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『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』  作者: 笠井 裕二
幕間 クロとヤミと『白狼』と

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クロとヤミの『国盗り物語』 4

続きです。

今年の投稿は、これで最後になります。

皆さん、良い年末年始にして下さいね。

では、良いお年を。



「ワォーン、ワォーン(ノ、ノルドさんまでやられちまったぞっ!)」

「アォーン、アォーン(あの『黒狼(2匹)』、メチャクチャ強ぇぞっ!)」


ざわめく取り巻きの『白狼』達。

その瞳には、最初の様な敵愾心はなく、『強者』に対する一種の畏敬の念が込められていた。


「ワォーン、ワウワウッ(よしっ!ノルドを運び終えたら、次の対戦に移ろう。)」


ジンが指示を出し、取り巻きの『白狼』達がノルドを運び出し、クロが退場し、入れ替わりにヤミが入場した。

その後ろには、先程の対戦でのダメージが抜けていないメディオがたどたどしい足取りで続いた。


「ガウッ、ガウガウッ(僕は良いけど、そちらの雄は大丈夫なの?さっきの戦いでのダメージが抜けて無いでしょ?)」

「ワォーン、ワンワンッ(・・・心遣いは感謝するが、これが私の『実力』と言う事だ。条件は君と同じなのだから、心配せずとも良い。)」

「ガウッ(けど・・・。)」

「ワォーン、ワウワウッ(まぁ、そういう事だ、ヤミ。お前は心優しいが、これ以上は相手に失礼だぞ?メディオは、中央の『グループ』の『リーダー』として、そして1匹の『戦士』としてこの場に立っているのだからな。)」

「ガウッ、ガウガウッ(・・・『戦士』、か。そうだね。ごめんなさい。)」

「ワォーン、ワウワウッ(うむ。分かれば良い。では、次の対戦、ヤミVSメディオを始めるっ!準備は良いかっ!?)」

「ガウッ(うんっ!)」

「ワンッ(はいっ!)」

「ワォーン、ワウワウッ(では、始めっ!)」


ヤミとメディオは、その開始の合図と共に疾走、しなかった。

ヤミは、メディオに一声掛ける為に。

メディオは、ダメージゆえに、普段の俊敏さが鳴りを潜めた為だ。


「ガウッ、ガウガウッ(先程は失礼した。僕も1匹の『戦士』として、全力でお相手するよっ!)」

「ワォーン、ワンワンッ(ふっ、それは有り難い。私にも、ノルドの様に、その強者の『高み』を見せて下さいっ!)」


ヤミは、そう宣言すると、クロと同じく『覇気』を解放した。

残念ながら、メディオは『覇気』を使えない。

ダメージの蓄積も相まって、勝負は一瞬で着くかに思われた。

しかし、メディオは所謂『天才』であった。

偉大なる『ボス』・ジンの血を引き、自身も非凡な才能を持っていたのだ。

それは、高い『観察力』である。


「ガウッ(はっ!)」

「ワンッ(っ!そこっ!!)」


ヤミが、クロと同じく、『覇気』による超高速移動と、瞬時に『覇気』を攻撃に変換するコンボ攻撃を繰り出した。

メディオには、目にも映らず、『気配』も感じられなかったが、先程のクロの例を参考に、一か八か、自身の背後から攻撃がくると『狙い』を絞っていた。

そして、見よう見まねだが、()()()()()()()()()()()()()()()()、『再現』してみせたのだったーーー。


「ガウッ、ガウガウッ(す、凄いっ!)」

「ワォーン、ワンワンッ(ここだっ!チャンスは一度きりっ!)」


オストとの戦闘で、ダメージが蓄積しているメディオは、この一瞬のカウンターを狙っていたのだ。

クロが、『覇気』を展開させずとも、『覇気』を展開したノルドの全力の一撃を防いだ事を参考にしたのだ。

普通なら、一度見た『技術』を『再現』する事など不可能だが、メディオにはそれが可能だった。

最少にして最速の爪のカウンターがヤミに迫る。

倒す事は叶わずとも、一矢報いる事は出来るーーー。

メディオは、そう確信していた。

しかしーーー。

ヤミは、攻撃を防がれた事を驚きはしたが、一瞬も油断はしていなかった。

刹那の攻防。

ヤミは、大きく後退せず、流れのままに、メディオの脇を通り抜ける様な回避を試みた。

結果、ヤミは毛皮を少しかすりつつも、メディオの会心の一撃を紙一重で回避する事に成功したのだった。


「ワォーン、ワンワンッ(くっ!やはりそう上手くは行きませんかっ!)」

「ガウッ、ガウガウッ(いや、凄いカウンターだったよ。ただ、防御が完璧に『再現』出来ていなかったから、多少ダメージを受けてしまっていたんだよ。動きが鈍っていたから、僕は回避する事が出来た。)」


ハッとして、メディオは自身の前足を確認すると、微かに震えていた。

ヤミの言う通り、気付かぬ内に集中力を消耗し、自身のダメージの蓄積量に気付かなかったのだ。


「ガウッ、ガウガウッ(君の『観察力』は凄いけど、あのレベルの『技術』を『完全再現』するには、どうしても反復練習が欠かせないからね。まぁ、『コツ』を掴むのが君は異常に早いんだろうけどね。だから、()()も君ならいつか『再現』出来る様になるよっ!)」


ヤミは、ヴェストとの対戦で見せた『瞬発力(バネ)』と特殊な『歩法』、さらに『覇気』を組み合わせた『分身術』を披露した。

もちろん、本当にヤミが『分身』している訳ではないが、虚実を含む影が複数で相手に迫る。

そこから繰り出されるラッシュ攻撃は、相手に取っては絶望以外の何物でもない。


「ワォーン、ワンワンッ(ふふっ、参りました。私の負けです。)」


殺到する複数のヤミの影は、メディオの降参の言葉を聞き、その動きを止めた。

と、同時に(フィールド)が解除される。


「ワォーン、ワウワウッ(それまでっ!勝者、ヤミっ!)」

「「「「「ワォーンッ、アォーンッ!!!!!」」」」」


大きな歓声(遠吠え)が響きわたり、勝者の『強さ』を称え、敗者の健闘を称えた。

緊張の糸が切れたのか、ダメージが深かったのか、メディオはその場に伏せてしまった。


「ガウッ、ガウガウッ(大丈夫っ?)」

「ワォーン、ワンワンッ(ええ、()()()疲れただけですから・・・。)」

「ガウッ、ガウガウッ(そっか。今はゆっくり休んでねっ!元気になったら、一緒に修業しようよっ!)」

「ワォーン、ワンワンッ(ふふっ、その時はどうかお手柔らかに・・・。)」


取り巻きの『白狼』達に運び出されるメディオに、ヤミはそう言いながら(フィールド)を共に退場したのだった。



◇◆◇



「いやいや、中々凄い戦いだったね。クロの『格闘技術』を、不完全とは言え『再現』出来る『白狼』がいるとは思わなかったなぁ~。」


僕は、多少興奮しながら、そう感想を漏らした。


「しかし、見事なモノですね、クロ殿とヤミ殿は。それに比べ、我らはお二方には不覚を取ってばかりいましたし、お二方の代わりに主様(あるじさま)の事を守護する事が出来るのか、多少不安になりますね・・・。」

「ボクはあまり2匹とはヤリあわなかったけど、メルヒとオトコドモはけっこうヤリあってたもんねー。」


メルヒとイーナの言葉に、『エルフ族(ティーネ達)』は少し暗い表情をした。

アイシャさんもそれに釣られる様に、心配気な様子だ。

う~ん、『エルフ族(彼ら)』は基本真面目だから、一度深みに嵌まると意外と()()()()を見落としがちなんだなぁ。

折に触れて、『訓練校』と言う単語も出てきていたし、画一化した教育は受けてきたのだろうが、応用が苦手なのかもしれないな。


「いや、それは心配ないと思うけど?君達は、はっきり言って強いよ?ただ、それを活かしきれてないだけさ。クロとヤミの例が出てきたけど、確かに彼らは『格闘技術』を一通りマスターしてるけど、まだまだ達人レベルにはほど遠いしね(まぁ、それは僕もだけど・・・)。僕から見ると、彼らと君達の間に実力差はさして無い様に思うよ。」


そもそも、この間の『パンデミック(モンスター災害)』で見事な働きを見せた『エルフ族(ティーネ達)』が、弱い訳が無い。


「じゃあ、何で俺らはクロ先輩やヤミ先輩に負け越してるですかね・・・?」


クロとヤミに、一番張り合っていたユストゥスが、少し思い詰めた様に質問してきた。


「いや~、それは単純だよ。君達が、彼らのペースに()()()()()、彼らの『土俵』で競う様に仕向けられていたからさ。まぁ、彼らにその意図は無かったと思うけどね?」


単純に『相性』の問題も合ったとも思う。

彼ら(クロとヤミ)の『マイペースさ』と、『エルフ族(ティーネ達)』の『実直さ』が悪い意味で噛み合ってしまったのだろう。

僕が答えると、アイシャさん以外は、一様に疑問符を浮かべていた。

アイシャさんだけは、何かに思い当たった様だ。


「僕も何度かやり取りを見ていたけど、君達は単純な『身体能力』で彼らに対抗していた様に思う。普通は、それ自体無理な話だから、途中でその事に気付いて、また別の手段を模索するんだけど、君達にはそれ(『身体能力』)で多少なりとも()()()()()()()()()。だから、それ(『身体能力』)に固執するあまり、視野狭窄を引き起こしていたんじゃないかな?」


一息に説明し、皆の顔色を窺う。

ここまで言って、ジーク、ティーネ、イーナには理解の色が浮かんでいたが、ユストゥス、ハンス、メルヒはまだ分からない様だな。


「先程、ユストゥス達も言っていたじゃないか。『白狼』達の『瞬発力(バネ)』と『持久力』には目を見張るモノがある、と。クロとヤミの『強さ』は、その『格闘技術』に目が行きがちだけど、本当の『強み』は、その『魔獣種』特有の『身体能力』と『瞬発力(バネ)』と『持久力』が根底にあるんだ。だから、『人間種』が彼らに単純な『身体能力』で挑むのは始めから間違っているし、本来なら勝負にすらならない。しかし、『エルフ族』全体がそうかは知らないけど、少なくとも君らは素早さや敏捷性では彼らに()()()()()()()()()()()。だから、その事に気付かず、何で勝てないのか、自分達は弱いのではないか、と思って深みにハマってしまっているんだよ。」


ここまで言って、ようやくユストゥス達にも納得の表情が浮かんだ。


「「「「「「なるほど~・・・。」」」」」」


どうやら思い当たる節があるのだろう。

ティーネ達はしきりに頷いていた。


「僕からすると、君達の方が、クロやヤミより戦術の『幅』が広いハズなんだよ。バランスの取れた『ステイタス』に、遠近両方をカバー出来る『器用さ』、さらに使い勝手の良い『精霊魔法』まである。『身体能力』のみにこだわる事なく、それらを上手く活用出来ればクロ達より『幅』が広い分有利なハズさ。まぁ、『身体能力』のみで勝ちたいという『愚直さ』は嫌いではないけど、あまり現実的ではないよね。自分達の『特性』を理解して、それを十全に活かす()()()()が大事と言う事だね。」

「そう言えば、アキトはクロちゃんとヤミちゃんと()()()()()()()、自分からはあまり攻めずに、『カウンター』を多用していたよね?」

「単純な『身体能力』では2匹には勝てないからね。スペック的には僕の方が上のハズなんだけど、彼らの『瞬発力(バネ)』は思いの他厄介なんだ。スピードの()()と言うか、()()が『人間種』と桁違いだから、捉えるのが一苦労なんだよ。だけど、『カウンター』なら彼ら相手には『戦術』としては良い方法なんだ。まぁ、単純な『カウンター』だと逆に返り討ちに合うから、そこも色々()()してるけどね。目には映っているけど()()()()()()()とか、『魔法技術』を応用して、()()()()()()()とか、ね。」

「へぇ~、面白そうっすねっ!」


僕の言葉と、クロとヤミの戦闘に触発されたのか、ユストゥスは話に食い付いてきた。


「君らも興味があれば色々教えて上げるよ。それに、クロとヤミに()()()()()()と言われたんだろ?だったら、くよくよしてる暇は無いよ?ただただ精進を重ねて、その『想い』に答えなきゃね?」

「そうっすねっ!クロ先輩とヤミ先輩の後を継がなきゃなんないだから、もっと精進しなきゃなっ!」

「いや、ユストゥス。そこは主様(あるじさま)の為にもっと精進しますって言う場面ではないか?」


普段の調子を取り戻したユストゥスに、冷静なツッコミを入れるジーク。

その発言に、ユストゥスはバツの悪い表情を浮かべ顔をしかめた。


「ははっ、別に()()なんて何でもいいさ。それで本人のモチベーションが維持出来るならね。さぁ、どうやら次の対戦が始まる様だよ。観戦して色々と参考にすると良い。観察も重要な訓練だからね。」

「そうだね~。私も、クロちゃんとヤミちゃんの『覇気』の運用は見てて参考になるよ。私の『魔闘気』もあんな感じに使えば良いんだね~。」

「そうだね。『魔素』の運用に関しては、クロとヤミの方がアイシャさんより先輩になるから、大いに参考になると思うよ。『魔素感知』の訓練にもなるから、しっかり観察してね。ティーネ達も、『精霊(ジン)』を『感知』しながら観察してみると良い。思わぬ発見があるかもしれないよ?」

「「「「「「はっ!」」」」」」


う~ん、ただクロとヤミが心配だから見に来ただけなのに、何だか修業の一環みたいになってきたなぁ。

まぁ、でも、それで『エルフ族(ティーネ達)』の『憂い』が晴れたのなら、別に良いか。



◇◆◇



次の対戦は、クロと『シード枠』のズュードだった。

ズュードは、前の対戦が無かった為、体力を使っていない。

その上、ノルド達各『リーダー』の中では、ズュードは一番年上であり、体力面では他の者達に譲りつつあるが、その老獪な立ち回りは相手に取ってはやりずらい事この上なかった。


「ワンッ、ワンワンッ(上手いなぁ~。豊富な経験則と立ち回りで、体力面をカバーしてるんだねっ!)」

「ワウッ、ワウワウッ(そいつはどうも。ワシもまだまだ若い者には負けん、と言いたい所だが、お前さん達にはそれも通用しないようだな。)」


クロは、現在『覇気』を使用していない。

別に、『舐めプ』をしている訳ではない。

『覇気』使用後の反動で、一定時間、『覇気』の再使用が出来ないのだ。

『ガス欠状態』のペナルティで、『弱体化』しているのだが、実際には『ステイタス』が『覇気』使用前の通常の値に戻っただけなので、戦闘は普通に行える。

とは言っても、一度『パワーアップ状態』を体感すると、生物は違和感(ギャップ)を感じてしまうので、それにより調子を崩す事も往々にしてある。

そうした事から、『魔闘気』や『覇気』使用後は『弱体化』するとある種誤解されているが、実際には『弱体化』している訳ではないのだった。

『魔闘気』や『覇気』の扱いに不慣れな者に取っては確かに『弱体化』している様に感じるが、扱いに長けた者に取っては、『状態』の変化でしかないので、なんら戦闘に支障はない。

ズュードは、クロの猛攻を長年の『勘』と『受け流し』で耐えていたが、やはり勢いはクロにあった。

しかも、ズュードには明確な反撃の一手がない。

それは、ズュードの体力面が落ちている事が要因だ。

まだ年若いクロ達くらいの雄なら、こうやって捌き続けていると、相手が焦れて大振りな攻撃や、散漫な攻撃が表れ、それにすかさず『カウンター』を叩き込み勝利をもぎ取るのだが、クロにはその素振りが全くないのだ。

そうなると、純粋に体力勝負の様相を呈してしまい、ズュードにとっては分か悪い。

ゆえに、呆気ないほど決着はあっさり着いた。


「ワウッ、ワウワウッ(しまっ!)」

「ワンッ、ワンワンッ(そこっ!)」


体力勝負となると、防御側も当然意識が散漫になるので、小さなミスが出てしまう。

ズュードの防御が甘くなった所を、クロは見逃さずにすかさず『肉球パンチ』をお見舞いした。

が、驚くべき事に、ズュードは、意識外からの一撃に反応し『スウェー』して衝撃を逃がそうと試みた。

もっとも、完全に逃す事が出来ずに、より重いダメージを受けてしまったのだが。


「ワウッ、ワウワウッ(イチチチッ、参った。ワシの負けだ。)」

「ワォーン、ワウワウッ(そこまでっ!勝者、クロっ!)」

「「「「「ワォーンッ、アォーンッ!!!!!」」」」」


『白狼』達の勝者を称え、敗者の健闘を称えた遠吠えの合唱が響き渡った。

(フィールド)』の『結界』が解ける中、クロはふらつくズュードに駆け寄った。


「ワンッ、ワンワンッ(大丈夫?避けたのは凄いけど、下手に避けると『肉球パンチ(これ)』は余計に痛いんだけど・・・。)」

「ワウッ、ワウワウッ(イチチチッ、まぁ、ワシの自業自得だ。お前さんが気にする事じゃないさ。)」

「ワンッ、ワンワンッ(それにしても、皆それぞれ個性的な『強さ』を持っていて面白いよ。ズュードさんも、その『技術』は独学なんでしょ?いやぁ、凄いなぁ。)」


無邪気なクロの態度に、ズュードは逆に面食らってしまった。


「ワウッ、ワウワウッ(いや、ワシからしたらお前さん達の『強さ』の方が尋常ではないぞ。・・・大きな声では言えんが、おそらく『ボス』よりも上だろう。)」

「ワンッ、ワンワンッ(まぁ、そうだろうね。全盛期なら分からないけど、現在のジンさんには、負ける気がしないからね。)」


さらに、クロのあっけらかんとした様子に、ズュードは逆に可笑しくなってしまった。


「ワウッ、ワウワウッ(フハハッ、普通もう少し恐縮するモノだろう。いや、事実その通りなのだろうが、な。)」

「ワンッ、ワンワンッ(あっ、いや、別に舐めてるつもりはないよ?けど、『力量差』は正確に把握してないと、困るからね。それに、ジンさんの『凄さ』は、『強さ』も有るけど、その高い『カリスマ性』と『統治能力』でしょ?それは、僕らには無いモノだから、勉強になるよねぇ~。)」

「ワウッ(ほぅ・・・。)」


ズュードは、短い間だがクロと接し、その素直な性格と柔軟性に『王の器』を見た。

一言で言うと、大いに()()()()()のだった。


「ワウッ、ワウワウッ(お前さん達なら、ワシも仕える事に異論はない。しかし、次はお前さん達同士の対決だ。どうなるか、見物だな。)」

「ワンッ、ワンワンッ(そうだね~。ヤミとは殆ど同じ『強さ』だから、勝敗がどうなるかは僕らにも分かんないなぁ。まぁ、どっちが勝っても、()()()()()は変わらないんだけどねぇ~。)」

「ワウッ、ワウワウッ(ほぅ。参考までに聞いておこう。もし『ボス』になったら、何をするのだ?)」


ズュードは、興味本意で聞いてみた。

すると、クロからは、至極簡素な返答があった。


「ワンッ、ワンワンッ(えっ?『魔獣の森(シュプール)』を守る為に皆と一緒に修業する(強くなる)つもりだけど・・・。ダメかなぁ?)」

「ワウッ、ワウワウッ(・・・フハハッ、確かに大事な事だ。・・・フハハッ、それはそうだっ!)」


そもそも、クロとヤミに『統治』などは始めから頭にないし、そういう事を学んでもいない。

()()()()()()()と、『白狼』の未来を考えたら、皆で『強く』なれば良いんだと単純明快な答えしか出なかった。

しかし、だからこそ『祖霊』は彼らに『白狼』の未来を託したのかもしれない。


「ワォーンッ、ワウワウッ(では、次っ!ヤミVSクロっ!両者は前にっ!)」


ジンがそう促し、クロは決勝の舞台に上がろうとした。


「ワウッ、ワウワウッ(1匹の『戦士』として、お前さん達の対戦には興味がある。贔屓は出来んが、両雄の健闘を祈る。)」

「ワンッ(うんっ!)」


背中に、ズュードの言葉を受けながら、クロは力強く頷いた。



クロとヤミが、決勝の舞台に上がった。

並み居る『白狼』の『猛者』達を下し、もはや『黒狼』である2匹を忌避する者はこの場にはいなかった。

それよりも、この桁違いの『力』を持つ彼らの対戦を、『白狼』達は息を飲んで、今か今かと待ちわびていた。

(フィールド)』が展開され、クロとヤミは距離を置いて対峙していた。

静寂と、微かな両雄の『闘志』が、その場の空気を支配する。


「ワンッ、ワンワンッ(ヤミと戦り合うのも久しぶりだね~。)」

「ガウッ、ガウガウッ(そうだね~。けど、どっちか勝っても()()()は変わらないから・・・。)」

「ワンッ、ワンワンッ(お互い、全力でっ!)」

「ガウッ、ガウガウッ(いざ、尋常に勝負っ!)」


そんな中、あいかわらずのマイペースぶりを発揮するクロとヤミだが、態度とは裏腹に互いのボルテージは上がって行った。

そして・・・。


「ワォーンッ、ワウワウッ(では、クロVSヤミっ!始めっ!!)」


ジンの合図と共に、『白狼』の歴史上、類を見ない『高レベル』の闘いの幕が切って落とされたのだったーーー。



誤字・脱字がありましたら、ご指摘頂けると幸いです。


今後の参考の為にも、よろしければ、ブクマ登録、評価、感想等頂けると幸いです。よろしくお願い致します。

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