちなみに、先程一人の術師では流石にそれほどの規模の地震は引き起こせない、とは述べたが、それを可能にする方法はあった。
例えば、アキトが多用する『精霊石』にサポートさせる方法、とかである。
以前にも言及したかもしれないが、『精霊石』は『魔石』の一種であり、その特性は“魔素”を引き寄せる性質である。
“魔素”とは、これは再三述べている通り、“魔法”を引き起こす為のエネルギー源となるものであり、ただ、一人の術師によって操れる量、みたいなものには制限があるのだ。
それ故に、実質的に一人の術師に引き起こせる事象や現象には限界があるのであるが、これを自動でかき集めてくれる物質が存在すれば、その限界を超える事が可能なのである。
ただ残念な事に、この時点では『魔石』の存在は広く知れ渡っていないし、そもそもその供給量も微々たるものであった。
なおかつ、それを魔王軍(正確には『新人類』達)が独占状態であるから、人間の側がこれを手にする事は不可能な状態であった。)
そしてルドベキアは、そんな“土(地)”属性に魅了された者の一人であったのだ。
彼女は、まだ幼い頃、セレウスとハイドラスに助けられて“ストレリチア荘”に引き取られるまでの間に、ほとんど初めて“魔法”という存在に出会った。
そして、ハイドラスが何気なく使っていた”魔法“に、衝撃と感銘を受けたのである。
(魔物に襲われると危ない、という事で、簡易的に地下に拠点を作ったのである。)
幼い頃の記憶や思い出が、後の人生に影響を及ぼす事は珍しくない。
しかも聡明な彼女ならすぐに気付いたのだろうが、先程から述べている通り、“土(地)”属性は非常に応用性と利便性の高い属性でもあった。
ならば、これに傾倒しない筈もないのである。
「ルドベキア・ストレリチアの名において命ずる。
大地と大気の精霊よ。
古の盟約に基づき、敵を殲滅せよ。
『ストーンショット』!」
スドドドドッ!!!
「「「「「ギィッ〜〜〜!!!」」」」」
ルドベキアがおもむろに印と呪文を唱えると、石の弾幕が魔物達目掛けて射出されていった。
『ストーンショット』は地系術式に属する魔法であり、複数の石つぶてを対象にぶつける魔法である。
ただの石と侮る事なかれ。
強力なパワーとスピードで射出されるそれは、強力な破壊力を秘めている。
実際、古来より石などを使った武器や兵器が向こうの世界でも存在する。
しかも地系術式(地属性)のメリットは、そこら辺に弾(石)が存在する事である。
つまり、いちいち“火”や“水”や“風”を生み出す、というプロセスを丸々省略出来るので、燃費が非常に良いのである。
つまり、遠くから致命的なダメージを一方的に与えられて、なおかつ低燃費で済む、という、ある意味カエサルがその“砲台”としての役割の弱点を上手くカバーしたのに対し、ルドベキアはその“魔法使い”らしさを突き詰めた戦闘スタイルと言えるだろう。
「ギギィッ!アタラナケレバッ・・・、ギャッ!!!」
「甘い甘い。」
しかも、彼女場合は、仮に弾幕の隙間を縫って接近出来たとしても、地形の有利を握っている状態には変わりないのである。
勢いよく接近してきた魔物は、先程まで存在した足場が急になくなって、その代わりに出来た穴に消えていったのである。
「ああ、自然破壊はあまり好ましいものではないね。ちゃんと元に戻しておかないと。」
ゴゴゴッ!
「〜〜〜!!!」
そしてルドベキアは、声にならない断末魔を聞き流しながら、無慈悲にその穴を閉じたのであった。
生き埋めにされたのか、圧殺されたのか。
いずれにせよその存在はすぐに忘れ去られ、彼女は残った魔物達に目を向けるのであった。
攻守共に隙がなく、しかもコスパの上でも継戦能力も高い“土(地)”属性は、なるほど戦いにおいても非常に便利な属性であった。
(ちなみに彼女は、カエサルとは違い、幼い頃から魔物達の討伐に参加する、という経験がないのであるが、ならば所謂“生き物の殺傷”に忌避感を覚える筈であろう、と思われるかもしれないが、これはアルメリアも同様であるが、彼女達は自身の家族なり親しい者達をこの魔物達によって奪われている。
つまり、その経験から魔物達を恐れる事はあっても、魔物達に慈悲を向ける感情など一切ないのである。
むしろ言葉を選ばずに言うのであれば、魔物達に対して憎悪の気持ちすらあるので、ある種人間的な感情である“生き物の殺傷”に対する忌避感は薄いのであった。
だからと言って、当然彼女達が冷たい人間である、という訳ではない。
これは、ある種この世界の共通認識かもしれないが、魔獣やモンスターはもちろん、比較的大人しい野生動物であっても、言葉が通じない以上襲われる危険性はある訳で、そこで下手な手心を加えたところで痛い目に遭うのは自分達の方なのである。
殺るか殺られるか、という状況である以上、生き残る為に相手を殺す事は、何も咎められる事ではないのであった。)
「流石っスね、ルドベキアセンパイもっ!よぉ〜し、私も負けないっスよぉ〜!!!」
次々と魔物を屠っていくルドベキアを横目に見て、アルメリアも発奮していた。
以前にも言及したかもしれないが、アルメリアはカエサルやルドベキアよりもやや年下であった。
ただ、後の世でアキトが彼女の事を“おっぱい女神”と揶揄していた様に、同世代の少女達に比べて早熟、かつ発育が良かったのであった。
それは、身体的だけでなく、当然頭の方もそうである。
もちろん、幼い頃より“天才児”と評価され、様々な経験のもと、そこに“努力”も追加されたカエサルや、元々利発的であり、それが“ストレリチア荘”にて開花して、今やカエサルに次ぐレベルの才媛となったルドベキアにはやや劣るまでも、それでもそんな彼らに着いて行ける程度にはアルメリアも優秀な部類の少女であった。
が、そのスタイルは一見すると戦闘には向かない様にも思えた。
「ギギッ!アッチノメスハトロソウダゾッ!アイツヲネラエッ!!!」
「「「「「ギィッ!!!」」」」」
何度となく言及しているが、事戦いにおいては汚いも何もない。
そもそも勝ち負けの本来の意味は、生き残るか死ぬかの二択だからである。
それ故に、生き残る為には死に物狂いで勝ちを拾う必要がある訳で、そうした意味ではあらゆ戦略や戦術が肯定される訳である。
魔物達は、凶悪な魔法によって次々と仲間達を屠っていくルドベキアを攻める事を諦め、ルドベキアに比べたら与し易い、と判断したアルメリアに狙いを変更した。
先程も述べた通り、相手の弱点を狙うのはある種戦いのセオリーである。
それ故に、魔物達の判断は間違ってはいなかったのである。
・・・本来ならば。
「あ〜あ、バカだねぇ〜。ボクに殺られた方がまだ楽に死ねたのに、さ。」
が、そんな魔物達の動向を見て、ルドベキアはポツリとそう漏らした。
・・・一体どういう事だろうか?
RPGとして見た場合、物理アタッカーと魔法アタッカーが居る以上、残りの一枠の役割は自ずと決まってくるものである。
そう“ヒーラー”である。
もちろんこれは、各々のプレイスタイルによっても変わってくるのであるが(回復なんかいらねぇ、殺られる前に殺れ、という男気溢れる脳筋パーティー至上主義もいるだろうし、いやいや、バッファーやデバッファーの方が有用だろう、という戦術を駆使するタイプも存在するからである。)、しかし、パーティーを安定させる為には、やはり回復役がいた方が良いのは言うまでもないだろう。
もっとも、この世界にも確かに回復魔法は存在するが、流石に傷を一瞬で癒やすほどの効果はない。
この世界の回復魔法は、あくまで対象者が元々持っている『自然治癒力』を爆発的に高めたものであるから、もちろん通常の回復に比べたら段違いに早い治癒が可能ではあるが、戦闘中に回復魔法を飛ばす、などの運用は出来ないのであるが。
とは言えど、戦闘終了後に傷を癒せる、というメリットはある。
そうした意味ではゲームなんかと同様で、ヒーラーが一人いてくれるだけで、パーティーの旅を非常に安定的なものになる訳である。
で、その回復魔法は、この世界においては“水”属性に属する魔法であった。
そしてアルメリアは、その“水”属性を得意とする術師であったのである。
では何故、ルドベキアがこんなに恐れているのであろうか?
一般的にみて、“水”のイメージと言えば、清らかである、とか、癒やし、の様な感じを想像される事だろう。
実際、先程も述べた通り、回復魔法も“水”属性に属する魔法である事から、それは間違ったものではない。
しかし、あくまでそれは、“水”の持つ一つの側面に過ぎないのである。
自然災害においても、“水”の関連するものは数多く存在する。
例えば、土砂災害や洪水、津波などがその代表例であろう。
この様に、“水”は我々生命体にとって非常に重要な物質であると同時に、一歩間違えられば我々の生命を簡単に奪ってしまう恐ろしい物質でもあるのである。
では、それがルドベキアがアルメリアを恐れている要因であろうか?
実際、“水”属性の魔法を持ちいれば、上記の様な災害を引き起こす事は可能である。
しかし、その場合には、術師自身はもちろん、仲間達をも巻き込む可能性があるのである。
これは“火”属性の魔法にも言える事なのであるが、この世界の魔法は、一度物理現象として実体化した後は、完全に術師の手を離れてしまうのである。
もちろん、ある程度コントロールする事は出来るが、それでも、例えば木々に燃え移り、森林火災に発展した場合はどうにもならないし、土砂災害が引き起こされた後でそれを止める事は容易ではないのである。
以前にも述べた通り、周囲の状況や環境を考慮しない“魔法使い”は三流にも満たないレベルであり、それが分からないアルメリア達ではないのである。
それ故に、出来るは出来るが、ルドベキアが恐れているのはそこではないのである。
では、実際には何かというと、
「うおぅっ!大量に来たっスねっ!上手くやれるかなぁ〜・・・?」
魔物達が一斉に自分を狙っている事に気付いたアルメリアは、しかし、ノンキにそんな事を呟いた。
そして、ある意味非常に恐ろしい呪文を唱えるのだった。
「アルメリア・ストレリチアの名において命ずる。
水と原子の精霊よ。
古の盟約に基づき、我が剣となりて敵を滅ぼせ。
『マイクロウェーブ』!」
「「「「「ギィッ!?」」」」」
マイクロウェーブとは、一種の電磁波の事である。
その利用用途は多岐に渡り、レーダーや通信機器、携帯電話などに使われており、そして電子レンジにも用いられている。
電子レンジのメカニズムは、電波(マイクロ波)を照射して、極性をもつ水分子などがマイクロ波のエネルギーを吸収して振動・回転する事で、温度が上がり、その熱により食品を加熱する、というものである。
そしてここで重要なのは、“水分子”の部分である。
残念ながら今現在のこの世界では、電波や電磁波などの概念は一般的ではなかった。
もちろん、セルース人類はそれを知っていたり、その存在自体は知らずとも、連合の様に通信用途として利用している例もあるので一概には言えないのであるが、少なくともこの時点でのアルメリアにはそれらの概念自体は知らなかった。
しかし知らなくても、これが『魔法技術』の面白いところだが、“水”属性に関わる事であれば、それを利用出来てしまうのである。
先程も述べた通り、“水分子”を振動・回転させる事で温度が上がり、熱を生み出すのが電子レンジの基本構造だが、“水”属性の使い手であれば、わざわざ電磁波、マイクロ波を媒介せずとも、この“水分子”に直接影響を与える事が可能であった。
(それ故に、正確にはアルメリアの魔法は『マイクロウェーブ』ではないのである。)
しかしここで重要なのは結果の方である。
プロセスは若干異なるとは言えど、結果として電子レンジの様な効果が魔物達を襲った訳である。
大体の生命体には体内に水分を含んでいる訳であるから、それが体内で熱を帯び、沸騰したとしたらどうだろうか?
「「「「「ギャアァァァァッ〜〜〜!!!!!」」」」」
焼死である。
一説によれば、焼死はもっともつらい死に方だと言われている。
熱による痛みがずっと続くからであるそうだ。
なるほど、ルドベキアをして恐ろしいと表現したのは、正にこの事だったのであろう。
だからと言って、どちらにせよ死ぬのには変わりないのであるが、一瞬で死ぬか、延々と拷問の様な痛みの中死ぬかであるから、もし死に方を選べるのであればルドベキアの方がまだマシかもしれない。
まぁ、そんな事は初見では分からないのであるが。
もはや襲撃だとか反撃だとかそういった感じではなく、ルドベキアとアルメリアの前に次々と倒れていく魔物達を見てカエサルは思った。
「何あの魔法・・・。怖っ・・・!」
そして、なるべくあの連れ二人を怒らせない様にしよう、と固く心の中で誓うのであったーーー。
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