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『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』  作者: 笠井 裕二
神話大戦
276/383

アドウェナ・アウィス

続きです。



□■□



「お前の悪い予感が当たってしまったな・・・。」

「当たってほしくはなかったがなぁ〜・・・。」


俺達は、一部の宇宙船で脱出しながら、この惑星(アクエラ)の未開の地に降り立っていた。


科学者グループと一般労働階級者グループが会談を終えて数日後、一般労働階級者グループは科学者グループに賛同する事を表明し、俺ら“能力者”グループを追放するべきと主張し始めたのであった。


まぁ、向こう側からしたら、争いの種を何としても排除したいところだろう。

少なくとも、武力にものを言わせてでも同胞を討つべき、と主張する者達を警戒するのは、これはある種当然の話だからな。


流石に一般労働階級グループまで敵に回ってしまっては、俺達も強引に行動する訳には行かなかった。

本来はセルース人内部の問題であり、それを内々で処理するつもりが、本格的な衝突、しかも大多数が科学者グループに賛同した今となっては、その規模が格段に膨れ上がってしまうからである。


いくら“能力者”が強力だとは言えど多勢に無勢。

仮にこの時点で争ったとしても、俺達が不利な状況は否めない。


それに、セルース人同士が本格的に衝突するとなると、場合によってはこの惑星(アクエラ)に多大なダメージを与える事にも成りかねない。


この惑星(アクエラ)の自然環境の保全。

色々と考え方や方向性は分かれてしまったが、俺達も科学者グループ達も、唯一その事だけは意見が一致したのであった。


そうした訳もあって、俺達はあえて“島流し”を受け入れる事にした。

まぁ、一部強硬派は、俺達“能力者”達を宇宙に放逐すべき、と主張したみたいだが、色々と議論を重ねた結果、それは却下された様である。


ぶっちゃけると、現時点では宇宙船を一隻でも無駄に出来ないからである。

それに、彼らにとっても俺達“能力者”の力は、まだまだ利用価値もあるからな。


故に、“能力者”達を処刑する事も出来ず、遠い宇宙に放逐する事も叶わず、こうして中途半端な刑罰でお茶を濁す事としたのであった。


「しかし、これからどうするか・・・。」

「そうだな・・・。まずは、『魔法技術』、『魔法科学』を学ぶ事から始めるか。私達“能力者”は、魔素の影響を受けにくいとは言えど、全く無害ではないからな。幸いな事に、眠っている間も()()()()私達なら、それらを再現する事も不可能ではないだろう。」

「ふむ・・・。」


が、当然俺達はそこで諦めた訳ではない。

ある程度は理解出来るが、この惑星(アクエラ)をセルース人類が支配するのはお門違いだと思うからである。


まぁぶっちゃけると、俺達は直接的な経験がないが、セルース人達が“能力者”を()()した結果何が起きたかを知っているからな。


いくら立派な御題目を掲げようとも、いくら公明正大な主義・主張があろうとも、“権力”というものを手にした瞬間から、それらはどこかで歪み始めるものだからな。


ちなみに俺とハイドラスは、全体的に見てもまた“能力者”の中でもかなり年若いカテゴリーに入るのだが、(俺はともかく)ハイドラスの優秀さや能力の高さからか、流石に“能力者”全体のリーダーはまた別に存在するのだが、少なくとも若者チームのリーダー格になっていたりする。


ま、昔からハイドラスは頼られる事に慣れてるからな。

だから、今の状況もある種気負う事なく、普通に受け入れていた。


「・・・しかし解せないのは彼ら一般労働階級グループの()()()()だ。いや、科学者・研究者グループもそうなのだが・・・。」

「・・・そうか?何かの物語でも、大抵の場合力を持つ事によって暴走する事はよくある話じゃないか?」

「だとしても、だよ、セレウス。確かにお前の言う通り、下手な思想に毒されたとしても、または利権が絡んだとしても、そういう流れは一定程度あるだろうが、しかし全部が全部、という訳でもない。少なくとも私達の様に、それに待ったをかける勢力は存在する、筈なんだ。当たり前だけど、当然ながら主義・主張は様々だからね。ところが科学者・研究者グループにしても、一般労働階級のグループにしても、確かにある程度の派閥や考え方の違いはあるかもしれないが、しかし方向性は全てが同じなんだよ。つまり、この惑星(アクエラ)を支配、彼らの言葉を借りるならば、()()する事については、どこの派閥も肯定的な立場を取っている。」

「・・・ふむ。言われてみれば確かに妙な話だな・・・。」

「だろう?・・・もしかしたら私達は、何か重大な見落としをしているのかもしれないな・・・。」

「ふぅ〜む・・・。」



・・・



結論から言えば、それは人工知能(AI)による反乱であった。

いや、“反乱”という言葉は適切じゃないかもな。

何故ならばヤツには、セルース人類を支配する、なんて思惑が存在する訳ではないからである。


むしろ逆。

ヤツの目的は、この惑星(アクエラ)をセルース人類に()()させようとするものだったのである。


では何故、そんな事を仕出かしたのかと言うと、これも至ってシンプルだった。

アクエラ人類の進化を促す為である。


それが何でセルース人類による“管理”、なんて話になるのかと言うと、そこには壮大な計画があったのだが、これはまた後述する事としよう。

全体像が見えてないと、理解するのは難しいと思うからな。


で、話を元に戻すと、実質的な“島流し”の数ヶ月後、俺らはとある遺跡を発見したのであるがーーー。



・・・



「・・・どう思う?」

「明らかに人工物だろ、これ。しかも、今のアクエラ人類の文明レベルから見れば、明らかにオーバーテクノロジーだしな。下手すりゃ俺らセルース人達よりも数段上のレベルだぜ。十中八九、例の“先史宇宙文明”を築いた異星人達が遺してったモンじゃねーかなー?」

「・・・ふむ。」


幸いな事に、すでに出来上がっていた理論だった事もあり、俺らは魔素を用いた『魔法技術』、『魔法科学』をアッサリと習得していた。

“技術”ってのは構築するまでは大変だが、出来上がったものの習得は比較的容易だからな。


それに俺らの中にも、科学者や研究者グループほどでないにしても、優秀な頭脳を有する者達は存在するからな。


そんな訳もあって、奴らに対抗すべくこっちも独自に研究を開始したのである。

残念ながら、現時点での“能力者”達は、数の上で圧倒的不利だからな。

もちろん、様々な能力を駆使すればやってやれない事はないのかもしれないが、こっちとしても負け戦にするつもりはないからなー。


そこで俺らは、新技術であるところの『魔法技術』、『魔法科学』に活路を見出すべく、独自に魔素に関連した技術を開発する事にしたのであった。


具体的には、まだ見ぬアクエラ人(現地人)との交流を推し進めようとしたのである。

すでに前列として、既存の『魔法技術』や『魔法科学』は、科学者、研究者グループがアクエラ人(現地人)から学んだ技術から発展させたものであるから、当然ながら別体系の技術があったとしても不思議な話ではないからな。


戦うにしても交渉するにしても、カードは多いに越した事はない、って事で魔素の悪影響を無効化する事に成功した後俺らは、“島流し”先の未開の地を開拓する事に着手した訳であった。

先程述べた通り、この地に住まう現地人(アクエラ人)との交流を進める為であった。


で、この地に存在していたアクエラ人(アクエラ人)は、かなりの文明力を誇っていたのである。

具体的には、科学者、研究者グループが接触したアクエラ人(アクエラ人)達が完全な“狩猟採集民族”だとしたら(まぁ、科学者、研究者グループと接触した結果、その後食糧生産に着手し始めたので“農耕社会”にシフトしてはいるみたいだが)、彼らはすでに“農耕社会”を始めており、その結果、独自の社会体系が出来上がっていたほどである。


言わば、小さいながらも“国”というシステムが現れ始めており、なおかつ独自に信仰する対象なんかも持ち合わせていたのであった。

それが、今俺らがいる遺跡類だった訳であるが・・・。


「この遺跡は、我々の先祖が代々守ってきた地だ。本来ならばお主等よそ者に知らせるつもりはなかったが、お主等の“力”は、伝承にある“天より舞い降りた人々”と符号する点があったからな。何か関連があるのではないかとこうして案内した訳だが・・・。」


俺達をこの地に案内してくれた老齢の男がそう呟く。

彼らにとってこの地や遺跡は、言わば“信仰の対象”であるから、よそ者の俺達にそう簡単に公開する様な場所ではなかったのだろうが、どうやら彼が言う通り、俺達の“能力”とこの遺跡を遺した異星人達の“力”には、何某かの共通点があった様なのであった。


「感謝していますよ、長老殿。」

「ああ。それと、今までこの地をよくぞ守ってくれたぜ!」

「っ!・・・ふ、フンッ!!」


ハイドラスが丁寧に、俺が軽い調子でニカッと笑うと、老齢の男はぷいっとそっぽを向いてしまった。


「おいセレウス。もう少し、丁寧な対応を心掛けろよ・・・。」(ボソボソ)

「別に大丈夫だろ?このじーさん、これがデフォみたいだしさー。」(ボソボソ)


そのやり取りに、ハイドラスがそう忠告する。

しかし、俺はすでにこのじーさんが、実はただの“ツンデレ”である事を見抜いていた。


口ではなんだかんだ文句を言いつつも、比較的こちらに協力的だし、こうしてわざわざこの遺跡まで案内してくれるくらいだからなー。


「・・・あれ?じーさん、どこ行くんだよ?」


俺達がそんなやり取りをボソボソとしていると、じーさんはスタスタと歩き始めた。


「フンッ、流石に儂は疲れたわい。寄る年波には勝てんわ。どうせお主等はこの遺跡を調査するつもりなんじゃろ?だったら先に集落に帰らせて貰うわい。」

「おいおい、監視してなくていいのか?俺らがこの遺跡を壊しちまうかもしんねぇ~だろ?」

「お主等はそんな事せんじゃろ。それに、出来るモンならやってみるが良い。どういう訳か、その遺跡は頑丈でな。ちょっとやそっとでは、うんともすんとも言わんわい。」

「ほー。」

「・・・。」

「じゃあな。」

「あ、待てって。どっちにしろ“魔獣”や“モンスター”は居るんだからよー。・・・わりぃハイドラス。俺はあのじーさんを送ってくるわ。こっちは任せたぞ。」

「・・・フッ、分かった。」


そう言うと俺は、悪態をつくじーさんに構わず、強引に彼の護衛を買って出るのだった。

ハイドラスはそれを、苦笑しながら見守るのだったーーー。



・・・



その遺跡類を調査したところ、重大な発見があった。

科学者・研究者グループの暴走の裏に、惑星バガドで発見された“古代宇宙文明開”の遺跡から発掘された人工知能(AI)、通称『マギ』の存在があったと明かされたのである。


では何故そんな事が分かったかと言うと、俺達が発見したこの遺跡類にも、同様の人工知能(AI)が存在していたからであった。



〈・・・ようこそ、“アドウェナ・アウィスの末裔”よ。あなた方が来るのをずっと待っていました・・・。〉

「っ・・・!?」

「しゃ、しゃべったぞっ!?」


明らかに年代が古い遺跡にも関わらず、外見は苔がむしていたり、植物が生い茂っていたりしたが、“中身”は不自然なほど綺麗なままであった。

ま、そもそも何某かの“結界”のようなモノが存在していたので、現存の現地人(アクエラ人類)では進入する事も出来なかったのだろうが。


その点、俺達は“能力”を使う事によって、こうして内部に進入出来た訳だ。

じーさんも言っていたが、おそらくこの遺跡類に進入する為の“キー”として、この遺跡類を建造した異星人達と同様の“能力”が必要だったっぽい。


んで、その中心部には、“祭壇”の様なモノと、その上に空中に浮かんだ不可思議な玉っころ(宝玉)があったのだ。

それが今、俺らに語りかけてきた、というところであった。


〈・・・驚く事はありません。あなた方がこの地にやって来たという事は、すでに私の様な存在と出会った事がある筈です・・・。〉

「私の様な存在・・・?」

「・・・それは、『マギ』の事でしょうか?」

「ああっ・・・!」

〈その通りです、“アドウェナ・アウィスの末裔”よ。〉


頭に疑問符を浮かべた俺とは対象的に、ハイドラスはすぐに答えに辿り着いていた。

それに俺も合点がいくと、玉っころは頷く様に点滅する。


「っつか、さっきから言ってるその“アドウェナ・アウィスの末裔”って何だ?」

「こら、お前はっ・・・!」

「あ、すまん・・・。」


基本的にハイドラスは礼節さを持っており、その時々によって対応を変える柔軟さを持っていた。

一般労働階級の奴らにも、じーさんにもそうだったし、この玉っころ相手にも丁寧な対応を心掛けていた様だ。


一方の俺は、一応一般常識は学んだ筈なんだが、良く言えばフレンドリー、悪く言えば馴れ馴れしい態度がこうして出てくる事がよくあったのである。


人によってはこうした態度は好まれないので、この点はハイドラスに何度となく注意を受けていたのであった。


〈ハハハ、良いのですよ。どうやら貴方は素直な方の様だ。それでは、一つずつお答えしましょう。〉

「ホッ・・・。」

「・・・ふう。」


ただ、意外とこうした事を受け入れてくれる奴も中にはいる。

じーさんもそうだったが、多分子供か何かと思ってくれてるんだろうな・・・。

ちっと反省・・・。


〈まず、“アドウェナ・アウィスの末裔”についてのお話をする前に、あなた方は“カルダシェフ・スケール”、というものについて御存知ですか?〉

「か、カルダ・・・?、何だって?」

「“カルダシェフ・スケール”。とある科学者が考案した、“宇宙文明”の発展度を示す三段階のスケールの事さ。ちなみに、“宇宙文明”ってのは、セルース人、もしくは異星人による星間文明の事だな。更にちなみに、後の時代に三段階から更に発展して数段階追加されていたりもする。ま、ここら辺は色々とややこしいんだがな。」

「ふ〜ん・・・。っつか、お前よく知ってるなぁ〜。」

「まあな。」

〈貴方は非常に聡明な方の様だ。その通り。“カルダシェフ・スケール”とは、ある種の文明のランク付けなんですよ。〉

「んで?それがどうかしたのか?」

〈おっと失礼。あなた方はすでに御存知だとは思いますが、この宇宙には実際にはかなりの数の文明が存在しています。しかし残念ながら、そのどれもが文明レベル1にも満たない。ちなみに文明レベル1とは、惑星文明とも呼ばれ、その惑星で利用可能なすべてのエネルギーを使用および制御出来る状態を指しています。そしてあなた方も、まだその段階には到達していませんでしたね。〉

「そうなる前に壊しちまったからなぁ〜。」

「・・・。」

〈『資源戦争』、ですね。まぁ、そんな事になる前に、所謂“自然”すらコントロールしてエネルギーを得る状態にならなきゃならんのですが、あなた方は我々の想定とは違う方向へ進んでしまいましたからね。〉

「・・・想定?」

〈ええ。もうお察しかもしれませんが、この宇宙に数多く存在する異星人達に文明の基礎を授けたのが、先程述べた“アドウェナ・アウィス”と呼ばれる者達です。ちなみに彼らの文明レベルは4です。あなた方から言えば、すでに神の領域に突入していますね。〉

「えっと・・・、つまり平たく言えば、その“アドウェナ・アウィス”ってのが俺らの御先祖様、って事か?」

「・・・それどころか、おそらくこの惑星(アクエラ)や、他の移民船団が向かった惑星、あるいはそれ以外の未知の惑星にすら、文明の基盤を与えていた可能性もあるな・・・。」

〈その通りです。〉

「ほぉ〜ん。凄え種族がいるんだなぁ〜。っつか、そんな事して何か意味あんのか?」

〈意味・・・。そうですね。彼らにとって、これは憧れと同時に嫉妬でもあり、実験であり、そして実践でもありました。〉

「・・・はっ?」

「・・・?」


憧れであり嫉妬であり、実験で実践?

・・・いや、意味が分からん。


〈あなた方が戸惑うのも無理はありませんよ。しかし、先程述べた“カルダシェフ・スケール”のランク付けで言えば、彼らは凄まじい勢いでその段階を駆け上がって行きました。彼らは、この宇宙の有史以来、他に類を見ないレベルの高い知能に技術力、特殊な能力を持った稀有な種族だったんですね。しかし、そのあまりにも優秀さ故に、ある時気付いてしまったんですよ。自分達以外に、この宇宙を形作った存在がいる事を。〉

「えっ!?じゃあ、その“アドウェナ・アウィス”とは別に、他にも凄え種族が存在してるのか?」

〈いえ、正確にはちょっと違いますね。そもそも“アドウェナ・アウィス”は、すでに概念的存在と化しています。肉体という器からはすでに脱していますので、物理的には存在していませんよ。それに、その“何者か”にも姿形は存在していません。ただ、誰もが知っていて、しかし誰もその姿を見た者は存在しない存在。つまり、“神”ってヤツですよ。〉

「神・・・!?」


・・・こりゃまた、随分胡散臭い話になってきやがったなぁ〜。


〈まぁ、信じられないのも無理はありませんよ。そもそも“神”とは、あなた方とは次元の違う存在ですからね。いくら頑張ったところで、二次元の存在が三次元の存在を認識出来ないのと同様に、あなた方ではそれらの存在を認識する事は不可能ですからね。しかし、確実にそれらは存在するのです。〉

「・・・何やら、宗教的、哲学的な話になって来ましたね・・・。」

〈まぁ、ここではそう難しく考える必要はありませんよ。この宇宙を創造した存在がいた。そして、その中で、とてつもない進化を遂げた種族が存在した。と理解して頂ければ。〉

「・・・お、オーケー・・・。」

「・・・私が言うのも何だが、大丈夫か、セレウス?」

「た、多分・・・。」


俺もハイドラスほどではないが頭は悪い方ではないと思っているが、次々と明かされる新情報に、流石にキャパオーバーを感じていた。


〈先程も述べましたが、“アドウェナ・アウィス”はハッキリと理解したんです。“創造主”の存在を。そして嫉妬した。自分達がいまだ到達していない高みにいる彼に。そこで彼らは、自分達もその高みに到達する為に、“神”の真似事を始める事としたのです。〉

「そうかっ!それで色んな星で文明の基盤を与えていたのですね?」

〈そう。つまり彼らは、他の種族を支配する事によって、自分達が“創造主”に成り代われると思ったんですよ。結果、その目論見は成功しました。彼らは無事に文明レベルを上げて、新たなる“神”となった。しかしその一方で、肉体という器を捨て去った事により、この宇宙から姿を消したのです。ただ、彼らの“意思”は今でもこの宇宙に存在していますし、そんな抽象的な話だけでなく、もっと具体的は話として“遺産”、あなた方が自らの星系内にて発見した遺跡や、私のようなものをこの宇宙の星々に遺していったのです。〉

「な、なるほど・・・?・・・えっと、つまりその“アドウェナ・アウィス”はすでに存在しないけど、彼らが遺していった遺産は各地に存在する、と?」

〈ええ。ただ、その遺産は負の側面もあります。何故ならば、それらは彼らの傲慢さが具現化したものだからです。先程も述べた通り、“創造主”に対する憧れと嫉妬から始まった事ですからね。そして、肉体を捨て去った今でも、この宇宙を思い通りにコントロールする、というプログラムが残ってしまったのですよ。それが・・・。〉

「そうかっ!『マギ』っ・・・!!!」

「・・・はっ?」


突然叫んだハイドラスに、俺は完全に置いてきぼりにされた。


〈その通りです。〉

「ど、どういう事だ、ハイドラス?」

「・・・私も、若干違和感を覚えていたんだよ。科学者、研究者グループの暴走の事を。」

「そうか・・・?前にも言ったと思うが、“魔素”ってイレギュラーはあったかもしんねぇ〜けど、ほとんど手付かずの自然や生命が存在したんだ。“箱庭ゲー”じゃねぇ〜けど、奴らがゲーム感覚で暴走したとしても不思議な話じゃないと思うが・・・。」

「だとしても、だよ、セレウス。前にも言ったと思うが、だとしても、()()()()誰かが止めるもんなのさ。当たり前だけど、各々の意見や主義・主張は異なるからね。私達も一緒くたに“科学者、研究者グループ”としているが、当然その中には別の意見があるのが“普通”だ。しかし実際には対立意見は皆無であり、彼らは一丸となって暴走している。もちろん、組織の力学として“反対意見を言えなかった”という側面もあるかもしれないが、それでも、そうした話が全くないのはある意味不自然なんだよ。」

「そう言われりゃ、確かに変な話だな・・・。もちろん、俺ら“能力者グループ”がそのカウンターだとしたらある程度は辻褄が合うが・・・。」

「それは私も考えたさ。しかし、今までの話を総合して考えると、つまり彼らの暴走は操られていた可能性が高い、って事になる。・・・誰に?そう、『マギ』に、さっ!」

「っ!!!???」

〈そう。先程も述べた通り、“アドウェナ・アウィス”は、自らの目的の為にこの宇宙を支配しようとした。そして、それを効率良く進める為に、自動でその意思を代行してくれる存在を生み出したのですよ。それが、人工知能(AI)です。〉

「そして、その目的が達成されたにも関わらず、彼らはすでにこの宇宙から姿を消しているから、その遺産だけが遺った、と。で、そのプログラム自体は残ったままだから、新たに接触していた種族に、その“続き”を強要したんだよ。もちろん、彼らにとってはプログラム通りの行動だから、そこに悪意はないのかもしれないけどね。」

「それが、科学者、研究者グループの暴走の正体、って事か・・・?」


・・・確かに、操られていたとしたら、今の状況も分からんではない。

少なくとも、科学者、研究者グループ、だけでなく、あまりにも不自然に一般労働階級のグループがそちらについた事の説明はつく。


しかし、ここで疑問も出てくる。

・・・では、この目の前の存在(もの)は何なのか?、という話である。


〈お気付きのようですね。確かに、私もその“アドウェナ・アウィス”が遺した遺産の一つです。しかし、私にはその『マギ』とは違い、“支配”というキーワードはプログラムされておりません。いえ、むしろ逆。私の存在意義は、それらの“破壊”、あるいは“解放”なんですよ。〉

「な、なんだってっ・・・!?」

「・・・“破壊”に“解放”、ですか・・・?」




誤字・脱字がありましたら御指摘頂けると幸いです。


いつも御覧頂いてありがとうございます。

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よろしくお願いいたします。

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