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『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』  作者: 笠井 裕二
英雄大戦へ至る道
301/384

巣立ちと新たなる命

続きです。



◇◆◇



「・・・もしかして、あなた達()()施設を抜け出したワケじゃないでしょうね・・・?」

「あ、やべっ・・・!」


その場には、当然ながらセシリアもいる。

そして彼女も、常にこの施設に常駐している訳ではないが、悪ガキとして有名なこの4人組の素行については理解していた。


そんな彼らが、詳しい事は分からないまでも、自分やマグヌスでさえ知らない物を持っている、情報を持っているとなると、答えはおのずと察する事が可能であろう。


丁寧な口調の中にも、隠しきれぬ怒りを感じるセシリアの質問に、思わずいらぬ言動をしてしまったとアベルは後悔する。


マグヌスも、自分が怒られている訳でもないのに、そのセシリアの雰囲気にガタガタと震えていた。

どうやら、彼女は怒らせると怖い女性なのかもしれない。


またこの事から、家庭内のヒエラルキーもおのずと察する事が出来た。


アベルはもちろんの事、フリットとアルも青ざめた顔をしている。

しかしヴェルだけは、冷静に彼女にこう返していた。


「おっしゃる通りですが、その事についてはもう話は終わっています。僕らはすでに他のセンセイ方からお叱りを受けていますし、その罰もすでに受けていますからね。それなのに、セシリアセンセイから再びお叱りを受けるのは、これは多少理不尽ではないでしょうか?それとも、僕らがやった事は、一生言われなければならないほどの重罪なのでしょうか?」

「っ!!!」

「おま、バカッ!」


セシリアに噛み付いたヴェルに、アベルは小声で抗議する。

しかし、ヴェルはどこ吹く風で、平然とセシリアを見据えていた。


ヴェルの発言はもっともである。

すでにその件については、彼らと施設の職員の間で済んだ話だからである。

言うなれば、すでに刑期を終えているのに、その話をまた蒸し返している様なものなのである。


もちろん、前科がある、というある種のレッテルを貼られる事は数多いが、あくまで彼らがやった事は、大人が定めたルールから逸脱しただけの事。

殺人を犯した訳でも、他者の物を盗んだ訳でもないのである。


また、これは以前にも述べた通り、彼らの性質から鑑みれば、自然の中でこそ生活して然るべきものであるが、あくまで大人の都合によって施設内に拘束しているのと同義でもある。


まぁ、多少屁理屈ではあるが、ここでセシリアが彼らを怒るのは、ただ単純に彼女の感情の発露でしかない事もまた事実なのである。

こうした事を繰り返していたら、ひいては子ども達から信頼や信用を失ってしまう事ともなりかねない。


まっすぐ自分を見据えるヴェルに、セシリアは“はぁ・・・。”と深呼吸をして、どうにか自身の怒りを鎮めた。


子ども相手をするという事は、非常に難しい事である事を改めて実感しながら。


「そうなのね・・・。知らなかったとは言え、悪かったわ。確かに、そこまでの重罪ではないわね。」

「「「「!!!」」」」

「けど、私達が叱るのは、あなた達の事を考えての事よ。危ない事はしてほしくない。そういう気持ちは、分かってほしいわ。」

「・・・肝に銘じておきます。」

「「「「「・・・。」」」」」


まさかのセシリアの謝罪に、アベル達はビックリとしていた。

そして、続くセシリアの素直な気持ちに、アベル達は何かを感じ取るのであった。


まぁ、ヴェルだけは曖昧な言葉でお茶を濁していたが。



「お話が逸れてしまいましたね。で、僕達は先日、センセイ方の目を盗んで施設内から抜け出した訳ですが、それには理由があります。アルが見かけたという、“光る石”の捜索の為でした。」

「“光る石”・・・?」

「・・・色々と突っ込みたい事はあるんだけど、その“光る石”とは何ですか?」


改めて説明を開始したヴェルに、マグヌスは単純に疑問に思った事を、セシリアはさらっと“アルが見かけた”、つまり、常習的に彼らが施設内から抜け出している事実を暗に認めた事に対して思うところもありつつ、話の腰を折らない様に先を促した。


「結論から申し上げますと、“光る石”は視覚的に光っている訳ではありません。もっとも、エルフ族であるアルには本当に光って見えたのでしょうが、僕らには何の変哲もない鉱石でした。ただ、その“中”に内包している“魔素”はとてつもなく、これは通常の鉱石とは決定的に異なる点です。つまりこの“光る石”は、おそらく“魔素”を引き寄せる、あるいは溜め込む性質を持っているものと思われます。」

「“魔素”を・・・。」

「引き寄せるっ・・・!?」


大真面目に頷いたヴェルに、マグヌスは驚愕の表情を浮かべていた。


当たり前だが、この世界(アクエラ)は広い。

それ故に、セルース人類やラテス族が発見していない現象や物質も数多く存在するのである。


だが、マグヌスにとって重要なのはそこではない。

仮にヴェルの発言が本当だとしたら、それは彼が理想としている“『魔法技術』なしに、『魔法技術』の様な現象を誰でも享受出来る”という事に、大きく前進する可能性があるからである。


「これがそうです。」

「「っ!!!」」


しかも、話だけでなく、ヴェルは実物も持っていた。


おもむろに差し出された鉱石を手に取り、マグヌスはブルブルと震えていた。


「た、確かに、一見何の変哲もない鉱石ですけど、凄まじい濃度の“魔素”を感じますね。こんな物、見た事も聞いた事もありませんでしたが・・・。」

「見ての通り、見た目はただの石ですからね。どれほど優れた“魔素”の感受性を持っていたとしても、感覚だけで広大な大地からこれを探し出す事はほぼ不可能でしょうからね。」

「・・・しかし、エルフ族だけは“魔素”=“精霊”が視覚的に見えるから、僕らも知らなかったこれを比較的簡単に見付ける事が出来た、と。」

「そうです。」


マグヌスはセシリアの夫として、そして『魔法研究家』として、あまり知られていない『新人類(子ども達)』の種族特性は一通り押さえていた。

故に、ヴェルの説明に深く頷きながら納得していた。


「で、ここで先程の話に戻るのですが、これを上手く活用すれば、マグヌスさんの開発した機構を術者が『魔法技術』を介さずとも動かす事が出来るのではないでしょうか?」

「っ!!!」

「・・・ふむ。その可能性は極めて高いだろうね。」


“魔素”を引き寄せる、あるいは溜め込む性質のある(と思われる)“光る石”、『精霊石(せいれいせき)』を上手く活用すれば、向こうの世界(地球)でいう“バッテリー”の様な役割を担ってくれる可能性があった。

それはもちろん、使用者が『魔法技術』を使用出来る必要がないので、マグヌスの発明、発見した原動機(モーター)との相性は極めて高い。


(ちなみに余談だが、もちろん“光る石”、『精霊石(せいれいせき)』にも利用限界が存在するが(流石に“魔素”を無尽蔵に引き寄せたり溜め込んだりする事が出来る訳ではないからである)、しかし向こうの世界(地球)でいう“バッテリー”や“蓄電池”よりもその利用期間は長かった。)


「ただ、僕も色々と研究をしていますが、具体的にどの様な加工をすればそうした事が可能かはまだまだ分かっていません。どちらかと言えば僕の専門は、こうした素材を使った武器・防具、道具類の加工の方ですからね。何らかの部品を作る事については、あまり得意ではないんですよ。」

「なるほどなるほど・・・。」


以前にも言及した通り、ドワーフ族の種族特性として、物に何らかの効果を付与する“魔工”を得意としている。

逆に言えば、元々“魔素”を引き寄せる、あるいは溜め込む性質を持つ“光る石”、『精霊石(せいれいせき)』とは、あまり相性が良いとは言えないのである。


そうした意味では、そうした特殊技能が()()からこそ、人間族はこうした発明品に関する相性が良いとも言えるのである。

自分自身では早く走れないからこそ、“車”というツールが生まれた訳だし、様々な便利なツールも、自分自身では再現出来ない事を他で代用する為のものであろう。


「いずれにせよ、非常に興味深い物だよ、これはっ!・・・ちなみに、譲ってもらう事は出来ない、よね?」


そんな事を言いつつ、マグヌスはヴェルの顔色を窺った。


「かなりの数を僕は所持していますので、別にそれでも構いませんが、今後の事を考えれば、ご自身で採掘された方がよろしいのでは?その方が心置きなく実験出来るでしょうし、捜索に関しては、エルフ族の協力が得られれば、そこまで難しい事ではありませんしね。」

「ふむ・・・。」


ヴェルの発言にマグヌスはもっともだと頷いた。


ヴェルが所持している“光る石”の数がどれほどのものかは分からないが、当然ながら無尽蔵に存在する訳ではないだろう。

ヴェルの言う通り、仮にこれを使って様々な実験をするにしても、まとまった数があった方が色々とスムーズに行く事だろう。

それならば、自ら採掘し、供給源を確保するのが望ましい。


ただ、その為には、この一見何の変哲もない鉱石を見つけられる存在が必要不可欠でもある。


もちろん、すでにエルフ族ならこれを発見しやすいという前例があるまでも、ここでこの施設のルール、『新人類(子ども達)』の境遇が問題となってくる。


チラリとセシリアを覗き込む様な表情で、マグヌスは彼女の方を見やる。


彼女も、マグヌスが何を言いたいのかを察して、再び“はぁ・・・”と溜め息を吐いた。


セルース人類(神々)から預かった『新人類(子ども達)』は、やはり大切に扱うべきであろう。


しかし一方で、言わば“かごの中”に閉じ込めておく事が、本当に彼らの為であるかと言うと、当然ながらそんな事はありえない。


ここら辺は、通常の子育てと似たようなところだろう。

大事に思うからこそ、彼らが自立して生きていける様にするのが本来はベストなのである。

何故ならば、セシリアとて永遠に生きていれる訳ではないからである。


それが、過保護に育て過ぎた結果、自分達では何も出来ない様では、セシリアの為にも彼らの為にもならない。


それに、以前に職員からも、そろそろ彼らの種族特性が現れて、彼らに合った環境に変えていく必要がある、とも言われていた事も彼女は思い出していた。


“これって、そういうタイミング、なのかしらね?”


何だか、見えざる手によって運命を動かされている様な不思議な感覚を感じつつ、セシリアは結論を出す事とした。


「オーケー、マグヌス。」

「え・・・?」

「“光る石”が欲しいのでしょ?ならば、エルフ族や子ども達に協力してもらいましょうよ。」

「それは・・・、こちらとしては大助かりだが、その、いいのかい?」


先程まで、ヴェル達が施設の外に出た事に対しておかんむりであった彼女の口から、まさかそんな言葉が出るとは思わなかったのか、マグヌスは訝しげに彼女にそう返していた。


それに苦笑しつつ、セシリアは自身の考えを口にした。


「確かに今でも心配なんだけど、いつまでも彼らをこの施設内に留めておく事が良いとは限らないのよ。以前、職員からも指摘されたのだけれど、彼らの成長と共に、様々な種族特性が現れ始めているの。セルース人類(神々)から授かった資料によれば、彼らは基本的に自然と共に生きる傾向が強いの。まぁ、この子達はその中でもかなりヤンチャな方なんだろうけど、多かれ少なかれ彼らは、“外”に出る事を望んでいるんだと思うわ。ならば、私のするべき事は、それを否定する事ではなく、その意向を受け止める事だと思うわ。けど、流石にいきなり放り出すのも無責任だとも思う。だったら、貴方の活動に同行させてはどうか、と考えたのよ。言わば、一種の訓練ね。」

「ふむ、なるほどね・・・。」


こう見えて、マグヌスは結構強かったりする。

『魔法研究家』としての様々な知識はもちろん、自身も『魔法技術』の一流の使い手だからである。


もちろん、セルース人類の拠点にはセキュリティが存在するが、それでもラテス族の集落からその拠点の間は、当然ながら魔獣やモンスターの生活圏内だ。


曲がりなりにも単独(ソロ)で、そんな危険な場所を行き来して無事である事からも、それは分かる事だろう。


そんな、信用出来る腕前を持っており、なおかつ“大人”であるマグヌスが同行するのであれば、少なくとも子ども達だけで危険な場所に出かけさせるよりはまだ安心であろう。


それに伴って、子ども達がマグヌスから色々と学べば、彼らの独立、すなわち施設の外に出て、自分達の力で自然の中で生活する下地作りともなるし、マグヌスの希望も叶えられる。


更には、マグヌスが“光る石”を大量に入手し、その研究が順調に進めば、ラテス族の『魔法技術』は、更なる発展も期待出来る訳である。


彼女の親心さえ無視すれば、まさに一石二鳥、いや、一石三鳥の案なのであった。


思わぬ責任を背負わされる事となったマグヌスではあったが、彼にこれを断る選択肢はなかった。

だが、


「もちろん、僕はそれで構わないけど、問題は子ども達の意向の方だね。やっぱり外は怖いから、出たくない、って子もいるかもしれないしさ。」

「・・・それはそうね。」


マグヌスのもっともな意見に、チラリとフリットを見たセシリアも頷いた。


「いや、そんなヤツはいないと思うぜ?まぁ、フリットのヤツはちょっとアレだけど、他の奴らは俺達みたいにルールは破りこそしないけど、“外”に対する興味はあるみたいだしな。実際、俺等も“外”の事はよく聞かれるし。」

「ぼ、僕は慎重なだけなんだよ。センセイ方に怒られないんなら、べ、別に“外”も怖くはないし。」

「だぁ~だぁ〜。」

「だ、そうですよ?」


精一杯虚勢をはるフリットに、“無理すんな”とばかりにポンポンと彼の頬を撫でるアル。

が、それを無視して、ヴェルは勝手にそう結論づける。


まぁ彼からしたら、マグヌスにそう提案したのには理由があるからだ。


マグヌスに“光る石”を自分で採掘してはどうか?、と提案したのも、あわよくば合法的に自分達も同行出来るかもしれない、と計算した上での事だったからである。


まぁ、それが予想以上に上手く行った訳であるが、だったらその役割を一番に務めたい、と考えたとしても不思議な話ではない。

もしかしたら、もっと別に興味深い素材が手に入るかもしれないからである。


そんな、何となく裏がある事はセシリアも察していたが、先程も述べた通り、これが『新人類(子ども達)』の自立への第一歩となるだろうと考えて、あえて何も言わなかったが。


「じゃあ、まぁ、試験的にまずは君達に同行してもらおうかな?すでに君達は経験もある訳だし、危ない事にもそうそうならないだろう。で、先駆者がいれば、仲間達も安心だろうから、その上で改めて希望者を募ろう。」

「そうね。職員には話を通しておくわ。」

「やりっ!」

「・・・!」

「あれ・・・?僕も?」

「だぁ~だぁ〜。」


なし崩し的に参加する事が決まったフリットは、半ば呆然とした様に呟いた。

多分彼は、所謂“巻き込まれ体質”なのであろう。


アルに“諦めろ”とばかりにポンポンと頭を叩かれたフリットは、深い溜め息を吐いていたーーー。



・・・



その後、先程決まった事を職員達と共有すべく、セシリアとマグヌスが4人組のもとを去っていった後、アベルは気になっていた事をヴェルに問い質していた。


「っつか、一瞬ヒヤッとしたんだけどよ。何でさっき、セシリアセンセイに噛みついたりしたんだよ、ヴェル?」

「別に?さっき言った通りだよ。もう済んだ話だったんだ。それなのに、セシリアセンセイにまで叱られたら、これは理不尽だろ?」

「いや、そりゃそーだけどよぉ〜・・・。」


一応はアベルも、自分達が悪い事をしていた自覚はあったからこそ、叱られるのは致し方ないと考えていたのである。


しかし、ヴェルの考えはちょっと違っている。


「ってかそもそもの話としてさ。“施設の外に出てはいけない”ってルールは、大人達が勝手に定めたルールなんだ。もちろんそこには、外は危険な場所だから、っていう理由が存在するからなのは分かるんだけど、それも言っちゃえば大人の都合だろ?」

「けど、間違ってないよね?実際、外は危険な生物も多いし・・・。」

「それは僕も否定しない。だから、この間の外に出た件は、甘んじてお叱りを受けたし、罰もこなしたからね。けど、そこで話は完結してるんだよ。少なくとも、この間の件はそれで決着している。なのに、ここで更にセシリアセンセイにまでお叱りを受けるのは、あまりに理不尽だろ?それだって、要は彼らが作ったルールだからね。“外に出たら罰を与える”って。そのルールを覆して、罰も消化した僕らを再び叱りつけるのは、これは完全に彼らの都合であって、感情論でしかない。」

「・・・うぅ〜ん?」

「・・・そう、なのかなぁ〜・・・?」

「だぁ~だぁ〜?」


ヴェルの発言が腑に落ちていないアベル、フリット、アルは頭をひねっていた。


「ま、小難しい話はともかくとして、何でも大人の言う事が正しいとは思わない方が良い、とは僕は思うね。彼らだって、絶対的に正しい訳じゃないし、少なくとも僕は、それが間違っていると思ったら声をあげるべきだと思っているだ。」

「「「・・・。」」」


世の中には理不尽な事はいくらでもある。

そして子ども達にとっては、周囲の大人達がある種の基準であり、庇護してもらう対象であるから、それらを自然と飲み込んでしまう事も多いのであるが、それが間違っていると思ったら、自身の考えを貫き通す事も時には必要なのである。


「ま、そんな話はどうでも良いよ。これからは、大手を振って外に出られるかもしんないんだからさ。」

「そ、そうだな。」

「・・・僕は、なるべくなら遠慮したいんだけど・・・。」

「だぁ~だぁ〜!!!」

「痛い、痛いってアルッ!!!」

「ほれみろ。アルも情けない事言うな、ってよ。」

「フリットは、まずは自信を持つべきだよ。君の力は凄いんだからさ。」

「う〜ん・・・。」


いまいち自己肯定感の低いフリットは、周囲の評価と自身の評価のギャップを埋められていない様であった。



・・・



「ところでセシリア。子ども達を大切に思っている君が、今回は随分と思い切った判断をしたね。」

「ああ、それなのだけどね・・・。」


その後、職員達との会合を終えて自宅に戻ったマグヌスとセシリアは、夕食の席でそんな会話を交わしていた。


マグヌスにそんな事を問われて、セシリアは複雑そうな、それでいて嬉し恥ずかしい感じにポツリと呟いた。


「ちょっと心境の変化もあったのよ。子ども達とどう向き合うのが正解か、ってね。」

「ふぅ〜ん。」

「ふぅ〜ん、じゃないのよ、マグヌス。つまり、その、私達に、ね?」

「???」


要領を得ないセシリアにマグヌスは頭に疑問符を乱立させていた。


そんなマグヌスに呆れながらも、セシリアはしっかりと事実を伝えた。


「だから、赤ちゃんが、その、出来たのかもしれないのよ!」

「・・・・・・・・・はっ?」


マグヌスはセシリアの言葉が、すぐには理解出来ていなかった。


“赤ちゃんが、出来た・・・?”


しばらくして、その事実が頭に染み渡っていくと、おもむろにマグヌスは立ち上がる。


「ほ、本当かい、セシリアッ!」

「え、ええ。多分。」

「そうか、そうかいっ!!!こ、これはますます頑張らなくちゃいけないなぁ〜!あ、動いて平気かい?辛くはない?」

「気が早いわよ、マグヌス。」


急にニコニコし始めたマグヌスに呆気にとられながらも、無邪気に喜ぶ夫を、セシリアは微笑ましく思っていたーーー。



女性にとって、大きな心境の変化が訪れるタイミングは様々あるだろうが、この二人の間に新たなる命が誕生するかもしれない事が、セシリアにとって、大きく自身の考え方を改めるキッカケとなっていた。


それ故の“子ども達の今後をどうするか?”、という発想に至ったのであろう。



かくして、ラテス族と『新人類(子ども達)』、そしてマグヌスの新発明に新たなる命の誕生と、色々と運命は動き始めた訳であったがーーー。



誤字・脱字がありましたら御指摘頂けると幸いです。


いつも御覧頂いてありがとうございます。

よろしければ、ブクマ登録、評価、感想、いいね等頂けると非常に嬉しく思います。

よろしくお願いいたします。

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