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『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』  作者: 笠井 裕二
英雄大戦へ至る道
303/383

戦火

続きです。



・・・



「ちちうえ〜!はやくはやくっ〜〜〜!」

「ちょ、ちょっと待ってくれよ、カエサルぅ〜!」


その日、マグヌスとマグヌスとセシリアの息子、カエサルは、『新人類(子ども達)』と共に森の中を歩いていた。


カエサルは、まだ年齢的には5歳にも満たない幼児である。

しかし、稀代の天才であるマグヌス、そしてその聡明な妻であるセシリアの遺伝子を色濃く受け継いだのか、その年齢にしてすでに色々と頭角を現していた。


言ってしまえば“天才児”である。

彼はすでに、『魔法技術』を始め、マグヌスの編み出した『魔法科学』に対する造形も深かったのである。


(もっとも、流石に同じ頃のアキトに比べたら、身体能力は見劣りする。

まぁアキトは、所謂“チート”的な存在であるから、彼と比べるのは酷かもしれないが、しかしそんなふざけた存在を引き合いに出す程度には、この男の子もかなりぶっ飛んだ存在だったのであった。)


実際、いくらマグヌスが同行しているとは言えど、森の中、つまりこの年齢にしてラテス族の集落の外へと平気で出歩いているくらいには、彼の能力に対する信頼性は高かったのである。


「マグヌスさんも歳かねぇ〜?」

「ぼ、僕はまだそんな歳じゃないよっ!」

「いやいや、おそらく僕らが成長したんだよ、アベル。」

「もう僕達も15だもんねぇ〜。まぁ、アルはあいかわらずなんだけど・・・。」

「ちゃんとしゃべれるようになったモンッ!」

「ああ、ごめんごめん。」


と、そこには、マグヌスとカエサルだけでなく、例の4人組の存在もある様である。


マグヌスとセシリアの息子が成長しているのなら、当然ながら彼らも成長する訳で、当時、まだ十歳前後だった彼らは、立派な少年へと成長していた。


色々と危険の多いこの世界(アクエラ)では、成人年齢は向こうの世界(現代地球)よりも早い。

具体的には、15歳前後になると、一般的には成人と見なされるのである。


こうした風潮は、後のアキトの時代にも引き継がれる事となる。


また、彼らはすでにセシリアの経営する“孤児院”から独立している。

これは、以前セシリアらが話し合っていた、他種族、異種族の特性に関する事柄でもある。


彼らの種族特性として、自然と共に生きる、そうした環境を好む傾向にある。

それ故に、“光る石”捜索を兼ねて、マグヌスとの一定の訓練期間を経て、各々の種族ごとに“孤児院”から独立し、自分達の集落を形成したのであった。


とは言えど、そこでラテス族からの支援が打ち切られた訳でもない。

『新人類』に関しては、まだ生まれたばかりの新しい種族であるから、具体的にどの様な問題点があるかもまだ分かっていないからである。


それ故に、定期的に各々の種族の代表者が連絡を取り合い、それによって何かしらの問題点があらわになったのなら手を貸す、という形で、支援は継続されていた訳であった。


今回に関しても、カエサルが“光る石”捜索を経験してみたい、とワガママを言い出したのを、またまた連絡の為に集まっていた彼ら4人組が面白そうだと同行を言い出した事で、なし崩し的にマグヌスが認めた形であった。


彼らの能力は、すでに疑いようがない。

曲がりなりにも何度となく一緒に行動していたのだから、それも当然の事であろう。


なおかつ、マグヌスもかなりの強者であるから、これだけの条件が揃っていれば、万が一にもカエサルが危ない目に遭う事もないのである。

まぁそれでも、人の親としてはなるべくならそれはさせたくなかったのであろうが。

まぁ、それはともかく。


(ちなみにこれらの事から、この元・悪ガキ4人組が今では各々の種族を代表する立場になっていた事がお分かり頂けるだろう。

もちろん、ちゃんとした代表者は別に存在しているが、少なくとも“孤児院”時代に勝手に抜け出していた事による経験から、彼らは各々の種族の中でも突出した戦闘経験や様々な知識を持っていたのである。

故に、所謂“護衛”という形ながらも、重要な事柄に同行する様な、それなりの立場を持つに至ったのである。


更にちなみに、エルフ族だけは、その成長速度の違いによって、いまだに“孤児院”からの完全な独立は果たしていない。

それでも、半分以上は森の中で過ごす時間は増えており、アスタルテが育てていた者達が成人年齢に達したら独立する予定であった。)


そんな訳もあって、すでに普段はバラバラに生活している彼らが、久方ぶりにこうして行動を共にする状況となっていたのであった。


「しかし、“光る石”が見たい、って言っても、前に見付けてた現場にはもう残ってないんじゃないっすか?」

「あそこはあらかた掘り返してしまったからねぇ〜。まぁ、それでもかなりの埋蔵量だったけど・・・。」

「となると、別の場所を一から探さなきゃですよね?」

「まぁ、アルもいるから、時間をかければそこまで難しい話じゃないけど・・・。」


はしゃぐカエサルを見守りながらも、そんな会話を交わす4人組とマグヌス。


そうなのだ。

カエサルの成長から逆算すれば、最初に“光る石”を発見してから、すでに四、五年の時が経過している。

その後も『新人類(子ども達)』の訓練も兼ねて、また、マグヌスの研究の為もあって、その現場には何度となく訪れており、なおかつ採掘をしている訳である。


そうなれば、当然ながらすでに“光る石”は残っていないのである。


そもそもの話として、“光る石”は大変貴重な鉱石である。

もちろん、“魔素”の存在するこの世界(アクエラ)ならば、自然発生的にこうした鉱石が発生するのは不思議な話ではないが、だからと言って、そうポンポンと生成される様な物でもないのである。


故に、手に入る量には限りがある訳で、『魔法技術』込みとは言えど、重機も何も使わない完全な人力作業でも、一つのポイントでは、たったの四、五年で枯渇する程度には貴重品なのであった。


「けどまぁ、ちょっと強引ではありましたけど、マグヌスさんのこれからを考えれば、新しい採掘場を発見しておくのは悪くない話なのでは?」

「確信犯かい・・・。ま、ね。これはまだオフレコで頼みたいんだが、近い将来、僕の発明品は、一種の輸出品になる可能性が出てきたんだ。となれば、当然“光る石”も大量に必要になってくる。ヴェルくんの言う通り、今の内から新しい採掘場を発見しておく事は、確かに僕にとっても悪くない話さ。」

「ほう・・・。それはまた、面白そうな話ですね・・・。」


マグヌスはそちらの話にはあまり関わってはいないが、実質的な(アクエラ式)“原動機(モーター)”の開発者であるし、それらを基盤とした『魔法科学』の第一人者でもある。

ならば当然、セシリアが働きかけ、ラテス族がやろうとしている政治的・経済的な話も、それなりに耳に入っている訳である。


その情報は、物作りを好むドワーフ族、そして頭の回るヴェルからしたら、中々興味深い話であった。

何故ならば、“魔工”を得意とするドワーフ族にとっても、各方面との所謂“貿易”は相性が良いからである。


もちろん、まだ始まってもいない事ではあるのだが、比較的早い段階からそれらの話に一枚噛んでいたら、ドワーフ族の立場はかなり有利なものとなるだろう。


また、彼は“孤児院”での生活もあってか、他の種族に対する親しみや友愛みたいなものも持っているので、その話にドワーフ族がくいこむ事でドワーフ族だけが有利になるのではなく、その下請け作業を他の種族に回す事で、全体的な立場を引き上げる事も瞬時に頭の中で描いていた。


「まぁ、まだどうなるかは分からないけどね。」

「・・・しかし、今の内から採掘場を抑えておくのは、後々有利になりそうですよね・・・。ちなみに、そのお話はセシリアセンセイも噛んでいるので?」

「むしろセシリアが主導している、と言っても良いね。僕は残念ながら、そういう話には疎いものでね。」

「ふむ、なるほど・・・。」


ならば、近い内にセシリアに接触するのも有りか、と頭の中で思考するヴェル。

だが、


「ねぇねぇ〜、こんなトコでたちどまってないで、はやくいこうよぉ〜!」

「ああ、すまんすまん。」

「・・・とりあえず、今はカエサルくんの冒険に付き合う事としますか・・・。」


マグヌスとヴェルが難しい話であれこれ言っているのは、まだまだ子どもであるカエサルからしたらつまらないものである。


思わず焦れて再び催促するカエサルに頷き、二人も“光る石”捜索へと意識を切り替えるのであったーーー。



・・・



「じゃまだよっ!」

「ギィッ・・・!」

「いいぞ、カエサルッ!」

「ギャッ・・・!」

「ホント、ゴブリンってどこにでも湧いてくるなぁ〜・・・。」

「ビャッ・・・!」

「きりきざんじゃえっ!」

「ヴァッ・・・!」


その後、遭遇したゴブリン達を危なげなく倒していくアベル達。

カエサルもそれに参加して、次々とゴブリン達を屠っていった。


「凄いですね、カエサルくん。あの年齢でゴブリン達とも渡り合ってますよ。」

「いやぁ、お恥ずかしい・・・。」


それを遠巻きに見ていたマグヌスとヴェルは、そんな会話を交わしていた。


もちろん、彼らも戦闘に参加していないだけで、周囲に対する警戒はしている。

ゴブリンの厄介なところは、とにかくその個体数が多く、執念深いところである。

それ故に、一匹でも逃す事があれば、すぐに仲間達を引き連れてきてしまう恐れがあるのだ。


つまり、目の前に集中し過ぎると、下手したら挟撃、所謂“挟み撃ち”されてしまう可能性があるのだ。

彼らにとってはそこまでの脅威ではないとは言えど、当然ながら時間が掛かれば掛かるほど、体力や集中力は削られてしまう訳で、それを未然に防ぐ上で、冷静に全体を見れる存在が必要不可欠なのである。


そうした意味では、長らく引率を経験しているマグヌスにとってはこうした立ち居振る舞いはお手の物である。

ノンキに話している様に見えて、実は周囲を警戒しつつ、いつでもフォローをできる位置を確保していたのであった。


「しかし、それを言ったらフリットくんも、随分と逞しくなったねぇ〜。」

「彼は少々弱気なだけで、元々才能はありましたからねぇ〜。」


そうなのだ。

以前はゴブリン達にすら尻込みしていたフリットは、この数年ですっかり逞しく成長していた。


元々野生動物をベースとしている獣人族である彼は、とにかく“瞬発力(バネ)”においては全種族の中で抜きん出た存在だ。

所謂“スピード”タイプな訳であるが、当然ながら“速さ”はそのまま“強さ”となる。


相手が何かする前に彼の方が先に動けるのだから、優位性は言うまでもないが、それに加えて実際には“スピード”タイプというのは、とてつもない攻撃力を持ってもいる。


よくマンガやアニメ、ゲームにおいては、この“スピード”タイプは“パワー”に劣る、みたいな風潮があるが、これは誤った解釈である。

何故ならば、速さはそのままパワーとなるからである。


物理学的には、運動量は質量が大きくなればなるほど、速度が大きくなればなるほど、それに比例して大きくなっていく。


もちろん、いくらフリットが素早いとは言っても流石に音速を超えるほどではないが、しかしそれでもスピードがある、という事は、そのまま破壊力、攻撃力も高い、という事に繋がるのである。


つまり、“スピード”タイプが弱い訳がなく、なおかつ十分な破壊力も併せ持っているのだ。


ただ、これはフリットの性格的な問題で以前はこの“武器”を活かしきれていなかったが、経験と自信を身に付けた事によって、それを活かす事が出来る様になったのである。


実際、今もアベルよりもゴブリン達を屠っているし、さりげなくカエサルのフォローにも回っていたほどである。


「それにアルくんも、その、何と言って良いか、結構えげつないよねぇ〜。」

「“精霊魔法”は基本的な四大属性を行使する術ですからねぇ〜。まぁ、以前に比べて、まだ“火”を使わなくなっただけでも、それなりに彼も成長していますよ。」


全身を切り裂かれたゴブリンを見ながら、マグヌスは若干ひきながらそんな感想を呟く。


以前にも言及したが、エルフ族の行使する“精霊魔法”は、基本中の基本である“基礎四大属性”を操る魔法である。

すなわち、“火”、“水”、“風”、“土”である。


もっとも、ラテス族の扱う『魔法技術』はこれよりももっと応用力に優れており、上位の属性である“雷”とか“氷”なんかも扱う事が出来る。


が、実際に戦闘に用いる場合は、発動スピードの観点から、“精霊魔法”に軍配が上がる。


ラテス族、正確にはセルース人類が作り上げた『魔法技術』は、アクエラ人類が用いていた“呪紋(スペルタトゥー)”が基本となっている。


呪紋(スペルタトゥー)”は、ただそこに存在するだけでも様々な影響を与える“魔素”を、ある程度任意の方向へと操る術であった。

これによって、通常よりも頑強な肉体だったり、パワーやスピードを得る事が可能なのである。


具体的には、身体に直接刺青(いれずみ)を施す事で、これらの効果を発揮していたのだ。


それをセルース人類は分析、解析し、身体に直接刺青(いれずみ)を入れる事なく、効果を発揮する技術を開発したのだ。


これがラテス族の『魔法技術』であり、アキトの時代でいう、『詠唱魔法』であった。

術者が規定の動作、印や文言を唱える事で術式(プログラム)を定め、それを“魔素”を介して具現化するのである。


つまりラテス族の『魔法技術』は、術式(プログラム)を用いれば非常に応用力に優れている技術である一方で、一定の“詠唱時間(キャストタイム)”を必要ともするのである。


これは、再三述べている通り、事戦闘においては致命的な欠点である。

一瞬の判断が物を言う場においては、隙の大きい『詠唱魔法』は、非常に使いづらいものなのだ。


もちろん、これも工夫次第ではある。

実際マグヌスは、ラテス族の『魔法技術』、すなわち『詠唱魔法』の使い手であるものの、単独でモンスターや魔獣とも渡り合える強者の部類に入る存在である。


だが、これはあくまで例外であって、彼らの様な所謂“魔法使い”タイプは、基本的には徒党を組む事によって、初めて真価を発揮するものなのであった。

(ここら辺は、所謂“RPG”の様なゲームのバランスと同じであり、“魔法使い”タイプは一発一発の威力は大きいが、隙が大きく打たれ弱いので、それをカバー出来る存在に守ってもらうか、距離をおいて運用するのが最適解であるのに似ていた。)


一方の“精霊魔法”は、事応用力に関してはラテス族の『魔法技術』には劣るが、“魔素”=“精霊”に直接命令を下せるので、術式(プログラム)の設定を省略出来る。

つまり、発動スピードが圧倒的に早いのである。


先程も述べた通り、事戦闘面においてはこの一瞬の判断スピード、行動スピードは非常に重要であるから、これはそのままエルフ族の強みとなるのである。


もちろん、場所の環境によって、何を使うかを考える必要はある。


ヴェルも述べていたが、この場は森の中であるから、何も考えずに“火”を使ってしまうと、下手すれば森林火災を引き起こしてしまう恐れがある。

そうなれば、敵を倒す事は出来ても、自分達も煙に巻かれたり、火の海に飲み込まれる可能性もある。


相当な手練れであり、なおかつそれらを完璧にコントロールする術、そして火薬庫内で火遊びをするくらいのイカれた胆力でもない限り、状況によって手札を変えるのが無難である。


アルもそれに気付いていたのか、以前は火を使っていたものの、今は風を使う事によって、そうした事故を未然に防いでいる様であった。



「みんなご苦労さま〜。」

「カエサルくん、カッコよかったよ。」

「へへ〜!」


そうこうしている内に、ゴブリン達を全滅させたアベル達に、マグヌスとヴェルはそう声をかける。

ヴェルの一言に、やっている事はかなりえげつなかったが、褒められて喜ぶ様子は、カエサルもまだまだ幼い子どもであると分かる。


「さて、ちょっと時間を取られてしまったね。アルくん。この辺りに“光る石”の痕跡はあるかな?」

「ん〜と・・・。ううん。ここら辺には見当たらないよぉ〜。」

「う〜ん、そうかぁ〜・・・。」

「やっぱり、そう簡単には見つからねぇよなぁ〜。」

「前もたまたま見付けただけだもんね。」

「もうちょっと、全体を見渡せる場所から探してみるのはどうですか?」


そして、本来の目的である“光る石”について頼みのアルに聞いたのだが、その返答は芳しくないものであった。

それにヴェルがそう提案すると、皆頷き、彼らは連れ立って小高い丘の様な場所を目指す事となったのであった。



・・・



途中、再び魔獣やモンスターとの遭遇戦はあったものの、危なげなく倒していったマグヌスらは、小高い丘に到着していた。

しかし、陽はかなり陰っている。


「そろそろ帰らなくちゃな・・・。」

「ええ〜〜〜。まだダイジョウブだよぉ〜〜〜。それに、まだ“光る石”をみつけてないしさぁ〜。」


そう呟くマグヌスに、カエサルが文句を言う。

まぁ、彼からしたら、自分の目的が達成されていないのだからそう発言するのも無理はないのだが、流石にここはマグヌスも、父親としても森を熟知している者としても、これ以上のワガママは許容しなかった。


「ダメだよ、カエサル。夜の森は非常に危険なんだ。それこそ、今まで遭ってきた魔獣やモンスターなんか目じゃないほどにね。当然ながら視界も悪くなるから、方向感覚も狂うし、彼らの襲撃に気付きにくくなる。」

「・・・けどさぁ〜〜〜。」


それでも不満を言うカエサルに、真剣かつ冷徹な声でマグヌスは言葉を続けた。


「カエサル、父親である僕が言うのも何だけど、君は間違いなく天才だ。だけど同時に、何でも自分一人で出来ると思わない方が良い。少なくとも、今は君以外に僕らも同行しているよね?もちろん、このお兄ちゃん達は非常に頼もしい人達だが、同時に物事に絶対はないんだよ。仮にここで君のワガママを聞いて、それで何かあったらどうするんだい?冷たいようだけど、君一人が死ぬのは君の勝手だけど、そのせいで仲間達も巻き込まれたとしたら?」

「あっ・・・。」

「自分だけで完結出来ない事は、あまり言うべきではないね。もう少し、周囲の事も考えなくちゃ、ね。」

「・・・うん。」


マグヌスの言葉に、カエサルは頷いた。

やはり早熟の天才児故に、かなりの理解力があるのだろう。


これは厳しいが、マグヌスの言う事が正論である。

仮にカエサル一人なら、ここで残って夜になったとして、それで何らかの事故があったとしても自己責任で片がつく。


だが、自分以外の誰かがいる状況では、当然ながら責任の重さは変わってきてしまうのである。


集団で動く場合、慎重なくらいがちょうど良いのである。

少なくとも、軽い気持ちで“いけるだろう”、なんてのは、大抵の場合は悪いフラグである。


4人組もその点は理解しているのか、カエサルを擁護する声はあがらなかった。

若干気まずい空気が流れるが、しかし、そうした空気が一変する事態が起こってしまう。


「さ、さぁてと。アル、こっからなら何か見えるかぁ〜?」

「そ、そうだねぇ〜。ちょっとまって〜。」

「・・・ってか、何か様子がおかしくない?」


辺りを一望出来るという事は、当然ながらラテス族の集落も見渡せる訳である。

ならば、そこで今、何が起きているのかに気付いたとしても不思議な話ではない。


「な、なんか、煙、あがってね?」

「もしかして、火事、とか?」


人は、あまりにも衝撃的な光景を目の当たりにすると、かえってそれを過小評価したり正しく認識出来なかったりするものだ。


確かに火事は、ラテス族にとっても警戒すべき事柄ではあるが、しかしセルース人類(神々)から授けられた『魔法技術』を持つ彼らにとっては、それを鎮火する事は容易い事でもある。


故に、ただの火事ならば、ここまで煙が()()()()()()()()()()()()()()


では、そうではないとすると、これは何なのであろうか?


「ま、まさかっ・・・!?」

「ち、ちちうえっ!?」


ダッと踵を返したマグヌスに、カエサルは反射的にそう声をかけた。


「襲撃だっ!!!」

「「「「「っ!!!???」」」」」


マグヌスの言葉に、カエサルと4人組は耳を疑った。


・・・シュウゲキ?

・・・襲撃っ!!??


確かにそれなら、一向に止まない火事にも説明がつく。

しかし、誰が?


少なくともラテス族に武力で敵う者など、この辺りには存在しない筈なのだが・・・。


突然の事に動揺する彼らに、マグヌスは走りながら指示を飛ばした。


「とにかくキミ達は、どこかの集落に避難をっ!僕は様子を見てくるっ!カエサルの事、頼んだよっ!!!」

「ちちうえ〜〜〜!!!」



誤字・脱字がありましたら御指摘頂けると幸いです。


いつも御覧頂いてありがとうございます。

よろしければ、ブクマ登録、評価、感想、いいね、等頂けると非常に嬉しく思います。

よろしくお願いいたします。

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