オタクは惹かれ合う
続きです。
◇◆◇
“魔素”はこの世界のありとあらゆる場所に存在する。
一方で、特定の“形”を持っていないので、それを“目で見る”事は不可能に近い。
カテゴリー的には、所謂“気体”に近い物質(?)なのかもしれない。
では、そんな見えないものをどうやって利用しているのであろうか?
その答えは意外と単純で、目で見えないかもしれないが、感覚的に感じ取る事は不可能ではないからであった。
実際、後の世のアキトも、この“魔素”を利用した『魔法技術』、すなわち“魔法使い”になる為に最初に始めた修業が、“魔素”を感じ取る事、であった。
ここで話は少し逸れるが、実はこうした修練を通して、“魔素”を感じ取り、“魔素”との繋がりを認識し、それをある程度自在に操る事が出来る様になり、それを特定の形に出力さえ出来れば、実際には誰でも『魔法技術』を扱う事が可能である。
もちろん、その為には長い修練が必要であるし、様々な科学的・化学的知識なども知っておく必要もあるので、誰でも“魔法使い”になれる可能性はあっても、実際にそうなれる者は限られてくる訳であった。
まぁ、それはともかく。
ただし、生来持っている才能いかんによっては、“魔素”を無意識に操る事も可能であった。
所謂“魔素”感受性、“魔素”への親和性の高さ、である。
こうした者達は、特段長い修練を必要とせずに、“魔法”を使う事が可能である。
ただし、そこには知識は存在しないので、『魔法技術』を修めた“魔法使い”とは違い、ある特定の形でしか“魔法”を操れない。
結局のところ、“応用力”という意味では、地道な修業と知識を身に付けた者には敵わないのであった。
まぁ、それもともかく。
で、しかし、そんな生まれ持った“魔素”に対する感受性の高さ、親和性の高さを持ってしても、“魔素”を目で見る事は不可能であった。
ただ、そんな中にあって、エルフ族だけは、この“魔素”を目で捉える事が可能だったのであったーーー。
人間族を含めた全種族の中で、特に“魔素”に高い親和性を持っているエルフ族は、ある特別な“魔法”を操る事が出来た。
それが“精霊魔法”であり、“魔素”を“精霊”という形で、その目に捉えているのであった。
それらの“精霊”にお願いする事によって、様々な自然現象を操る事が可能なので、エルフ族の“魔法”への適正は非常に高いと言えるのである。
ただし、こちらも先程の例と同じであり、あくまで生来より“魔法使い”としての適正が高いだけであり、彼らには高い科学的・化学的知識を持っている訳ではないから、やはり“応用力”という意味ではガチガチの“魔法使い”には劣ってしまう。
あくまで、修業の必要がなく、始めから様々な“精霊魔法”を扱う事が出来るのがエルフ族の強みなのであった。
で、そんな“魔素”を“精霊”として目に捉えているエルフ族は、“世界”の見え方も、人間族や他の種族とも若干違う様なのである。
具体的には、“精霊”が多く存在する場所が光って見える様なのである。
あくまで“魔素”に対する高い適性や親和性を持っていると言っても、それらを感覚的に捉えている他の種族と違って、事“探索”、何かしらの特殊な物質の発見や発掘する事については、エルフ族は非常に強いアドバンテージを持っている、と言っても過言ではないのであったーーー。
・・・
「あーあーっ!!!」
「・・・これ、か・・・?」
「・・・確かに、“魔素”の濃度が高い様な感覚はあるね・・・。」
「・・・けど、やっぱ光っては見えないぜ?」
「それは、アルがエルフ族だからそう見えるだけなんだよ、きっと。」
「なぁ〜んだ。」
しばらく森を探索していた例の四人組の少年達は、突如として特定の場所を指し示して何かを訴えていたアルの誘導に従って、剥き出しになっていた地層を発見した。
おそらく、地震か地すべりか、何らかの要因によって露出してしまったものであろう。
その特定の層に、黒っぽいゴツゴツとした鉱石が存在していた。
アベルと呼ばれた鬼人族の少年は、本当に“光る石”があると思っていただけに、実際には彼には光って見えなかった事によって一気に興味を失ってしまった様である。
だが、一方のヴェルと呼ばれたドワーフ族の少年は、その鉱石に近付くほど、その鉱石の異質性に気が付いていた。
「・・・確かに光っては見えないけど、お前も感覚を研ぎ澄ませてみろよっ!これはスゴい発見かもしれないぞっ!!」
「お、おおっ・・・。・・・っ!!た、確かに、何かスゲェパワーを感じるな。」
「だろっ!!??」
その鉱石を掘り起こし、実際に手に取って見ると、端から見た分には普通の石としか見えないのであるが、しかし“魔素”を感じ取る事が出来る彼らには、その鉱石に異常なほど“魔素”が集まっている事が確認する事が出来たのである。
これは、“魔石”と呼ばれる石の一種であった。
その中でも、とりわけ『精霊石』と呼ばれる石である。
“魔素”=“精霊”が異常に引き寄せられている事からその名がついたと言われる。
“精霊”が光って見えるアルにとっては、まさに“光る石”であった。
「これは凄い発見かもしれないよっ!“魔素”をこれほど内包した鉱石はこれまで見た事がないっ!凄いよ、アルッ!」
「だぁ~だ〜!」
ヴェルは興奮した様にアルを抱きかかえて彼を褒め称える。
ドワーフ族である彼にとっては、珍しい鉱石、というだけでも非常に興味を引かれる対象であるが、それが更に“魔素”を大量に内包している石となると、これは興奮しない方が難しいだろう。
アルと共にはしゃぎながらも、彼の頭の中ではこの『精霊石』をどう加工してやろうか?、というアイデアが湯水の様に浮かんでいた。
「これは、確かにスゴいね。僕でも分かるくらいだし。」
「だな。ま、流石にヴェルほどはしゃげはしないが、面白いモンである事は確かだ。無駄足にはならんかったな。」
「だね。」
一方、アルを掻っ攫われたフリットと呼ばれた獣人族の少年とアベルは、比較的冷静にそんな会話を交わしていた。
鬼人族であるアベルも、金細工の趣味に持つ、という意外な特技を持っているが、ヴェルほど鉱石に対する興味がある訳ではなかったからである。
これは、鬼人族の種族特性かもしれない。
色々と似通った部分の存在する鬼人族とドワーフ族であるが(腕っぷしが強く、若干脳筋気質。大酒飲みが多い。手先が器用。などなど)、ただその『加工技術』に関するスタンスには、かなりの違いが存在していたのである。
ドワーフ族は、とにかく何かを作る事が好き種族なのである。
故に、その守備範囲も広い。
武器や防具、装飾品、果てはコインなど、物作りに対する情熱がとにかく熱いのである。
その矛先は加工品に留まらず、素材そのものにも向く。
故に、未知の素材にはテンションが上がってしまうのであった。
一方の鬼人族は、こちらも『加工技術』、特に『金細工』に関してはドワーフ族に匹敵する腕前を持っているが、ドワーフ族が純粋に物作りが好きなのに対して、鬼人族は“強さ”の延長線上にそれがあるのである。
これはどういう事かと言うと、まず始めに、鬼人族は“強さ”に対する特別な価値観や思い入れを持っているのである。
ここら辺は、若干野生動物に近しい性質であろう。
野生動物の社会では、一番強い者がリーダーになる事も珍しくない。
何故なら、リーダーが強ければ外敵を簡単に追っ払う事が出来る=生存競争で優位に立てるからである。
また、強い者の遺伝子が後世に残れば、種族としての繁栄も期待出来る訳だ。
こうした形質を色濃く残したのが鬼人族なのである。
それ故に、鬼人族を率いる者は、一番強い者となっている。
そして、そんな特別視される“強い者”が、見ずぼらしい格好では面目が立たない訳だ。
それ故に、強い者ほど、キラキラと輝く装飾品に身に付ける様になっていったのである。
こちらも野生動物に多いのであるが、所謂“光り物”に惹かれる種も多い。
この世界では最強種の一角でもある“ドラゴン”も、こうした“光り物”を収集する癖がある。
こうした形質を、鬼人族も持ち合わせており、なおかつ持ち前の手先の器用さもあって、そうした物を自分達でも作る様になっていったのである。
つまり、鬼人族にとっての『金細工』は、“強さ”と結び付いたものなのである。
逆に言えば、“光り物”以外の単純な『加工技術』の高さや職人的な技に対する興味は薄い傾向にあるのである。
アベルが光る石には興味を示していたが、その正体が“魔素”を内包した魔石、つまりパッと見はただの石であった事にガッカリしたのはこうした事もあったのである。
まぁ、それはともかく。
「それじゃ、目的の物も見れた訳だし、そろそろ帰ろうよぉ〜。」
あいかわらずルンルンでアルと戯れていたヴェルに、フリットはそう声をかけた。
アベルも今度は、その意見に反対しなかった。
「あ、ちょっと待ってっ!とりあえず、何個かは収集しとおきたいからさっ!」
「あーうーっ!」
「あ、アルも欲しいのかい?じゃ、ちょっと待っててね。」
それをキッカケとして、ヴェルも急いで魔石をいくつか掘り出しにかかる。
空を見れば、もうすぐ日が暮れる頃合いだったからである。
流石に夜間は、いくら彼らと言えど危険であるから(野生動物と同様に、モンスターや魔獣は夜行性の種も多く、日中と夜間ではガラリとその雰囲気を変えてしまうからである。)、フリットの意見はもっともだったからであった。
「んじゃ、俺も記念に持って帰るかな。フリットはどうする?」
「僕はあんまり興味ないんだけど、まぁ暇だしね。一応、持って帰ろっかな。」
どこからかツルハシやスコップ、シャベルの様な物を取り出して本格的な採掘をしていたヴェルを横目に、アベルとフリットは、子どもらしく素手で魔石を掘り返していた。
その後、若干後ろ髪を引かれるヴェルを無理矢理言い聞かせて、彼らの住む“孤児院”に辿り着いたのは完全に日が落ちた後の事であった。
ちなみに余談だが、当然ながら無断で施設の外に出た彼らは、施設の職員達からこっぴどく怒られる事となった。
罰として、一週間ほどトイレ掃除を言いつかる事となったのである。
それには、半ば巻き込まれたフリットと、最初は乗り気だったが、“光る石”が思った様な物ではなかったアベルはウンザリした様子であったが、想像以上の成果を手に出来たヴェルと、まだ幼児故にそれが免除されたアルはあんまりダメージがなかった様であったーーー。
◇◆◇
「やあみんなっ!元気そうだねっ!!」
「あっ、マグヌスのにいちゃんだっ!」
「久しぶりぃ〜!」
アベル達の冒険から一週間ほどして、以前にセシリアが約束していた通り、彼女と共にマグヌスが“孤児院”に姿を見せていた。
なんだかんだ言って、彼は“子ども”という存在が好きなのか、最近は見られなかった満面の笑みを浮かべていた。
まぁ、『新人類』が特殊ではあるが、“子ども”という存在はまだまだ無邪気であり、少なくともマグヌスの『魔法研究家』達が彼に向ける様な、羨望と嫉妬心がないまぜになった様な仄暗い感情を持ち合わせていない事も、彼にとってはありがたかったのかもしれない。
まぁ、セシリアの手前、“子ども好き”をアピールしている可能性もなきにしもあらずかもしれないが。
一方のセシリアは、若干閉鎖的で、ある意味退屈な日々を過ごしている『新人類』に、また、最近は研究続きで、鬱屈とした日々を過ごしていたマグヌスにこうして笑顔が戻った事を微笑ましく見ていた。
やはり、互いに事情は違うまでも、誰かとコミュニケーションを取るという行為は、良い側面もあるのであろう。
「最近、ぜんぜん来てくれなかったじゃんか〜!」
「ごめんごめん。ちょっと研究で忙しくってね。」
「あっ、まぁ〜た変なモンでも見つけてきたんかぁ〜?」
「む。変な物とは失礼だな。」
「けど、マグヌスにいちゃんが見せてくれたモンって、いっつもろくでもない結果になってるよなぁ〜?」
「ま、まぁ、それについては否定しづらいんだけど・・・。」
マグヌスは、セルース人類の拠点から発掘してきた物を、最初はセシリアに、次に『新人類』に見せるのが通例になっていた。
やはり彼も、誰かに自慢したい思いがどこかにあるのだろう。
で、以前にも言及した通り、最終的にそれらは、ラテス族の『魔法技術』向上や新発明に繋がってはいるのであるが、反面、失敗も当然多いのであった。
特に彼が、張り切って見せようとすると、大抵失敗するのがいつものパターンである。
故に、セシリアはもちろん、『新人類』にとっても、彼が何かを見せてくれる=失敗、というイメージがついていたのであった。
「け、けど、今度のは凄いんだぞっ!もしかしたら、この世界の常識を覆してしまうかもしれないんだよっ!!」
「へぇ〜!」「ほぉ〜!」
実際に、マグヌスの発言は大袈裟なものではなかった。
現状この世界では、原動機以上の力は存在する。
『魔法技術』はもちろん、『精霊魔法』でも、もっと便利な力を扱う事が可能だ。
ただ、何度となく言及している通り、それはあくまで“使える”人だけが享受出来るものであり、この点が科学技術と違う点なのであった。
一方の原動機や、それを応用した“機械”というのは、もちろん扱い方を学ぶ必要はあるものの、それさえクリアしてしまえば、誰でも同じ事を再現する事が可能なのである。
以前にも語った通り、マグヌスの今の目標は、『魔法技術』を扱えない者達にも、それと同じくらい便利な生活にする事、であった。
そうした意味では、原動機の存在は、その第一歩になる事だろう。
・・・しかし、以前にも語った通り、今の現状では『魔法技術』無しにこれを動かす事は不可能である。
また、もう一つ、彼には致命的な弱点が存在していた。
「見せて見せて〜!」
「ああ、いいともっ!ジャジャ~ンッ!!」
マグヌスの発言に興味を抱いた子ども達から、そんな言葉が持ち上がる。
それに気を良くしたマグヌスは、若干大袈裟にとある“試作品”をお披露目した。
「何か、ヘンテコな物だねぇ〜・・・。」
「これが、ホントにこの世界の常識を覆す物なのぉ〜?」
「もちろんだとも。見てなよぉ〜。」
そう言うと、マグヌスはその“試作品”に電気の魔法を送り込んだ。
すると、原動機が回転し、それに取り付けられた羽根車から、風が引き起こされる。
そう、彼がお披露目したのは、送風機、あるいは扇風機であったのだ。
原動機の回転を利用した、至極単純ながらも、案外重宝する代物である。
しかし、
「おおぉ〜!!!」
「スゴい、風が巻き起こってるぜっ!!」
「ここからどうなるんだろぉ〜!」
「あ、いや、これだけ、なんだけど・・・。」
「「「えっ・・・?」」」
目を輝かせてそれを見ていた子ども達は、ここから何が起こるのかと期待に胸を膨らませていたが、すでに目的は達している。
当たり前だが、送風機、あるいは扇風機の役割は、人工的な風を生み出すだけの装置だからである。
もちろん、先程も述べた通り、これらは向こうの世界でも、特に夏場なんかは重宝する代物である。
あるが、『魔法技術』が身近な彼らにとっては、人工的な風を引き起こすだけの代物など、目新しさは皆無なのである。
この様に、彼にはプレゼン能力や“魅せ方”、というかセンスというものがあまりなかったのである。
「なぁ〜んだ。つまんね。」
「まだ、いつものバクハツの方が面白かったよねぇ〜。」
「風だったら、魔法でも起こせるしさぁ〜。」
「え?え?」
一気に興味を失った子ども達は、素直というか残酷というか、歯に衣着せぬ物言いをする。
まぁ確かに、そのアイテムのアピールをするなら、多少の演出、分かりやすく凄さを伝えるプレゼン能力も必須になってくるのである。
その点、マグヌスはそれを全く持ち合わせておらず、結果、子ども達の興味をひく事に失敗してしまった訳であった。
まぁこれは、マグヌスが原動機、つまり機構そのものの凄さを理解していた為であるが、一般市民や子ども達にとっては、内部のシステムがいかに優れているかとかは、正直分からないしどうでも良い事でもあった。
重要なのは、それで何を出来るか、の方なのである。
(そうした意味では、後の世にて『魔素結界炉』を応用して『農作業用大型重機』を作成したアキトは、それをお披露目する時にかなり演出にはこだわっていた。
彼は、プレゼンや演出の重要性を理解していたからである。
結果、それは分かりやすく人々に伝わったのであるが、ここら辺は、テレビやネットなどによって、そうした“魅せ方”や演出を何となく学んでいたからであった、という事もあるかもしれないが。)
「あ、そろそろおやつの時間じゃねぇ〜?」
「ああ、そうだね。」
「戻ろう戻ろう。」
「あ、いや、ちょっと。君達〜?」
「・・・。」
別の話題に興味が移った子ども達は、すでにマグヌスの事も忘れてさっさとその場を立ち去ってしまった。
それに困惑するマグヌスに、苦笑していたセシリア。
子ども達を夢中にさせるのは、意外と困難な事なのであった。
「何がいけなかったのかなぁ〜?」
ポツンと残されたマグヌスはそうひとりごちた。
原動機や送風機、扇風機は彼ご自慢の装置だっただけに、子ども達もきっと気に入ると思っていたのだろう。
「・・・多分、ただ魔法で再現出来る事をわざわざやったからじゃないですかね?それならば、魔法でいいじゃん、ってなっちゃいますし。」
「ん?」
だが、中にはその装置そのものに興味を抱く子どももいた。
誰あろう、例のドワーフ族のヴェルと呼ばれた少年であった。
「君は?」
「あら、ヴェルモンド。それにアベルにフリット、アルフォンスも。」
「こんにちは、セシリアセンセイ。それにマグヌスさんも。」
「あ、ああ。」
歳の割に利発そうなヴェルに、マグヌスは呆気に取られながらも何とかそう返事する。
「いや、けど実際その通りじゃねぇ〜?まぁ、俺らの中じゃ、魔法が使えんのはアルだけだけど、風を起こすだけなら、魔法で事足りる訳だしよぉ〜。」
「だぁ~だぁ~。」
「ちょっ、アベル、失礼だよっ!」
その後ろから、アベル、アル、フリットも顔をのぞかせた。
どうやらこの4人組は、いつも一緒に行動している様である。
(ちなみに、ラテス族の扱う『魔法技術』は、学びさえすれば誰でも習得可能なのであるが、しかし、種族特性によっては、向き不向きがあるのである。
鬼人族は、“魔素”を利用した身体強化に高い適性がある一方で、通常の魔法が不得手であった。
また、ドワーフ族もその傾向にあるが、もう一段応用的に物に魔法を付与する技術、“魔工”を得意としている。
獣人族は、その種によってそれぞれ異なるが、“魔素”を利用した特殊技能に定評があった。
ヴィーシャの得意とする“幻術”などがその例である。
そうした意味では、純粋な『魔法技術』に適性があるのは、エルフ族のアルだけなのであるが、こちらも“精霊魔法”という特殊技能があるので、実はラテス族の扱う『魔法技術』を習得している『新人類』はいなかったりする。
これが後に、“他種族・異種族”に対抗する為に、人間族が『魔法技術』を武器としていった事にも繋がるのであった。)
「や、やっぱりそうなのかなぁ〜・・・?僕はいけると思ってるんだけど・・・。」
率直な感想を言うアベル達に、マグヌスは自信を喪失させそうになってしまう。
「いえ、そんな事はありませんよ。この機構自体は素晴らしい物です。おそらくですが、この応用範囲は、極めて高いと思いますよ。」
「あっ、分かるっ!?」
だが、ヴェルの一言にアッサリ持ち直したマグヌス。
これぐらい単純でなければ、天才は務まらないのかもしれない。
「ええ、もちろんですっ!これを見た瞬間、僕の創作意欲が刺激されていますからねぇ〜。」
「ふむ・・・。どうやら君は、“こちら側”の人種の様だねぇ〜。」
“物作り”という共通の趣味、興味を持つマグヌスとヴェルは、一瞬にして意気投合する。
やはり“オタク”同士、惹かれ合う運命にあるのかもしれない。
「ただ難点を言えば、これを動かすのに『魔法技術』を使っていた点ですよねぇ〜。仮に自動で動かす事が出来れば、非常に面白いと思うのですが・・・。」
「それは僕も思っているんだよねぇ〜。けど、そんな都合の良い物なんか中々なくて・・・。」
「それだったらさ。例の『光る石』を使えばいいんじゃねぇ〜の?」
「っ!?ナイスだ、アベルッ!」
「???・・・『光る石』?」
“オタク”同士の会話を、聞くともなく聞いていたアベルから、何気なくそんな意見が上がった。
もちろん、脳筋故に彼は深く考えての発言ではなかったのだが、その事がキッカケとなって、マグヌスの発見が大きく飛躍する事になるのであったーーー。
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