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『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』  作者: 笠井 裕二
英雄大戦へ至る道
308/383

覚醒

続きです。



◇◆◇



当たり前だが、人には様々な意見が存在するものである。


それ故に、他部族、他民族の者達も、決して一枚岩ではなかった様に、ラテス族側も決して一枚岩ではないのであった。


そもそもの話として、マグヌスやセシリア、長老などは、かなりの穏健派な立場である。

だが、それはあくまで一部の者達に過ぎず、大半のラテス族はその選民思想もあって、他部族、他部族に下に見ている風潮が確かに存在していたのである。


そんな下に見ていた存在が今回牙を剥いた訳であるから、マグヌスが提案した交渉事など、とても納得行く筈もないのであったがーーー。



・・・



「お前達は何を言っているのだ?」

「「はっ・・・???」」


今回の件の説明、そして、その解決策の提案をしたマグヌスらの上申に、最初に突きつけられたのがその言葉であった。



以前にも言及した通り、長老はあくまでラテス族の一つの集落を統括する立場でしかない。

もちろん、今回被害を受けたのは彼らの集落であったが、その為の交渉として他部族、他民族に接触するにしても、独断でそれを決定する事が出来なかったのである。

それ故に、まずは他のラテス族にお伺いを立てて、了承を得る必要があったのである。


ここで話は少し変わるが、ラテス族の社会は完全なる合議制であった。

ここら辺は他民族、他部族連合もそうであったが、つまりある意味民主主義的な意思決定の制度だった訳である。


もっとも、ラテス族はセルース人類がそうした制度を取っていたらしき事を参考にそうなったのに対して、他部族、他民族連合は元々は別の集団の集合体だった事からそうなっていた(つまり、どこかの部族、民族が主導権を握っていると後々禍根を残す事になりかねないので、それならば最初から平等に、それぞれの部族、民族が一票を持ち、何かの決定事の際には多数決で決議をする、という形になったのである。)、という違いが存在していたのであるが。

まぁ、それはともかく。


つまり、長老が他のラテス族にお伺いを立てる必要性を訴えたのも、そうした事もあったからであった。


具体的には、ラテス族の意思決定を司っていたのは、長老と同じく各集落の代表者達であった。



「な、何を、と申されましても・・・。」

「そんなもの、叩き潰してしまえば良いではないか?」

「然り。」

「「っ!!!???」」


思っても見なかった発言に、マグヌスと長老は目を丸くする。


一瞬、彼らの言っている事が理解出来なかったのである。

むしろ、本当に状況を理解しているのだろうか?、という疑問が浮かんだほどである。


しかし、これが大半のラテス族の価値観なのである。


彼らにとっては、自分達こそ選ばれた民であり、他部族、他民族は選ばれなかった者達だ。

つまり、彼らを支配する権利が自分達にはあると思い込んでおり、少なくとも対等な立場にある者達である、とは露とも思っていないのである。


言葉を選ばずに言えば、彼らにとっては今回の件は飼い犬に噛みつかれた様な感覚だろうか?

それ故に、交渉がどうとかは最初から頭になく、噛みつかれたのならどちらが上か、しっかり“しつけ”をする必要がある、くらいの感覚だったのであった。


「し、しかし、それでは捕まってしまった同胞達はどうなりますかっ!」

「・・・それは確かに残念ではあるが、しかしその為にみすみす我々が神々から授かった『魔法技術』を差し出す事など・・・。」

「然りっ!そもそもそやつらも、自分達の不始末が招いた事ではないのか?他部族、他民族の者達など、『魔法技術』があれば簡単に返り討ちに出来たものをっ・・・!」

「「っ!!!」」


故に、彼らの大半の意見は、人質となった者達を見捨てる、というものであった。

まぁ、長老やマグヌスの提案は、自分達の優位性をみすみす失う事となるので、それも分からない話ではなかったのであるが。


さて、困ってしまったのは長老である。

まさか、ラテス族の上層部が、これほど頭の凝り固まってしまった者達であるとは思っていなかったからである。


少なくとも、同胞に対する情くらいは持ち合わせているとは思っていたので、それらを見捨てて、それどころか彼らごと他部族、他民族連合を叩き潰そう、と言い出すとは思わなかったからである。


「・・・少し結論を急ぐのは待ってもらっても良いでしょうか?」

「む、婿殿・・・?」


しかしここで、スッと表情を変えたマグヌスが待ったをかける。

何事かを言いかけた長老を手で制し、ラテス族の上層部と向き合うマグヌス。


「・・・なんだ?」

「まだ何かあるのかね?」


すでに、結論が出つつあった彼らは、まだ何かあるのかとマグヌスを見やる。


「少しばかり勘違いをされている様なので、訂正を、と思いましてね。」

「・・・何?」

「実はこれってチャンスなんですよ。他部族、他民族を我々ラテス族に()()させる為の、ね。」

「・・・ほう。」


自信満々に述べるマグヌスに、上層部の者達はピクッと反応した。


「ご存知の方々もいらっしゃると思いますが、私は前々から私が開発した『魔法技術』、いえ、『魔法科学』を他部族、他民族に流出させる事を画策していました。」

「・・・報告は受けておる。まぁもっとも、色々と根回ししていた様ではあるが、いまだに実現には至っていない事も、な。」

「『魔法技術』の流出など、ラテス族はもとより、神々に対する重大な裏切りだ。そんな事が認められる訳が無いであろうっ!というかそもそも、コヤツを野放しにするのは危険ではないのかっ!?」

「・・・ふむ。」


先程も述べた通り、大半のラテス族は選民思想に毒されているので、セシリアが根気強く説得を試みるも、セシリアやマグヌスの努力がいまだに実を結んではいなかったのである。

そもそも聞く耳を持たない者達が大半だったからである。


当たり前だ。

彼らの主張は、自分達の優位性を崩しかねない提案だからである。

・・・()()()()()()()()、であるが。


一部の上層部の者達には、すでに危険因子として見なされつつあったマグヌスであるが、それをマグヌスは軽く嘲笑しつつ反論を開始する。


「おやおや、神々から選ばれたラテス族、そのトップに君臨するあなた方と言えど、意外と大した事はないのですね。」

「「「「っ!!!???」」」」

「・・・なんだとっ・・・!?」


それは、明らかなる挑発であった。


もっとも、先程まで大人しくしていたマグヌスのその変わり様に、流石に違和感を抱いていた他の上層部の者達は眉をひそめるに留めていたのだが、彼を危険視していた者達はそんな挑発に簡単に乗せられてしまう。


「だってそうでしょう?あなた方は、私がやろうとしている事の真意、この()()の真の目的に全く気付いていませんからね。」

「それは貴様が、自身のその肥大化した欲望を満たす為に、『魔法技術』を他部族、他民族に売り渡す事だろうっ!?」


その者達とて、マグヌスがラテス族の『魔法研究家』達の間から爪弾きにあっていた事実は知っていたので、短絡的にそう考えていたのである。


つまり、自分の才能を認めないラテス族に対する嫌がらせと共に、他部族、他民族に『魔法技術』を流出させる事によって、ある種の自尊心を満たす為だと考えていたのである。


まぁ、そういうケースもない事はないので、彼らのその考え方を完全に否定する事も出来ないが、しかしこの場においては、所謂“馬鹿げた主張”であると言わざるを得ない。


「ハッハッハ、中々面白い事を仰る。しかしそれは、あまりに荒唐無稽で馬鹿げたお話ですな。」

「なにっ!?」


もはや喧嘩腰であったその者達は、マグヌスの言葉にいちいち反応してしまう。


「・・・本当に分からないのですねぇ〜・・・。これではラテス族の未来は、そこまで明るいものではないのかもしれませんなぁ〜・・・。」


周囲をチラリと眺め回し、マグヌスはこれ見よがしにガッカリした様に呟く。


「っ!!!」

「よせっ!」

「っ!!??」


それに、再び激高しかけたマグヌス否定派の者達を制し、このままでは話が進まないと他の者達がマグヌスに水を向ける。


「・・・そこまで言うのであれば、さぞ素晴らしい提案があるのだろうな、マグヌス・シリウス殿?」

「もちろんですとも。」


逆に挑発する様なその者の言葉にマグヌスはハッキリと頷いた。


色々と二転三転したが、ようやく話が進みそうな雰囲気となっていたーーー。



・・・



「さて、皆さんは“交易”というものをご存知でしょうか?」

「流石にそれは、我々をバカにしすぎだぞ、マグヌス殿。互いに品物と品物とを交換し合う事によって取引をする事、であろう?」

「ええ、その通りです。」


技術的には近世、一部では向こう(地球)の現代社会すら凌駕する技術を持っているラテス族ではあったが、元々は彼らもつい最近までは狩猟採集生活を営んでいた部族であるから、他部族間での貨幣による取引という実態が存在していなかった。


とは言えど、他部族間との取引自体は存在しており、例えば採れ過ぎた獲物だったり木の実があったとして、それを他の部族が欲していた場合、その代わりとなる物をその部族が提示する事で成り立つ取引、所謂“物々交換”自体は存在していたのである。


その為に、“交易”という事自体は知っているし、何ならラテス族内のみの話とはなるが、セルース人類に倣って、貨幣などによる決済システムすら存在していたのである。

まぁ、それはともかく。


「では逆に聞きましょう。それを知っているのに、何故あなた方は、“等価交換”の原理原則を理解していないのですか?」

「「「「「・・・はっ???」」」」」


あまりにも当たり前過ぎる事を言い出したマグヌスに、上層部の者達は逆に思考を停止してしまう。


“等価交換”。

某作品によって有名となった単語であるが、ビジネスや経済の世界では昔から広く一般的な単語でもある。


簡単に言えば、等しい価値を有するものを相互に交換する事を指す。


先程も述べた“物々交換”も、ある意味では“等価交換”の原理原則のもとに成り立つのである。


もっとも、学問的な意味合いとは違い、取引における“等価交換”は正確には“等価交換”とは言えなかったりもする。

何故ならば、何をもって“等しい価値”とするかは曖昧だからである。


例えば、“水1リットル”と“水1リットル”は、当然ながら同価値となる。

しかし、ビジネスにおいてはそれでは不成立なので(水と水を交換しても意味がないので)、ここで需要と供給、という概念が出てくるのである。


例えば、ものすごく喉が乾いている人がいたとする。

その人は、喉を潤す物は持っていなかったが、腹を満たす物は持っていた。


一方で、また別の人は、ものすごくお腹が空いていたとする。

その人は、喉を潤す物は持っていたが、腹を満たす物は持っていなかった。


そして、そんな二人が出会う事となった。

二人は、互いが互いに欲しい物を持っていた。

では、水と食べ物の交換は成立するであろうか?


答えはYESである。


当然だ。

お互いがお互いに、欲しい物を持っていたからである。

簡単に言えば、これが“需要と供給”である。


ただ、先程も述べた通り、水と食べ物では厳密には同価値とは言えないのであるが、お互いがお互いに納得しているのであれば、取引としては特に問題ないのである。


そして、ここでマグヌスの言っている“等価交換”とは、取引における概念の方である。


「何か欲するものがあるのであれば、こちらも何かを差し出す必要がある・・・。当たり前ですよね?」

「それはそうだが・・・。」

「しかしあなた方は、他部族、他民族を()()する為には、何も差し出してはいないではないですか。」

「「「「「っ!!!」」」」」


そう、少なくともラテス族上層部の者達は、他部族、他民族を支配しようとする考えはあれど、その為に何かを差し出した事は一度もないのである。


誰かを従わせたいのであれば、例えば食料を支援するとか、お金を支援するなどの方法もある、にも関わらずである。


「・・・そんなものは必要ないだろう?“力”で支配してしまえばそれで済む話なのだからな。」

「「「「「・・・。」」」」


だが、そんなマグヌスの言葉に、今度は逆に先程マグヌスに突っかかってきた者がバカにした様に言った。


確かに、“力”による支配というのは、古来から存在する分かりやすい一例であろう。

実際、これは向こうの世界(地球)でも、武力によって国を平定したり治めたりする事例は枚挙に暇がないほどである。


だが、マグヌスからしてみたら、それは愚策中の愚策であった。


「残念ながら0点です。確かに“力”による支配は分かりやすいし、何なら一見何も差し出さずとも何かを手に入れられる手法の様に見える。しかしその為には、少なくとも兵士達の“労力”というものを代価にしているのです。何なら“命”すらかける事となる。とてもじゃありませんが、あまり賢い選択肢とは言えませんな。」

「「「「「っ!!!」」」」」


そう。

当たり前だが、それをする為には、“誰か”が働く必要があるのだ。


この場合、兵士達がその矢面に立たされる事となるのであるが、では、兵士達をバックアップする為には、何が必要となるだろうか?


それは軍費と兵糧だ。


では、それはどこから出る事となるだろうか?


当然ながら、それはラテス族の懐から出る事となる訳である。


この様に、何かをタダで手に入れる事は不可能であり、何なら将来的な恨みや遺恨の事も考えると、“戦争をする”、という選択肢は悪手も悪手なのである。


では、そう考えた場合、どの様して目的を達成させれば良いのであろうか?


「そこで別のアイデアです。どうせ代価を支払うのならば、一切血を流す事なく友好的に、そして知らず知らずの内に私達に()()する様に仕向ければ良い。」

「・・・それと、『魔法技術』を流出する事とどう繋がると言うのかね?」


すっかりマグヌスのペースに乗せられた上層部は、彼に先を促した。


「先程も述べた通り、“交易”ではお互いがお互いに欲しいものを差し出す訳ですね。では、彼らが欲するものとは何か?これは簡単に予測がつきます。我々の持つ『魔法技術』ですよ。これがあれば、少なくとも我々と同等の暮らしが約束されたも同然ですからね。」

「うむ・・・。」


再三述べている通り、他部族、他部族の者達の目的は『魔法技術』の獲得であるから、仮にこれをくれると言うのであれば、わざわざ争う必要もないのである。

それについては、上層部の者達もコクリと頷いた。


「し、しかしそれでは、神々に対する裏切り行為だし、そもそも我々の優位性がっ・・・!」

「もちろん、その点も考慮しています。」

「「「「!!!???」」」」


しかしそれは、当然ながらラテス族にとっては不利益となる訳である。


自分達だけが持つ技術。

それが他にも渡るのであるから、相対的に自分達の価値を下げる事となるからである。


だが、当然ながらマグヌスもその点は考えている。


「あなた方は、私が『魔法技術』を無闇に流出させようとしている、と勘違いしている様ですが、それは間違いです。そもそも『魔法技術』は、これはあなた方も習得しているからご承知だとは思いますが、一朝一夕で得られるものではない。我々は幼い頃より触れてきているのでそこまでの苦労した記憶がないかもしれませんが、仮に大人がこれを一から学ぶとすれば、少なくとも十年以上のスパンが必要となるでしょう。まぁ、これはある意味では当然です。先程も述べた通り、何かを得る為には何かを差し出さなければならない。『魔法技術』を得る為には、それだけの時間“を差し出す必要があるんですからね。」

「うむ・・・。」

「そこで別のアプローチ。彼らにとっても、『魔法技術』が得られるが、その為には少なくない時間がかかってしまって今すぐは使えない。一方こちら側としても、ただ闇雲に『魔法技術』を流出するのは、神々に対する裏切り行為であるし、我々の優位性を崩す行いでもあるから、出来ればそれはしたくない。ならば、その一部を切り取った“アイテム”としてならどうか?」

「“アイテム”?」

「ええ。これは、私が提唱している『魔法科学』の応用の産物です。“誰にでも使える『魔法技術』”。これを実現する為に私は、神々のいらっしゃった場所に足繁く通っていたのです。その過程で発見したのが、“技術”を“アイテム”に封じ込める事、でした。」

「ほう・・・。」


以前にも言及した通り、マグヌスが『魔法研究家』として異端視されていたのは、他の『魔法研究家』が『魔法技術』の向上、言うなれば自分達の“スキル”の向上を目指していたのに対して、そうではなく、“誰でも同じ結果になる”事を目指していたからである。


例えるならば、剣術家が自身の剣術の向上を目指しているのに対し、自身が強くなるのではなく、全体の底上げを目指している、という違いか。


発想としてはマグヌスの意見は至極真っ当な意見なのだが、そもそもそうした発想がなかった他のラテス族からしたら、彼の考えにピンと来ないのは、ある意味仕方のない事であろう。


「これならば、我々の技術を流出する事なく技術を与える事が出来るし、相手方も、『魔法技術』を学ばずとも『魔法技術』を扱う事が出来る訳です。」

「ふ、ふんっ!そんな都合の良いものなどっ・・・!!!」

「ええ。ですからそれを実現する為には非常に苦労しましたよ。特に“誰でも使える”という点において、ね。今更説明するまでもないでしょうが、『魔法技術』を扱う為には、“魔素”の運用が絶対条件です。これなくして、『魔法技術』はありえない。しかし、“魔素”をある程度自在に扱う為には、ある一定の訓練が絶対条件ですからね。しかしこれも、とある鉱石の発見によってクリアしました。」

「「「「「っ!!!」」」」」


すっかりマグヌスのプレゼンテーションの場へと早変わりつつあった会合の場は、少しずつ熱を帯びていた。


「便宜上、私はこの鉱石を“魔石”と呼称しています。新人類の子ども達が偶然発見し、私に伝えてくれた物です。そしてこの“魔石”の効果は、“魔素”を自動で集めてくれる、というものでした。」

「そ、そんな鉱石が存在していたのかっ・・・!!!」

「ええ。これはおそらく、神々も知らなかった事でしょうな。実際、神々の遺跡からは発見された事はありませんでしたからね。まさしく自然が生み出した奇跡の物質。そしてこれの存在により、私のプランは一気に実現するに至った訳ですっ!」

「「「「「おおっ!!!」」」」」

「あくまで“技術”のキモとなる部分は我々が押さえつつ、『魔法技術』の()()だけを他部族、他民族にも与えられる。相反する理想が、これによって実現可能なのです。そして当然技術的な事はこちらが押さえていますから、相手方が新しい『魔法技術』を欲した場合、こちらに依存さぜるを得ないのです。一度引き上げた生活水準を元に戻す事はかなり難しいですからね。」

「・・・なるほど。」


一見、マグヌスの理論はメチャクチャな様に見えるが、実際向こうの世界(現代地球)でも、他国に技術力で依存する例は結構多い。

そしてその場合、(腹の中はともかく)お互いに友好関係を維持しようと努めるので、争いを回避する事が出来るのであった。


「・・・果たして、そう上手くいくものか・・・?」

「それは私も分かりません。ですが、やってみる価値はあるでしょう。そして今回の件は、状況的にはあまり望ましいものではありませんでしたが、考え方によってはチャンスであると私は思っています。人質を取り返す事の条件として、私はこの“アイテム”を提示するつもりですからね。それを足がかりに、彼らの社会に新風を巻き起こす。場合によっては、先程述べた通り、一度引き上げた生活水準を理由に、特に一般市民に対してラテス族に好意的な感情を抱かせる事も不可能ではないでしょう。そしてそれが叶うのならば、もはや簡単にはラテス族に反抗する事も出来ない。内部からの反発を視野に入れる必要があるからですね。と、この様に、こちらも骨を折る事で、初めて望むものが手に入ると私は考えています。少なくとも、理想を語っているよりかは現実的な話ではないでしょうか?」

「「「「「・・・・・・・・・。」」」」」


最後にマグヌスはそう締めくくった。


上層部は黙考する。


仮にマグヌスのプランが上手く行けば、彼らが考えている他部族、他民族のラテス族に対する恭順が実現出来る。

また、仮にこれが上手く行かなかったとしても、他部族、他民族を叩き潰せば良いだけなので、どちらに転んでも彼らに損はなかったのであった。


「・・・そこまで言うのであれば、やってみせるが良い。ただ、あくまでそれはお前達の責任において、だがな。」

「結構です。“黙認”という形でも認めてくださるのならば、こちらとしても問題ありませんよ。」

「・・・私は生ぬるいと思うのだがな・・・。」(ボソッ)


最後まで、マグヌスを敵視していた者達はそう呟くが、その意見は結局黙殺される事となった。



こうして、どうにかラテス族上層部の了承を得る事に成功したマグヌスと長老は、いよいよ他部族、他民族連合との交渉に臨む事となるのであったがーーー。



誤字・脱字がありましたら御指摘頂けると幸いです。


いつも御覧頂いてありがとうございます。

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よろしくお願いいたします。

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