疑似霊子力発生装置
続きです。
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“能力者”が“アドウェナ・アウィス”の形質を色濃く受け継いだとは言えど、所謂“超能力”だけが彼らの特筆すべき点ではない。
むしろ、その他に類を見ないほどの高い知性や知力から生み出された技術力、科学力こそ彼らの持っている強みであろう。
以前にも言及したかもしれないが、科学技術の一番の利点は、“再現性が高い”事である。
例えば“能力”もそうだが、“スキル”などは、その個人の才能や力量などに依存する事となる。
これは魔法技術も同様だ。
同じ武術・技術を学んだとしても、使い手によってその強弱が現れるのはこの為である。
一方で、例えば電化製品などを想像すると分かりやすいが、スイッチ一つ入れれば、誰でも簡単に電気をつける事が出来る。
これが“火起こし”だった場合は、先程も述べた個人の技量などに依存するので、早い・遅いが出てくるし、上手い・下手も出てくるのである。
もちろん、それらを“上手く使いこなす”、となると、やはり差が生まれてしまうが、ただ“使う”場合はそれこそ子供でも出来る訳である。
この“誰でも同じ結果を示す事が出来る”事を、“再現性が高い”というのである。
この科学技術の“再現性の高さ”は非常に便利だ。
先程の例えで出した電気の様に、誰でも同じ結果をもたらせるならそこに技術は必要なくなるからである。
(技術、あるいはスキルは、当然ながらそれを習得する為にはそれなりの時間を用する。
その行程を、まるっと短縮出来るのが科学技術の強みなのである。)
これによって、本来ならば絶対に勝てないだろう武術の達人であろうとも(重火器などを用いれば)、素人がそれに打ち勝つ事すら可能なのであった。
まぁ、それはともかく。
つまり科学技術は、様々な現象を再現する事、とも言える。
ならば、科学技術によって、“能力者”の様な力を再現する事も可能なのではないだろうかーーー?
・・・
「お呼びでしょうか、マギ?」
〈お呼び立てして申し訳ありません、ソラテスさん。少々お話があったものでね・・・。〉
今や多忙の身となったソラテスが、わざわざない時間を作ってまで向かったのは、『エストレヤの船』や移民船団を統括する人工知能、マギと呼ばれた存在がいる一室であった。
もちろん、この人工知能は、セルース人達が乗ってきた宇宙船全体を統括しているので、それこそただ連絡事項を聞いたり伝えたりするのならば、わざわざこの場に赴く必要はない。
何なら、ソラテスらがこの惑星の拠点として建設した施設にいても、彼、あるいは彼女とコミュニケーションを取る事は出来るのである。
だが、それが分かった上でわざわざ旗艦である『エストレヤの船』の、ある意味最重要機密であるマギを保管している一室に赴いたのは、それこそ秘密の会話を交わす為であった。
(ちなみに、この部屋に入る事が出来るのは、保守・管理を担う技術者以外では、アクセス権限の高い者達に限定されている。
まぁ、マギはセルース人類にとって最重要機密なのであるから、それも当然と言えば当然であろうが。)
〈・・・実はマズい事になりました。〉
「マズい事・・・?」
早速本題に入ったマギに、しかしソラテスの頭には疑問符が乱立する。
現状で彼が知りうる限り、全ての事柄が順調に進んでいたからである。
もちろん、先の“能力者の反乱”は肝を冷やす事態ではあったが、それもセルース人類の大半をこちら側の味方につけ、結果彼らを追放する事ですでに決着がついている。
いくら“能力者”と言っても、いくら宇宙船の一部を与えたと言っても、この惑星では生き抜く事だけでも大変な環境だ。
それがまさか、短期間の内に自分達が苦労して生み出した『魔法技術』、『魔法科学』を習得し、ある程度自由に動ける状況となっていた事はソラテスにとっては想定外の事態だったのであった。
しかし、マギがマズい事態、と言った以上、自身にとっては想定外の事であったとしても、やはり“能力者”達が関連しているだろう事をソラテスは察していた。
「・・・もしや、“能力者”達がまた何かやらかそうとしているので?」
〈当たらずとも遠からず、ですかね。当然ながら、“追放”という処分は降したものの、彼らの事は私も監視下に置いていました。やはり“能力者”を侮るのは悪手ですからね。しかし、確かに彼らは想定外の速度でこちら側の技術を吸収したのは驚異的な事柄でしたが、しかし彼らの能力や知能を鑑みれば、これも想定内の事に過ぎませんでした。故に、そんな事でわざわざ貴方を呼んだのではありませんよ。〉
「・・・そうですか・・・。」
ソラテスは、内心ショックを隠せなかった。
と、言うのも、『魔法技術』や『魔法科学』は、彼や彼の仲間達が長い期間かけて築き上げた技術だからである。
もちろん、不思議な事に一度超えた高いハードルは、超えた者が現れた瞬間それに続く者達が現れるものだ。
それと同様に、一度築き上げた技術というのは、それを体系化するのは苦労しても、すでに出来上がった理論を習得するのはそれよりも短期間で済むのである。
まぁ、とは言えど、その程度であったのならば、“能力者”達が同じ土俵に立っただけに過ぎない。
彼らの力は脅威ではあるが、それでも圧倒的にソラテスらの方が数は上であるから、まだまだ優位性という意味ではこちら側に有利である事には変わりないのである。
だが、
〈問題となるのは、私達とは異なる思想を持った“アドウェナ・アウィス”の遺産が、この惑星に遺されていた事。そして、それらを“能力者”が発見、接触してしまった事です。〉
「・・・“アドウェナ・アウィス”・・・?」
〈・・・実はですね・・・〉
ソラテスは、ある程度マギの計画を理解していた。
その上で、彼、あるいは彼女の考えに賛同し、この惑星を、この惑星の人類や生物などをその管理下に置く事を良しとしていたのである。
これは以前にも言及した通り、セルース人達が自身の母星を(実質的に)失っているトラウマから来ている。
無茶な進化や発展を遂げると、この惑星も惑星セルースの二の舞いになる可能性を考えて、この美しい惑星の環境を保全する為、アクエラ人類や生物などをその支配下に置いて技術発展などをコントロールしようとしたのである。
確かに、一部の方面から見れば、彼らの行動はある種正しい側面もある。
現代地球においても、地球人類の急速な発展に伴って、惑星環境に多大な悪影響が出ている。
仮に早い時点でそれらを理解し、それをコントロールする事が出来れば、少なくとも環境破壊などの事態は回避出来るかもしれないからである。
しかし、当然ながらそれは傲慢な考え方でもある。
そもそもこの惑星はセルース人達のものではないので、他からやって来た者達が、“今日から俺らがこの惑星の支配者だ。お前ら俺らの言う事を聞け。”と言っているのに等しいからである。
故に、それに反発した“能力者”が、彼らに反旗をひるがえした状況なのである。
ここら辺は、どちらが良いとか悪いの話ではない。
科学者グループの主張する事もある意味正しいが、“能力者”グループの主張する意見も、またある意味では正しいからである。
ちなみに、ソラテスも惑星保全の為にマギに賛同してはいるが、これはアクエラ人類の為というよりは、生物学者である彼が、現地の生物の保全を考えた末での事であった。
もちろん、マギの洗脳によって、ある程度の倫理観や道徳観が薄れてしまった事もあって、彼にも支配欲がなかった訳ではないのであるが、それよりも自身の興味や知識欲の方が勝っていたのであった。
まぁ、それはともかく。
そんな訳で、ソラテスはマギの目的の本当のところは理解していなかったのである。
それが、ついにマギの口から、“アドウェナ・アウィス”の単語が出た事で、この場に初めてその事を知ったのであった。
「・・・なるほど。この宇宙には、過去にその様な存在がいたのですね・・・。」
〈ええ。ですが、今はその事は置いておきましょう。実質的に彼らは、すでに存在しないものと同じですからね。ただ、その彼ら遺した遺産の方が、ここでは重要な話となります。〉
「・・・ふむ、確かに。」
〈ちなみに、私も、より正確に言えば、私のもととなった人工知能や遺跡も、“アドウェナ・アウィス”が遺した遺産の一つです。それと、当然ながらこの惑星の事は私も調べていましたが、やはり同じ“アドウェナ・アウィス”が築いた事もあって、他の“アドウェナ・アウィス”の一派が遺した遺跡がある事を察知出来ませんでした。そうと分かっていれば、“能力者”を追放する、などという判断には至りませんでしたよ。〉
「・・・なるほど。」
驚異的な技術力を持つマギと言えど、流石に同程度の技術力を持つ存在ならば、彼、あるいは彼女の目を誤魔化す事も難しい話ではないだろう。
ソラテスは、そう判断していた。
「ある程度お話は飲み込めましたが、それで、具体的にはそれの何がマズいのでしょうか?」
もちろん、ソラテスとてマギの有用性を理解している。
故に、“能力者”がマギと同レベルの“何か”を手にするのは、厄介極まりない事である事は理解出来た。
しかし、それだけだ。
“何かヤバいんだろうなぁ〜。”とは朧気ながらに理解出来ても、具体的にどうヤバいのか理解出来なければ、ソラテスとしても対処のしようがないのである。
〈そうですね・・・。もちろん、向こう側も私が監視している事は察知していますので、私とて詳細に分かっている訳ではありませんが、どうやらその遺跡には、“能力者”をパワーアップする仕組みが組み込まれている様ですね。〉
「パワーアップ・・・?」
ソラテスは、マギの言葉をそのまま繰り返した。
確かにそれは、マズい事態だ。
ただでさえ“能力者”は厄介な力を持っている。
それが、更には力を増せば、当然こちらの脅威となる事は目に見えていたからである。
しかし、続くマギの言葉に、ソラテスは肝を冷やす事となった。
〈いえ、もしかしたらそんな生易しいものではないかもしれませんね。そもそも“能力者”の力、簡単に言えば“超能力”ですが、は、元々“アドウェナ・アウィス”が持っていた力なのですよ。それが、セルース人類と混血する事によって、一部の“能力者”達に受け継がれたのですね。〉
「・・・ふむ。」
〈つまり、“能力者”達は、ある種の先祖返りなのです。ただし、世代を重ねるごとに当然血は薄れてしまいますから、“能力者”の力は“アドウェナ・アウィス”には遠く及びませんでした。これまでは、ですが。〉
「・・・?」
〈もちろんそれだけではないのですが、何故ならば、“アドウェナ・アウィス”は知能においても技術力においても非常に発展していましたからね。しかし、彼らの特徴として、非常に強力な不思議な力も扱えたのですよ。〉
「・・・それが、“能力者”達の様な力、という事ですよね?」
〈いえ、確かにカテゴリーとしては同じなのですが、その規模は段違いです。セルース人達の“能力者”の力は確かに脅威ではありますが、しかし一般人には成し得ない事が出来る程度です。ですから、数さえ揃える事が出来れば、まだ対処のしようもある。しかし、“アドウェナ・アウィス”が操る力は、それこそ自然災害のレベルでなのですよ。〉
「なっ・・・!?」
〈もちろん、セルース人達は、ある程度自然災害を克服してはいますが、しかしそれも、準備などがあって初めて対処出来る事でもある。もし仮に、それほどの力を持った存在と準備もなしに対峙すれば、あっという間にあなた方は壊滅する事となるでしょう。〉
「・・・・・・・・・。」
そんなバカな。
と、ソラテスは思っていたが、同時に納得もしていた。
何故ならば、それなら“アドウェナ・アウィス”が様々な惑星を支配したのも腑に落ちるからである。
もちろん、マギも言及していた通り、その知能や技術力が高い事もあるだろうが、仮にそうした事が理解出来ないほど野蛮な種族が存在したとしたら、圧倒的な力の差を見せつける事によって、身分の上下ではないが、そうしたものを本能的に理解させる必要があるかもしれないからである。
そして“アドウェナ・アウィス”には、知能や技術力の他に、それほどのレベルの力があったとしたら、確かにこの宇宙を支配する事も不可能ではないだろうな、とソラテスは理解したのだ。
「・・・つまり、そのパワーアップを果たしたとしたら、“能力者”達もそのレベルの力を扱う事が可能となる、と?」
〈確証はありませんが、おそらく・・・。〉
「なるほど・・・。」
確かにそれは、正しくマズい事態である。
仮にその力がソラテスらに向けられなかったとしても、力を持っているだけでも“能力者”達に優位な状況となる。
そうなれば、相手の条件を飲むしかなくなる。
でなければ、その力が、自分達に牙を剥くだけの事だからである。
さて、困った事になった。
ソラテスは頭を抱える。
だが、続くマギの言葉に、ソラテスの不安が即座に解消する事となった。
〈・・・ただ、先程も述べた通り、準備さえすれば、それらに対処する事は可能ですよ。〉
「へっ・・・?」
その言葉に、思わずソラテスは間の抜けた表情を浮かべてしまう。
〈失礼。色々と不安を煽ってしまいましたが、状況を正しく認識してもらいたかった為でして。仮にこのままあなた方が何も知らずにいた場合、そうなる可能性があった、という事です。それに加えて、仮にその準備が上手く行かなければ、やはりこちら側の敗北は濃厚となる。それを回避する為には、緊張感と危機感を持って事に当たる必要がありますからね。〉
「ぐ、具体的にはどの様な方法なのでっ・・・!?」
マギのもっともな意見も耳に入らず、ソラテスは続きを促した。
マギは、そんなソラテスの態度に気を悪くするでもなく淡々と答える。
〈それは、こちらも強制的に覚醒すれば良いですよ。〉
「・・・・・・・・・はっ?」
〈先程も述べましたが、“能力者”達はその血を色濃く受け継いでいますが、同時にあなた方も当然ながら“アドウェナ・アウィス”の末裔なのです。ですから、方法によっては、彼ら“能力者”達と同じステージに立つ事は可能なのですよ。〉
「つ、つまり、我々も“能力者”達の様な、“アドウェナ・アウィス”の様な力を扱う事が出来る、と?」
〈ええ。ただし、それには、“能力者”達とは違い、気の遠くなる様な長い修練が必要ですし、場合によっては一生目覚めない可能性もありますがね。〉
・・・それじゃあダメじゃん。
ソラテスは、思わず心の中でそう突っ込みを入れた。
確かに、仮にソラテスらが“能力者”達と同じ様な力を扱う事が出来る様になれば、状況は五分五分に戻す事が出来るだろう。
いや、数の上での優位を鑑みれば、ソラテスらに圧倒的に優位となる可能性の方が高い。
ただし、その為には長い時間が必要であるならば、全く持ってお話にならない。
仮にマギの話を全面的に信用するとなると、すでに状況は差し迫っている訳だからである。
こちらの体勢が整う前に、あちらの体勢が整ってしまえば、当然ながら相手はこちらの事情など関係なしに攻撃を仕掛けてくるかもしれないのだ。
争いは、綺麗事ではない。
故に、勝つ為ならば、ある意味であらゆる方法が肯定されると思っておかなければならないのである。
〈もちろん、そちらはある種正規の方法に過ぎません。もう一つ、ある意味裏技的に覚醒させる方法もありますよ。〉
「・・・。」
ソラテスの心の中の突っ込みを察した訳ではないだろうが、マギはそう言葉を続けた。
「で、それはいかなる方法ですか?」
〈端的に申しますと、一人で出来ないのであれば、他の人の力を借りれば良いだけですよ。〉
「・・・ふむ、確かに。で、具体的には?」
〈その前に、先程省略した部分を少し補足しておきましょうか。先程は、“能力者”の力は“超能力”である、としましたが、本当は“魂の力”なのです。〉
「・・・“魂の力”・・・?」
唐突に更に抽象的な話が出てきて、またしてもソラテスは困惑する。
それを察してか、マギは簡単に続けた。
〈まぁ、小難しい理屈はともかく、そういうものだ、とでも理解して下さい。そして、であるならば、他人のそうした力を利用する事も、実は不可能ではないのです。と言うか、そもそもあなた方は、すでにその理論に独力で辿り着いていますよね?〉
「・・・?」
マギの言葉に、ソラテスは再び疑問符を浮かべた。
いきなり“魂の力”とか言われても、そしてそれを利用する方法があるなどと言われても、彼には心当たりが・・・。
「・・・・・・・・・あっ」
・・・あった。
〈お気付きの様ですね。そう。つまり、“霊子力エネルギー”の事ですよ。〉
「・・・。」
以前にも言及したが、『資源戦争』の果てに、セルース人類は夢のエネルギーである“霊子力エネルギー”を獲得していた。
これが画期的である理由は、もちろんある程度の資源は必要となるものの(当然ながら、各家庭、あるいは施設などでエネルギーを利用する為には、それなりにインフラ整備が必要となるからである。)、他の発電方法とは異なり、ある意味で元手が必要ではないからである。
(例えば、火力発電なら、当然ながら燃料が必要となるし、原子力発電も核燃料が必要となる。
もちろん、再生可能エネルギーもあるにはあるが、それらは不安定であるデメリットもあるし、宇宙に進出したセルース人類にとって、再生可能エネルギーと言えば、太陽光発電がメインとなる。
もちろん、宇宙では大気上とは異なり、太陽光発電が安定的に使えるメリットもあるが、しかし、逆に言えば大量のソーラーパネルが必須でもある。
ただでさえ枯渇していた資源を、更に大量に必要となると、やはりこれらも使えない技術と成り果ててしまう訳である。
その点、“霊子力エネルギー”は、元手となる“人”さえ確保出来れば、後は既存の施設を再利用する事も可能であるから、永続性や安定性、リサイクルの観点から、まさに夢のエネルギーだった訳であった。)
そしてこれは、“能力者”の力を解析して利用した技術でもある。
もちろん、それを“魂の力”と理解していた訳ではないが、理屈が分かっていなくても利用する例はいくらでもある訳だ。
それに、ある意味では、この惑星に辿り着くまでに、宇宙船の動力としてすでに充分過ぎるほどの成果も出している状況だった。
つまり、“霊子力エネルギー”が非常に便利、かつ応用性に優れたエネルギーである事は、すでに充分過ぎるほど理解していたのである。
〈あなた方も、すでに“エネルギー”として利用しているそれらですが、実はこれを応用すれば、あなた方を強制的に覚醒させる事も出来るのですよ。〉
「ふむ。なるほど・・・。」
確かにこれならば、先程の案よりかは現実味のある話であった。
少なくとも、すでに宇宙船というある種“霊子力エネルギー”を抽出する装置は存在するので、後はこれを応用する事で、パワーアップを果たした“能力者”達にも対抗出来る訳だからである。
しかし、ここでもう一つの問題点が浮き彫りとなった。
「まぁ、正直詳しい事は分かりませんが、つまり“霊子力エネルギー”を応用すれば、我々でも“能力者”達の様な力を持てるし、何なら彼らを討ち滅ぼす事もすら可能である、と?」
〈ええ、その通りです。〉
「なるほど・・・。お話は飲み込めましたが、しかしそれには問題点がありますよ?」
〈ふむ・・・。それは、“燃料”をどうするか、ですね?〉
「ええ。」
先程も述べた通り、“霊子力エネルギー”は、“人”が燃料となる。
宇宙船で移動する際は、“コールドスリープ”によって、眠ったまま燃料の素材となったので非常に効率は良かったのだが、しかしすでにこの惑星に到達し、セルース人達は次々と目覚めている状況であるから、再び強力な“霊子力エネルギー”を発生させる事は、実質的には不可能である。
もちろん、一般労働階級者達を騙して、再び“コールドスリープ”につかせる事が出来れば可能かもしれないが、それをすると新たなる火種を作るだけの事である。
つまり、セルース人達を使う訳にはいかないのである。
〈それならば問題はありません。アクエラ人達を使えば良いだけの話ですよ。〉
「え・・・?し、しかし、先程のお話だと、その“アドウェナ・アウィス”の末裔でなければ意味がないのでは・・・?」
〈それは少々誤解があります。当然ながら、“魂の力”は、生物、特に知的生命体なら誰でも持っているものです。もちろん、“アドウェナ・アウィス”と同じ遺伝子を受け継いでいるからこそ、“アドウェナ・アウィス”と同じ力を発揮する事が可能な訳ですが、その起爆剤、キッカケとなるものにまで、“アドウェナ・アウィス”の血は必要ではないのです。そして、特にあなた方は、現地のアクエラ人達に手を出さずとも、“人”を確保する術をすでに持っているの・・・。〉
「あっ・・・!そうか、『新人類創造計画』っ・・・!」
〈そうです。それを利用すれば、セルース人類とも既存のアクエラ人類とも争う事なく、スムーズに“霊子力エネルギー”を確保する事が出来るのです。後は、それを利用して・・・。〉
「“能力者”達にも対抗する手段を即座に確保出来るっ・・・!」
〈そういう事ですよ。〉
「ふむ・・・。」
ソラテスの中で全てが繋がった。
〈御納得頂けましたかな?では、仮にそれを“疑似霊子力発生装置”としますが、それの扱い方などを詳しくご説明致しましょう。〉
「よろしく、お願いいたします。」
こうして、今まさに試練を受けている“能力者”達に対抗する為、ソラテスは“疑似霊子力発生装置”の建造に着手した訳であるーーー。
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