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『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』  作者: 笠井 裕二
神々の真実
273/383

『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』 6

続きです。




◇◆◇



「私達が・・・」

「人の手によって生み出された存在・・・?」


その衝撃的な言葉に、アキトが亡くなった事によって半ば茫然自失の(てい)になっていたアイシャとリサも現実に復帰した様であった。


「・・・彼が言った事は、本当なのですか?」


それはティーネを同様だったのだろう。

(あるじ)と頂いて、もはや信仰に近いほど崇拝していたアキトを助けなかった三柱の神に若干の不信感を抱いていたが、そうした感情論は別にして、事実を知っているだろう彼らにこうして答えを求めたのであった。


「・・・ああ。ヤツの言ってる事は事実だ。少なくともお前達は、自然に生まれた存在ではない。」


若干の逡巡の末、セレウスはその事実をアッサリと認める。

いや、もはや隠し立てする必要がなかったのかもしれないが。


「・・・そうか。・・・せやったんか。それで、何で“他種族・異種族”が虐げられてきたかも説明がつくで。」

「・・・ドウイウ事デスカ、ヴィーシャ・サン?」


ただ、やはりと言うか、アキトに次ぐ明晰な頭脳の持ち主であるヴィーシャは、その事実からそんな結論に達していた。


「あぁ〜、つまりやなぁ〜。衝撃的な事柄やし、どういう手法でそんな事が可能かも分からんけども、仮にそうやったとするならば、アクエラ人、つまり現・人間族にとっては、決して面白い話ではないやろ?」

「・・・ハァ。」


ヴィーシャの抽象的な言葉に、エイルは分かった様な分からない様な反応を示した。


「つまりだね。アクエラ人、現・人間族は、それまではセルース人達の寵愛を一身に集めていた、と思っていた訳だよ。自分達とは異なる文明、技術力を持ち、自分達の生活環境を劇的に改善してくれた、もはや“カミサマ”にも等しいセルース人達が、何故か自分達を助けてくれた訳だからね。実際、当時のアクエラ人達は、すでにセルース人達を信仰する風潮が広がっていた。ところがそこへ、その“カミサマ”達は、自分達以外の生命体を造りそれにご執心になっていったのさ。彼らはそれを、“カミサマ”達から見捨てられたと感じたとしても不思議な話ではない。そして、その不安な心が、“他種族・異種族”への嫉妬として現れた、って訳さ。これは家族関係でもよくある事でね。例えば、下の子が産まれた上の子が、下の子に対して嫉妬する事はよくある事だ。何故ならば、両親は、手の掛かる下の子に掛かりっきりになってしまうからさ。これは当然だよね。そもそも、生まれたばかりならば、まだまだ自分では何も出来ない状況だ。両親の手を借りなければ、生きていく事もままならない。しかし、まだ幼い子供にそれを理解しろ、というのは些か難しい話でね。結果、自分が愛されなくなったのは、コイツがいるからだ。と、こういう心境になる、って訳さ。」

「・・・そして、その考え方が、後の世にも残ったとしたら?」

「・・・なるほど。つまり、その潜在的な嫉妬心から、“他種族・異種族”を攻撃する様になった。その結果が、差別や偏見に繋がった、と?」

「・・・ナルホド。」


そこに、ヴィーシャの後を継ぐ様に、ルドベキアが詳しく解説した。

それを聞いて、ティーネとエイルは納得の表情を浮かべていた。


「まぁ、半分は正解だね。しかし女神・ルドベキア。今更隠し事はなしだよ。もう半分は、キミ達の行動の結果だろう?」

「・・・それを言うなら、あなた方セルース人が、ではないですか?残念ながらボクとアルメリアは、元・アクエラ人なんでね。」

「あれ?そうだったっけ?いかんなぁ〜。まだ色々とごっちゃになってしまっている・・・。」

「・・・どういう事ですか?」


ルドベキアに水を向けたハイドラスだったが、そこに思わぬ反論があった事でブツブツと自分の世界に引き籠もってしまった。


埒が明かないと踏んだヴィーシャは、今度はやはり事情を知っているだろうセレウスらに神話(物語)の続きを促した。


「・・・暴走した一部のセルース人達だったが、もちろん反対意見も存在したんだよ。そもそも彼らのやっている事は、当初の予定とは大分異なる事だ。あくまで“入植”を目指していた筈が、いつの間にか“植民地化”にすり替わっていたからな。だが、俺達はそれを阻止出来なかった。言い訳になっちまうが、その当時の俺等は、“コールドスリープ”から自力で目覚める事が出来なかったからな。だが、彼らが“新たなる生命の創造”というある種の禁忌を犯した事で、とうとう俺等も動き出したんだ。」



・・・



なるほど・・・。

やはり予想通り、ですか・・・。


ーやはり、という事は、お前、気付いていたのか?ー


ハッキリとした確証はありませんでしたけどね。

ただ、向こうの世界(現代地球)に生きていた僕としては、やっぱり普通に“他種族・異種族”が存在する事には違和感はあったんですよ。

もちろん、この世界(アクエラ)が“ファンタジーな世界”・“ゲームのような世界”と言われればそれまでなんですがね・・・。


しかし、知れば知るほど、この世界(アクエラ)は現実的な世界だ。

ならば、“他種族・異種族”が発生した要因としては、まぁ、“魔素”が関与した可能性も無きにしもあらずですが、これは僕自身の研究データからありえないと思っていましたし。


ー何故ですか?“魔素”は非常に不可思議な物質(?)です。貴方も以前に結論付けていましたが、“情報を書き換える”性質があるのですよ?ー


だとしても、ですよ。

仮に人間族の遺伝情報を書き換えた結果だとしても、つまり人間から派生した変異体だったとしても、その後繁殖し、人口を増やすのはやはり違和感がある。

大抵の場合、突然変異は一代限りと相場が決まってますからね。


しかもそれだけでなく、こちらは僕の研究でもハッキリしていましたが、ある特定の条件が必要だとは言えど、何故か人間族との混血が可能なのも、その違和感を補強する根拠となります。

それは、あまりに都合が良すぎるし、偶然にしては出来過ぎだ。


もちろん、僕はそちらの方面では全くの門外漢ですので確かな事は言えませんが、混血が可能、という事は、つまり遺伝子が限りなく近い、という事です。


例えばとあるデータでは、ヒトとサル、ああ、サルというのは人間に近い生物ですが、の遺伝子の違いは、僅か1%ほどだそうです。

が、もちろん、ヒトとサルは混血は不可能とされています。


また、仮に可能だとしても、その種が子孫を残す可能性も限りなく低い。

少なくともそれが可能ならば、とっくにそんな生物がずっと昔から存在していたとしても不思議な話ではないですからね。


では、人間族と“異種族・他種族”ではどうか?

確かに、“異種族・他種族”は見た目は限りなく人間族に近しい。

が、明らかに異なる性質を持っています。


例えば、鬼人族は、“ツノ”呼ばれる器官を持ち、異常なほどの膂力(りょりょく)を持っています。

また、これは見た目には分からない事ですが、実は魔素との親和性が人間族よりも高い傾向にある。

もっとも、その方向性は所謂“強化”方面ですけどね。


次いで、ドワーフ族ですが、浅黒く、小柄な体躯でありながら、こちらも鬼人族同様に異常な膂力(りょりょく)を持っています。

更に特筆すべき点は、火、いえ、むしろ熱、と言った方がより正確でしょうが、に対する耐性が強く、それに伴って金属加工技術に秀でている点でしょう。

しかも、中には金属加工の途中に、魔素そのものを物質にこめる事が出来る、所謂“魔工”というスキルを持つ者が現れるのも特徴の一つです。


また、エルフ族は、特徴的な尖った耳、所謂『エルフ耳』を持ち、男女共に眉目秀麗で、なおかつ明らかに長命な種族です。

実際、100歳で、まだ青年期に差し掛かった辺りですからね。


それに、魔素に関する親和性は、全ての人族の中でももっとも高いと言えるでしょう。

実際、彼らは“精霊”と呼ばれる特殊な存在を感知する事が可能で、それによって魔法技術の基礎を全く知らなくとも、現代魔法に近い技術を発現可能です。


もっとも分かりやすいのは、獣人族ですね。

彼らは、“魔獣”の性質と“人間”としての性質を併せ持っている。


もちろん、“魔獣”や“モンスター”はこの世界(アクエラ)における強者の象徴の様な存在なので、その力を取り込む事が出来れば、当然生存競争には優位に働く事でしょう。

実際、“呪紋(スペルタトゥー)”などの技術は、そうした生物達の力を擬似的に再現する技術だ。


しかし、それが身体的特徴にまで現れるのは、これは明らかにおかしい。

言ってしまえば、彼らの遺伝情報を組み込んでいる、という事ですからね。


もちろん、彼ら獣人族が、“魔獣”や“モンスター”から進化した“ヒト”だという可能性もありますが、それだと人間族との混血が可能な点で矛盾が生じてしまう。


以上の観点から、前世での知識もあって、僕の中では“他種族・異種族”は人間族をベースに意図的に造られた存在ではないか?、という疑念が前からあった訳ですよ。


人間族をベースに造られているから、当然人間族との混血が可能だ。

ただ、両者の基本的スペックがあまりにも異なる為に、ある程度の条件を満たさないと、正しく遺伝情報の交換が上手く行かなくなってしまったのではないか?、とね。


ー・・・概ね正解です。やはり貴方は恐ろしい方だ。独力で様々な真実に迫っていたとは・・・。ー


ま、オタクなんで、()()は得意ですからねぇ〜。



□■□



遺伝子工学、より正確に言えば、所謂“ゲノム編集”は、現代地球でも可能な技術である。

一部の物語とかアニメ、ゲームにおいては、それを用いて、所謂“人造人間”を作り出す事などがテーマとなるものもあるが、当然、現実社会の中では倫理観や技術面の観点から、多くの国で規制や法令などで禁止されている。


では、これらはどの様なモノに応用が可能かと言えば、かなり幅広い応用範囲があったりする。

例えば、栽培植物の品種改良などである。


これら技術が登場する以前から、こうした品種改良は行われていた。

農作地の環境は様々だ。

中には、寒冷地もあれば、温暖な気候もあるだろう。


となれば、適正の環境下でしか育たない植物では、そうした環境に対応出来ない。

結果、食糧自給率が下がり、餓死者が続出する事態となる。


ならば、様々な環境に耐えられる品種を作り出せば良い。

そうした発想から、古来より品種改良は行われてきたのである。

もっとも、彼らがそれを意識的にやってきたかどうかは定かではないが。


もっとも、それらは非常に時間と手間がかかる事でもある。

とある品種ととある品種を掛け合わせて、狙った品種を生み出そうとしても、失敗する可能性も高かったし、そもそも、狙いとは違う性質を持ってしまう事もザラであったからである。


それでも、様々な試行錯誤の末に、近年では飛躍的に発展していた訳であるが、この“ゲノム編集”が登場した事によって、それは劇的に変化したのである。


ゲノム編集とは、ゲノム内のDNA配列を意図的に切断し、切断されたDNAが修復される過程で必要な遺伝子の機能が書き換えられる事を狙った技術で、遺伝子の機能を「停止」する、もしくは「強化」する事が出来る。

本のあるページを切り取って設計図を変え、その設計図から出来る部品を変える事、とも例える事が出来る。


それまで主流だった遺伝子組換え技術では、ある生物のゲノムの中に狙った機能を持つ他の生物の遺伝子を挿入して、欲しい機能を得る。

が、外来遺伝子が生物のゲノムのどこに挿入されるかも、どのような働きをするかも十分にコントロールする事が出来なかったのである。

その為、想定しない機能を持つ生物を生み出す可能性があったり、新たな病気を引き起こす危険性があったりするなど、安全面や倫理面の課題が実用化の妨げとなっていたのである。


一方、ゲノム編集はあくまでその生物が持つDNAの狙った場所を切断して編集する為、遺伝子組換えと比較して、安全性が高い事が分かっているのである。


ゲノム編集技術は、新たな治療技術の創出、創薬の加速、先程も述べた農作物の品種改良などによる食糧問題の解決、植物の光合成効率化・長寿命化などによる環境問題の解決など、さまざまな分野での応用が期待されているのである。

その一方で、狙った場所以外の塩基配列が変異する事などの危険性を指摘する声もある。


まさにこれは、神の如き技術である。

実際、地球においても、このゲノム編集技術などを用いて、所謂“デザイナーベビー”を生み出したとされる実例もある。


残念ながら、現代地球の技術力を持ってしても、先程述べた通り、技術的な限界が存在するので、“ヒト”を生み出すのは公式には認められていないが。


だが、仮に先程述べた技術的な課題を全てクリアしていたとしたら?

”科学“とは、現代社会の基盤となっている技術ではあるが、それらが発展する過程で、表には出せない様な凄惨な実験が繰り返されたとされる事例には枚挙に暇がない。

そうして様々なモノを生み出してきた“科学者”という人種が、様々な制約から解放されていたとしたら、新たなる“人間”を創造しようとしたとしても、不思議な話ではないのである。


で、当然であるが、現代地球よりも数段上回るセルース人達の技術力ならば、こうした事が可能だった訳であったがーーー。



・・・



『新人類創造計画』。

俺達は、それを知覚していた。


当然俺らは、それを危険視していた。

そもそも、この惑星(アクエラ)に入植する事が目的だった筈が、一部の科学者、研究者らは、『魔法技術』、『魔法科学』が発展した事により魔素の脅威をコントロールする事が出来た事が引き金となったのか、いつの間にかこの惑星(アクエラ)を支配する事。

言ってしまえば、セルース人によるこの惑星(アクエラ)の”植民地化“を推し進める方向に舵を切っていたのである。


もっとも、正直に言えば俺も彼らの考え方は理解出来ないではない。

と、言うのも、アクエラ人類は、俺らセルース人に比べたら文明力で劣っていたのは否めない事実だからである。


言ってしまえば、先進惑星の出身であるセルース人が、発展途上惑星の住人であるアクエラ人類を手助けする過程で、技術提携から彼らの管理、運営に意識がすり替わったとしても不思議な話ではないからな。


実際、惑星セルースの歴史においても、先進国が発展途上国を事実的に支配していた、実質的に植民地化していた事実もある。

ある意味傲慢な考え方ではあるが、“人々を導く”とか“何かを教える”という過程で、自身のエゴが反映されてしまうケースはいくらでもあるのである。


しかし、百万歩譲ってこの惑星(アクエラ)の植民地化まで容認したとしても、流石に『新人類創造計画』は様々なラインを超えている。


つまりは、新たなる生命を、ヒトの手によって生み出そうとする計画だ。

しかもそれは、アクエラ人類の為ではなく、あくまで自分達の都合の為である。


いや、倫理観がどうとか、そういう話でもあるのだが、もっと言ってしまえば、彼らの言葉を借りるならばこの惑星(アクエラ)に“理想郷をつくる”と言っておきながら、結果として新たなる火種を生み出している様にしか見えなかったのである。


同じセルース人達の暴走ならば、当然同じセルース人が食い止めるべきだ。

ただ、残念な事に俺らは、満足に動ける状態ではなかったのである。


と、言うのも、意図的か偶然かは定かではないが、セルース人達に対する魔素の悪影響があると分かって以降、一部を除いてほとんどのセルース人は“コールドスリープ”をする事となったからである。


これは、魔素の影響、言ってしまえば病気の進行を遅らせるのと同様で、その治療法などが確立するまでは眠っていた方が良かったからでもある。

しかし、それがいつの間にか、セルース人自身を拘束する為の使い方がなされる様になっていたのである。


“コールドスリープ”は、自身で解除する事は不可能だ。


それはそうだろう。

そもそも“コールドスリープ技術”は、長期間宇宙を航行する為に必要な技術だ。

当然、あくまで長期的にセルース人達の老化を抑える事が狙いなのだから、頻繁に目覚めてしまっては意味がない。

それ故に、“コールドスリープ”を解除する為には、外部から解除する他なく、その管理を担っていたのが、“先史宇宙文明”の遺跡から発見された人工知能(AI)、『マギ』なのである。


彼、あるいは彼女に課された命令は、居住可能な惑星に到達、あるいは例の座標(ポイント)に到達した時、ないしは緊急事態の時以外は、基本的に“コールドスリープ”を維持せよ、というものである。


その命令通り、彼、あるいは彼女は、惑星アクエラに到達した時に、一部のセルース人達を目覚めさせている。


しかし、その後、魔素の脅威もあって、再び一部のセルース人を除いて“コールドスリープ”をさせる処理をしているのだが、ここからその“決定権”は、魔素の研究に勤しんでいた者達の判断に委ねられていたのである。


つまり、ある意味でその者達に、眠っているセルース人達の生殺与奪の権が与えられたに等しい。

少なくとも、何らかの要因によって暴走をし始めたとしても、本来はそれを止めるべき同じセルース人達を目覚めさせるかどうかを彼らが決定出来るのである。

それは、彼らにとっては都合の良い事この上なかったのである。


こうして、様々な要因が重なってか、彼らは暴走を始め、それを止める者も不在、という状況になってしまった訳であるが、しかし彼らにも、一つだけ誤算があった。

それは、“能力者”の力を見誤っていた事である。


“能力者”とは、霊能力”や“超能力”、“異能力”や“神通力”など、摩訶不思議な力を使える者達の総称である。

セルース人達の研究では、これは“霊魂の力”を使う者達の事という認識であり、その結果“霊子力エネルギー”、すなわち、“能力者”から得られる無限に等しい“霊魂の力”から、既存の電気エネルギーを生み出す技術が開発された訳である。


つまり、“能力者”は、セルース人達の生活を支える為の“炉”となってしまったのである。

まぁ、これに関しては、当初は半ば強制的に行わされた事もあって問題となっていたが、後に待遇の改善もあり、今では一つの職業として成り立っている側面もある。

ま、それはともかく。


言ってしまえば、“能力者”は、事“科学”という事柄からは逸脱した存在である。

ある程度研究が進んだからといって、それで全てが把握出来た訳でもないのであった。


であるならば、いくら科学的には不可能な事であったとしても、それを覆す事が出来る可能性を秘めている訳であった。


で、意図的に“コールドスリープ”によって拘束、封印されていた俺らであったが、本来なら、完全に眠ってしまう状況になる筈が、一部の“能力者”は、意識だけを切り離して眠りながらも情報収集をする事が出来る様になったのである。


後に俺らは、これを“アストラル化”と呼ぶ様になったが、こうして俺らは、ソラテスらの暴走を知覚する事が出来ていた訳であった。


ただ、あいかわらず“肉体”は“コールドスリープ”によって拘束、封印状態であるから、彼らに直接的に干渉する事は不可能であった。


奴らの行動、暴走を把握しながらも、それをただ眺めるだけしか出来ない俺らは、何とも歯がゆい気持ちを抱えていたのであるが、ここで皮肉な事に、奴らの研究が俺らの解放のヒントとなる。


『新人類創造計画』は、表向きは魔素に高い耐性、より親和性の高い新人類を創造する事によって、もっと効率的に『魔法技術』・『魔法科学』を発展させようとするプロジェクトだ。

色々と倫理観の吹っ飛んでいるプロジェクトではあるが、すでに色々とおかしくなっていた多くの科学者や研究者達もこれに賛同。

仮に反対意見があったとしても、多数派の意見が世の中を動かすのが人間の常であるから、言いたくても言えない状況だった事だろう。


いやむしろその者達も、その裏の目的である、新人類による現・アクエラ人達の支配、『マギ』と共に”永遠に“惑星アクエラに君臨するプランに魅せられてしまったのかもしれない。


そして、老化の現実に行き当たった彼らは、新人類を生み出し、なおかつその肉体を乗っ取る事で、ある種のセルース人類の夢であった“不老不死”を実現出来る可能性に期待したのかもしれない。


“乗っ取り”。

そんな事が、科学的に可能なのかどうかは分からないが、しかし、これが大きなヒントとなる。


すでに”アストラル化“を実現した”能力者“であれば、別の肉体に憑依して、それを操る事が可能なのではないか?

そうした仮説が出てきたのである。


本来ならば、これも倫理観を著しく欠く行為ではあるし、ある種自身のアイデンティティを崩壊させる危険性もあったが、同族の暴走を止められなかった俺らには、もはや躊躇はなかった。


こうして、『マギ』にアクセス権のあるとある科学者の肉体に憑依して、俺ら”能力者“の勢力は、”コールドスリープ“という拘束から脱出する事が出来たのであるがーーー。



誤字・脱字がありましたら御指摘頂けると幸いです。


いつも御覧頂いてありがとうございます。

よろしければ、ブクマ登録、評価、感想、いいね等頂けると非常に嬉しく思います。

よろしくお願いいたします。

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