“魔王”誕生 1
続きです。
◇◆◇
突然だが、“アマゾン熱帯雨林”をご存知だろうか?
向こうの世界に実在する場所であり、南アメリカ大陸アマゾン川流域に大きく広がる、世界最大面積を誇る熱帯雨林である。
その総面積は550万㎞²とも言われており、日本の国土の17倍、オーストラリア大陸よりかはやや小さいが、それでも“大陸”と呼ばれる規模と同程度の森林地帯という、もはや想像もつかない規模の大きさを誇っている。
その大きさと豊かな植生によって、生物の宝庫であり、数多くの生物が暮らしているし、人類がまだ未発見である種(特に昆虫)なども多い。
で、ここまではあくまで向こうの世界の話であるが、向こうの世界に比べてまだまだ環境破壊も人類の手が加わっていない事もあって、惑星アクエラには、その“アマゾン熱帯雨林”すら凌駕する規模の大森林地帯が複数箇所存在するのである。
その一つが、ラテス族、連合、そして、セレウスやハイドラスが今現在活動している場所であった。
(当然ながら、それだけの規模なのだから、いくら神性に片足を突っ込んでいるセレウスやハイドラスとて、特定の人物を探し出すのは容易ではないのである。)
と同時に、“アマゾン熱帯雨林”同様に、多種多様な植物や生物、各地に散らばり生活している部族、民族の数も無数に存在するのである。
(余談ではあるが、人が生活しやすい平地と平地の間に、いきなりそんなバカげた規模の森林地帯がある事から、後の世の人間達は、その大森林地帯を指して“大地の裂け目”と呼んだのであった。
当然ながら、本当に大地が大きく裂けている訳ではないのであるが、仮に航空写真なり衛星写真なりで上から見れば、黒色がかった緑の地帯が大きく大地を二分している様に見える事だろう。
それが、“大地の裂け目”の由来と言われているが、何故、航空技術も衛星も持っていないハズの昔の人々にそんな事が分かったのかは定かではないが、そこら辺は、向こうの世界でもよくあるミステリーの一つなのかもしれない。)
で、そんな多種多様な生物が存在する大森林地帯にて、ヴァニタスの手によって魔獣やモンスターが活発に動き始めていた訳である。
ただでさえ、“人間”より“野生生物”の方が多い環境なのであるから、その脅威は計り知れないだろう。
しかも、彼らが別々に動くのではなく、知性ある存在が彼らの意志を統一し、あるいは誘導し、作戦や策略を駆使して襲いかかってくるのだから、元々は脆弱な人類が、各々に対処していたのではジリ貧なのであるがーーー。
・・・
「ほ、報告しますっ!北部方面に展開していた部隊が、壊滅した模様ですっ!!」
「ば、バカなっ!?そこは大隊規模だったハズだぞっ!!??」
「し、しかし事実ですっ!通信も途絶え、帰ってきた者も皆無ですっ!」
「う、うぅむ・・・。」
ラテス族側の本隊が駐留する拠点にて、そんな信じられない報告が舞い込んで来ていた。
元々、ラテス族側の勢力はそこまで大きくはない。
何故ならば、あくまで彼らは一つの民族に過ぎないからである。
もっとも、ラテス族はセルース人類と接点があり、彼らから様々な技術(大きいものは『魔法技術』だが、それ以外にも農耕や建築などなど)を吸収していた関係で、安定的な生活基盤を得て、人口が爆発的に増加しているが。
それでも、大小様々な部族、民族が手を組んでいる連合側から比べたら、総人口は多くないのである。
(こうした事もあり、『魔法技術』というファクターを考えないのであれば、単純な数では連合側と正面からぶつかれば不利なのである。
実際、連合側も、戦争が始まる前には数の上での有利を主張して、ラテス族を叩き潰そうとする議論も持ち上がっていた。
もっとも、そこに、場合によっては一人で一つの部隊を壊滅させる事すら可能な『魔法技術』の脅威があり、ラテス族には劣るまでも、自分達も『魔法技術』を手にした事で連合側もそれを理解。
マグヌスの尽力もあり、やはり平和的に解決しようとする流れになったのであるが、そこはヴァニタスの謀略によって、結局は両勢力がぶつかり合う事となってしまった訳である。)
それでも、曲がりなりにも戦争を続けていられるのは、これはひとえに『魔法技術』の恩恵によるところが大きい。
で、その事は、本隊の者達も認識していたのである。
それ故に、大隊規模(向こうの世界では、およそ500〜600人くらいの規模。もっとも、こちらの世界、というかラテス族の基準では、およそ1000人くらいで、本隊に次ぐ、ラテス族側の最大戦力であった。)が壊滅したなど、とても信じられない報告だった訳であった。
「・・・いったい、何が起こったのでしょうな・・・?」
「分からん。あまりに情報がなさ過ぎるからな・・・。」
「・・・まさか、連合側の新兵器、とか?」
「それはありえん。いや、奴らも『魔法技術』を持っている事は確認しているし、以前は我々に比べたら劣っていたとしても、それが進歩すら可能性は否定しない。だが、いくらなんでも、それで我々の誇る部隊が壊滅する事など考えられん。少なくとも、負けるにしても、戦略的な意味であり、確実に生き残りはいるハズだ。それが、通信もなく、生き残りも帰ってこないとすると・・・。」
「・・・何らかのイレギュラーがあった、とか?」
「どの様なイレギュラーがあったのだ?」
「そ、それはっ・・・。」
司令官と思わしき男とその副官らしき男がそんな議論を交わしていた。
だが、結局は憶測でしかなく、ある意味無為で結論の出ない会話に終始してしまう。
ここら辺は、やはり情報が圧倒的に不足していたからである。
せめて生き残りでもいれば、何が起こったのかが分かるのだが、しかし、何も分からないのでは、そもそもどういう対応をしていいかも分からないのであった。
「お困りのようですな・・・。」
「「っ!?」」
だが、彼らにとっては幸いな事に、そこにちょうど情報をもたらしてくれる存在が現れたのであった。
「誰だ、貴様っ!?」
「どうやってここまで侵入したっ!?」
「おぉっと、そう警戒しないで頂きたい。もちろん、正規の手段を用いてやって来ましたよ?そもそも、案内役にこちらの方がご一緒していますから、ね。」
「す、すいませんっ!お話中だったので口を挟めなかったのですが・・・。“パクス・マグヌス”の使者の方がお見えになっております。」
「あ、ああ。じゃあ、アンタが・・・。」
「ええ、“パクス・マグヌス”から派遣されました、グエルと申します。以後、お見知りおきを。」
申し訳なさそうな表情を浮かべた兵士に目を向けて、司令官達は納得の声をあげていたーーー。
“パクス・マグヌス”とは、セレウスやハイドラスも出入りしていた、あの例の“中立の立場”を主張していた集落、勢力の正式名称であった。
本来は、個々の集落などに大層な名前などつけず、適当に代表者か何かの名前から“〇〇村”とでもつけるのが一般的であったが、曲がりなりにも彼らの勢力は、ラテス族、連合に次ぐ規模となっていた事から、両勢力にも分かりやすい“名前”が必要となった為に、この名称を名乗る事としたのである。
ちなみに、“パクス”とは、彼らの言葉で“平和”を意味しており、“マグヌス”は、先の事件で命を落としたマグヌスから取っている。
色々と思惑があったまでも、マグヌスがやろうとした事は、つまりラテス族側と連合側が衝突せずに、融和や迎合する事であったから、“中立の立場”を主張する彼らにとっても、マグヌスの名はある意味象徴的な意味合いを持っていたのであろう。
また、それとは別に、マグヌスのシンパとなっていた者は両勢力にも少なからずいたので、そうした意味でも色々と都合が良かった、という側面がある事は否定しないが。
まぁ、それはともかく。
で、以前にも言及した通り、いまやラテス族側、連合側にとっても無視できない“パクス・マグヌス”の使者が、こうしてラテス族側の本隊にやって来た、という訳であるがーーー。
「それで?その“パクス・マグヌス”の使者様が」「グエルです。」「・・・失礼、その、グエル殿が、一体我々に何用なのでしょうかな?」
この司令官の男も、所謂“裏工作”の事は承知していたが、一向になびく気配がなかった事も聞いている。
それが、急に自分達に接触してきたら、“もしや”という気持ちと、“まさか”という気持ちが同時に生まれたとしても不思議は話ではないだろう。
期待半分不安半分の司令官の質問に、しかしグエルの返答は全く予想外の事であった。
「いえ、ご忠告とご協力の打診を、ね。もっとも、その前にあなた方の部隊に被害が出ていたのはこちらとしても想定外ではありましたが。」
「・・・どういう事でしょうか?」
意味深なグエルの言葉に、司令官と副官は眉をひそめる。
グエルの言葉には、先程自分達が議論していた内容も含まれていたのだから、それも無理からぬ事ではあったが。
しかしグエルは、“暖簾に腕押し”とばかりに、急に話題を変えてきた。
「その前に、立ち話も何ですから、場所を変えませんか?」
「あ、ああ。」
「そ、そうですね。」
確かに、使者をもてなすのは、ある種最低限のマナーであろう。
図々しくそうのたまうグエルに呆気にとられながら、三人は場所を変えるのであったーーー。
・・・
ラテス族側の本隊が陣を構えていたのは、大森林地帯でもラテス族側の本拠地に近い場所であった。
この場所は補給路も整備され、開拓も進んでおり、『魔法技術』や『魔法科学』の恩恵もあってか、もはやもう一つのラテス族の生活拠点と成りうる環境になっていた。
それと同時に、『魔法技術』を応用した通信ネットワークも形作られており、これによってこの大森林地帯にて各々作戦活動中の各部隊とも連携が取れる様になっていたのであった。
余談だが、こうしたネットワークが存在したからこそ、ある種最前線からは程遠いこの場所にも各部隊から“通信”が入る訳で、逆に言えばそれがない=何かイレギュラーが発生した、という図式が成り立っていた訳である。
まぁ、それはともかく。
で、今、司令官の男とその副官、そしてグエルは、先程の司令室の様な場所から移動して、司令官の個人的な執務室にやって来ていたのであった。
「ど、どうぞっ!」
「どうもありがとうございます。」
「い、いえっ!で、では、自分はこれで失礼しますっ!」
「ご苦労さまです。」
グエルを案内してきた兵士が、そのまま給仕の役割を担い、グエルらにお茶を差し出すと、キビキビと退室していった。
「・・・さて、これで他には誰もいなくなった訳ですな。」
「「っ!!!」」
図々しく、それでいてにこやかに対応していたグエルは、彼が出ていった後、急に態度を一変させた。
それに、司令官と副官は“なるほど”と思っていた。
先程までの態度は所謂“ポーズ”であり、場所を変えさせたのも、先程までの図々しい態度も、他の者達を追い払う為の演技だったのである。
つまりは、他の者達には聞かれたらマズイ事を、これから話そうという訳である。
「・・・そうですな。」
「一応確認させて頂きたいのですが、この場は“安全”、なので?」
「ええ、もちろんです。曲がりなりにも私はこちらの本隊をあずかる身。そしてここは、私のプライベートな執務室です。秘密の会合なんかは、全てこちらでやっておりますからな。」
「なるほど・・・。結構です。」
それを察してか、打てば響く様にグエルの質問に淀みなく応えた司令官。
あくまで司令官は軍部の最高責任者でしかないが、それでも政治的な事にも関わる事も多いので、この程度の腹芸は出来なければならないのだろう。
「・・・他の者達に聞かれたらマズイ事でも?」
「いえ、一応念の為です。無駄に騒ぎ立てられても面倒ですし、変に伝わっても、やはりそれはそれで厄介ですからな。」
「ふむ・・・。」
副官がそう質問をする。
それに、グエルはそう応え、二人はかなり厄介事である事を察したのであった。
「まず、これからお話する事は、これまでの“常識”が通用しない、と思って頂きたい。」
「「・・・。」」
司令官と副官は、無言で目線を合わせ、その後グエルにコクリと頷いた。
「ではお話させて頂きます。先程も述べました通り、私が今回この場にやって来たのは、あなた方ラテス族側にご協力をたまわりたいと考えているからです。」
「協力?」
「ええ。もちろん、あなた方が連合と絶賛戦争中である事はこちらも承知しております。ですが、それを踏まえた上で、一旦停戦して頂きたいのです。」
「な、なにをバカなっ・・・!」
「もちろん、そう反応されるのは予想通りですが、それには理由があります。このままでは、ラテス族だ連合だ、などと言っている場合ではなくなってしまうからですよ。」
「・・・一体何が起こってるのですか?というか、グエル殿は、それらを理解しておられる、という事ですかな?」
「ええ。もっとも、実際には私共も、半ば半信半疑だったのですが・・・、しかし、先程のお話からも、ほぼ間違いないと確信しました。」
「・・・それで?」
「失礼。では、単刀直入に申し上げます。今現在、この大森林地帯では、魔獣やモンスターが一大勢力を築いているのですよ。」
「「・・・・・・・・・はっ???」」
いよいよ本題を切り出したグエルに、しかし司令官と副官の反応はそれであった。
ここら辺は、彼らの“常識”というものの弊害だ。
再三述べている通り、アクエラ人類の共通認識として、魔獣やモンスターが彼らにとっても脅威である事では一致している。
そもそも、以前の世界では、魔獣やモンスターが実質的なこの世界の支配者であり、あくまでアクエラ人類は、そんな脅威から逃げたり、時には立ち向かったりして何とか生き残ってきただけの脆弱な種でしかなかったのである。
だが、それも今は昔の話だ。
『魔法技術』を手に入れた彼らにとって、もちろん油断出来る相手ではないが、もはや以前とは違い、そこまでの脅威となる相手ではなくなっていたのである。
ちゃんとした準備と作戦を立てれば、討伐や殲滅は可能。
それが、今現在の彼らの認識であった。
と、同時に(もちろん、中には知性の高い種も存在するが)、基本的に魔獣やモンスターは、彼らアクエラ人類に比べたら知性は低く、少なくとも明確な意志を持って作戦行動を取る様な頭はない、というのが彼らにとっての“常識”だった訳である。
それ故に、グエルの発言は、突拍子も無い、バカげた発言に聞こえた訳であった。
だが、グエルは焦るでもなく、呆れられた事を恥じる訳でもなく、淡々と言葉を続けた。
「そうなる事は理解出来ますが、先程も申し上げましたよ?今、お話させて頂いている内容は、これまでの“常識”が一切通用しない、と。」
「「っ!!!」」
確かに、先程グエルは、そう前置きしていた。
その言葉を思い出していた二人は、ゴクリとつばを飲み込んだ。
「本当、なのですか・・・?」
「私も半信半疑だった、と先程言いましたが、あなた方の部隊の一つが壊滅したらしいお話を聞いて、考えを改めました。おそらく、十中八九間違いないかと。」
「・・・では、件の部隊の壊滅は、その魔獣やモンスターの仕業だ、と?」
「そう考えるのが自然でしょうな。そもそもの話として、その部隊はかなりの精鋭揃いだったのでしょう?ならば、仮に連合とぶつかったとしても、簡単にやられるハズがない。違いますか?」
「・・・確かに。」
先程、司令官と副官も、その事について話し合っていたばかりである。
仮にその部隊が連合の部隊とぶつかり合ったとして、それで負けたとしても、通信が一切途絶える事などありえないのだ。
少なくとも生き残りがその事を連絡するハズであるし、ラテス族と連合の力関係を鑑みれば、技術力ではラテス族が上、数の上では連合の方が上と、ある意味バランスの取れた状態だ。
だからこそ、こうして膠着状態が長らく続いている訳であるし。
しかし、
「ですが、仮にそうだとしても分からない事があります。いくら魔獣やモンスターが脅威の存在だとしても、当然ながら私共の部隊も奴らとの戦闘には慣れております。流石に一方的に殲滅されて、それで一切情報が途絶えるなど、中々考えづらいのですが・・・。」
「そこなのです。魔獣やモンスターは個々であっても脅威的な存在だ。しかし、今現在の我々なら、これは少なくともラテス族、連合、そして私達も、ですが、奴らに対抗する手段を持っている。そうでなければ、この大森林地帯にて活動は出来ませんからな。しかし、さる筋からの情報によると、どうやら奴らは、我々“人類”と同様に、一つの意志を持ち、組織的に動いているそうなのです。」
「「・・・。」」
先程と同じ言葉を繰り返したグエルに、しかし今度は司令官も副官も、笑う事はなかった。
「・・・バカげた話ですよ。ですが、そう考えると、色々と合点がいくのです。客観的な事実として、奴らの“力”は我々よりも上です。そんな存在が私達と同じ様に作戦行動を起こすとしたどうなるか?その答えが、件の部隊の壊滅、なのではないでしょうか?」
「「・・・・・・・・・。」」
重苦しい沈黙がその場を支配した。
先程から述べている通り、彼らが魔獣やモンスターに対抗出来るのは、もちろん『魔法技術』を獲得したからでもあるが、知性において彼らが自分達に劣っていたからでもある。
当たり前だが、いくらバカ強い存在だとしても、ただの脳筋では策を労する者には敵わないものだ。
実際、これまでは上手く罠などにハメる事で、彼らを殲滅、討伐出来ていた過去がある。
しかし、条件が同じなら、話は180度変わってきてしまう。
大きなアドバンテージだった知性が同等なのなら、自分達の優位性が一気に失われる事となってしまうからである。
そうなれば、いくら『魔法技術』を持っていたとしても、もはや簡単な相手ではなくなってしまう。
それどころか、以前の様な力関係、惑星アクエラの頂点に君臨するのが魔獣やモンスターであり、アクエラ人類は、その脅威に怯えて暮らす、という関係性に戻った、といっても差し支えないのであった。
「・・・仮にそうだとしたら、我々が展開していた部隊の壊滅の説明もつくし、通信が途切れた説明もつきますな。つまり、その犯人は魔獣やモンスターであり、奴らが組織的に動いたからこそ我々の同胞もなす術なくやられた・・・。彼らも、まさか奴らがそんな動きをするとは予測もしていなかった事でしょうし・・・。」
「うむ・・・。」
ありえない。
その“常識”を取り払うと、その話は納得のいく仮説となった。
司令官と副官も、グエルの言葉を半ば信じ始めていた。
「仮に奴らが我々の様に意志を持ち、何らかの主義・思想のもと団結して動く“組織”となったのなら、それこそもはや戦争どころではない、と愚考いたします。件の部隊壊滅からも分かる通り、我々の個々の力では、対応出来ない可能性が高いからです。故に、人類が生き残る為には、ここは一旦停戦をして、団結して奴らに対抗するべきだと考えているのですよ。」
「なるほど・・・。」
そう締めくくったグエルに、司令官と副官は、今度は納得した表情を浮かべていた。
話は人類存亡の危機かもしれないのだ。
それこそ、もはや戦争どころではないだろう。
それ故に、グエルの発言はもっともだと思ったのかもしれない。
しかし、それでもいくつかの疑問もあった。
「・・・しかし、そんな事が起こり得るのか?我々も魔獣やモンスターの生態を詳しく知っている訳ではないが、それでも、様々な種が存在し、各々が好き勝手に生きている、という事は何となく理解している。そんな者達を、果たして一つに統一する事など出来るのであろうか?」
「・・・それに、グエル殿には、その根拠となる説がおありの様でしたな。貴殿自身も半信半疑だったが、その根拠に基づいて考えると納得がいく・・・。その様に見えましたが?」
「ええ、その通りです。私も以前は、お二方と全く同じ考えでした。魔獣やモンスターがそんな事を出来るのか?とね。しかし私は、お二方とは違い、事前に一つの説を知っていたからこそ、比較的スムーズにこの事に納得する事が出来ました。」
「・・・その説とは?」
司令官が問うと、グエルはコクリと頷き、一息ついてからその口を開いた。
「・・・お二方は『魔眼』というものをご存知ですか?」
誤字・脱字がありましたら御指摘頂けると幸いです。
いつも御覧頂いてありがとうございます。
よろしければ、ブクマ登録、評価、感想、いいね等頂けると非常に嬉しく思います。
ぜひ、よろしくお願いいたします。