裏切り
続きです。
◇◆◇
ソラテスらは『エストレヤの船』を改造し、“擬似霊子力発生装置”を完成させ、更には人工的な“神化”の実験に成功していた。
ただ、“能力者”達に対抗する為の手段であったそれらは、逆に彼らにとっても内部崩壊の危機をもたらす可能性があった為、誰を人工“神化”させるかが問題となったのである。
もっとも、それらはマギの提案によって、グループや派閥を超えた所謂“超党派”、ソラテスの考えに真に賛同する者達を集めた“連合チーム”を結成する事で、一応の結論が出た頃、一方の“能力者”達も、順調に“パワーアップ”を果たしていたのであったがーーー。
・・・
「成功率は8割、といったところか・・・。」
セレウスはもちろんの事、無事にハイドラスも限界突破の試練をクリアしていた。
だが彼は、若手“能力者”達のリーダー格でもあったので、試練が終わればそれでおしまい、という訳にはいかず、上がってきた報告書を眺めながら、軽く溜息を吐いていた。
ハイドラスが見ていた報告書は試練の成功率を示すものであった。
つまりは、無事に8割の者達がセレウスやハイドラスと共に試練をパスしたのであるが、逆に言えば2割の者達は失敗し、ネモが初めから示していた通り、その命を落としていたのである。
もちろん、彼らも覚悟の上であったし、試練の難易度から言えば、むしろ上出来も上出来の部類なのである。
ここら辺は、ネモによる忖度、つまりは、なるべく多くの者達を“パワーアップ”させて、言い方は悪いが、使える駒を確保する狙いがあった為であった。
むしろ、そうした忖度なしに試練を刊行していたとしたら、その成功率の数値は真逆になっていた事だろう。
それほどまでに、本来は限界を超える、という事は非常に難しい事なのである。
それは、ハイドラスも重々承知していた。
しかし、直接試練に加わらなかったグループからしたら、やはり貴重な戦力の損失であるし、彼らからすれば、ハイドラスの責任を問う声があったとしても不思議な話ではないのだ。
ここら辺は、ソラテスらの方でも見られた事ではあるが、ある種政治的な話、かつ、現場と上層部の温度差、みたいなものが存在したのであった。
「・・・苦労してる様だな。」
「セレウスか・・・。まあな。じいさん達を納得させられる為の“言い訳”が難しくてなぁ〜。」
愚痴の様なハイドラスの言葉に、セレウスは苦笑いをする。
人というのは、自分の事は棚に上げて、他人には厳しい要求をするものだ。
先程も述べたが、ハッキリ言って、この結果は上出来も上出来の部類なのである。
しかし、上の者達からしたら、失われた2割の方に目が向いてしまって、そこに突っ込んでくる事は火を見るより明らかなのである。
“何で2割も損耗しているのか?”
“他に手立てはあったのではないか?”
と。
そもそもの話として、“能力者”達は絶対的に数が少ない。
故に、科学者グループや他のセルース人達に対抗する為には、単純に数を増やすか、一人一人の戦闘能力を増大させる必要があったのである。
もちろん、数を増やす事は実質的には不可能であるから、結局は“パワーアップ”という方法しかなく、しかも、圧倒的不利な状況を覆す為には中途半端な“パワーアップ”ではなく、まさしく劇的な進化をする事が求められたのであった。
しかし、当然ながらその為には代償が必要となる。
その為の、“命懸け”なのであった。
故に、この結果はある種当然の帰結だ。
簡単ではない事は分かりきっていた事なのだから、その過程で被害が出る事などは。
故に、本来ならば、責められるいわれがないのがハイドラスの本音であろう。
まぁ、他の連中の言い分も彼は分かるのだろうが。
「ま、それはそれとしてだな、ハイドラス。実は、かなり珍しいお客さんが来てんだわ。」
「・・・む?」
突如話題を変えたセレウスに、ハイドラスは一瞬身構えた。
まさか、他の“能力者”グループが訪問したのではないか?、と思ったのである。
今の話の流れからすると、そう思ったとしても不思議な話ではないだろう。
しかし、ここに現れたのは、ハイドラスにとっても、そして“能力者”グループ全体からしても非常に意外な人物だったのであった。
「お忙しいところ失礼しますわ。」
「っ!!!???ま、まさか、アスタルテ・キャンベルッ!?」
「あら、意外ですわ。私の事をご存知なんですね?」
意外な表情をした老齢に差し掛かってはいたが、その美貌は少しも衰えていない女性があっけらかんとそう述べる。
いや、その表情にはどこか憂いを帯びており、若干やつれた印象はあったのだが。
当然ながら、ハイドラスは彼女の存在を知っていた。
以前にも言及したかもしれないが、いくら同じセルース人だと言っても、移民船団として共にこの惑星にやって来た仲間だとしても、その数は膨大であるから、一人一人が顔見知りではないのである。
故に、普通に顔も知らない人々同士も存在するのだが、しかし彼女、アスタルテ・キャンベルは、科学者グループの中でも重要ポジションを担っていた女傑である。
故に、むしろ彼女を知らない方が、“能力者”グループの中でも珍しいほどであった。
もっとも、以前ソラテスに言っていた事がそのままブーメランで刺さるのだが、昨今の彼女は、研究に明け暮れていた影響で、時流に疎い傾向にあったので、自身の注目度を低く見積もっていたのであるが。
「もちろん存じておりますよ。遺伝子工学の権威にして、科学者グループの中でも重要なポジションを担っている方ですからね。むしろ、セルース人の中では、貴女を知らない人の方が稀かもしれませんよ?」
「そうですか・・・。いけませんね。私も、いつの間にか世情に疎くなっていた様ですわ。」
「・・・して、実質的には科学者グループのNo.2である貴女が、一体私達に何用でしょうか?・・・まさか、我々“能力者”グループと、あなた方科学者グループを中心としたセルース人達とが、実質的に対立している事すらご存知でない、なんて事はないかと思われますが?」
ハイドラスは、皮肉交じりにまずそう牽制した。
いくら時流に疎いといっても、その事を知らない筈はない。
ならば、彼女の訪問は、ある意味“能力者”側からすれば警戒して然るべき事柄でもある。
何故ならば、これは、ある種のスパイ行為に等しいからである。
“敵さんが何の用だ?”
そうハイドラスが暗に述べている事は、流石にアスタルテも理解出来た。
「もちろん分かっておりますわ。それに、あなた方が私の訪問を歓迎しないだろう事も、ね。けれど、私にも事情がありましてね。どうしてもあなた方の力をお借りしたいのですよ。」
「・・・ふむ。」
「・・・。」
ハイドラスは、改めて値踏みする様にアスタルテを見る。
アスタルテも、臆する事なく、真正面からその視線を受けた。
・・・どうやら、嘘は言っていない様だな。
ハイドラスはそう判断した。
と、言うか、以前から直感だけで言えばハイドラスを凌ぐほどの鋭さを持っていたセレウスが(しかもすでに限界突破を果たして、その“勘”がすでに神懸かり的なレベルに到達している。)、特に何の警戒もせずに彼女を通した事からも、自分達の知らない何かが進行している事の証左でもあるが。
「では、詳しく事情をご説明頂いても?」
「もちろんですわ。」
その為ハイドラスは、まずは彼女から詳しく事情を聞く事とするのだったーーー。
「人工“神化”に“擬似霊子力発生装置”、ですか・・・。」
「・・・それに、『新人類創造計画』とはねぇ〜。」
「ええ。」
かいつまんで一通りの事を説明し終えたアスタルテに、ハイドラスとセレウスはそう反応していた。
当然ながらこれは、科学者グループ側にとってはトップシークレットである。
もちろん、“能力者”グループとて、相手方の情報収集に努めていたし、今や限界突破を果たしていた彼らならば、実は『世界の記憶』や、更に深度の深い『アクエラの記憶』にアクセスする事も可能なのだが、残念ながらそれを意識的に扱う術はまだ持っていなかったのである。
(それを、無意識的に“勘”という形でセレウスが扱っている程度である。)
当然ながら科学者グループとて情報規制に努めているので、これらはこの時点の“能力者”グループは知り得ない情報だったのであった。
と、言っても、実は『新人類創造計画』については、彼ら“能力者”グループが封印状態以前から進んでいた計画だった為、彼らはその事については承知していたのだが(と言うか、彼ら“能力者”グループが本格的に科学者グループを打倒しようとした根本的な原因でもあったのだが)。
「ほとほと科学者っつー生きモンは、自身の興味や利権を優先する生きモンだよなぁ〜?」
「・・・返す言葉も御座いませんわ。」
セレウスの皮肉交じりの言葉に、アスタルテは自嘲気味にうつむいてそう反応を返した。
ハイドラスも思うところがあったので、あえてセレウスの発言を止める素振りを見せなかったが、しかし、素直にアスタルテがそう認めた事を少し意外に思っていた。
「ところで、それってあなた方の立場から言えば、かなりの、いえ、おそらく誰にも知られたくないほどの最上位の機密だと思われますが、何故私達にその様な情報を開示したのでしょうか?」
「・・・。」
なのでハイドラスは、どうして彼女ほどの立場を持つ人間が、今更こちら側に有利となる情報をリークしたのかを問い掛ける。
もちろん、まだこの時点では、ハイドラスは彼女がスパイ行為や、それに類する任務を担っていた事を疑っていた事もあるのだが。
「・・・私が言えた義理ではないのでしょうが、彼らの暴走を止めて頂きたいからです。」
「ハッ、暴走?俺から言わせれば、アンタも充分に奴らと同罪だぜ?いや、むしろ、この惑星の支配を企んでいた、って方がまだ可愛げがある。その中でもアンタは、“ヒト”として一番やっちゃいけない事をした。生き物の!生命を!!弄んだんだよなっ!?」
「・・・・・・・・・。」
以前にも言及した通り、ハイドラスやセレウスは直接的には被害を被ってはいなかったが、しかし彼らの祖先、父や母、祖父や祖母の世代の“能力者”達は、“セルース人類の存続の為”、という御題目のもと、非人道的な扱いを受けていた過去がある。
それ故に、特にセレウスは、元々“科学者”という生き物に嫌悪感を抱いていたのだ。
もちろん、今現在生存している科学者グループが、その当事者であった訳ではない。
しかし、過去の歴史同様に、この惑星にやって来てからのあれこれを鑑みるに、セレウスの中では“科学者”という存在そのものが、とても信用の置けない存在だという立ち位置になっていたのであった。
やや感情的な発言をしたセレウスを流石に視線で制したハイドラスは、アスタルテに改めて向き直った。
「貴方がおっしゃる事は正しい。そして私は、今になってようやく、自分がいかに愚かな行為に手を染めていたのかに気付いたのですよ。」
「っ・・・!」
「セレウスッ・・・!」
「・・・フンッ!」
「失礼。続けて下さい。」
「・・・。」
マギによる洗脳によって、ソラテスやアスタルテだけでなく、“能力者”以外のセルース人類は、ある特定の事柄に対するハードルが意図的に下げられていた。
すなわち、倫理観や常識の壁が、非常に低くなっていたのである。
何故この様な事を仕出かしたかと言うと、これも以前語った通り、マギは『支配者』側の“アドウェナ・アウィス”が遺した人工知能だからであり、彼、あるいは彼女の使命は、“アドウェナ・アウィス”の意志を受け継いで、他種族、異星人を支配する者達を導く事だからでもある。
ただその為には、ある種“ヒト”としての良識の部分、他者に対する慈しみや配慮といった感情は邪魔でしかない。
それ故に、その部分を薄れさせる目的で、洗脳という行為に及んだのであった。
(もっとも、こちらも以前から言及している通り、あくまでセルース人類の自由意志は尊重していたので、人格そのものを書き換えた、とも言い難いのであるが。)
こうした事もあり、また惑星環境の保全、という名分もあって、この惑星の“支配”はともかくとして、“管理”という名の下に、実質的なアクエラ人類の支配に舵を切り、そしてその事に対して、何の疑問も抱かない様になってしまったのであった。
また、その過程で生じた、様々な計画なんかに対しても、その洗脳が上手く作用していたのだ。
アスタルテも、当然ながらそうした洗脳によって、自分のやっている事が悪い事ではない、と思い込まされていた、あるいは思い込んでいた。
しかし皮肉な事に、彼女は自身が産み出した存在と、その彼らの境遇を目の当たりにして、ようやく自分が何をしていたのかを悟ったのであった。
(言ってしまえば、ある意味洗脳が解けた、と言う事である。)
「本来、『新人類創造計画』は、私達の“新たなる器”を育成する為の計画でした。私達は年を取りすぎた。このままでは、そう長くない内に、自分自身の寿命が尽きてしまいますからね。その為に、魔素に高い耐性を持ち、頑強で優秀な肉体を持つ存在を産み出そうとしたのです。」
「「・・・。」」
「もちろん、それ自体も非常に非人道的な行為ではあったと思います。結局のところ『新人類』は、私達に利用される為だけに産み出された訳ですからね。しかしそれでも、まだ“ヒト”として生きる未来はあった。少なくとも、私達の“器”として選ばれなかった者達は、自分自身の人生を謳歌出来る可能性がありましたからね。」
アスタルテの吐露に、言いたい事はあったが、それでもいちいち突っ込んでいたら話が進まないので、あえてハイドラスとセレウスは言葉を遮る事はしなかった。
「ただ、あなた方“能力者”グループは反逆した事で、状況が一変しました。それらの計画は一旦見直されて、新たなる計画に移行してしまったのです。」
「それが、人工“神化”と“擬似霊子力発生装置”、か・・・。」
「ええ。もちろん、本来はあなた方を放逐した事で、元々の筋書きに戻る予定でした。が、そこであなた方が遺産を見付けた事で、ソラテスらはありえない決定を下したのです。」
「私達の“パワーアップ”に対抗する為、ですね。」
「ええ。彼らの最優先事項は、あくまでこの惑星を管理、いえ、支配する事です。その為には、あるゆる手段が肯定されます。いえ、それについて、何の疑問も抱かない様にされていたのですね。」
「マギによる洗脳の効果か・・・。反吐が出るぜ。」
「私もそう思います。もっとも、私は、私の子供達が、“ヒト”としてではなく、ただの“燃料”となってしまった事で、初めて自分達の愚かさに気が付いた訳ですが・・・。」
「「・・・。」」
残念ながら、アスタルテには子供が存在しなかった。
いや、本来ならば、何事もなくこの惑星に入植していたならば、女性としての新たなるステップ、家庭を持って、家族を持つ未来もあったのかもしれない。
しかし、それはついぞ叶わず、老齢に差し掛かる年齢まで独り身を貫く事となり、研究に明け暮れる事となってしまった訳であった。
しかし、その中にあって、『新人類創造計画』によって産み出された存在達が、ある意味では彼女にとっての子供の様な存在として彼女の中で大きくなっていったのである。
彼女の持つ、女性としての母性の部分が、科学者としての部分を上回った結果かもしれない。
親が、特に母親が子供達に向ける愛情は時に非常に深い。
そんな彼女の目の前で彼女の子供達が、一人の“ヒト”としてではなく、ただの使い捨ての“燃料”の様な境遇となったとしたら、それは当然ながら大きな不満となって爆発する事だろう。
「もちろん、私とてそれには反対しました。しかし、私一人の意見など、もはや一度形作られた流れに逆らう事など不可能でした。結果私は、あらゆる計画から外されて、冷遇される事となってしまいました。」
「・・・まぁ、“組織”として考えた場合、自分達の意に沿わない人材など、要職にいて欲しくはないでしょうからね。」
「それは私とて理解出来ます。しかし、だからと言って、もはや私に引き下がる理由はありません。すでに私の心は開放されており、彼らの考えには賛同出来なくなっていますからね。」
「・・・それで、こちら側にやって来た、と?」
ハイドラスの言葉に、コクリとアスタルテは頷いた。
「あなた方からしても、科学者グループがこれ以上の力を持つ事は脅威以外のなにものでもないでしょう。そして私からしたら、子供達を開放して貰える希望は、もはやあなた方しかいなかった訳です。」
「・・・なるほどな。」
「要職を外されたとは言えど、私は様々な機密情報を持っています。あなた方にとっても、私には利用価値があると思われますが?」
「「・・・。」」
話を聞き終えたハイドラスとセレウスは、しばし黙考した上で「失礼」と言ってその場を一旦退席した。
「・・・どう思う、セレウス?」
「・・・気に食わねぇ〜が、嘘は言っている感じはしなかったぜ。」
「・・・そうか。」
ハイドラス達からしたら、このタイミングで科学者グループを裏切り、こちら側にやって来たアスタルテは警戒すべき対象である。
裏切ったと見せかけて罠にハメる事など、戦略としてはある種常識でもあるからである。
アスタルテの言葉を真に受けて作戦を立案し、結果一網打尽にされてしまっては目も当てられない。
彼らが警戒するのも当然であろう。
しかし、散々アスタルテに対する不信感を抱いていたセレウスの口から、「嘘は言っていない」という言葉を受けて、ハイドラスは考え方を改める。
以前から言及している通り、セレウスの“勘”はハイドラスも信頼を置いているし、限界突破を果たした今の彼は、その精度がもはや神懸かりなレベルであるからである。
故に、アスタルテには何の裏もなく、心底子供達の身を案じてそれを開放してくれる唯一の可能性である“能力者”グループを頼っただけ、という風に判断する事が出来たのである。
しかし、頭の回るハイドラスは、だからアスタルテを受け入れる、という単純な判断にはならず、更にその裏を読んでいた。
「・・・しかし、仮に彼女が“シロ”だったとしても、少々気になる点もある。」
「・・・それは?」
「彼女の話を信じるなら、今は要職を外されて冷遇されている事となるが、それでも彼女ほどの重要ポストに就いていた者が、アッサリとこちら側に来れるのは違和感があるんだよ。」
「・・・確かにな。奴らからしたら、機密情報を持っている奴が裏切ったら、情報の漏洩に繋がる訳だしな。」
「ああ。だから、彼女自身は嘘は言っていなくても、実は彼女をあえて泳がす事によって、罠を巡らせている可能性も考慮すべきではないかな?」
「ま、ありえん話じゃないわな。」
そうなのだ。
科学者グループ、というかソラテスからしたら、いくら計画に反対したからと言っても、それでアスタルテを放逐する事など悪手も悪手なのである。
様々な機密情報を握っている彼女は、容易に科学者グループの弱点となるからである。
故に、彼女の行動は監視されている、と考えるのが自然であるし、本来ならば、敵勢力である“能力者”グループと接触する事自体、ありえない話なのである。
しかし、それが今実現している事から鑑みても、その状況を逆に利用しているのではないか?、と考える方が自然なのである。
だが、
「・・・じゃあ、彼女にはお帰り頂くか?」
「・・・いや、そういう訳にも行くまい。どっちにせよ、彼女の持つ情報は貴重だ。それに、そうと分かっているならば、更に相手の裏をかく事も可能だしな。」
ニヤリと笑い、ハイドラスはそう結論付けた。
科学者グループ、ソラテスらには残念な事に、セレウスの“勘”が神懸かりレベルに到達しているのに対して、ハイドラスも今や神懸かりなレベルの頭脳を有するに至っていたのである。
故に、どれほど小細工を仕掛けたところで、もはやそれは通用しなくなっていたのであったーーー。
「とは言え、私達の一存で決められる事でもないだろう。とりあえず彼女はこちらで保護するとしても、じいさん達に説明する事が更に増えた事になるなぁ〜。」
「・・・お疲れ。」
当初とは別の問題が増えた事で頭を抱えたハイドラスに、セレウスは苦笑まじりに彼の肩をポンと叩くのであったーーー。
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