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『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』  作者: 笠井 裕二
神話大戦
278/383

死の山 1

続きです。



□■□



“アドウェナ・アウィス”、ですか・・・。

これまた、何だか壮大な話になってきましたねぇ〜・・・。


ーそれについては否定しないが、ここではあまり関係のない話だ。我々としても、彼らには直接接触した事はないからね。重要なのは、我々セルース人類すら遥かに凌ぐ様な文明が存在し、その超技術が遺されていた事の方だろう。ー


・・・ふむ、確かに。

今更“神様”がどうとか、一々驚く事ではありませんでしたね。


しかし、それが本当ならば、ある意味納得も出来ます。


ー・・・と、言うと?ー


ずっと疑問に思っていたんですよ。

失われし神器(ロストテクノロジー)』と『神代の息吹(エイシェントメモリー)』の違いとは何か?、とね。


つまり、これまでの話から推察するに、『失われし神器(ロストテクノロジー)』の方は、あなた方セルース人類が魔素とあなた方の科学力を組み合わせた技術によって生み出した遺産だったのに対して、『神代の息吹(エイシェントメモリー)』の方は、その“アドウェナ・アウィス”が遺していった遺産の事だったんだ、とね。


それならば、僕からしたら『失われし神器(ロストテクノロジー)』の方も十分にとんでもない超技術でしたが、それを更に上回るトンデモ技術が存在した事も納得出来ます。

そもそも、あなた方セルース人類に文明を与えた種族が遺した遺産なんですから、それも当たり前の話なのかもしれませんがね。


ま、しかし、これもここではあまり関係のない話なんでしょうね。

彼ら“アドウェナ・アウィス”は、少なくともこの惑星(アクエラ)の“神話”の中では重要な立ち位置じゃない様ですし。


で、仮にその“アドウェナ・アウィス”が遺した遺産が『神代の息吹(エイシェントメモリー)』だとしたら、僕も体験した事を、セレウス様達も辿った、という事ですよね?


ーその通りです。その遺産の力は、“能力の覚醒“、つまり、ヒトとしての限界を()()()()()だったのです。ー



□■□



〈あなた方の”能力“とは、つまり”魂の力“です。ヒトは、『肉体』・『精神』・『霊魂』の三つの要素から成り立っているのですが、そのほとんどが、一番身近な『肉体』に引っ張られる傾向にある。ま、それも当然なのですがね。結局は、目に見えるモノが一番分かりやすいですから。だから、目に見える形の、それこそ肉体的・物理的強さの方に比重が置かれる事となる。ただ、そこから派生して、『精神』、つまりメンタルが意外と重要である、というところまでは比較的容易に到達するのですが、その先、『霊魂』にまでは、中々到達出来ないのが通常なのですよ。〉

「ま、そりゃそーだ。」


お互いに協力する事に合意した俺達は、引き続き人工知能(AI)からのレクチャーを受けていた。


「私達も、自分達が何故この様な”能力“を扱えるのかは分かっていませんからねぇ〜。」

〈もちろん、中には自力でその境地に到達した者達もいます。そうした者達は大抵、”預言者“とか”代行者“とか呼ばれ、特別扱いを受ける。何故ならば、彼らは、超常的な力を扱う事が出来たからですね。しかし実際には、これらは潜在的に誰もが扱える力でしかないのですよ。〉

「・・・それは、誰もが持っている“魂の力”だから?」

〈そうです。ただし、やはりそれを意識して制御出来るかどうかはまた話は別です。“アドウェナ・アウィス”はそれを誰もが扱えましたが、あなた方セルース人類は“アドウェナ・アウィス”との混血の末に、“アドウェナ・アウィス”の遺伝子を色濃く残したあなた方“能力者”でなければ扱えない力となってしまった。そして、そんなあなた方“能力者”と言えど、それを十全には扱えていないのが実情なのです。〉

「・・・なるほど。」

〈ただ、私の試練を見事クリアすれば、あなた方も“アドウェナ・アウィス”と同等レベルで“超能力”を扱う事が可能となるのです。〉

「その“試練”とは?」

〈簡単ですよ。一回死ぬ事です。〉

「「なっ・・・!?」」


衝撃的な人工知能(AI)の発言に、思わず俺らは声を上げてしまう。


〈まぁ、正確には、“仮死状態”なんですけどね。ただし、試練に失敗すれば、本当に死んでしまう可能性もあります。〉

「・・・なるほど・・・。いや、考えてみれば、それも当然の事、なのかな・・・?」


続く人工知能(AI)の言葉に、ハイドラスは納得の声を上げていた。


「・・・どういう事だ?」


一方の俺は、軽いパニック状態になりながらもハイドラスに説明を求める。


「・・・()も言った通り、私達の“能力”は、つまり“魂の力”な訳だが、しかしそれを意識して引き出す事は困難だ。何故ならば私達は生きていて、『肉体』や『精神』に縛られているからだ。しかし、“死”という状態であれば、少なくとも『肉体』からは解放される事となるから、『霊魂』というものを強く認識出来る状態となる。つまり、あえて死ぬ事によって、“魂の力”を真に解放する事が可能、という事ではないだろうか?ただし当然リスクは存在するから、一歩間違えればそのまま帰ってこれないんだろうけど。」

「・・・そういや、仲間の中には、死にかけて“能力”を開花した者達もいたよな・・・。それって、つまりそういう事か・・・?」

「かもしれないな・・・。先程()も言っていたが、“死”という極限状況や、『資源戦争』という人類存亡の危機、あるいは、“修行”による極限状況が、ちょうど同じ様な感じなのかもしれない。」

〈概ねその認識で合っています。つまりは“魂”や“霊魂”がどんなものなのかを理解出来れば良いだけなので、実際にはいくつかの選択肢が存在するのですね。ただ、厳しい修行による“解脱”にはあまりに時間がかかってしまいますし、それに、もしかしたら一生をかけても到達出来ない可能性もありますしね。更には、戦争などの極限状況は、あまりに大がかり過ぎて、意識して生み出す事も困難なのです。それに、影響があまりにも大き過ぎますしね。故に、当然リスクはありますが、“死”という極限状況が、もっとも手っ取り早く、かつ影響を最小限に留める方法なのですよ。〉

「失敗しても、最悪死ぬのは自分だけ、という事ですか・・・。」

〈ええ。〉

「ふむ・・・。」


パニック状態から帰還した俺は、フルで頭を回転し始める。


現状から鑑みれば、確かに俺らは数の上で圧倒的不利な状況にある。


もちろん、“能力”をフル活用すれば、一応戦いの体裁は保つ事はおそらく可能だが、それだと戦えても戦って勝ち切る事は出来ないかもしれない。


それにその場合は、この惑星(アクエラ)に多大な影響を与える事は、ほぼ間違いない事だろう。

少なくとも、美しいこの惑星の各地が、戦場と化す事はおそらく間違いない。


そこから鑑みれば、俺達のパワーアップは、是が非でも実現しておきたいところだ。


こちらに圧倒的な力があると分かれば、普通に考えれば相手方も考えを改めるだろうからな。


まぁ、コイツの説明からすれば、奴ら科学者達は、『支配者(ドミナートル)』の人工知能(AI)に操られている状況みたいだから、そうした冷静な判断力が期待出来ない可能性もあるが、しかし、戦力的に優位な状況となれば、最悪奴らを殲滅する事も可能だからな。


ただ、その為には、こちらもそれ相応のリスクを背負う必要がある訳か・・・。


上手く行けばパワーアップ。

失敗すれば死ぬ。


ある意味分かり易いが、流石にそれを即座に受け入れられるほど、今の俺達は覚悟がガンギマっていなかった。


「とりあえず、その件については、一旦持ち帰ってもいいんじゃないか?俺達だけで決められる事じゃないし、当然リスクもあるからな。俺はともかく、ハイドラスがいなくなると、俺達“能力者”グループの指揮に影響が出ちまうしよ。」

〈そうですね。私もここであなた方に無理矢理強制するつもりはありませんよ。〉


俺が、思った事をそのまま伝えると、意外な事に人工知能(AI)も俺の意見に賛同の意を示した。


「・・・いいのか?」

〈ええ。もちろん私としては、正直に言えば今すぐにでも“試練”を受けて欲しいところですが、私の立場的には『支配者(ドミナートル)』を止める事が最優先事項ですからね。しかし、覚悟もなしにあなた方に強制したところで、上手くいくものも上手くいかない可能性もありえます。それは、こちらとしても戦力が減る結果ともなりうるので、それならば、しっかりと考えた末で、覚悟を持って臨んで貰った方が良いだろう。というのが私の結論です。〉


続く人工知能(AI)の言葉にコクリと頷くと、ハイドラスは再び口を開いた。


「分かりました。どちらにせよ、今回はお互い偶発的な出会いでしたからね。一旦持ち帰って、仲間達と情報を共有したいと思います。その上で、再びこの場に戻って来る事としましょう。」

〈ええ、それが良いでしょう。では、私はあなた方の再訪を、心待ちにしています。〉


そう言うと、人工知能(AI)(宝玉)は再び沈黙する。

俺達はそれを確認すると、


「戻ろう。」

「ああ。」


と、その場を辞するのであったーーー。



・・・



結論から言えば、俺達の報告はかなり懐疑的な目を向けられる事となった。


そりゃそーだ。

俺だって、いきなりそんな神様やら何やらと壮大な話をされたら、コイツは頭がどうかしたのかと疑うところだからな。


しかし、俺ならともかく(というのも大変不本意ではあるが)ハイドラスまで大真面目にそんな事を主張するモンだから、仲間達も一笑に付す事も出来なかったのである。


それ故に、“試練”どうこうの前に、まず他の代表者達を引き連れて、例の遺跡を訪れる、という二度手間を踏む事となってしまったのであった。


いくら“能力者”って言っても、こうしたところは不便なものである。


ただその甲斐あってか、『解放者リベレイター』の人工知能(AI)(宝玉)と直接対話する事で、ようやく仲間達も俺達の主張が正しかったと認識した様であった。


ま、客観的に見ても、遺跡内部の技術力は、俺達セルース人達でも理解出来ない様なモンもゴロゴロあるからな。

神様云々はともかくとしても、俺達よりも数倍、あるいは数十倍進んだ文明が遺していったモンだと考えた方が自然だったのだろう。


と、こうした紆余曲折を経て、俺達は“試練”をどうするかを本格的に議論し始めたのであった。


で、そこで達した答えが、まずは若手の一部に臨ませよう、という事であった。


“能力者”と一口に言っても、当然ながらそこには老若男女、様々な世代の者が存在する。

もちろん、その力量は個人によって様々ではあるが、やはり肉体と同様に、より年若い方が伸びる傾向にあったのである。


人工知能(AI)の説明によれば、俺らの“能力”はすなわち“魂の力”であるから、本来ならば肉体年齢はあまり関係ない筈なのであるが、そうは言っても『肉体』に縛られている以上、どうしても『肉体年齢』や『精神年齢』に引っ張られる傾向にあるのだ。

歳を重ねると、経験や知識は高まるが、その一方で柔軟性などが失われる傾向にあるからであろう。


そんな事もあって、新しい試みに挑むのであれば、やはり若手の方がふさわしいだろう、という訳であった。


こうして、若手かつ人工知能(AI)に初めに会った事も考慮されて、ハイドラスと俺、そして、一部の将来有望そうな若者を中心としたグループが限界突破の試練を受ける事と相成った訳であるがーーー。



・・・



〈・・・試練を受けられるのですね?〉

「ええ。よろしくお願いいたします。」


その日俺らは、相当な覚悟の末に人工知能(AI)(宝玉)と対面していた。


それはそうだろう。

すでに俺らは、この試練の意味を知っている。


成功すればパワーアップ。

そして、失敗すれば死。


それでも、現状を変えるにはこれしかない。

そう腹をくくって、この場に立っているのだ。

生半可な覚悟じゃやってられない。


それは、人工知能(AI)(宝玉)にも伝わったのだろう。(っつか、今更だけど、コイツはどうやって物事を認識してんのかね?)

満足そうに瞬いた後、意外なセリフを吐いた。


〈結構。では、試練の場所までご案内いたしましょう。〉

「えっ・・・?ここで、その試練とやらを受けるんじゃないのか?」

〈いえ、この場はあくまで私の機能を集約している場所に過ぎません。もちろん、情報などの観点からも重要なのは言うまでもありませんが、試練を受ける施設ではないのですよ。それ故に、試練を受けられる場所は他に存在します。〉

「そうなのか・・・。」


覚悟を決めてきた俺らとしては、やや肩透かしを食らった感じである。

しかし、続いた人工知能(AI)の説明に、俺らは再び気を引き締める。


〈具体的に申し上げますと、とある山の頂上付近ですね。そこに、この惑星の龍脈を利用した大掛かりな施設が存在します。ただし、ただでさえ山というのはそれだけで登頂するのが大変な場所ではありますが、この惑星(アクエラ)には、あなた方の言うところの“魔獣”や“モンスター”が存在しますし、その山は、その中でも極めて強力な生物がひしめき合う場所でもあります。これは、おそらく彼らが龍脈の周辺は魔素が濃い事を本能的に知っているからかもしれませんね。この惑星(アクエラ)の生物にとっては、魔素は強さや進化の起爆剤ともなりうるものですから、それを求めるのも無理からぬ話です。ま、あなた方にとっては、迷惑極まりない話かもしれませんがね。〉

「・・・つまり、もう試練は始まっている、という事ですか・・・。」

〈そうですね。まずは辿り着かない事には始まりませんが、しかし、辿り着くだけでも困難な道です。それを経て、更に試練を受けてクリアしなければなりませんから、非常に大変なのはご理解頂けると思います。ま、今更それで尻込みする事はないかもしれませんが、ね。〉


人工知能(AI)(宝玉)の言葉に、俺らはコクリと頷いた。


「当然よっ!!」

〈・・・結構。〉

「しかし、お話は分かりましたが、とすればどうやってご案内頂けるのでしょうか?貴方(宝玉)を持っていくので?」

〈いえ、それには及びません。私の本体は、お察しの通りこの宝玉ですが、それとは別に、有機生命体としての身体を持っているですよ。あなた方のような存在とコンタクト自体を取るのはこの姿でも大した問題ではありませんが、共に行動するなどの場合は、そうした方が色々と便利ですからね。〉

「・・・なるほど。」


そう言うと、人工知能(AI)(宝玉)と俺らの間に、突如としてヒト型の存在が出現する。

今更何があっても驚かないが、本当に“アドウェナ・アウィス”は何でも有りなんだなぁ〜。


ま、正確にはコイツは、“アドウェナ・アウィス”が遺した遺産、なんだろうけど。


「お待たせ致しました。それでは、参りましょうか。」

「え、ええ。」


にこやかな表情でそう言ったソイツに、ハイドラスも若干戸惑いながらそう答える。


「ああ、それと、あなた方と行動を共にするなら、やはり“名前”がないと不便ですよね?では、私の事は、“ネモ”とでもお呼び下さい。」

「“ネモ”、ですか?」

「ええ。古代の言葉で、“誰でもない”という意味です。私は元々人工知能(AI)ですから、もっともふさわしい名前ではないか、と思いましてね。」

「なるほど・・・。では、その様に呼ばせて貰いましょう。」


・・・前からちょっと思っていたんだけど、案外コイツ、かなり人間くさい感じがするなぁ〜。

わざわざそんなひねった名前を名乗るくらいだし。


「では、改めて霊山までご案内致します。準備はよろしいですか?」


などと考えていると、人工知能(AI)(宝玉)、改めてネモがそう音頭を取る。


「おうっ!もちろんだぜっ!!」

「食糧や飲料水も多少用意してますからね。最悪、現地調達すればそちらも問題ないですし、いつでも行けますよ。」

「・・・。」


俺が単純に勢いだけで返事を返したのとは対象的に、ハイドラスは現状などをしっかり伝えつつ肯定した。

それにネモは頷き、改めて俺達は試練を受けるべく、目的地へと歩を進めたのであったーーー。



・・・



目的地の山は、地元原住民からは“死の山”と呼ばれる難所であった。

ネモの言う通りその山には、魔獣やモンスターの中でも特に強力な種がひしめき合う場所であったからである。


もちろんアクエラ人類の中には、科学者グループが接触した様な、魔素を効率的に運用する事で身体能力にプラスαの効果を発揮する技術力を持っている部族も存在する。

しかし、同じ“ヒト種”としてはあまり認めたくないのだが、少なくともアクエラ人類は、今現在ではこの惑星(アクエラ)の中では、どう高く見積もっても中の中ぐらいの存在で、食物連鎖の頂点に立つ様な存在ではなかったのである。


もちろん、セルース人類とて、これは過去の歴史とはなるが、惑星セルースの生物の中には、非常に危険な生物も存在していた。

故に、個人で立ち向かう分には不利な生物も存在したので、厳密に言えば食物連鎖の頂点に君臨したとは言い難いのだが、しかしその一方で、文明や科学力、技術力によって、武器を使えばそれらに対処する事が出来ていたのであった。


それに対して、アクエラ人類は、少なくとも文明力においては俺らセルース人類には遠く及ばない。

魔素という特殊な要素があっても、それは現状では紛れもない事実だったのである。


もっとも、科学者グループが体系化した技術が広く普及すれば、もしかしたらそう遠くない内にこの惑星(アクエラ)の勢力図が書き換えられる可能性もあるが、そんな訳で、現地民にとっては、とても歯が立たない存在、自分達ではとても勝てない様な魔獣やモンスターも確実に存在した訳であった。


そしてそれは、俺ら“能力者”であっても例外ではなかったのである。


あくまで俺らセルース人類の神話や伝承からの引用に過ぎないが(実際に同じ様な進化を遂げたとは限らないからである。)、その山には、それらに記された様な危険な生物がゴロゴロと存在したからである。


その中でも、とりわけ俺らの肝を冷やしたのは、ファンタジーの代表格である“ドラゴン”の存在であった。


幸いな事に、魔素という不確定な要素はあったまでも、俺らセルース人類が開発した兵器や武器類は、この惑星(アクエラ)でも運用が可能であった。

それにプラス、“能力”などを駆使して複数名で対処すれば勝てない相手ではなかったが、しかし当然ながらこちらも無傷とはいかなかったのである。


「想像以上ですね・・・。自然の脅威は、もちろん認識していたつもりですが、やはり伝え聞くのと体感するのでは雲泥の差があります。」

「だな。連戦に次ぐ連戦で、仲間の中には負傷者も出ている。ここは一旦、仕切り直しても良いんじゃないか?」

「・・・しかし、それだと根本的な解決にはならないよ。確かに準備不足は否めないが、かと言って充分な準備をしてきたとて、この山の魔獣やモンスターは強力だ。現状では“能力”の上振れが期待出来ない以上、それを補うのは兵器や武器類となるが、それでも苦戦する事はほぼ確定事項だ。なら、一縷の望みをかけて、“試練”によるパワーアップに期待するべきだと思う。」

「ま、そりゃそうなんだがな・・・。」


その山の想定以上の難易度の高さに、俺らはそんな相談をしていた。


一旦仕切り直すのも良いか、という俺の意見に、ハイドラスは熟考の末にこのまま続行すべきと言った。


俺らの“能力”はかなり強力だが、それでも現状ではこれ以上の出力は望めない。

ま、簡単にパワーアップが可能なら、“アドウェナ・アウィス”やネモがわざわざそうした施設を遺す訳もないしな。


逆に言えば、パワーアップさえ果たせれば、これら強力な種さえも容易に倒せる可能性が高くなる訳だ。

もちろん、当然ながら俺らが携行している兵器や武器類よりも更に強力な兵器などは存在するが、この山に持ち込める様な大きさではないからなぁ〜。


つまり現状では、ある程度の上振れはあっても、今現在の俺らと似たような感じになる事も否定出来ない訳だ。

故に、安全策を取っていたら、一生目的地には辿り着けない可能性があった。

そんな考えもあって、ハイドラスは強行を主張したのであろう。


「ハイドラス殿の言う通りかと思われます。おそらくですが、ここで日和っている様では、この先『支配者(ドミナートル)』に支配されたあなた方の同胞との争いにも勝てない可能性が高い。時としてヒトは、あえてイバラの道に進む事も必要なのかもしれませんね。」

「ええ。・・・もちろん、仲間達が傷付いているのも理解はしていますが・・・。」


ハイドラスの表情に苦悩の色が浮かんでいた。

“リーダー”にはそれなりに葛藤があるのだろう。


「・・・仕方ありませんね。ここであなた方に倒れられたら私としても困った事となりますので、少しだけ“ヒント”を与えましょう。負傷者を集めて下さい。」

「えっ・・・?」



誤字・脱字がありましたら御指摘頂けると幸いです。


いつも御覧頂いてありがとうございます。

よろしければ、ブクマ登録、評価、感想、いいね等頂けると非常に嬉しく思います。

よろしくお願いいたします。

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